「髪は毛根から生えるわけではない 」

 August号 1998 雑誌「Forbes」

   稲葉クリニック院長 稲葉葉義方氏への インタビュー


  (著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)
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人はなぜ『ハゲる』のか?。
若ハゲは昔から人間のひそかな悩みである。
だか、20世紀か終わろうとしている今日でも、いまだ決定的な毛生え薬は存在していない。
そもそも、なせ毛か生えるのか、そしてなせ抜けるのか?
そのメカニズムすら明らかではないのだ。

重要なのは皮脂腺

 稲葉益巳氏は長年ワキガの外科的手術にかかわってきた医師である。益巳氏は、何千例と施した手術の現場で、ある奇妙な事実に気づいた。 毛根を除去したはずの患者の脇の下に毛が再生してくるのである。従来、唱えられていた説では説明がつかない事実であった。益巳氏は、この現場で積み重ねたデータに基づき、発毛には毛根ではなく皮脂脱が深くかかわっているという仮説を立てた。 「髪は毛根から生えると長い間言われていました。けれど、毛根は髪を作る工暢にすぎない、髪をつくらせる設計図は皮脂腺にあると考えています。」 こう語るのは、益巳氏の息子である稲葉クリニックの院長、稲葉義方氏だ。氏は前院長であり、「皮脂腺説」の提唱者である益巳氏の研究を継承している皮膚科医である。

 「睾丸で形成されたホルモンは皮脂腺に存在する5α−リデクターゼという還元酵素と結びつくことによって、より強力な男性ホルモンである5α−DHTに変換される。それが毛母に抑制的に働くためにハゲができる。これが私たちの提唱する皮脂腺説です。 いわゆる若ハゲの方の毛を顕微鏡で見ますと、脂が多い。皮脂腺が肥大して活発に働いているんですね。皮脂腺が肥大すれば5α-リデクターゼが多量に形成される。そうすると、5α-DHTがたくさん作られる。その結果、毛母細胞が働かなくなる」。

 男性ホルモンが働く場所はいくつかある。前立腺、のどぼとけ、そして皮脂腺であると義方氏は言う。 「胸毛やひげは若いころは無いが、思春期になって男性ホルモンが働き出すと生えてくる。ところが髪は二歳、三歳でもう生えている。つまり、男性ホルモンが少ない状態でも毛が生えるメカニズムになっているわけであり、それが思春期をすぎて男性ホルモンが増えてくると皮脂腺での5α-リデクターゼの作用がどんどん大きくなり、5α-DHTが多量に作られる。それによって髪の毛が抜けてゆく。ですから5α-リタクターゼの働きを抑えるために皮脂腺説に基づいて開発されたトニックを使えば、脱毛を予防し、再生するというわけです。」

 臨床的にはいろいろと実証されている。「状況証拠は沢山あります。まず、頭の薄い方は皮脂腺が肥大しているという事実。 そこには酵素が多いという事実。酵素を抑える薬を蝕むと、毛が生えてくるという事実です。」  稲葉クリニックには若ハゲに悩む忠者がわらをもつかむ気持ちでやってくる。 「治療後、ふさふさと生えた顕著な例もあります。」  義方氏は頭切部にほとんど髪がない青年の写真を示した。ドイツで発行された医学の本に掲載された写真の一枚である。「この患者さんは23歳。18歳の頃から薄くて、ほとんどノイローゼのようになって、女性ホルモンを投与し、畢丸も取ってしまいたいとすら言っていた。ところがこのトニックを使うと毛が生えてきたわけです」  驚いたことに次頁の写真では、同じ青年の頭に黒い毛がびっしりと生えている。 「若ハゲが進んだ人も毛が生えて来る可能性はあります。ただ、可能性は有るんですが100%戻るというのは難しい。坂道を転がるように薄くなる勢いを少しでも遅くするか、その状態を保つようにするのが治療です。」

若ハゲは食事か原因!?

 日本人は欧米人に比べて若ハゲは少ないと言われてきた。ところが咋今では、日本人にも若ハゲに悩む男性は多い。義方氏はこれも皮脂腺説で説明できるという。 「ハゲるには、遺伝的な要因があります。それから環境です。つまり、食事です。現在の育毛剤というのは毛根にエネルギーを、毛根に血流を、と言います。けれどそれはおかしい。もしエネルギーが足りないのであれば、たくさん食べればいいのか?。戦争中、日本人はろくに食べていなかったわけですが、今よりハゲが多かったでしょうか?。 かえって今の方が若ハゲが多いわけで、高カロリーなものを取って、余分は体の脂肪や皮脂腺にためてしまう。 つまり食生活によって皮脂腺が多くなってしまうんです。」  この『皮脂腺説』に基づいて、稲葉クリニックではレーザーによる永久脱毛の施術も始めている。 この方法を試すため、義方氏は自らのすねを実験台にした。レーザーを当てた部分だけ、みごとに丸く毛が抜けている。この脱毛法も、毛根ではなくて皮脂腺が脱毛発毛をつかさどるという説の傍証となっている。

 かつて前院長の益巳氏は、毛根だけをつけた毛、皮脂腺だけをつけた毛、両方つけた毛と、さまぎまな頭の毛を腕に移植する実験をしたという。結果はもちろん、毛根だけつけた毛は抜け落ち、生え変わったのは皮脂脱がついたものだけであったのだ。

 それでも、日本の学会は『皮脂腺説』を容易に認めようとはしない。 「日本のお偉いさんは従来の説を覆すような突拍子のないことは聞きたくないらしい。私は皮膚科が専門ですが、皮脂腺説を初めて提唱した前院長は皮膚科ではありませんでした。学会は、一開業医が立てた仮説をバックアップはしてくれない。 ですから、前院長は発表の場を海外に求めたんです」。

 ドイツでは、医学界では有名な出版社が『皮脂腺説』に関する本を出版している。海外では既に『皮脂腺説』は受け入れられつつあるのだ。 「最近、外国の先生方がこの説をバックアップするような論文を書いています。これからおもしろくなるな、という気がしますね」

 遠くない将来、発毛、脱毛のメカニズムは解明されるに違いない。そしてその日は稲葉親子の夢がついに日本でも認められる日となることは間違いなさそうである。             (取材・上尾美絵)

 稲葉クリニック・・・東京都杉並区阿佐谷南3-31-13 
            Tel 03-3391-5535


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http://www.gyosei.co.jp/forbes/

'98/07/27時点では、この記事のバックナンバー情報は存在していませんでした。

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