読書録

シリアル番号 1042

書名

フェルマーの鸚鵡はしゃべらない

著者

ドウニ・ゲジ

出版社

角川書店

ジャンル

小説

発行日

2003/2/28初版

購入日

2010/03/15

評価

鎌倉図書館蔵書

山崎豊子の「沈まぬ太陽」を予約しにでかけでたまたま目にして借りる。

数学・哲学史を知るには最適の小説。英国で語られる数学の歴史とフランスで語られる歴史に差はない。

ギリシアの数学は紀元前800年のタレスに始まる。なぜギリシアかというと個人の自由が確保される社会だったから。しかしじつはその前の紀元前1800年にエジプトノ書記官アアフ・メスがリンド・パピルスを残している。前一世紀には耽壽昌の「九章算術」がある。しかしこれらは超階級化社会での産物だ。 世界に数学者は多いがローマだけは一人の数学者も生まなかった。ローマ人は軍事と政治にしか興味がなかったためだ。

アラビア数字はアラブの発明かと思っていたらインドの発明だという。そしてアラビア数字のゼロが大切な概念と聞いていたが、無論そうだが、むしろ位取りのほうが大切な概念であると。10進法を数字の位地で表示するところが便利。このインド数字はビザンチウム図書館からアル・マムーンのいたバグダッドに渡されたブラフマーグプタ著の天文学の概論書「シッタンダ」でアラブ世界にもたらされたのである。

フィナボッチ数も黄金分割(1+SQRT(5))/2、高次方程式の解法をみつけたカルダーノもでてくる。すなわち数学の全てである。謎解きの部分は全体の5%程度。残りすべて数学史である。

フェルマーの最終定理を証明したという手紙を残してなぞの死を遂げた友人の死の原因の解明と数学史がオーバーラップして語られる。謎解きのキーとしてペルシャの詩人であり数学者のウマル・ハイヤームが出てくる。ハイヤームは多項式の概念の創始者である。

その他、数学史に出てくる殆どすべての人の業績が語られる。


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