読書録

シリアル番号 1045

書名

キノコの不思議な世界

著者

エリオ・シャクター

出版社

青土社

ジャンル

サイエンス

発行日

1999/11/8第1刷

購入日

2010/3/26

評価

原題:In the Company of Mashrooms by Elio Schaechter 1999

鎌倉図書館蔵

キノコは菌類である。そして菌類は、コケ、シダ、ともども陰花植物(cryptogamus)である。性器である花を持たない、隠れた性を持つ植物は精子、卵子、種子をつくらず胞子を作る。

細菌、カビ、酵母菌も含め、69,000種とされるが未知のものも含めれば160万種に達するのではないかとされる。

キノコはこの胞子を放出するための器官である。胞子は発芽して一本の微細な糸状体を伸ばす。菌糸の束は「菌糸体」とよばれる。ナラタケの一種は一枚の菌糸体が40エイカー(16ヘクタール、5万坪)の土地を覆う全生物中最大のものであ る。個体の寿命は1,500年に達するものもある。

二本の糸状体が交わり、互いに交配可能な組み合わせ(雌雄という2種の組み合わせだけでなくだけではなく21,000通りの組み合わせが可能)の場合には合体するが、核は別々のまま「二核共存体」になるだけである。「二核共存体」は互いに浮気ができる可能性を残して 共同生活しているわけだ。水分が充分あればこれをきっかけとして核ははじめて合体し、二倍体となり、キノコを形成し、胞子を作る。

マツタケの香りはシナモンのような香りのメチル・シナメイト(桂皮酸メチル)である。

トリュフ狩は雌ブタしかできない。トリュフは雌ブタを引きつける性ホルモンに似た化学物質を分泌する。

黒穂菌に犯されたトウモロコシは見てくれが悪いが麝香と土とキノコを混ぜたような味がしてタコスの原料になりクレープにもなる

ライ麦につく麦角菌(エルゴット)に汚染されたライ麦を食べると麦角中毒(エルゴティスム)という中毒症状を呈する。「聖アントニウスの火」という幻覚を持つか壊疽を起こして四肢を失う。セイラムの魔女裁判の原因ともなった。

菌類は木材を乾腐病(ドライロット)にする。メイフラワー号の姉妹船がニューイングランドに出航できなかったのは乾腐菌のためかもしれない。乾腐初期には木材を変色させる。タンブリッジウエアはこれを有効利用したものだ。

細菌は113oCという高温で生育できるものがいる。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に使われるDNAポリメラーゼはイエロストーン公園の温泉に生息する細菌から分離されたものだ。


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