町内配電網

調査の動機

2012/6/20台風4号が本州を縦断した。夜半には雨がやみ、強風だけが吹き荒れた。夜中の3時頃には塩害で電柱で放電が継続して発生して騒音と明るさで眠れなかったと七里ヶ浜の最高地点の住民はい う。人々が起床して電力を使い始める朝6:30頃停電した。停電領域は七里ヶ浜全域であった。七里ヶ浜の東半分は9:30までに復旧したが西半分は11: 30でまでかかった。配電系はいったん問題が発生すると、原因究明に時間がかかる。この遅れが原発事故を重篤にする。たまたま福島原発事故シミュレーショ ンをしようとしていたため、配電系はどういう仕掛けになっているのか興味をもった。

七里ヶ浜内の調査結果

町内の6,600Vの三相配電網がどうなっているのか散歩かたがた調べたところ、七里ヶ浜の東端は七里ヶ浜東と西端は津に連なっている。一応ループになっ ているが、西端の柱上設置の 遠隔自動真空開閉器(DCAS300)は手動開になっている。七里ヶ浜の東西中間点に手動開閉機(AS300)がある。今回再閉路できなかった遠隔自動真空開閉器 (DCAS300)は七里ヶ浜東との境にある。ということは東から一方的に流れる常時開路ループ方式だ。要するに樹枝状に配電していてループは工事などのときのために のみある。

ちょうど西武が開発した七里ヶ浜東のメーンストリートを七里ヶ浜小学校から海に向かっ て下ってきて、江ノ電七里ヶ浜駅手前で七里ヶ浜の丘に登る道路とのV字交差点付近に立つ電柱の上にあるDCAS300が七里ヶ浜の第一開閉器ということに なる。



七里ヶ浜東端にある遠隔自動真空開閉器(DCAS300)

DCAS300には配電線に重畳されて変電所の再閉路継電器から送られる制御信号を取り出すにしては大げさな碍子でできた高 圧結合器が乗っている。操作信号は下の電柱にカップラーメンを逆さににした取り付けられた遠方制御器に送られ、これがAS300開閉器を操作するという仕掛けだ。

遠方制御器と開閉器の中間にあるのは100-200Vに落とす変圧器である。10軒に1個相当ある。

鎌倉変電所から七里ヶ浜東までの送電経路

東京電力鎌倉変電所は常盤にある。ここから山越えで七里ヶ浜東に給電されているのであろう。これを突き止めたいと思い、事前にグーグル航空写 真で確認してでかけた。七里ヶ浜小学校裏の浄化センターの一番高い道に鎌倉山から下る階段がある。ロジックではそれに平行して下る空中線があるのではと いってみるとズバリそうである。電線の太さでわかる。実はもう一つ、鎌倉山から一方通行で下るジグザク道があり、そこにも電柱が並んでいるのは航空写真で わかっている。自転車を担いで階段をあがり、七里ヶ浜東を見晴らす崖沿いの道をゆくと棟方版画美術館脇の道との丁字路にでる。ここの電柱に地下からケーブ ルが立ち上がり、今トレースしてきた空中線につなぎこんである。



七里ヶ浜東電力供給ポイン

いままでトレースしていきた空中線はそのまま東進して鎌倉山から一方通行で下る道に連なっ ている。ということはこの点で2ルートにわかれ、七里ヶ浜東にむかっているわけだ。供給点でケーブルが立ち上がっているからには鎌倉変電所からここ まで地中ケーブルかと早合点したが、そうではない。電柱1区間で空中線が地下に降りている。なんでこんな面倒なことをするのかといぶかったが大豪邸の黒田 家の邸宅の入り口をすっきりしたいためかと。東電に力をふるえる人が東電の役員かもしれない。そのまま道をゆき、鎌倉山のメーンストリートに合流する丁字 路手前にDCAS300を発見。これが七里ヶ浜東への第一遠隔制御開閉器であることは間違いない。鎌倉山のメーンストリートを下って常盤口の三叉路で空中 線は地中 に潜った。ここから変電所まで150mは地中ケーブルということになる。これは変電所周辺を電線のジャングルにしないための配慮であろう。



