燃料プールの危険性

 

今回の柏崎刈羽原発の中越沖地震はちょうど1、5、6号機が定期点検中だったので燃料プールの安全性に注目させてくれた。

使用済みの燃料集合体は崩壊熱を発するので常に水で冷却して放射能が減少するのを待たねばならないし、放射線を遮蔽するためにも水の中に入れて移動・保管する必要がある。なにせ原子炉から取り出したときは水中で500oC、1年プールに保管してようやく100oCに下がる代物なのだ。

炉心の定期検査のためにはまず格納容器の蓋を収納している原子炉ウエルを満水にする。その水位は12mの水深のある燃料プール上端と同じ水位である。次に原子炉ウェルと2mの間隔を開けて設置された燃料プールおよび機器ウェルの間にあるプールゲートを開けて連通させる。そして格納容器と圧力容器の蓋をあけて床に置き、次に蒸気乾燥器と汽水分離機を吊り上げて機器ウェルにゲート経由で移す。そして燃料交換機で燃料集合体を制御棒を傷つけないように炉心より引き上げ、燃料プールまで燃料集合体を水から引き上げずに運ぶ。そういう意味で一次冷却水と使用済み燃料プールの水は同じものだ。柏崎原発でスロッシングでこぼれたのは使用済み燃料プールからだけではなく、蓋をはずして上端まで水を張っていた格納容器からもあったという。

燃料プール、プールゲート、原子炉ウエル、機器ウェル、圧力容器蓋、格納容器蓋、格納容器蓋遮蔽材、走行クレーン

このように定期検査時は原子炉ウェルを満水にしても原子炉格納容器内の圧力容器外周のドライウェルにまでは水がもれないようにコンクリート製のウエルはステンレスの薄板でライニングし、圧力容器 との隙間はシール機構でドライウェルに水が流下しない構造になっている。

運転再開の時はプールゲートを閉じて原子炉ウェルの水を抜くのだがプールゲートのシールパッキン不良で燃料プールの水が抜けることはよくあるようだ。

定期検査のため、使用済み燃料プールに一時的に退避してあるまだ臨界に達しうる燃料集合体を収容するラックが地震で壊れて燃料プール内で臨界に達する事故はないものか心配になって調べると、燃料棒はラックに収めて、一定の距離を確保して臨界を防止する構造になっているとい う。柏崎ではこのラックを小型化するために東芝がおさめたボロン添加ステンレスラックを使っているという。

今回の中越沖地震で使用済み燃料プール内の200kgの水中作業台が使用済み燃料ラック上に落下したり、固定位置からずれたりした事故があったそうだ。幸い落ちたものが軽かったので燃料ラックはつぶれなかったよう だ。ただもし、走行クレーンンが落下したらラックはつぶれ、臨界事故が発生しないとはいえないであろう。

もし建屋が壊れて定期検査のため使用済み燃料プールに一時的に退避してある燃料集合体を収容した使用済み燃料プールの水が抜けてしまったら、ラックのおかげで臨界に達しなくとも、崩壊熱で燃料棒が破壊され、放射性物質は環境に放出される可能性はない か?それを防止する対策は用意されているのだろうか?燃料プールはビル内に造ったコンクリート躯体に薄いステンレス鋼で内張りしたものだそうだ。仮にコンクリート躯体がこわれなくともプールゲートが地震ではずれれば水は抜けてしまうのではないか? いずれにせよ脆弱性のある作りになっている。


朝日新聞2007/9/28によればプールのなかに保管してあった刈羽1号機の汽水分離機の仮支持脚が曲がっているのが分かったとのこと。

朝日新聞2007/10の記事によれば燃料プール内張りステンレス板の溶接部にクラックが入り、水が少量ながら漏れていることがその後みつかったようだ。

原子力へ

August 2, 2007

Rev. November 1, 2008

 


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