'98年1月


「ブレーキ・ダウン」- Breakdown -

 全然期待していなかったのだけど、意外に面白かった。
 米国では、都市間をつなぐ広大なハイウェイのために、その恐怖みたいなネタが伝統的にある。元は開拓時代まで遡るのかもしれないが、映画でも「激突」や「ヒッチハイク」みたいなもの。
 この「ブレーキ・ダウン」は、巻き込まれ型のサイコものを絡ませた、そういった単純なネタかと思っていたけど、もっと壮大な仕掛けがどんどんと現れて、なかなか面白かった。
 カート・ラッセル主演。


「草原とボタン」- War Of The Buttons -

 イブ・ロベールの「わんぱく戦争」のリメイク(?)。設定やストーリ的には似たような感じだけど、素朴な感じがやはり面白い。
 アイルランドの風景や村、素朴な人々がいい。子供だけでなく、大人もいいキャラクタが出ていた。


「デッドサイレンス」- Dead Silence -

 イマイチ花が無いけど、地味ながらも意外に面白かった。
 ろう学校の教師、生徒を人質に立て篭った脱獄囚とFBI捜査官の攻防。手話を使った通信や、要求との駆け引きが、緊張感があって面白い。手話のトリックももっと面白くなったと思うし、各キャラクタの人物像など、もうちょっと深く描いてもいいと思った。イマイチ、練りが足りない部分が多いのが残念。
 でも、どんでん返しの仕方もなかなかよかった。

 おなじ聾唖者を扱った映画「愛は静けさの中に」のマリー・マトリンが先生役で出ている。


「ラブ&ポップ」☆

 「エヴァ」の庵野秀明という定冠詞がつく様になってしまった監督だが、これはアニメでなく実写。原作は村上龍。村上龍は、「トパーズ」以来、思いっ切り嫌いになってしまったので、これは原作も読んでいない。

 しかし、映画として、非常に面白かった。澁谷、女子高生、援助交際などなど設定上、去年の「バウンス KoGALS」とどうしても比べてしまう。「バウンス」もかなりよかったが、それは上回っている。主人公の少女達に感情移入出来る出来ないは別にしても、その感覚みたいな描写は非常に上手く出来ている。特に、他の三人が夢中になれるものを見つけた中、一人、取り残された感覚を持つ主人公の裕美の心象の描き方はよかった。
 多少、説教クサイところは「バウンス」に似たところがある。

 川の中のカット以外は、ハンディカムで撮っている(多分)。前評判でもその使い方の斬新さを聞いていたが、そこは大して感心はしなかった。ロケで撮っている部分がほとんどだが、その制限された中で、機動性を活かして大胆な構図を可能としているところに活躍している気はするけど。

 その後、原作を読む→「ラブ&ポップ」原作の感想


「ロザンナのために」- For Roseanna -

 ジャン・レノ主演、イタリアが舞台だけど米国の映画。
 村の墓地が残りわずか。娘が眠るそばに葬られたいという妻のロザンナの願いをかなえたいジャン・レノ演じるマルチェロが主人公。

 設定が、お涙ものっぽい割にはマルチェロの行動がヘンで笑える映画になっている。それに、不治の病という割には、やたらに元気なロザンナのせいで、どうも映画のポイントが掴みにくくい。
 最後まで、それなりにまとめていて面白いけど、何かポイントがずれた映画だった。


「ピースメーカー」- The Peacemaker -

 ジョージ・クルーニ、ニコール・キッドマン主演。

 ロシアで強奪された核を追う、米軍の大佐と女性科学者。敵役が魅力的でも強力でも無いが、その同期の背景を謎にして引っ張る力が強く、引き込まれる。スピード感があって面白かった。

 最近のテロリストの映画というと、犯人側の心情的な部分はほとんど描かないモノが多いが、これはそれを深く書き込んで成功している。タイトルの「ピースメーカー」という言葉の意味が判る部分で、その深さが見えた。単にテロリストものとして観てしまってはいけない。


「エコエコアザラクIII」

 シリーズ三作目は、監督が佐藤嗣麻子から上野勝仁、黒井ミサが吉野公佳から佐伯日菜子に変わった。監督の手腕は明らかに佐藤嗣麻子の方が上だし、佐伯日菜子も暗さはいいんだけど、台詞回しなんかはよくない。「毎日が日曜日」みたいな役だとピタリとはまるんだけど。

 前作二本が好きだっただけに、これはイマイイチ。ストーリもつまらない割には、無意味な複雑さをもっている。各キャラクタが持っている心理的な背景など、もっと活かせてもよかったのに。まあ、全体に高校演劇部レベルのチンケな演技、撮影、セットで、ストーリも退屈なので面白い訳はない。

 最初のシーンからミニの白衣は出てくるは、セーラー服姿、体操着姿のオンパレードで、制服フェチビデオの様な気がする(^^;)。


「タンゴ・レッスン」- The Tango Lesson -

「オルランド」のサリー・ポッターが、自信で監督、脚本、主演をするというのが、なんとも意外。

 タンゴの名手パブロの踊りに魅せられたサリーが、彼にタンゴを習い、彼自身にも引かれていく。まあ、そういう色恋沙汰はあるんだけど、とにかくタンゴの美しさに見とれていれば、それで面白い映画。

