お話 2  談合のテクニック  談合破りを追い出す「網掛け(あみかけ)」 について 

 談合の記事を新聞で見ない日は無いでしょう。しかし、談合のテクニックは知られているようで、案外関係者以外には知られていないと思います。
談合を行っている人は「談合は無くならない」と言います。しかし、本当にそうでしょうか?談合を無くすテクニックを編みだしてゆきましょう。

1、公共工事の仕事
 公共工事の仕事には談合が付き物といわれます。それでは、民間の建設工事に談合は起こらないのでしょうか?
公共工事と民間工事の差は、何が違うのでしょうか?民間工事の発注者はなるべく安い価格で発注しようとします。何故なら、安く発注することにより、自社の利益が出て、回りまわって自分の収入にも響いてくるからです。そのために、談合などをさせないように徹底的に工夫をします。

しかし、大手機械メーカなどは価格カルテルを組んで、緩やかな談合をするようです。この談合を無くすためには、民間企業の購入者は、海外メーカから購入するようなこともします。しかし、国内法の規制などによって海外メーカから購入できない場合は、価格カルテルの中での購入になります。このようなカルテルを組むメーカなどは国内での有力メーカであり、業界団体で話し合いをする事が可能です。この、業界団体には官僚の天下りが行われ、与党に政治献金も行われます。

ところで、市町村の公共工事には通常、指名競争入札(入札参加者を市町村が選定するため、近隣の業者だけになる)が採用されており、入札者同士の話し合い(談合)が出来る競争になります。つまり、知り合い同士(仲間内)での入札になるので、競争するのは止めて、順番に受注しようよと話し合いが行われます。

2、公共工事の予定価格
 公共工事の積算価格は、国と県で決めた単価と設計会社が算出した数量を元に市町村などが計算します。積算は基本的には、 予定価格=単価x数量 で行われます。この積算にはパソコンが使われます。この積算ソフトは単価x数量の計算をしてその合計を出すものです。その数量ですが、これは市町村から設計を依頼した設計会社が算出します。そしてこの、数量表を市町村が入札会社に提供します。入札会社は数量表と単価表(国、県で公表している)を使って、予定価格を算出します。
このように、市町村も入札会社も同じデータと同じソフトを利用して積算しているので、ほとんどその金額は同じになります。市町村はその積算価格から「歩切り」を行い、安くして実際の予定価格(入札上の予定価格)を設定します。この歩切りの値段が分かれば入札業者は予定価格を入手したことになります。
しかし、工事の中には手作業で進めなければ計算できない(パソコンでは計算できない部分)部分も必ずありますので、予定価格を計算のみで入札業者が求めることは不可能です。
 

3、談合破りを追い出す「網掛け(あみかけ)」 のテクニックとはどんなものか?
1)入札制度は安い金額で発注するシステムなので、入札者の中で一番安い価格を提示した業者に発注されます。そのため、入札者は落札するために、安値で入札する必要があります。しかし、利益を得るためには高値で誰もが受注したいと思います。
それゆえ、仲間内で相談して、高値で受注しようと言うことにして、偏らずに順番に受注するように話合います。
2)そのような相談がまとまったならば、今回の入札に対しては誰が受注すると決めます。そして、受注予定者は自分の受注希望価格を自分で決めて、他の入札者に対してはそれより高い価格で入札するように 各社の入札価格(入札金額)を具体的に連絡します。各社は連絡された金額で入札を行い、めでたく受注予定者が受注できます。

3)このようなときに、予定価格を知っていれば受注予定者は高額(予定価格すれすれで)で受注できます。予定価格より高額で入札すると失格となり、受注できませんので気をつける必要があります。
4)ところが、「 談合は嫌だ」と考える業者が出てきます。これは、談合破りと言われます。この人は実際に可能な安い値段で入札に参加します。これに対して、他の談合擁護者も、落札を目指せば似たような安値で対抗せざるをえなくなります。
5)ところで、入札は値段が低ければ落札できるというものでもありません。工事などの品質確保などの名目で、最低価格は予定価格の85%(建築工事)、70%(土木工事)などと決められています。つまり安すぎると受注できないシステムになっています(最近は見積もり内容をチェックして問題ない場合は発注するようにしているが)。

6)このようなに、談合破り業者が入札に参加してくると最低価格付近で落札されることになります。談合擁護業者は、談合破り業者に受注させまいとして、最低価格付近の価格で入札をしてきますが、相互に連絡を取り合って、金額を少しずつ差をつけて入札し、談合破り業者に対して 包囲網を作ります。こうすると、談合破り業者の入札価格の前後に他の業者の入札が並びます。こうして、談合破り業者の落札は阻止されます(網掛けの成功です)。
これが、網掛け と言われるテクニックです。このようにして、談合破り業者を追放してゆくのです。
開札調書(入札金額一覧書)を見ると時々、最低価格付近に入札金額が集中している場合があります。これは 網掛けが行われていることを示しています。
 

以上。