ローマ法王の死去に伴い、時期法王選出のコンクラーベが行なわれるとニュースでやっていた。
地動説が常識となり、鉄の塊が空を飛び、携帯電話が一般的となった長い長い歴史の中で、この儀式が連綿と受け継がれていたことにちょっと感動した。
コンクラーベという言葉を初めて目にしたのは、塩野七生さんの著作の中である。
それが記憶に刻まれていたのは、もちろんこの私に限って『学習』的な見地からであろうはずもない。
コンクラーベ 根比〜べ という神をも恐れぬくだらないオヤジギャグ的発想からである。
しかしながら当時の枢機卿たちは一室に閉じ込められ、時期法王が決定するまで出してもらえないという選出法(外部での裏工作はザクザクだったらしいけど)は、まさに『根比べ』ではなかろうか。
そして遠い祖をイタリアに置く我が家の犬たちを見るにつけ、日々まさしく『根比〜べ』だなと思う。
とかなんとか言いながら、とどのつまりは「根比〜べ」というオヤジギャグをブチかましたかっただけ。
父がブレイズを見てふと言った。
「この犬がうちに来てから、もう二年くらいになるか?」
それはブレイズより一歳若いホームズが満四歳の誕生日を目前に控えた、とある夜の出来事である。。。
そんな父に、「湿布持ってたら欲しいんだけど」と頼むと、病院からもらった湿布の袋を持ってきて「湿布は無かったけど、鎮痛剤ならあるぞ。でも、これも効くから貼っとけ」と。
お父さん、世間一般ではその形状をした鎮痛剤のことを湿布と言うんです。。。
ブレイズ&ホームズを見て「あれはお金持ちの犬なのよ」と子供に説明している若いお母さんがいた。
聞くとはなしに聞こえてしまい、思わず内心で苦笑。我が家がお金持ちであるかどうか、まずは私の風体を見てから判断していただきたい。それとも私が水戸黄門のように超小市民に身をやつして下々の暮らしを視察しているとでも?
たしかにイタグレはその昔は貴族階級の犬だったし、イマイチまだ一般に浸透していない犬種だし、外観的にもどことなく優雅さを湛えているので、そのお母さんの誤解も分からなくはない。
しかしながら我が家においてのお金持ち犬といえば、そりゃ雑種のワトスンだろう。
病院好きで、私の懐から一番お金を持ち出してくれるという意味で。。。
さらにイタグレが独特のスレンダーな体形から、まれに「ご飯食べさせてもらってないのかしら?」的憐憫の視線を注がれている、別の意味においては貧乏ったらしい犬であることをそのお母さんは知らない。
西暦2005年の春、ついに我が家の洗濯機が全自動になった。
二槽式と違い、洗濯物を入れてスタートボタンを押せば、あとは洗濯機が勝手にやってくれる。
水道代も二槽式よりお得だというし、何て便利な文明の利器なのだろう。
だが、黴色の脳細胞の機械オンチ一名、老人二名の我が家では、それを「便利」と感じるまでには艱難辛苦の道程が待ちかまえていた。。。
最初に洗濯機に手を出したのは父だった。そして犬の散歩に行こうとしていた私にお呼びが掛かる。
我が家の歴史において記念すべき第一回目をまんまと父に奪取され、ちょっとガッカリしながら洗濯機の前に立つ私。
父いわく「動かない」
正確には「ウィ〜ン」という音はしているので起動そのものはしているのだが、『洗い』が始まらないのだ。
説明書をめくる私の横で、「なんだこれ、全然ダメじゃん」みたいな文句をブツクサ並べ立てながら、スタートボタンを再度押したり、電源を入れたり切ったり、いじくり倒している父。
しまいには「じゃかぁしい! ちょっと静かにしてんかい!」の一喝が私から飛ぶ。こう横でガチャガチャとされては、ただでさえ超苦手な分野だというのに気が散ってしかたがない。
そしてとりあえず説明書の通りに最初から仕切りなおし。
スタートボタンを押してしばらくすると、「ウィ〜ン」という音が始まる。
しかしその「ウィ〜ン」が半端じゃない長さ。
「ウィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」みたいな。
痺れを切らした父がまた手を出そうとするのを「このまま様子を見る」と制して、待つことさらに。
ようやく水がチョロチョロっと出て、また「ウィ〜〜ン」
しばらくしてまた水がチョロチョロっと出て、「ウィ〜〜〜ン」
そうこうしているうちに洗濯槽が回りだした。
「おお〜〜っ!」と歓声を上げる父と私。
とにもかくにも洗濯機が動き出したので、2階にあがって散歩の仕度を始める。
5〜6分して1階におりていくと、まだ洗濯機の前に張り付いている父。
念のため「余計な手出しはしないように」とひとこと釘を刺し、これ以上は付き合いきれないのでとっとと散歩へ出る。
あの調子じゃ、洗濯が終了するまであのまんま張り付いているんだろうな〜と確信しつつ。
全自動なのに、洗濯機の前で番をしているほど不毛な行為もなかろうに。
それにしても、センサーだか何だかで色々読み込んだり計測したりしているのかも知れないが、洗い始まるまでにこう時間が掛かってちゃ、全自動も便利なようで不便かも。。。
この時の私はそう思っていた。
何しろ「ウィ〜ン」が始まってから実際に回りだすまでに、10分近くもかかるのだ。
それから一週間ほどして、「ウィ〜ン」の音に「パタパタパタ…」という、遠くでヘリコプターが飛んでいるような音が混じるようになった。
機械オンチ素人三人衆が寄ってたかり、あっという間に壊したか?