 最初の方で、サリー自身が書く脚本のイメージを入れたり、パブロを使って映画を撮る話が出てくる辺りでは二重構造、あるいは自己言及という複雑な面白さを持っているのが、ちょっといい。パブロ・ベロンとサリー・ポッターの関係は実話だという事。


「グリッドロック」- Gridlock'd -

 ラッパーのトゥパック・シャクールが主演。ドラッグ絶ちを決めた二人が、延々と役所をたらい回しにされたあげく、殺人事件にまで巻き込まれ、なんだかんだという話なんだけど、結構面白い。役者が魅力的だし、出てくる奴らはみんなどうしようもないのばっかりだけど憎めない、ブラックなジョークも小気味よく聞いている。役所で待たされてばかりいる割には、スピード感もあって飽きさせない(^^)。

 トゥパックが射殺された事件は、昨年の音楽界でも大きなニュースだった。


「ハッピーブルー」- The Pallbearer -

 大学は出たけれど、母親と二人暮らし、就職もせずにさえない生活を送るトムが主人公。記憶にない高校時代の友人の葬式に出る事をきっかけに、昔の憧れの女性との再会やらなんやら…。

 トムの不思議な雰囲気がいい。
 ヒロインは「エマ」に出ていたグウィネス・パルトロワ。あんまり印象残らない人だった(^^;)。


「北京原人 Who are you?」

 スピルバーグの「ジュラシック・パーク」、米国でベストセラーになった「ネアンデルタール」をパクって、大ヒットを狙った映画…なんだろうか??

 北京原人を現代に復活させる、生命や自然を人間が扱う事の畏敬の念など、「ジュラシック・パーク」に似たテーマであるし、「もののけ姫」にも近い。
 まあ、そういう気構えはいいとしても…話は壮大だが、綿密さはまるでない。こういう部分がまるでダメ。どうやって骨からD.N.A. を取るんだ(「ジュラシック・パーク」では琥珀を買い集めて、あれほど苦労したってのに)。それも三人の北京原人がどうやって出来るんだ。なんで宇宙でやるんだ。そもそも時間逆行ナントカというのは、なんだ。もしかしたら、それって北京原人作るより凄いんじゃないのか。
 まあ、こんな事考えてもしょうがないんだけど(^^;)。

 こんなしょうもない映画にひっぱり出されたジョイ・ウォンも可哀想だけど、そんな映画で脱いでしまった、それも大した必然性もなく脱いだ片岡礼子が一番の犠牲者でしょう。


「ノーマ・ジーンとマリリン」- Norma Jean And Marilyn -

 監督はTV界出身のティム・フェイウェル。

 モンロー映画は多いけど、精神的に不安定だったというストーリをさらに膨らませて、多重人格まで暗示しているところがこの映画のポイント。題名からそれが判ります。

 この映画はモンローの多重人格性を、二人の女優を使って、映像的に表現しているところがちょっと斬新。ホントに多重人格かどうかは知らないけど。
 ディマジオとの結婚、「七年目の浮気」の撮影現場、ケネディとの出会い、ストーリ的には知られている事で、目新しさはないけど結構面白かった。


「世界中がアイ・ラブ・ユー」- Everyone Says I Love You -

 ウディ・アレンがミュージカルというのが意外だったが面白かった。この数年、彼のはあまり面白いと思わなかったのだけど。
 ワイヤーワークや、おまけに合成どころか、モーションキャプチャまでハイテクを駆使しているのが面白い。


「モスラ2 海底の大決戦」

 自分の趣味としては合わないけど、考えさせる部分が多いし、それが成功しているのが判る。そのポイントというのは、小さく効果的という事かな。

 マーケティングの効果か、完全に子供に的を絞っている映画作りをしている。話を壮大にしない。前回の「モスラ」もそうであるが、基本的に怪獣同士のバトルは人里離れた場所で、局所的に、人知れず行われる。都市でやると、自衛隊は出さないといけないは、逃げる群衆、ミニチュアセットと金がかかるから、そういう脚本はかかない。「ガメラ」新シリーズみたいな本物指向ではなく効率的に儲けようというのが、凄く賢い。
 おまけに舞台を沖縄にして、沖縄美少女系を主人公にすると所なんか、マーケティングを心得ている。主人公は子供で、当然観客対象も子供のみに絞り、感情移入しやすい作りになっている。

 金がかかるセットはCGで合成しているし、爆発シーンなんかも、部分的に出来合いのエフェクトを重ねているんじゃないかなあ。MacのAfter Effectを使っているんじゃないかと思うシーンもあった。(映画中にもMacとインターネットが活躍する)

 映画的面白さはゼロとしても、今の邦画に必要な効率的映画作りとしては、かなり勉強になる所が多かった。そういう目で観ると、ちょっと面白いかも。


Movie Top


to Top Page