読書録

シリアル番号 1055

書名

日本よ!甦れ ーフジサンケイビジネスアイ紙寄稿文ー

著者

中村宗和

出版社

自家出版本

ジャンル

随筆

発行日

2010/3/20

購入日

2010/6/18

評価

鳥取大学名誉教授の著者が日刊工業新聞(現フジサンケイビジネスアイ紙)に連載した随筆。著者よりの寄贈本。一読し著者につぎのようなメールを送った。

昨日ご著書いただきました。

早速読破させていただきました。さすが、軽妙なタッチで森羅万象につきコメントされていますね。

いつも中村さんが話していたことがそのまま書かれていることと、この10年間の世相が反映されていて興味深く読破いたしました。

今年になってから、私にとりまして最大の驚きは二酸化炭素濃度が2倍になっても温室効果に大きな変化はありえないという純物理学者の指摘です。 詳しくは二酸化炭素濃度は温室効果に影響するのかに書きました。

東大卒業後、米国に渡った真鍋博士の鉛直方向1次元モデルが鮮やかに二酸化炭素濃度⇒温室効果を計算でだしましたので、世界中の気象学者は感銘を受け、こ のモデルが世界を制覇しました。これは二酸化炭素から酸素、窒素への熱伝導のほうが高速であるということを無視したモデルであったのが原因でまったくのイ リュージョンなわけです。たまたま自然現象の説明に好都合であったためその後スパコンを使った3次元モデルでもこの一次元モデルに踏襲されています。なぜ なら熱伝導を考慮すれば、イリュージョンは消えてしまうからです。ところが1998年にピークをしました後は温暖化はどこかに消えてしまい、最近では寒冷 化の傾向です。

一仮説でもなく、査読も必要ない計算機モデルがなぜ世界に受け入れられたかというと、たまたまの偶然一致と矛盾しなかったこと、人類の環境破壊の恐れがそれを信じさせたということでしょう。キリスト教や仏教の普及と同じ環境がありました。

このモデルを支持している旧世代の数千名の気象学者たちには静かに退場願えないかと思っています。

このようなばばかばかしいモデルを計算するために1兆円もかけて第一の地球シミュレータを真鍋博士の指導のもとに横浜につくり、第二のスパコンを神戸に計 画するなど、温暖化の恐怖に便乗して政治を動かす土建国家と同じロジックではないでしょうか?ノーベル賞の野依氏などそのお先棒を担ぐ恥ずかしい役割をに なっております。そろそろ静かに引退されたらいかがでしょうか?詳しくは地球シミュレータ928参照。

中村さんは高速増殖炉を 評価されているようですが、世界で試作された炉はいずれも増殖率1以上を達成した炉はないという事実はいかが評価されますか?この技術は燃料再処理を前提 としていますが、核保有国に加え、日本だけが2024年まで有効な米国との原子力協定により許されているだけとういう特殊なもので世界のエネルギーを託す る資源ではないということはどう思われますか?韓国、台湾いずれも再処理は許されていないのです。日本ですら沖縄から米軍を追い出せばどうなるかわかりま せん。

核兵器のプルトニウム、ウラン235の再利用という型で安く供給されてきましたが、世界的な原発ブームで燃料不足が顕在化し、目下高騰中です。ウラン価格 は2003年頃までは10$/U3O8 lbでした。これは核兵器廃棄物の再利用でウラン鉱山からの一次供給は需要の半分のためでした。しかしそれもほぼ終り、2008には95$/lbの高値を つけた後、2010年には42$/lbとなりました。これは2014年には50$/lbになるかもしれません。理由は核兵器の転用は完了しまた一次供給に たよらなければならなくなりつつあることと、世界的な原発建設ラッシュのためと考えられます。資源的にも化石燃料に太刀打ちできず、原子力に将来を託すの は危険です。

中村さんはこのようなものに国家の将来を託すのは誤りであるとなぜ発言されないのですか?中村さんも産政学複合体にとりこまれ、国家予算を無駄な使う利権団体の一員だということがこの本で明らかになりました。こういう考えこそ国をあやまることだと私は考えます。