今のところまだ洗濯自体は支障なく行なえるので、壊れる途中とか??
何度説明書をめくり返しても原因が分からないし、困り果ててカスタマーセンターに問い合わせてみる。
そして点検修理の人がやってきた。
電源を入れ、スタートボタンを押す。「ウィ〜ン」の音が始まる。
「お客さまの言っているのは、この音ですか?」と修理の人。
そのあっさりさっぱりした言葉の響きに何やら嫌な予感を覚えつつ、「そうです。ほら、パタパタって音が混じってるでしょ!?」と、救いを求めるように力説する私。
「これ、風呂水取ろうとしてモーターが回ってる音です」即答。
そして点灯していた『お湯取り』ボタンを「ピッ」と押して解除する。以上、メンテナンス終了。。。
たったこれだけのことをするために、この修理の人は船橋市(千葉市のふたつ隣)のサービスセンターからやってきたのかと思うと、それが先方の仕事だとはいえ、あまりにも気の毒すぎる。
しかも堂々と保障期間内なので、出張費すら出ない始末。。。
そういう時に限って来てくれた人がやたら親切でいい人だったりするし。
お詫びに冷蔵庫から取り出した栄養ドリンクを1本差し上げるが、「冷えてますから」と言い添えたその日、千葉は長袖でも良いくらい薄ら寒い陽気であった。。。←修理の人が帰ってから気が付いた。
ちなみになぜこんな初歩的なミスに気づかなかったのか?
その原因は洗濯機を設置した日に遡る。
配送&設置をしてくれた人が、「お風呂のお湯を洗濯に使いますか?」と聞いてきた。
残り湯を使うか使わないかで何か設置方法(たとえばどこかの弁を開けるとか)に違いがあるのかと思いつつ「はい」と返事をする。
この会話に双方の見解の相違が生じてしまっていたのだ。
私が「はい」と答えたために、どうやら設置をしてくれた人が気を効かせて『お湯取りボタン』をON設定にしていったらしい。
家族全員が生まれて初めて触る全自動だから、そこのランプが点灯しっぱなしでも、洗濯機が取れるはずもない風呂水を給水しようと必死に「ウィンウィン」唸っていても(だから『洗い』に入るまでにやたら手間どっていた)、「そんなものだろう」と認識し、誤解し続けていたのだ。
理不尽な要求から解放された洗濯機は、翌日からえらく調子がいい。
散歩の途中、おばあちゃん(といっても60代くらい)が、孫の5歳くらいの女の子と2歳くらいの男の子に「ほら、ワンワンだよ〜」と言っているのが聞こえた。
女の子がすごく嬉しそうにしているので立ち止まってあげると、少し離れた場所にいた弟にもどうしても近くで見せたいらしく、何度も弟くんの名前を連呼してこちらに呼び寄せる。
そしてしばしの触れ合いタイム。
そこへ、その子たちの知り合いのお姉さんがやってきて「○○くん(←弟くんの名前)、ザリガニいるんだけど、見る?」
それを聞いた弟くん「ザリガニ〜〜!」と嬉しそうに叫び、さっさと行ってしまった。
うちの犬たちが3頭束になってザリガニ1匹に負けたのかと思うと、けっこう悔しい。。。