New York七転八倒顛末記その8


いよいよ最終回に突入!

いよいよ最終回となりました。というよりも、書いていくとキリがなくなるので、この回あたりでとりあえず終わらせて、また、何かの機会に違う観点で別のレポートをお届けできればと思い、無理矢理にこのページで最後にします。

さて、ニューヨークのアパートを衝動買いしてからの10年間にわたるドタバタ劇で、物心両面ともに疲れてしまった私は、とうとう1998年の春にアパートを売却することにした。
幸いなことに、その後のアメリカ経済の立ち直りで、アパートの評価も、おまけに円の為替レートまでも、購入時よりいくらか上回るようになってきた。

ちょうど潮時というか、このタイミングを逸すると、今度はまたいつ売り時が来るかわからない。日本のバブル景気を体験した者としては、アメリカの今のこの好調さもバブルに見えてしまう。

ただ、売ることに決めてみたものの、これでニューヨークと縁が切れてしまうと思うと、なんとなく淋しいような、後ろ髪を引かれる気持ちが出てきて、複雑な思いがあった。
意を決して、アパートの管理を委託しているニューヨークの不動産会社へ売却の手続きを依頼した。
不動産会社からは、もう少し様子を見てはどうかとのアドバイスがあった。しかし、アパートの購入は、別に投資の目的ではなく、自分の夢を実現させるための手段としてだったのだから、損さえしなければありがたいことと思い、そのまま売却を進めてもらうことにした。アメリカの場合、売却決定までに相当の時間を要するのが常識だが、経済的な環境が味方したのか2カ月もしないうちに買い手が見つかった。

不思議なことに売却が決定してしまうと、色々と苦労させられただけに、手放すのが惜しくなってきた。心配ばかりかけた娘を嫁に出す父親の気持ちといえばよいのだろうか。
売却が決定してその手続きを進めるに際して、またまた複雑な手順が待っていた。弁護士に契約書の作成や受け渡しの代行を委任するための認証を得るために、公証人役場へ行ったり、外務省に出かけたりと、結構な時間と手間と費用がかかったのだが、購入時に比べて、ずいぶんと精神的にゆとりが生まれたのは、やはり慣れというものだろうか。

その後、現地法人の清算も含めて、すべての手続きが終わったのは、それから4カ月後であった。今ではニューヨークは、デ・ジャビューの感覚というか、懐かしい遠い昔の思い出のひとコマのようだ。時折、10年間に及ぶ様々なシーンが甘酸っぱい感覚でよみがえってくる。
いろいろなことがあったけれど、私にとっては、今もなお「New York City」は「My Heart City」であり、魅力あふれる街として輝き続けている。それが証拠に、ニューヨークの友人が来日する度に、せっせと会いに出かけて、耳をダンボにして情報を集め、「夢よ、もう一度」とばかりに、ニューヨークとの関わりを模索し続けているのだから。おまけに、こんなホームページまで作って、どこかでニューヨークと繋がっていたいと、細い糸をたぐり続けている。懲りない男である。

これからニューヨークでのアパートの購入を考えておられる方へのアドバイスとしては、まず購入の目的をはっきり持つこと。それによって、住むエリアも自ずと選択される。
コンドミニアムかコーポかということになると、権利関係や売却を考えると、自分自身の自由な判断で処理ができるコンドミニアムのほうがいいのではないだろうか。ただ、コープには長い歴史があって、それなりに良いところもある。ちなみに、ニューヨークの高級アパートメントにはコープが多く、例えば、ジョン・レノンが住んでいたダコタ・ハウス(=右の写真)もコープ形式のアパートのために、お金持ちの人が、どんなに住みたくてお金を積んでも、住民で構成されるボード(委員会)が承認しない限り、住むことすらも叶わない。

次に、購入に際しては、ニューヨークでは、良い相談相手、あるいは良心的なコンサルタント(業者)を見つけること。加えて、信頼できる弁護士や、信用できる会計士を見つけることが、とても大事である。為替などをはじめとした金融問題や、日本との間の税制も付随した問題としてでてくるので、その方面に精通した相談相手も必要になってくる。
購入後には、管理をどうするかということがある。自分自身で住む場合はもちろんのこと、特に賃貸の用に供する場合は、いかに信頼できる管理会社を選択し、確保するかということが大切な要因となる。ニューヨークでは、これが簡単なようで、結構大変なのだ。
あとは、できれば英語に堪能であれば、それに越したことはない。当たり前のことかもしれないけれど・・・。

さて、いろいろと書いてきましたが、皆さんのお役に立つようなことがありましたでしょうか。これからニューヨークへ出かける方々が、私の犯した様々な失敗を何かの糧にされて、ぜひ、成功を手中に収めてアメリカン・ドリームを実現していただきたいと、多少の自慢話(?)を交えながら、ちょっとばかり恥ずかしい話を公開させていただきました。

NYは、とにかく生存競争が激しい街です。みんなが、上昇志向を強く持っています。日本で生活していると決して体験はしないだろうと思うほどに、各人の自己主張も生半可ではありません。また、マジョリティの白人社会の中で、マイノリティである日本人として、常に自分のアイデンティティを考えさせられる日常などは、ニューヨークに住んでみて初めて体験することでもあります。

そんな空気の中に、長年生活していると、やはり精神的に疲れてしまいます。精神的な悩みの相談や診療をするセラピストの数が、アメリカで一番多いのがNYだということでも、それが証明されています。
それに、アメリカン・ドリームを夢見てNYへ来ても、自分から働きかけない限り、誰も面倒をみてくれません。他にも、言葉のこと、ビザのことなどが重なって、夢やぶれて、日本へ帰ってくる人が多いのも現実です。
現在、ニューヨークで夢を追い求めている方も、そしてこれからニューヨークへ出かける方も、夢を夢で終わらせることなく、自分の可能性を信じて、努力を継続されることを願わずにはいられません。さあ、一緒に頑張りましょう! Bon Voyage.

ここまで辛抱して
拙い文章を読んでいただいた方には
心よりお礼を申し上げます。
ありがとうございました。




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