2002年2月


「息子の部屋」- La Stanza Del Giglio -

 ナンニ・モレッティ監督出演、ラウラ・モランテ、ジュゼッペ・サンフェリーチェ、ジャスミン・トリンカ。

 精神分析医ジョバンニ(ナンニ・モレッティ)、その妻パオラ(ラウラ・モランテ)、息子アンドレ(ジュゼッペ・サンフェリーチェ)、娘イレーネ(ジャスミン・トリンカ)のごく普通の家庭。ある日、事故で息子を失う。それを乗り越えていく姿を淡々と描く。ちょっと「普通の人々」を連想させる。

 全体に押さえた表現は上手いんだけど、手紙の相手の登場あたりから、文化的な差の方が大きく感じてしまった。ブライアン・イーノの音楽、はなかなかにくい使われ方だった。悪い映画ではないけど、去年の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と同じ、カンヌ・パルムドールを取るほどかなあと思う。

「息子の部屋」Official Website


「マリー・アントワネットの首飾り」- Affair of the Necklace -

 チャールズ・シャイア監督、ヒラリー・スワンク、サイモン・ベイカー、エイドリアン・ブロディ、ジョエリー・リチャードソン、ジョエリー・リチャードソン。

 フランス革命のきっかけとなった王室最大のスキャンダル事件の実話がベース。ヴァロア家の末裔ジャンヌ・ド・ラモット伯爵夫人(ヒラリー・スワンク)は断絶した家名を取り戻すために、宮廷のジゴロ、レトー(サイモン・ベーカー)の協力を得る。宰相を目指しながらアントワネット(ジョエリー・リチャードソン)に嫌われる権力者ロアン枢機卿(ジョナサン・プライス)の欲望、タイトルになっている豪華のダイヤの首飾りを利用する…。

 客層は半分が「ベルサイユのばら」ファン、半分が豪華ダイヤを見たさのおばさんと言った感じの、ちょっと不思議な構成。豪華絢爛のフランス宮廷文化、そこに巣くう人間の欲望、さらにフランス革命という歴史的事件と、それなりにうまく出来ているけど、ちょっと華に欠ける気はする。

「マリー・アントワネットの首飾り」Official Website
「ヴェルサイユ宮殿」Official Website


「ラットレース」- Ratrace -

 ジェリー・ザッカー監督、ローワン・アトキンソン、ウーピー・ゴールドバーグ、ジョン・クリース、キューバ・グッディングJr.。

 大富豪ドナルド・シンクレア(ジョン・グリース)により、ラスベガスのスロットマシンから出た6枚のコインで集められた6組の男女。ニューメキシコのシルバーシティ駅のロッカーに最初にたどり着いたものに200万ドルの賞金が与えられるというレースが始まる。乗り物は飛行機、気球、バス、ヘリコプター、さらに嫌がらせ、破壊工作、妨害が続く…。

 予告ではMr.ビーンことローワン・アトキンソンが主役と思ったけど、実は前半はほとんど動きが無い。好感度が高い見習い弁護士ニック(ブレッキン・メイヤー)とトレイシー(エイミー・スマート)が主役と思ったがそうでもない。それぞれの役が平均的に、いい味で笑わせてくれる。
 ジェリー・ザッカーの「フライング・ハイ」、「裸の銃を持つ男」よりはギャグとして高尚、かつ楽しめる。ラストはちょっと教育的すぎるかもしれないが、ま、いいか。

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「プリティ・プリンセス」- The Princess Diaries -

 ゲーリー・マーシャル監督、アン・ハサウェイ、ジュリー・アンドリュース、ヘクター・エリゾンド、ヘザー・マタラーゾ、キャロライン・グッドール、ロバート・シュワルツマン
 
 内気でさえない高校生のミア(アン・ハサウェイ)、親友は毒舌家のリリー(ヘザー・マタラーゾ)。ミアは母親のヘレンとの二人暮らし(キャロライン・グッドール)。突然、祖母のクラリス(ジュリー・アンドリュース)により、ミアはジェノヴァ王国の王位継承者である事を知る…。
 
