2002年8月


「海辺の家」☆

 アーウィン・ウィンクラー監督、マーク・アンドラス脚本、ケビン・クライン、クリスティン・スコット=トーマス、ヘイデン・クリステンセン、ジーナ・マローン、メアリー・スティーンバーゲン。

 主人公ジョージ・モンロー(ケビン・クライン)は42歳で建築デザイナー、元妻のロビン(クリスティン・スコット=トーマス)はすでに再婚、子供はドラッグに溺れた息子のサム(ヘイデン・クリステンセン)。20年勤めた建築事務所を解雇され、さらに残り三ヶ月の命と診断される。ジョージは自分の人生を見つめ直し、息子のサムと向き合うため夏の間に一緒に家を建てる事に…。

 面白かった。しつこく泣かせようとはせず泣かせのシーンはほとんど一ヶ所、あっさりしている。それが逆に心にしみる上手い効果を出している。直面する世界の厳しさを描くようで、最終的には悪人のいない性善説的な世界観に落ち着き、純粋な心優しい気分でエンディングを迎えられる素晴らしさ。
 主演のケビン・クラインはいいのは当然として、「スターウォーズ エピソード2」のアナキン役のヘイデン・クリステンセンの反抗的でいながらナイーブな内面を見せる姿はなかなかいい感じ。

「海辺の家」Official Website


「ピンポン」☆

 曽利文彦監督、宮藤官九郎脚本、松本大洋原作、窪塚洋介、ARATA、サム・リー、中村獅堂、大倉孝二、竹中直人、夏木マリ、荒川良々。
片瀬高校卓球部のペコ(窪塚洋介)は上海ジュニアチームのチャイナに完敗、インターハイ予選では幼なじみの海王学園アクマ(大倉孝二)にも破れる。一方、ペコの幼なじみスマイル(ARATA)はコーチ(竹中直人)の元で実力をつける…。

 原作に思い入れが強い人が多いので心配だったが、その原作を上手くまとめ上げている。細かい部分が省略されているのは残念だけど(コーチとスマイルの勝負なんか好きだったが)、ほぼ満足。
 竹中直人は浮きすぎでダメ、部長を原作とイメージが違う荒川良々にしたのは結果的には大成功、いい味が出ている。窪塚はちょっと高一では苦しいが、一方、ARATAはさらに年上なのにナイーブな高校生に上手くはまっていて見事。「ディスタンス」よりさらにいい演技をしている。ドラゴンの中村獅堂もいい、"笑止"には笑わせてもらった。
 印象的な構図、セリフはすべて原作によっかかっていて、まるで原作を絵コンテに使っている感じがするけど、結果的にはイメージを崩さなくて成功している。

「ピンポン」Official Website


「アイス・エイジ(日本語吹き替え版)」- Ice Age -

 クリス・ウェッジ監督、声優:レイ・ロマーノ、ジョン・レグイザモ、デニス・リアリー、日本語版声優:山寺宏一、太田光、竹中直人。

 二万年前、氷河期を迎え多くの動物が南へ向かっている頃、孤独を好むマンモスのマニーは何故か北へ向かい、ナマケモノのシドは身の安全のためにマニーに付きまとう。マニーは偶然助けた、人間の赤ちゃんロシャンを親へ返しに行く事にするが、それを狙うサーベルタイガーのディエゴと共に行動を共にする事になる…。

それぞれ違う思惑の三匹の行動が絡み物語は意外に複雑。さらにドングリを追いかけるスクラットが、いい味を出していて、テンポと笑いを与えていた。なかなか楽しめた。CGの技術としては、ディズニーには遠く及ばないが、満足。
 爆笑問題の太田光の吹き替えが予想以上に上手いのには驚かされた。

「アイス・エイジ」 Official Website


「スクービー・ドゥー(日本語吹き替え版)」 - Scooby-Doo -

 ラジャ・ゴズネル監督、マシュー・リラード、サラ・ミシェル・ゲラー、リンダ・カーデリーニ、フレディ・プリンズ,Jr.、ローワン・アトキンソン。日本語版声優:長島雄一、岡野浩介、子安武人、園崎未恵、藤原啓治、渕崎ゆり子、岩崎ひろし。

 怪奇事件専門の探偵社「ミステリー社」のメンバーは、リーダーでナルシストのフレッド(フレディ・プリンズ,Jr)、お色気担当ダフネ(サラ・ミシェル・ゲラー)、頭脳派フェルマ(リンダ・カーデリーニ)、憶病者で変わり者のシャギー(マシュー・リラード)、その愛犬スクービー。ある事件で解散したミステリー社だが、人気のリゾート地スプーキー島のオーナー(ローワン・アトキンソン)からの依頼で再び力を合わせる事に…。

