PRO/IIで作るガスタービン燃焼室ビルトインリフォーマーを持つ燃料用メタノール合成シミュレータグリーンウッド |
メタノールは常温で液体のため使い安い燃料となる。 通常の天然ガスを原料とするメタノールプラントは外熱式水蒸気改質と酸素を使う自己燃焼改質方式を併用して、H2/COモル比1の合成ガスを製造する。このとき廃熱で蒸気を発生させ、蒸気タービンを回してガス圧縮を行っている。 しかし本法は外熱式水蒸気改質をガスタービン燃焼器の中に入れ込んでしまい、動力はガスタービンでまかなうというものである。したがって蒸気システムは合成反応器冷却目的以外はない。動力をバランスさせるため不足する熱は天然ガスを補助的に使う。
本法の発明者は不肖グリーンウッドと広浜誠也他1名である。特許第2984720の特許権者は千代田化工建設。出願は1991年、特許登録は1999である。特許申請時は千代田化工開発のCAPESでシミュレーションを行った。その後、グリーンウッド氏は引退、広浜氏はインベンシスに移籍、もう一人は大学教授になっている。
水蒸気改質の熱をガスタービンの燃焼熱で供給するために酸素を使った自己燃焼は発生熱過剰になるため行えない。メタノール合成に必要な酸素は水で供給することになる。C1/H2Oモル比1の原料を2気圧、900oCで改質するとH2/CO比=3となる。結果として余剰の水素を燃料にすることになる。従って本法は二酸化炭素を排出しないという特徴をもつ。
メタノール合成は活性の高い触媒を使い合成ガスを55気圧に加圧し、250℃でワンスルー転化率70%。触媒層内に水冷却のインターナル・クーラーを持って、出来るだけ定温で反応させる。天然ガス中の炭素はほとんどメタノールに移行する。
本スキームをディメチル・エーテルの製造に使えないか検討してみたが、水素が多いため、メタノールを脱水して水ばかり生成してしまう。酸素を使う自己燃焼改質でH2/COモル比1の合成ガスを製造しないと無理のようだ。
プロセスフローは下図のようになる。燃料用だから蒸留はしない。
ガスタービン燃焼室ビルトイン・リフォーマーをもつメタノール合成プロセス
水蒸気改質反応工程のモデル化
外熱式水蒸気改質器はGibbs Reactorで900oCの等温反応とした、Reaction Setは特に指定しない。
燃焼熱ガスタービン燃焼器もGibbs Reactorでモデル化した。Reaction Setは特に指定しない。サーマル仕様はFixed Dutyとし、Definedとする。Defineメニューを開け、Reactor Duty=0-Gibbs R1 Dutyとする。改質器が必要とする熱量は燃焼熱から差し引かれるとした。燃料ガスは動力バランスが取れるまで収斂させた。
メタノール合成反応工程のモデル化
Reaction Dataボタンを押しReaction Set NameをMETHANOLと書き込み、Enter Dataボタンを押して化学量論式を2つ書き込む。
第一式:2.0H2+CO=CH4O
第二式:CO2+3.00H2=H2O+CH4O
第一式はReactant StoichimetryのH2欄に2.0をCO欄に1.0を入力するという具合に行う。おなじくProduct StoichiometryのMethanol欄に1.0を入力する。第二式も同じ要領である。Calculation MethodはPower Lawを適用。
そしてConversion Reactorを選びReaction setに先に定義したReaction Set名を選ぶ。内部に冷却器をビルトインしているのでサーマル・スペシフィケーションはFixed Temperature=250oCとした。Extent of Reactionは第一式、第二式ともCOとCO2をBase Componentとして0.7とした。第二式のExtent of Reactionをゼロとしても結果は同じ。
メタノール合成で発生する熱は熱回収熱交換器のHeat Exchanger Duty=Conversion Reactor Dutyとした。蒸気タービンサイクルをループさせると収斂しないためモデルではオープンサイクルとしている 。しかし実際は閉サイクルである。
FlashはすべてDuty=0とした。燃料目的のため蒸留は行わない。 PRO/IIのフローは下図のようになる。
PRO/IIのフロー
主要なストリームデータ
分子 | 燃焼熱 | 天然ガス | 燃料ガス | 水 | リフォーマー出口 | 合成塔出口 | リサイクルガス | 水素燃料 | メタノール |
(kcal/mol) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | |
H2O | - | 0 | 0 | 100 | 1.48 | 0.38 | 0.01 | 0.01 | 7.34 |
O2 | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
CO | - | 0 | 0 | 0 | 23.75 | 2.0 | 2.11 | 2.11 | 0 |
CO2 | - | 0 | 0 | 0 | 0.38 | 0 | 0 | 0 | 0 |
H2 | 0 | 0 | 0 | 72.78 | 86.73 | 91.4 | 91.4 | 0 | |
C1 | 212.79 | 100 | 100 | 0 | 1.61 | 5.54 | 5.83 | 5.83 | 0.03 |
CH3OH | 0 | 0 | 0 | 0 | 53.1 | 0.62 | 0.62 | 92.62 | |
流量(kgmol/h) | - | 1 | 0.2 | 1.04 | 3.89 | 19.25 | 17.26 | 1.01 | 0.979 |
圧力(kg/cm2) | - | 2 | 10 | 10 | 2 | 55 | 50 | 50 | 1 |
温度(oC) | - | 25 | 25 | 25 | 900 | 250 | 34.76 | 34.76 | 36.1 |
分子量 | 16 | 18.01 | 8.81 | 4.98 | 3.58 | 3.58 | 31.00 | ||
燃焼熱(kcal/mol) | - | 212.79 | 212.79 | - | - | - | - | - | 173.64 |
動力バランス
ガスタービンの圧縮比は10とし、断熱効率80%とすると空気コンプレッサー消費動力は28.0kW、タービン入り口温度は940oC、断熱効率80%とするとタービン出力は42.69kWで正味出力は14.68kW。 メタノール合成反応器冷却で発生した16kg/cm2、200oCスチームからプロセススチームを使った余剰スチームで回収できる動力は0.6kW。この動力は小さいので小型プラントでは発電は省略して水冷却器に置き換えることも考えられる。
フィードガスコンプレッサー第1段は断熱効率80%として消費動力は5.18kW、フィードガスコンプレッサー第2段は断熱効率80%として消費動力は8.93kW、リサイクルコンプレッサーは断熱効率80%として消費動力は1.65kWの合計14.61kWで発生動力とほぼバランスする。
エネルギー転換率
投入エネルギーは255,348kcal/h、製品メタノールが持つエネルギーは157,448kcal/hである。したがってメタノール合成のエネルギー転換率は61.7%である。
March 31, 2009
Rev. April 8, 2009