 ポスト"ジュリア・ロバーツ"としてのアン・ハサウェイ、シンデレラ・ストーリの直球勝負のホントにプリンセスという設定。おまけに邦題では「プリティ・ウーマン」に対抗した題名に変わっているし。(ついでに「プリティ・ウーマン」のホテル支配人がこの映画のジョー役ヘクター・エリゾンド。
 
 ちょっと直線的な能天気さと道徳観にはひっかかるものがある。そもそも、ドジで内気で髪の毛ぼさぼさでメガネだけど、最初からミアはどう見ても美人。プリンセス教育で生まれ変わるのは、いかにもみんなの期待のプリンセス像。こんな単純でいいのか…。リリーがプリンセスだったら、設定は成り立つのか…。
 そのリリー役、「ウェルカム・ドールハウス」のヘザー・マタラーゾは相変わらずいい味出している。素晴らしいバイプレイヤー。彼女のお陰で、それなりに楽しめた。

「プリティ・プリンセス」 Official Website


「バンディッツ」- Bandits -

 バリー・レビンソン監督、ブルース・ウィリス、ビリー・ボブ・ソートン、ケイト・ブランシェット、トロイ・ガリティ、ボビー・スレイトン

 オレゴンの刑務所から脱獄した二人、大胆不敵でタフガイのウィリソン(ブルース・ウィリス)、思考型で神経質なテリー(ビリー・ボブ・ソートン)。メキシコでの新生活を夢見て、「お泊まり強盗」として有名になるが、退屈な夫から逃げてきた主婦ケイト(ケイト・ブランシェット)と知り合い…。
 
 警官に囲まれた強盗中での回想から始まるが、オチが読めるのがちょっと早すぎ。中盤の展開はかなり退屈。一番面白かったのは二人のパロディっぽい変装姿。ウィリスのカツラ姿は笑える。
 「エリザベス」「ギフト」、最近では「耳に残るは君の歌声」と多彩な演技を見せるブランシェットは凄いと思うけど、今回は魅力が無かった。

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「フロム・ヘル」 - From Hell -

 アレン&アルバート・ヒューズ監督、アラン・ムーア原作、ジョニー・デップ、ヘザー・グラハム、イアン・ホルム、ジェイソン・フレミング

 1888年のロンドン、スラム街で娼婦を次々と襲う"切り裂きジャック"事件を追うアバーライン警部(ジョニー・デップ)は娼婦メアリ・ケリー(二人は実在の人物)に出会う…。
 ラブロマンスとしても、ミステリーとしても中途半端。阿片による幻視、エレファントマンの登場、フリーメーソンの絡ませ方などは雰囲気だけで無意味。時代や雰囲気が「ヴィドック」に似た所があるが、こっちには新鮮さがカケラも無い。
 娼婦仲間で、ヘザー・グラハムだけ美人で小綺麗ってのは、なんか違和感ある。
 
 ロンドンに「ロンドン・ダンジョン」という幽霊、殺人、拷問などのテーマ・パーク(?)がある。そこの「切り裂きジャック」ツアーで体験できる暗く霧深い町並みに比べ、この映画ではなんとも現代的な夜で、怖さがなかった。
 
「フロム・ヘル」 Official Website


「ムッシュ・カステラの恋」- Le Gout des Autre -

 アニエス・ジャウイ監督脚本出演、アンヌ・アルヴァロ、ジャン=ピエール・バクリ
 中堅会社の社長カステラは、エリートの経営コンサルタントとは折り合いが悪く、保険会社から派遣されたボディ・ガードに監視され、妻は犬に愛情を愛情を注いでいる。つきあいで出かけた姪が出るラシーヌの古典劇で惚れ込んだ女優は、断ったばかりの英語の教師だった…。
 
