PRO/IIで作る燃料用アンモニア合成シミュレータグリーンウッド |
ちょうどカー ボンフリー燃料としてアンモニア燃料に興味を持っていたため、まずPRO/IIのサンプル・モデルとしてアンモニア合成のテンプレートをお借りし て覗いてみる。
アンモニア合成では化石燃料中の水素のみを使い、炭素は二酸化炭素として捨てる。そして水素を窒素に反応させるためアンモニアは丁度水素キャリアの役割を 担うクリーンエネルギーとなる。このため二酸化炭素の隔離先が得られるか、海洋に石灰石で中和して放流できれば最適の水素エネルギー輸送法となる。またエ ネルギー転換効率も高い。
アンモニア合成の理論エネルギー消費量は4.5Gcal/t-NH3。実際には1965年に9.5Gcal/t-NH3、 第一次オイルショックで9Gcal/t-NH3、第二次オイルショックで8Gcal/t-NH3、1980 年には7Gcal/t-NH3、1990年には6.6Gcal/t-NH3になった。
アンモニアの燃焼熱(HHV)は5.37kcal/g(382.64kJ/mol)だから、t-NH3の燃焼熱は 5.37Gcal。従って天然ガスからアンモニア燃料へのエネルギー転換率=5.37/6.6=81.4%となる。これから二酸化炭素の回収・隔離エネルギー 損失4.6%とアンモニア冷凍エネルギー損失1.4% を消費を控除すると。天然ガスからアンモニア燃料へのエネルギー転換率は75.4%となる。
最新式のものは天然ガスを原料として合成ガスを製造する部分のプライマリー・リフォーマーに熱交換型水蒸気改質とセコンダリー・リフォーマーに窒素を導入 するための自己燃焼型水蒸気改質器を組み合わせ 、二酸化炭素分離にプレッシャースイングを使って総合効率を高めている。
熱交換型プライマリー・リフォーマーをもつアンモニア合成プロセス
モデル化
モデル・サンプルはケッログ式でプライマリー・リフォーマーに外熱式水蒸気改質と窒素を導入するためのセコンダリー・リフォーマーに自己燃焼式水蒸気改質 器を使う伝統的な組み合わせである。
PRO/IIでどのようにモデル化するか解読させてもらった。
合成ガス製造セクション
合成ガスを製造する水蒸気リフォーマーは20気圧、889oCで反応させる。
高温・低温の2段シフトコンバーター、メタネーターはいずれもGibbs Reactorというモジュールを使っている。これはFree Energy Minimizing Reactorともいい、内蔵の熱力学平衡計算で全て計算してくれる。
シフトコンバーターのReaction Set Name=Shiftで規定する化学量論式には
CO+H2O=CO2+H2
を入力する。平衡データとしてのアルレニウスの式の定数を入力しなくてよい。
メタネーターのReaction Set Name=Methanationで規定する化学量論式には
CO+3H2=CH4+H2
を入力する。平衡データとしてのアルレニウスの式の定数を入力しなくてよい。
二酸化炭素分離
アミン水溶液による二酸化炭素吸収分離はStream Calculatorというモジュールで計算している。炭酸ガス回収量は767lbmol/h(348kgmol/h)である。
アンモニア合成
アンモニア合成はEquilibrium Reactorというモジュールを使っている。Reaction Set Name=1で規定する化学量論式には
3H2+N2=2NH3
を入力する。平衡データはアルレニウスの式の定数
Ln(K)=-32.975+22930/T
を入力する。Extent of ReactionはN2をベースコンポネントにとり、Fractional ApproachはとらずTemperature Appoachをとり、20oFを採用している。Thermal SpecificationはFixed DutyとしてゼロBTU/h。反応圧力は322気圧、497oCでN2の ワンスルーコンバージョンは28.4%となる。
中心にEquilibrium Reactorがあり、未反応ガスをリサイクルし、アンモニアは液として系外に、アンモニアに溶存しているガスはレットダウン・ガス72lbmol/hと して分離する。リサイクルループに蓄積するメタンガスはパージガスとして分岐させている。パージガス量は74lbmol/hである。いずれも含まれるアン モニアは回収される。
合成ガスの水素/窒素比はコントローラーでセコンダリー・リフォーマーへの空気量を調節して決める。
PRO/IIのアンモニア合成セクションのフロー
ストリームデータ
分子 | 燃焼熱(HHV) | 天然ガス | リフォーマー | シフトコンバーター | メタネーター | 合成塔 | リサイクルガス | アンモニア |
(kcal/mol) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | (mol%) | |
H2O | - | 0 | 46.44 | 41.61 | 0.51 | 0 | 0 | 0 |
O2 | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
CO | - | 0 | 4.89 | 0.06 | 0 | 0 | 0 | 0 |
CO2 | - | 2.95 | 6.27 | 11.11 | 0 | 0 | 0 | 0 |
H2 | 0 | 30.42 | 35.26 | 74.06 | 51.46 | 57.17 | 0.11 | |
N2 | - | 3.05 | 11.67 | 11.67 | 24.66 | 17.46 | 19.41 | 0 |
C1 | 212.79 | 80.75 | 0.14 | 0.16 | 0.47 | 7.47 | 8.25 | 0.12 |
C2 | 372.81 | 7.45 | 0.16 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
C3 | 530.57 | 3.25 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
C4 | 687.94 | 2.31 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
C5 | 845.27 | 0.24 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
NH3 | 91.39 | 0 | 0 | 0 | 0 | 17.56 | 8.46 | 99.7 |
流量(lbmol/h) | - | 659 | 6,911 | 6,911 | 3,272 | 11,957 | 10,660 | 1,540 |
圧力(psig) | - | 284 | 272 | 252 | 4,730 | 4,660 | 350 | |
(atm) | - | 20 | 19.5 | 18.1 | 322 | 318 | 24.9 | |
温度(oF) | - | 1,633 | 413 | 692 | 926 | 85 | 79 | |
(oC) | - | 889 | 211 | 367 | 497 | 29 | 26 | |
分子量 | 16.46 | 16.46 | 8.69 | 12.54 | 12.035 | 17.02 | ||
燃焼熱(HHV)(kcal/mol) | - | 234.77 | - | - | - | - | - | 91.39 |
分子量44.01の二酸化炭素が767lbmol/h排出される。
動力バランス
本シミュレーションの天然ガス供給量は659lbmol/h(299kgmol/h)だから原料ガスのエネルギーは70,196,000kcal/h。外 熱式リフォーマーの加熱負荷は1.6x106Btu/h(404,800kcal/h)。原料ガスと燃料ガスの合計エネルギーは 70.6Gcal/h。
参考までに昇圧コンプレッサーの消費動力5,359HP、断熱効率95%、リサイクル・コンプレッサー332HPで、断熱効率95%としている。この断熱 効率は低すぎるが、プラント全体のエネルギー消費量は6.85Gcal/short ton of Ammonia計算は別途実績から計算しているので影響はしていない。
エネルギー転換率
アンモニア生産量は1,540lbmol/h(751kgmol/h) アンモニアの分子量は17.02だから、12.8t/h。従って原料ガスと燃料ガスベースのエネルギー消費量は5.51Gcal/t。プロセス廃熱は必要 動力と加熱源とほぼバランスしているが、アミンなどもろもろを含めると本シミュレーションのエネルギー消費量は6.85Gcal/short ton of Ammonia(7.55Gcal/t)であるという。
March 28, 2009
Rev. December 5, 2011