古代ギリシアにおきましては、それぞれの都市国家が独自の暦を使っており、 「どうなってんのこれ!」と専門家が頭を掻き毟っている最中であるということです(^^;故にギリシア暦に関しての本はや月(Month)を更に細分して呼ぶ方法は良く調べられませんでした。 太陰太陽暦に付いては太陽と月の関係を示す 「メトン周期」や「カリポス周期」が発見されておりまして、 暦はバビロニアと比べましてほぼ同等(端数処理の問題程度)であったようです。 ここで言うギリシアとは恐らくヒッパルコスやプトレマイオスなどよりはるか昔のお話です。
まずは時間の惑星の支配の順序であります。古代ギリシアでは1日を24時間に区分して 各時間を支配する惑星を「平均運動の遅い順」に当てました。 「土星・木星・火星・太陽・金星・水星・月」の順番になります。次に1日を支配する惑星は、一日の最初に支配が来る惑星がその日の代表となりました。 またその代表惑星がその日1日を支配すると考えたのです。
24時間を7で割りますので余りは3となります。つまり3つおきにその日の支配惑星が巡ってくるのです。 取り敢えず土星から表を作ってみます。
土星 次は木星・火星・太陽 で、太陽 太陽 次は金星・水星・月 で、月 月 次は土星・木星・火星 で、火星 火星 次は太陽・金星・水星 で、水星 水星 次は月・土星・木星 で、木星 木星 次は火星・太陽・金星 で、金星 金星 次は水星・月・土星 で、土星 この順序が現在日本などで使われている週の順序になったようであります。
古典ギリシア語辞典を引きますと曜日に付いては次のように記載されておりました。 但しこれがローマ時代よりも前なのか後なのか、 どの時代に使われていたのかに付いては不明です。 古代ギリシアにおいて実際に週が使われていたと書かれた本には出くわしませんでした。
日 hemera-heliou 太陽神ヘリオス 月 h.selenes 月の女神セレネ 火 h.Areos 軍神アレス 水 h.Hermeos 伝令神ヘルメス 木 h.Dios 大神ゼウス 金 h.Aphrodites 美の女神アフロディーテー 土 h.Kronou 巨神クロノス この表で興味深いのは「日・土・月」です。 太陽神ヘリオス・月の女神セレネ・巨神クロノスは何れも「古層」の神話に属します。 ギリシア神話で太陽神といえば私(^^;じゃなくてアポロン。月の女神はアルテミスで、 クロノスはオリュンポスの十二神の前の世代の神ですね。 このことからギリシア神話でも古層に属するであろう事は想像できます。
ローマ初期におきまして曜日が使われていたかは良く調べられませんでした。 取り敢えず日曜日が週の初めとなった起源に付いては分かりました。ローマでは当初、日にちを月相(新月・半月・満月)でわけて数えておりました。 月の日数が31日の時は「7日をノナエnonae」「15日をイドゥスidus」。
それ以外の月では「5日をノナエ」「13日をイドゥス」と呼びまして 各々の日付はそこから何日前という呼び方をしておりました。特に「idus」はエトルリア語では「分ける」と言う言葉で月の半分の日にちで 月と月を半分に分ける意味があります。 インドのサンスクリット語では「明るくする」と言う言葉で、 半月から満月に向かい月が夜空を明るくするという意味があります。
1日 カレンダエ (calo呼び集める「ラテン語」月を呼んだ日・新月) 2日 ノナエ4日前 . 5日 ノナエ (上弦の月) 12日 イドゥス2日前 . 13日 イドゥス (満月) 23日 テルミナリア (閏日開始前日すなわち大晦日・ターミナルの語源) 24日 メルケドウニス1日 (閏日開始1日目) なんで月を呼ぶのかですが「バビロニア」では、新月は見えないので、 三日月の出現を確認すると司祭達がラッパを吹いて知らせたと言いますし 新年(ニサン)は月とカペラの合(最接近)で観測していたようですね。
カレンダエは「カレンダー」の語源となっておりまして、朔日(ついたち)を言います。 何だか英語でありましたね。うんとローマの1日でしたっけ、 決してありえないという意味でしたか.....(^^;日にちの数え方は1日違っているように見えますが「ローマ人」ですから、 最初に1と数えてしまうのですね。ですから1900年代は20世紀となります。
テルミナリアはローマ神「国境の神テルミヌス」で2月が年の境である年末でした。しかし カエサル(シーザ)が「ふた月」挿入したため現在では 7月以降の月の呼び方がずれてしまっております。
まずローマでの週の始まりはAD321コンスタンティヌス一世の時からです。 ユダヤ暦ではキリストが十字架に架けられたのが金曜日で、3日後に復活しました。 そこで日曜日を「主の日」として「安息日」に制定したのが週の始まりでした。キリストが十字架に架けられた理由の1つに「土曜日の安息日」を破ったため、 と言うものがありますようにユダヤ教では「土曜日が安息日」です。 ちなみにイスラム教ではマホメットがヘジラに逃れたのが金曜日なので 「金曜日がお休み」になります。
曜日 ローマ名 ギリシア名 日 主の日 − 月 ? ? 火 マルス アレス 水 メルクリウス ヘルメス 木 ユーピテル ゼウス 金 ウェヌス プロディーテー 土 サヌトウルス クロノス 上記の様に、惑星に該当する神の名が曜日の名前として使われていたようであります。 キリスト教がローマ国教となった後に、ローマ神話と混在するのは不合理(注1)である面もあります。
サヌトウルスの祭りは12月末に7日間行われ最終日が12月25日(冬至)となっておりました。 キリスト教の最大のライバルであるミトラ教も同じく12月25日が冬至祭でありました。 キリストの誕生日は、ミトラ教などの異教徒を取り込むため、 ここから拝借したものだと考えられております。
冬至はここから日が長くなるように転じるので、太陽が復活する日として重要だったのですね。 復活しなければ永遠の闇夜になってしまうかも知れないからです (この冬至の話はローマ時代よりももっと古い話です)。
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ローマ神話はローマ帝国の起源をも説明するので、 キリスト教と混在しても不思議ではない面もあります
- ●暦と占いの科学・永田久著・新潮選書
- ●時と暦・青木信仰・東京大学出版会
- ●時間と宇宙について。アイザック・アシモフ著。山高昭訳。早川書房
- ●現代こよみ読み解き事典・岡田芳朗。阿久根末忠編著・柏書房
- ○日本史小百科「暦」・広瀬秀雄著・東京堂出版
- ○文明のあけぼの−新書西洋史1・富村傳著・講談社現代新書311
- ○地中海世界−新書西洋史2・弓削達著・講談社現代新書312
- ○ローマ神話の発生−ロムルスとレムスの物語−・松田治著・教養文庫1442
- ○ゾロアスター教の神秘思想・岡田明憲著・講談社現代新書888
- ○旧約聖書略解・日本基督教団出版局
- ○ギルガメシュ叙事詩・矢島文夫訳・ちくま学芸文庫
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