 仏セザール賞で2001年度の作品賞や脚本賞ほか主要4部門を受賞作。フランスでは400万人以上が見た国民的映画、というのはちょっと不思議。まあ面白いのではあるが。
 メインの恋物語よりは、脇役のボディ・ガードの恋物語の方がちょっと面白い。メインの方も、さすがに最後のまとめ方は素晴らしいけど。
 カステラの無骨さと、周りのスノッブさの対比をどう捉えていいものか判りにくい。
 フランス映画祭の時は「他人の味」の邦題。


「ベン・ハー」- Ben Hur -

 ウィリアム・ワイラー監督、ルー・ウォーレス原作、チャールトン・ヘストン、スティーブン・ボイド、ジャック・ホーキンス,ハイヤ・ハラリー
 
 紀元26年、ローマ帝国占領下のユダヤの都エルサレム。新しい総督と共にやってきた指揮官メッサラ(スティーブン・ボイド)、幼なじみの王族当主ジュダ・ベン・ハーと再会する。ある事件からベン・ハーは反逆罪に問われ、奴隷となる…。史上最多、アカデミー賞11部門受賞。
 
 この時代に作られたスペクタルというのは、のびのびとしていていながら壮大、ホントにいい。小手先の技のスピード感に頼っていない。面白かった。
 また、ラストの方、キリストの磔となると何とも違和感があるのも同じ印象。「十戒」、「天地創造」などとごっちゃになってしまう。
 
 ル・テアトル銀座のテアトル東京クラッシックという事で、テアトル東京(いい小屋だった)のヒット作の上映。それはいいけど、ル・テアトル銀座のイスはこの長時間には耐え難い。映画向けには出来てない。

「ベン・ハー」 Official Website


「化粧師/KEWAISHI」

 田中光敏監督、石ノ森章太郎原作、椎名桔平、菅野美穂、池脇千鶴、柴咲コウ、佐野史郎、いしだあゆみ。
 大正時代の東京下町の化粧師の小三馬(椎名桔平)。天麩羅屋の一人娘青野純江(菅野美穂)は小三馬に弟子入り志願。また小三馬のお得意様、呉服屋の女将で演劇好きの三津森鶴子(いしだあゆみ)の元で働く沼田時子(池脇千鶴)が文字を覚えようとするのを小三馬が助ける…。

 ストーリ的にはイマイチ。一応、小三馬の秘密ってのがあるんだけど、ストーリを引っ張れる程の内容じゃないし。白粉クサイ映画のはずが、なぜか椎名桔平のサービスカット満載だったりして不可思議。
 菅野美穂は悪くないけどちょっと浮いてる。池脇千鶴は「大阪物語」の主演の子だと後で知ったが印象が薄い。逆に印象が濃い、いい役をもらっている仁科貴(川谷拓三の長男)は麻薬で捕まったりして、まったくもったいない。
 原作は石ノ森章太郎「八百八町表裏・化粧師」。

「化粧師/KEWAISHI」Official Website


「コンセント」

 中原俊監督、田口ランディ原作、市川実和子、村上淳、つみきみほ、木下ほうか、小市慢太郎
 金融関係のフリーライター朝倉ユキ(市川実和子)は、一人暮らしの兄貴之(木下ほうか)が腐りはて餓死していた事を知る。部屋にはメッセージのようにコンセントにつながれたままの掃除機。仕事仲間の木村(村上淳)などの体に死のニオイを感じ、あらたな感覚に目覚めていく頃、大学の同窓生、律子(つみきみほ)に偶然出会う…。

 「秘密の花園」をこよなく愛する身としては中原俊なら観ねばなるまいと思いつつも、なぜこんな映画という疑問も。でも、もっとオカルトがかっているのかと思ってたら、そうでも無いのか。ちょっととらえどころは無かったが役者はよかった。一度見たら忘れられない印象的な市川実和子はもちろん。演劇畑の役者が多い、癖ありすぎかなの木下ほうか、精神科医の山岸役(「ココニイルコト」でもよかった)の小市慢太郎、消毒清掃会社の作業員の角を演じる斎藤歩など。
 田口ランディの原作は未読、

→ 「コンセント」Official Website


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