読書録

シリアル番号 1023

書名

選挙の経済学ー投票者はなぜ愚策を選ぶのか

著者

ブライアン・カプラン

出版社

日経BP社

ジャンル

経済学

発行日

2009/6/29第1刷

購入日

2009/8/10

評価

原題:The Myth of the Rational Voter; Why Democracies Choose Bad Policies by Bryan Caplan

北海道登山に出かけたとき、購入した日経の読書欄で紹介されたのをみて帰宅後近くの書店で買い求める。非合理性を合理的に消費するという見方が新鮮。

チャーチルの名言は「デモクラシーは、その時代時代で試みられてきた他の全ての政府形態を除けば、最悪の形態である」(Democracy is the worst form of Government, except for all the others)である。独裁制、共産主義、全体主義よりましだが、やはりダメといっているわけだ。

多くの人はチャーチルのように民主主義は投票者が望むことを反映できないという理由で失敗すると考えている。著者は逆説的で民主主義は投票者が望むことを反映するから失敗するのだという。

こうして民主主義に依存すればするほど、愚かな政策が選択され、ますます満足が低下していくという「民主主義のパラドックス」(Paradox Serial No.039)に陥る。

「投票のパラドック」(Paradox Serial No.027)と似ているが、少し視点は異なる。

投票者が犯す間違いは正規分布しておらず系統的バイアスを持っている。たとえば反市場バイアス、反外国バイアス、雇用創出バイアス、悲観的バイアスである。認知心理学はこれらのバイアスは本当は間違っていても人々は正しいと強く信じる。バイアスは特に租税、財政赤字、海外援助、移民、企業減税、福祉サービスに存在する。

政治家、官僚、メディアもこのバイアスを是正できない。著者はそこで民主主義の代わりに市場に立ち戻ることを提案する。また集約的選択から私的選択へ回帰することを提唱する。または経済的リテラシーの高い人に加重投票権を与える。投票率を上げる努力を止める、投票者に経済学を教える、有益情報を持つ人に政策形成への参加をそくすという提案などもしている

こう見てくると、小さい政府、というシカゴ学派への回帰とも読める危険な思想でもある。

Rev. August 20, 2009


トップ ページヘ