読書録

シリアル番号 1006

書名

サブリミナル・インパクトー情動と潜在認知の現代ー

著者

下條信輔

出版社

筑摩書房

ジャンル

サイエンス

発行日

2008/12/10第1刷

購入日

2009/2/14

評価

ちくま新書

朝日の書評で「パラサイトイブ」を書いた理系の作家の瀬名秀明氏が「独創性の本質は潜在的な認知と情動にある」とする著者の考えを評価していたため購入する気になった。著者はカルフォルニア大の知覚心理学教授だという。

私は新しい知識を仕入れ、それを整理して文を書き終えてから、頭脳のなかでこの知識が無意識下で再構築されて、次の日にまったく新しい筋道が出来ているこ とにしばしば気がついていた。そういうことを書いてあるのか早速買ったのだが著者の興味は現代社会がマスコミなどを通じて私達の意識下にある情動系、認知 系に直接トリガーを仕掛けていることにあるようだ。広告にさらされている消費者ははたして自由なのかとか政治は情動により駆動されているとか米国の学者特 有の数え切れない例証がてんこ盛りで、時々風を入れているがそんなこと知っていると退屈感のためなかなか読めずにいそがしいためもあって数日積んであっ た。

それでもMessage d’amour des dauphinsという不思議な絵は気に入った。これを講演のスライドに一枚いれて聴衆を楽しませることにした。

ただ帯に「未曽有の局面に対応し得る新しい創造性も・・・同じ潜在的な知の領域からやってくるにちがいない」とある。最後の5章である創造性と「暗黙知の海」に書いてあるらしい。そこが気になって4章までを飛ばして読む。そうするとメノンのパラドックス(Paradox Serial No.37)がでてくる。

創造性はフロイトのいう前意識(sub-conscious representation)という概念を導入すれば説明できる。潜在的に知っているという状態です。前意識は知っているという意識の知(conscious representation)を取り巻くインターフェースであるとする考えである。インターフェースを通過してある概念が意識に認識されると「天啓が閃く」と知覚される情動の高揚が発生する。

Rev. March 25, 2009


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