さようなら原発10万人集会

グリーンウッド

 


私は年齢的には安保世代だが完璧なノンポリ学生で、デモは完全に無視して実験に明け暮れていた。青田刈りで就職先はきまっており、いかにして技術者として 力をつけて社会に出るかしか興味がなかったのである。デモにでかける文系の学生に資本家の犬という罵声を浴びらせた人間である。その文系学生がいまでは資本家の 犬になって好き勝手やっている。世の中は不条理なものである。

野田政権が産業界の圧力下で関電の大飯原発(PWR)の再稼働を6/16にきめてから毎週金曜日に首相官邸が包囲されるようになった。初めはマスコミは無 視していたが次第のその規模が大きくなってくるのをみてようやくマスが動いたかという感慨をもった。「アラブの春」ではなく、「霞が関の夏」である。

そうこうするうちにケルンの望月氏から16日に代々木公園で「さようなら原発10万人集会」というものが予定されていますよと教えてもらった。発起人をみ るとそうそうたる評論家、作家、音楽家、宗教家の名前がある。どこかで見たメンバーだと思って思い出した。藤沢駅で森永先生とならんで署名した1,000 万人署名キャンペーンと同じメンバーらしい。

というわけで私はノマドとして参加した。労組の幹部として大勢の人間を連れ歩いたことはあるが、今は河原乞食の気分。千代田線の代々木駅を出てしばらく歩 くと代々木公園の丘がみえる。この丘の上にかって610mの高さのNHKのテレビ塔が企画されたことがあった。読売の正力の妨害で頓挫し、二度と浮上する ことはなかった。そして浅草の方に結局代替品ができた。しかしNHKセンターは今も健在であたりを睥睨している。


続々と詰めかける参加者

ものすごい人であったが流れに従っていると不思議に会場に入れた。まずよく組織され、スタッフが自主的に管理していた。かなり事前に準備している。私は広角 ビデオカメラもってきたので道路横断橋の上から撮影しようとしたが自主的管理者が危険防止のためとして橋にはのぼらせてくれない。

若い山本某という俳優が脱原発に立ち上がってマイナーな芸能プロダクションを首になったが、一流となればその恐れもすくない。この集会の呼びかけ人は怖いものなしの超一流である。坂本龍一はニューヨークで活躍する作曲家で 日本の御用TV局に乾されてもメシは食える。瀬戸内寂聴は尼さん作家で、自分の男遍歴をネタにして人々をエンターテインする一種の芸人だ。美女でないから こういう芸ができる。大江健三郎は読んでも面白くない作家だが、なぜかノーベル賞をもらってしまい、二流の出版社の自己規制を心配しなくても売文で食える。 辻井喬はお金持ちのボンボンで金には困らない売文家。一応一流という自意識はあるらしい。しかし私が現役だったころ、彼がトップの西武系の遊園地経営会社が倒産して50億円もの建設資金を支払わ ずに逃げた。自腹も少しは切ったようだが、こちらまでは流れてこなかった。水に流せといっても過去の金の恨みは怖い。今更、聖人づらして高邁な理想を書いても 軽蔑感しかでてこない。内橋克人、澤地久枝、鶴見俊輔は立派な人で尊敬している。落合恵子と鎌田はノンフィクション作家らしいがいままで注目はしていなかった。

主催者は17万人と発表。警官は道路の交通整理だけの最小限でほとんど姿が見えず。いままでみたこともない人数のいる鉄柵のあるサッカー会場に入 る恐怖があったが、みな節度ある人々で互いに肌触れ合わないように距離をとっていることがわかり次第に安心感がでた。良識ある人々という印象。デモ行進は 労組などが団体で参加し、サッカー会場の鉄柵の外で待機し、中央集会続行中に行進に出発していた。ご苦労さんなことです。従順な羊の如く。かれらは民主党 支持労組ではないのかどうか気になる。サッカー場の主会場に入ったのは個人、子供づれの家族参加者であった。