これから中村さんは石油学会の大部分の先生方と同じようにピークオイル説を笑っています。それならメキシコ湾のBPの石油流失事故をどう判断されますか? これは石油が枯渇寸前でリスクを犯して掘らねばならないという切迫した事実を故意に考えないようにしようという態度ではありませんか?ケーシングが割れ、 ケーシンの外に漏れ出し岩盤崩壊寸前とか。この油田の全量がメキシコ湾に流れだすのが最悪のシナリオとの見方もあります。

石油会社はこのダメージから回復できず、オフショア石油開発はスローダウンし、石油価格は次第に暴騰するでしょう。これに10%の権利を有する三井物産もリスクを背負っているわけです。

それから中村さんが通産省の水素エネルギー構想に乗っかってはしゃいでいることも気がかりです。水素を裸でつかうなど愚かなことです。窒素と反応させてアンモニアにすればLPGタクシーがそのまま使えるのです。

中村さんのような能天気な学者が多すぎて国をあやまっていると思います。

以上あえて苦言を呈させていただきます。
 


さすが、グリーンウッドさんのスピードはすごいですね!普段着の談論なので、グリーンウッドさんのように全頁読んでくれる人はめったにいません。まず何よりそのことに御礼申し上げます。

中味について、グリーンウッドさんと意見の違うことが少なからずあるかもしれません。それは、私の勉強不足か、感覚の悪さでしょうから、お許しください。個別の誤解を解くと、

1)ついでに中村さんは高速増殖炉を評価されているようですが、・・・・・原子力に将来を託すのは危険です。
⇒そのとおりです。託してはいけません。少し冷静に、保険をかける周到さと技術開発で世界の頂点に立つ手段と考えています。

2)中村さんも産政官学複合体にとりこまれ、国家予算を無駄な使う利権団体の一員だということがこの本で明らかになりました。
⇒悲しいかな、それほど、私の意見に耳を傾けてくれる人はいませんし、国家予算の貰っている立場、団体の一員でもありません。
新聞に書いても、無視されています。立場上。

3)中村さんは石油学会の大部分の先生方と同じようにピークオイル説を笑っています。
⇒これは、笑っていませんし、青木さんの論文に賛成で、2005年ががピークだったかもしれません。しかし、石油の確認埋蔵量ほど、戦略的に使い分けられ た数字はありません。したがって、少々の横移動はあるかもしれませんが、困難な出油に挑戦しなければならない時代がやってくるでしょうね。

4)中村さんが通産省の水素エネルギー構想に乗っかってはしゃいでいることも気がかりです。
⇒通産の水素エネルギー構想は、昔から「笑っています」。こちらは笑っています。特に、カナダの水力を日本に持ってくるという話には。

5)水素を裸でつかうなど愚かなことです。窒素と反応させてアンモニアにすればLPGタクシーがそのまま使えるのです。
⇒LPGタクシーに使えば、ボンベなど楽かもしれませんが、所詮、内燃機関ではエネルギー効率は20%ぐらいでしょうか?
 燃料電池の水素燃料をアンモニアに置き換えることはできませんか?

6)中村さんのような能天気な学者が多すぎて国をあやまっていると思います。
⇒冒頭の”中村さん・・・”を除いて賛成!とくに、グリーンウッドさんのお友達である東大の小宮山宏さんに申し上げてください。国を誤るほどの影響力がありますから。グリーンウッドさんが対象とする自然科学者以外に、社会科学者や人文科学者も怠けているように思います。


2016年に入り原油価格が30ドル台に暴落した。米国でシェールガス採 掘の技術的ブレークスルーがあったことと中国経済のスローダウンで供給過剰になったためである。というわけでピークオイルのピークが未来にむかってずれた ためである。そういういみで中村氏の予想があたっていたことになる。どのくらい未来に向かってピークが移動するかの予測はデータがないため難しいがかなり あるとみてよさそうだ。

Rev. January 27,2016


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