「トムとジェリー」などのハンナ=バーベラ・プロダクションの大人気キャラ、らしいがまるで知らなかった。その有名キャラの前提で最初っから飛ばした展開(「007」のオープニングみたい)でちょっとついて行くのに苦労したが、子供向けとして見れば、なかなか面白かった。
 いかにもアニメっぽいそれぞれのキャラがいい。ナルシストなフレッドも笑えるし、ファッション命のダフネもいいんだけど、メガネにタートルネックにミニスカートのオタクなキャラのフェルマもなかなかいい味。逆に主人公スクービーの方が目立ってない感じ。

Cartoon Network Scooby-Doo


「トータル・フィアーズ」- The Sum of All Fears -

 フィル・アンデン・ロビンソン監督、トム・クランシー原作・製作総指揮、ベン・アフレック、モーガン・フリーマン、ジェームズ・クロムウェル、リーヴ・シュライバー、アラン・ベイツ、ブルース・マッギル。

1973年第四次中東戦争、核爆弾を積んだイスラエルの戦闘機がイラン高原で撃墜される。29年間埋もれていた核爆弾は武器商人の手を経て米国に持ち込まれる。一方、ロシア核弾頭解除作業の査察で、CIA情報分析官ジャック・ライアン(ベン・アフレック)は科学者が三名少ない事に気付く…。

 原作クランシー自身が製作総指揮で、現在の社会情勢に合う様に原作から上手くストーリを変えている。それでも、映画化によりやや単調になっているし、原作のマニアックな書き込み、特に核物理学を使った兵器の詳細など欠けているのはちょっと寂しい。ラストは平凡な作りではあるが、盛り上げ方はまあ上手い。
 主たる物語より、平行して動く工作員ジョン・クラーク(リーヴ・シュライバー)の活躍が、いいテンポを与えてくれていた。

「トータル・フィアーズ」Official Website


「スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃」- Star Wars Episode II:Attack of the Clones -

 ジョージ・ルーカス監督脚本、ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ヘイデン・クリステンセン、クリストファー・リー、サミュエル・L・ジャクソン、フランク・オズ、イアン・マグダーミド。

「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・オブ・メナス」の10年後、数多くの惑星、企業同名の間の分離主義運動は銀河共和国の脅威となり、クローン戦争へと発展する。19歳となったアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)は、パドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)の護衛として再会する…。

 ストーリ的には繋ぎという印象で、インパクトが弱い。ラブストーリ的には中途半端だし、アナキンがダークサイドに引かれている様子がそれ程上手く出ているとは思えない。それでも映画としては充分面白い。まあ今回はヨーダの恐ろしい程の強さが見られただけで許せるかも。ヨーダはあんなに速く動けるのになんで杖ついて歩いているの??

「Star Wars」Official Website


「esエス」

監督:オリバー・ヒルツェヴィゲル監督、マリオ・ジョルダーノ脚本、モーリッツ・プライプトライ、クリスティアン・ベッケル、オリバー・ストコフスキー、ユストゥス・フォン・ドーナニー。

雑誌記者をやめタクシー運転手をしていたタレク(モーリッツ・プライプトライ)は、大学心理学部が出した新聞広告、2週間の心理実験被験者(報酬4000マル)を見つけ、極秘潜入レポートで記者への復活を考える。実験は看守役、囚人役に別れ、監視カメラが付いた模擬刑務所で行われた…。

60〜70年代に行われた実験で、心理学の本で何度も読んだ事のあるし、実際の映像も見た事あるのだが、こう通して見せられると映画であっても精神を直接ひっかく様なイヤな感じが付きまとう。誰しもどこかに持つ虐待の感覚、誰しも看守/囚人になる可能性があるという、その生の感覚と向き合わせられる気持ち悪さ。最期は事件にしてしまっているけど、そうじゃない方が怖かったかも。

「光の雨」の連合赤軍の集団心理をちょっと連想させた。

「esエス」 Official Website


「イン・ザ・ベットルーム」- In the Bedroom -

トッド・フィールド監督脚本製作、シシー・スペイセク、トム・ウィルキンソン、マリサ・トメイ、ニック・スタール、ウィリアム・マポーザー

ニューイングランド、メイン州の小さな町カムデン、医師マット・ファウラー(トム・ウィルキンソン)、妻ルース(シシー・スペイセク)は合唱隊の指導、一人息子フランク(ニック・スタール)は大学院の準備でバイト中。フランクの年上の恋人ナタリー(マリサ・トメイ)は暴力夫リチャード(ウィリアム・マポザー)と別居中。ある事件でフランクを失うが、犯人は保釈されてしまう…。