鎌倉変電所

自動復旧の手順


復旧は事故点捜査方式を採用している。遮断後の自動区分開閉器と変電所引出し口遮断機の再閉路動作と協調をとる。協調は時限順送ではなく、信号配電線搬送 のようだ。この方式では事故で配電用変電所の遮断器が開放される。こうして配電線の電圧が無くなるとその系統の全ての自動開閉器が一旦開放される。 そして遮断器の開放から 1 分ぐらい経った後で、 変電所から再閉路継電器という装置で、約1分後に再送電してくる。時限協調による順送式では、 開閉器の片側に電源が投入されてから 暫く (10秒程度) 待ってから開閉器を投入する。 この時、 もし自分が投入した直後 (普通は 5〜6 秒程度以内) にまた配電用変電所の遮断器が開放されるようであれば、それは自分のすぐ先の区間に事故を起こした点がある ということを意味しているので、それ以降は手動でなければ投入できないように 自動開閉器の内部の状態を切替えて次の再閉路に備える、という動作をする。そのおかげで、二回目の再閉路では、 また変電所から順に十秒程度ずつ遅れて開閉器が投入されていき、事故点の直前の開閉器だけは自動で投入されないままに放置されて、人手による事故の復旧を 待つことになる。この時、二回目の再閉路でも数秒ずつ待ちながら順番に投入していくのでかなり復旧に時間がかかってしまう。これを一気に投入してしまおう というのが信号方式のようである。この方式では、すでにトラブルのある区間は何処だか判っているので、制御信号を送ることによってその区間の直前まで一気 に投入してしまえるのである。配電線の停電は概ね2分程度で済む。この手順で地域の電力供給が回復できれば、波及事故扱いにはならない。この方式は鎌倉山 にある七里ヶ浜東入り口開閉器も一度落ちているから、短時間七里ヶ浜東も停電したであろう。しかしすぐ自動復旧しているはずである。ほとんどの人は早朝の ため気が付いていない。

作業員による点検と復旧

東電作業員はまず七里ヶ浜中央にある手動開閉器AS300を手動開にして東半分に問題があるか点検して、OKだったので東端のDCAS300を遠隔閉にし て東半分を9:30に復旧したようだ。

東半分を復帰させた後、東電の作業員はグリーンウッド氏が住む西半分にやってきて電柱4本毎にU字型の電流センサーを3本のそれぞれの高圧電線に逐一押し付けて計測して回った。 テスト用の交流を電線に流してU字検出器に発生する誘導電流を計測しているのだという。中央の電線はゼロ、両端は1 -3であるが全てゼロのところもある。多少電流が流れないところもあるが、碍子も割れていないと判断し、東西を切断した中央の手動開閉器を現場にて閉にし たところ、西半分も11:30に無事復旧した。この点検に時間がかかったわけである。大山鳴動、結局どこも悪くなかった。塩と朝露が漏電をおこしたもので日が登って電線や碍子が乾燥したら問題は消えてなくなったわけである。



U字型の電流センサーでの健全性チェック

考察

今回は空中線の点検に時間がかかったわけであるが、原発のようにケーブルがまとめられてピットの中に敷設されてあれば事故が起こってもメルトダウンするまえに迅速に復旧することは不可能とわかる。

ケーブルの絶縁はポリエチレンであるがこの寿命は20年程度である。化学プラント、LNGプラントは20年でケーブルや電気機器は交換している。今回調べ た柱上開閉器でも寿命は10年程度を想定しているようだ。原発の寿命は圧力容器の中性子脆化などは話題に上るが、原発のケーブルや電気設備を更新せずして40年稼働するという神経は理解不能である。

原発の緊急冷却系のケーブル系が40年の経年変化でポリプロなどが劣化で地絡するとか、開閉器の制御器のリレーコイルなど断線すれば開閉器はバネで開いた ままになる。原因究明に数時間、代替ルート準備に数時間で間違いなくメルトダウンする。メルトダウンすれば開閉器のある原子炉建屋に捜査員はアクセス不能 となり、手動閉も不可能になる。