さすが皆様お話はうまい。坂 本龍一氏はたかが電力のために数万の人間を故郷から追い出すことが倫理的にゆるされるのか?政府にたいして行動を起こさないのは犯罪行為だとはげしい。内 橋氏が民間会社は停電にそなえ原発4基分の自家発を購入したから原発止めてもなんら問題なかった。ことの本質は関電の50%の発電装置を廃炉にしたら倒 産してしまうので政府が腹くくってうごかすことをOKしたということであった。それなら倒産しないだけの加速償却に消費者が応じれば廃炉は可能ではないか と。これから政府をいれないで直接交渉しましょうと提案していた。支払った資金は回収しようという判断は英語ではサンク・コスト・ファラシー(埋没費用 の誤謬)というそうだが、政府の判断は小銭を惜しんで大金を失う行為であろう。ノーベル作家の大江氏は750万人の署名をあつめて政府にとどけたのだが次 の日に運転再開したといって、侮辱だとかなり怒っていました。この怒りを維持して秋にも集まろうと。そのとき民主党政府は消えてなくなっているのだろう か?

これから再稼働予定を聞いたがどうも皆PWRらしい。電力会社もさすがBWRは怖くて動かす気にならないらしい。これは原子力学会での東電の詳細な発 見を聞いたあと私が持ったものと同じ判断。PWRもメルトダウン確率は同じだが、おもらし防止のおしめがしっかりしているということ。これは スリーマイルで実証済。

集会中に飛び入りの若い河原乞食志望らしい若い女が舞台に駆け上がってちょっと話させてとマイクを握って話し始めたのだが、薬をやっていないとか津波後、 首だけ流れついたのを見たとか気持ちのわるいことをわめき、枝野さんもいいとこあるなどと話しだした途端、会場からブーイング。主催者がマイクの電源切っ てしまったのだが、なかなか舞台から降りず、なにやらしばらくわめいていた。空にはヘリが6機くらい旋回していたのだが、そのうち1基が高度をさげてき て落ちるのではとオスプレイをおもいだした。

大勢で行進は時間がかかりそうだからパスして帰ろうとおもったのだが集会が終わって行進に出発できるようになるまでライブ演奏が用意されていたに なった。これはなかなか素晴らしかった。家に帰ってネットで調べてようやくわかったのだが京都からきたラッパーでアナーキーというグループである。モヒカ ン刈りの入れ墨男(フェイクらしい)ですが、ラッパーとしては優れていて、原発批判の歌詞を20分くらい切れ目なく、ラップする優れものであった。巨大ス ピーカーから響くエレキの音に久しぶりに体を揺さぶりました。

会場では50歳代の男女がこのラップに合わせてかなりかっこよく踊っていた。こういう音楽の才能は日本でも本物になっている。

毎金曜日の首相官邸を囲むデモは1月以上続いているが、7/29は脱原発国会大包囲デモになるそうだ。

国家戦略室は今後のエネルギー政策についてパブリックコメントを8/12までに提出することを求めているという。パブリックコメントは、何の効果 も無いから無視しようと私は考えていた。ところが埼玉、仙台、名古屋で開催されたヒアリングで0%の意見表明希望者が70%以上であったが3名しかえらばれず、25%以 上の意見は電力会社管理職ら数人しか居なかったので3名枠に入り発言できたため、やらせというスキャンダルになった。これをみて、%を聞いてくれるなら私もと 思って提出法を調べた。内閣府や経産省のHPからはみつからない。結局反対派のHPからみつけた。提出の電子書式は「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する御意見の募集(パブリックコメント)。 ただ書式をみると%という記入欄がない。文章で記入したって読む人はおらず、数値統計が取れるわけでもない。世論調査よりくだらないもの で、単なる国民を愚ろうする仕掛けとしかおもえない。わたしとしては自分のHPに書いたことをカットペーストして送るという省エネでケリ。

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July 17, 2012
Rev. July 20, 2012


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