最初、話がどう展開するのか掴めず、事件が起こってからも淡々とした展開にちょっと戸惑う。ラストに向かっては繊細な心理描写が光っていて魅了された。トム・ウィルキンソンとシシー・スペイセクの押さえた演技が、夫婦の関係を上手く演出している。
怒りの持って行き方が正しいのかちょっと疑問には思う。
監督は「アイズ・ワイド・シャット」に出演した俳優で初監督作品。

「イン・ザ・ベットルーム」」Official Website


「タイムマシン」- The Time Machine -

サイモン・ウェルズ監督、H.G.ウェルズ監督、ガイ・ピアース、サマンサ・マンバ、ジェレミー・アイアンズ、シエナ・ギロリー、オーランド・ジョーンズ。

科学者アレクサンダー・ハーデゲン(ガイ・ピアース)は、プロポーズの日に恋人のエマ(シエナ・ギロリー)を失う。アレクサンダーは4年間の研究の末についにタイムマシンを完成させ、エマの命を助け様とするが失敗。失意のアレクサンダーは未来に飛び2037年に月の崩壊を見る。さらに80万年後、人類の生き残りイーロイ族に助けられるが、天敵のモーロック族に襲われる…。

なんとも詰まらなかった。時間旅行中の映像だけが唯一いいと思った所、予告編で見られるけど。原作からの変更はいい方向には行っていない。タイムパラドックスに関しては曖昧な答えしか得られないし。
ガイ・ピアースは「メメント」ではいい感じだったがまったくサマになっていない。俳優としての華が感じられない。

「タイムマシン」 Official Website


「バーバー」- The Man who want's there -

ジョエル・コーエン脚本監督、製作・脚本:イーサン・コーエン製作脚本、ビリー・ボブ・ソーントン、フランシス・マクドーマンド、マイケル・バダルコ、ジェームズ・ガンドルフィーニ、キャサリン・ボロウィッツ、スカーレット・ヨハンスン、ジョン・ポリト。

1949年北カリフォルニア、サンタ・ローザ。エド・クレイン(ビリー・ボブ・ソーントン)は妻ドリス(フランシス・マクドーマンド)の兄フランク(マイケル・バダルコ)経営の床屋で働く。ドリスはボスのデイブと浮気関係。ある日、床屋を訪れたセールスマンのクレイトン・トリヴァー(ジョン・ポリト)はエドに儲け話を持ちかけ、エドはデイブを恐喝することに…。

2001年カンヌ国際映画祭最優秀監督賞、前評判は高く、コーエンらしい皮肉や、妙な感覚は楽しめるが中盤ちょっと退屈だった。ラストにかけて予想出来ない展開がコーエンらしい。ソーントの無口な演技は映画にぴったりはまって光っている。
しかし、「オー・ブラザー」といい、コーエン兄弟ではセールスマンは常に災いなんだろうか。

「バーバー」Official Website


「チョコレート」- Monster's Ball -

マーク・フォースター監督、ビリー・ボブ・ソーントン、ハル・ペリー、ヒース・レジャー、ピーター・ボイル、ショーン・コムズ、モス・デフ、ミロ・アディカ、ウィル・ロコス、マーク・フォースター。

ジョージア州、州立刑務所の看守ハンク(ビリー・ボブ・ソーントン)は父バック(ピーター・ボイル)に似て保守的で差別主義者。ハンクの息子ソニー(ヒー ス・レジャー)は新米看守、死刑囚マスグローヴ(ショーン・コムズ)の死刑執行でミスでハンクに罵倒される…。
マスグローヴの妻レティシア(ハル・ベリー)とハンクの人生が交差、ハンクは忌み嫌っていた黒人女性に魅かれていく…。

「バーバー」と連続して観たのでまるでソーントン・デイだった。ストーリを事前にほとんど知らなかったので、淡々とした展開でいながら、深い心理描写に魅かれた。ちょっと偶然が重なり過ぎる気がするけど。喪失、親子関係、差別さまざまな思いの交錯し方が絶妙。
終わりは静かで、不思議な余韻を持った映画だった。

原題の「Monster's Ball」は死刑執行人が死刑前夜にするパーティーの意味。邦題の「チョコレート」はハンクの好きなアイスクリームや肌の色に引っかけているんだろうけどちょっと頂けない。


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