メルトダウン事 故は今回の台風のように日常茶飯事のこととなろう。なにも津波を待つことはない。

June 23, 2012

電柱交換工事

2013/3/4我が家に一番近い電柱が交換される工事があった。工事会社に聞くと交換理由は知らない。東電が定期的に見回り、老朽化して交換必要と判断されたものを交換しているのだという。

確かに潮風がふきつけるところで、ところどころ内部の鉄筋からのものと思える鉄さびは流れているところもあるが、そうひどいとも思われない。ただ台風には強い風にさらされるところではある。

その交換の手順は真に込み入っている。

まず交換対象の電柱の1m以内に借りの柱をたてて一旦そちらにすべての電線を移設する。そして古い電柱をカッターで切断して抜き取り、新しい電柱を古い穴 に挿入する。再度新しい電柱をたて、そこに電線を戻すという作業をするので1月くらいかかる。切断面を見たが中の鉄筋の直径は5mm程度で錆もなく、健全 そうに見えた。

この電線移設作業は当然6,000Vの3本の高圧電線を前後にバイパス線をつけて迂回させながら無停電で行うためにますます煩雑になる。

この高圧線の被覆に切れ目を入れ、そこにバイパス線の先端を切り込んで電流を流す。そして付け替える高圧線を切断するわけであるが再度遠隔で接続出来るように端末処理をしてから切断する。これすべて絶縁棒の先につけた工具で行うのだ。

200-100Vの低圧線は仮のトランスにバイパスラインから高圧を供給し、低圧ラインに出力端を接続。

新しい電柱に全ての電線をつけかえてから再接続とバイパスラインを外す作業をするわけ。これすべて絶縁棒の先につけた工具で執り行う。バイパスライン を接続接続するためにつけた絶縁被膜のキズはゴムテープを巻いて仕上げる。再接合部も同じ。したがって、電柱交換した前後の高圧線はゴムテープを巻いた傷だらけの高圧線と 成り果てるのである。

March 5, 2013

梅雨時のコロナ放電

2018/6/22 夕方、ドアをたたく人がいて、玄関に出ると町内の住人だ。近くの電柱の上でジリジリと音がしているが、大丈夫かと聞かれた。私も1週間前から気が付いて いたのだが、多分、潮風が運んだ塩分が6kV線の碍子の表面に付着し、そこでコロナ放電が発生しているのだろうと考え、夜に放電光が見えるか確認したがなに も見えない。そこで東電に電話もしなかった。コロナ放電はマイクロ・アンペア程度(6W)のエネルギーで大したことはない。台風直後ではさすが停電になったことはあ るが光が 見えない程度なら大丈夫だろう。でも気になるなら東電に電話してもらえればありがたいといったところ、夜、東電がやってきた。

やはりコロナ放電だという。 そこで双眼鏡を取り出してみるとたしかに青白い放電がジャンパー線を碍子に固定している針金の先からジャンパー線の被覆に向かって流れているのが見えた。 もう設置後40年 になるので絶縁被覆が劣化し、放電するのだという。どうやって放電を止めるのか聞くとゴム手袋つけて布で塩をふき取ったりするのだとか。そんな危ないこと するより水を水を噴霧して碍子を洗ったらというと却って放電がはげしくなりますという。「そうかなー雨が降っている時はしずかで雨が上がり、風が潮風をは こんでくると始まるのだがなー」と思う。「もっとよい碍 子に交換しなければ直らないのではと」詰め寄ると、「ハイ、そのうちに塩がつかないような覆いのあるやつに替えます」という。高価なのでそのような碍子は 使 いたくないのだとか。送電線の維持には金がかかる。無くて済むなら配電網は無い方がいい。やはり太陽電池による分散発電が一番安くなるだろう。



上の写真で中央の垂直の碍子がジャンパー線を支持している碍子でここでジャンパー線を碍子に縛り付けている被覆針金の先から被覆に向かって放電。左側の水平碍子は「耐張碍子」。その左の黒いカバーは「引き留めクランプカバー」。

Rev. June 23, 2018

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