'97年3月


「仄暗い水の底から」
鈴木光司 角川書店

 「リング」「らせん」の鈴木光司によるホラー短編集。全体に水をテーマにした話で、貯水槽、夢の島、お台場などに日常的ではあるけど、都市の隙間の中にある恐怖感を掘り下げたものが多い。中にはホラーでないものもあるが。
 今まで長編しか読んだことないので、どうも短編では物足りない感じがした。それなりに読ませるけど、ちょっとアイデアも不足しているかな。


「オトナのハッカー読本」世界暗黒電脳列伝
クーロン黒沢、レバノン田中、花井邦春、ポッチン下条

「パナップル・ヘッド」
吉本ばなな 幻冬社

 ananに連載していたエッセイ50編のまとめ。ananを読んでいて、最後のページになって、リラックスした気分で読むちょっとしたエッセイにはいいけど、まとめて読むもんじゃないな。内容的にも、個人的にはあんまり面白くなかった。彼女の小説は好きなんだけど。


「看護婦という生き方」 別冊宝島305
宝島社

 数年前の別冊宝島「看護婦の世界」の続編というか、フォロー的な内容。ここ数年の変化とかうまくまとめてある。二交代制実施とか、准看護婦制度廃止、コメディカルとの主導権争いなどなど。
 もし、「おたんこナース」を愛読しているなら、必読だと思う(^^)。


「アジア亜細亜-夢のあとさき」
日比野宏 講談社文庫

 前作に「アジア亜細亜-無限回廊」という一冊があるらしいが、そちらは未読。
 アジアの貧乏旅行の本は多いけど、この本では特にアジアのイカサマ野郎たちの話が多くて、これが面白い。勉強にもなる。そんな経験の中でも、アジアを愛している著者はかなり人間愛に溢れた人物かも。
 この本も、猿岩石便乗モノかな。

追記)その後「アジア亜細亜-無限回廊」読みました


「初ものがたり」
宮部みゆき PHP文庫


 1995年出版の文庫本化。江戸の下町で起こる事件を本所深川の岡っ引きが謎解きをしていく、ミステリー+人情もの。
 推理自体を楽しむよりも、季節季節の江戸の生活などの雰囲気の方が楽しめる。特に、キーとなる稲荷寿司の屋台で供される食べ物の数々は、実に美味しそう。


「やがて悲しき外国語」
村上春樹

 なかなか面白い。村上春樹のエッセイは安心して読める。知的だし、視点が面白いし、根底では博愛主義な人みたいだし。
 「やがて悲しき外国語」は外国で生活する日本人がぶつかるちょっとしたエピソードが多い。そんな所から日本と米国の文化批評をしている風もあるけど、ま、それほど肩を張らない気軽さがある。


「秋の花」
北村薫 創元推理文庫

 北村薫「空飛ぶ馬」、「夜のセミ」に続く、<私>シリーズの第三作。メンバーも同じ、噺家春桜亭円紫、正ちゃん等など。
 シリーズ初の長編で、それに初めて死人が出る。高校の文化祭の準備中に、屋上から転落死した女子高生。その謎解きも鮮やかだけど、この小説自体の良さは、事件が明らかになった、その先に視点がある所でしょう。ここは、北村薫らしい優しさがあって素晴らしい。


「江戸のビジネス感覚 」
童門冬二 朝日新聞社

 江戸モノの本は多いけど、この本がちょっと変わっているのは江戸時代の商業に着眼点がある所。日経ベンチャーに書いていたものに加筆しているらしい。だから、ちょっとビジネスマンのおじさん臭いけど、でも江戸研究の本としては面白い。
 江戸の商業活動をCI活動、PR活動、リサイクル、ベンチャー等という観点で語っていく。


「イタリアからの手紙」
塩野七生 新潮文庫

 歴史小説で有名な塩野七生のエッセイ。イタリアものだから読んだのだけど、まあ、ちょっとおばさんっぽくて面白くなかった。
 ローマの下水は二千年間掃除していなかった、という話は凄かったけど。


「大江戸観光」
杉浦日向子 ちくま文庫

 江戸モノを色々と読んでいる。杉浦日向子はやはり欠かせない。「ポップティーン」から「歴史読本」まで、色々な所に書いているのを集めたもので、実に雑学的でまとまりが無いけど、でも面白い。
 社会思想社現代教養文庫「江戸の戯作絵本」って手に入るだろうか?


「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」
ロバート・フルガム 河出文庫

 ベストセラー本ですが、はじめて読みました。ちょっといいエッセイである事は確かだけど、それ以上でもそれ以下でも無い。このほどほどの程度の良さがベストセラーの要因であったのでしょうけど。


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