スサノヲは金星か
スサノヲは「嵐の神」とするのが定説であるそうですが、
ここでは金星であるとする異説を紹介致します。


太陽・月・嵐
 イザナギノミコトが禊をした時に生成された三神は、「アマテラス(天照)」「ツクヨミ(月読)」 「スサノヲ」であります。しかしアマテラスが「太陽」・ツクヨミが「月」・ であるのに.末の弟がスサノヲが「嵐」では釣合が取れないですね。アマテラス・ツクヨミが 天体であるならば、スサノヲも又天体、それも金星とする考えを紹介します。

 なぜ天体ならば金星かと申しますと、太陽・月に続いて3番目に明るい天体であるからです。 平均等級は-4.7等星で大変ギラギラと明るい星です。


   
明けの明星・宵の明星
●離隔
離角説明図
内惑星である金星や水星は
外合または内合の位置にある時は
太陽に遮られ又は太陽の光で
原則として見ることはできません。

内惑星は離角にある時が最も見易くなります。


●東方最大離角
スサノヲが高天原に昇ると、やがてアマテラスは天の岩戸に隠れ暗黒になった は、スサノヲは金星であって、その宵の明星が現れて夜になったとも読めます。

●西方最大離角
スサノヲが高天原から地上に追放され、アマテラスは洞窟から出て光明が甦った は、スサノヲはやはり金星であって、暁の明星が太陽の出現とともに姿を消す。 とも読めます。
離角1 離角2 離角3 離角4


では次第に西方地域に目を向けて見ます。

●史記天官書
スサノヲはどうしようもない暴れものとして日本神話に登場します。 古代中国において金星は「太白金星」として兵事を司る神とされていました。

●タタ−ル神話
タタ−ル神話では至高神ユルゲンに逆らって、闇の国へ追放されたエルリクがいます。 天体神話学派のヴィルヘルム・シュミットは弟ユルゲンを明るい月、兄エルリクを 暗い月と解釈(1949)しました。

しかし最近のアルタイ諸属の宗教史研究ではエルリクは金星と見ているようです。 なぜアルタイ語族かと言いますと、日本人は原始アルタイ語族に属すからなのですね。

●シャ−マンの太鼓
アルタイ地方のシャ−マンの太鼓50個のうち「太陽・月・金星」が描かれているものは 38個あったそうで、「太陽の隣に暁けの明星」・「月の隣に宵の明星」が描かれているそうです。

●古代トルコ語
erklig.erlkik.erlikは「男性的なもの」「強力なもの」と呼ばれて、一人の戦士になぞられた暁の明星を指しているそうです。明け方になると星どもを殺す兵士なのですね。

この兵士は一度天における位を失いますが、エルリク・ハ−ンErlik Khanの名で 地獄の神として再び現れます。10世紀には

名称呼び名意味
暁の明星Yaruk Yildizヤルタ.イルディズ 光の星
宵の明星Tcholpanチョルパン輝くもの
羊飼いTchobanチェバン羊飼い

と呼ばれ、宵の明星は羊飼いと混同されSolbanと言う形をとったようです。
(Roux1979 157-158,1984 126)


男性的で力強いエルリクは太陽と月に並ぶ存在で、至高神と争って下界に追放される神でもあります。スサノヲとの類似が多く、スサノヲが金星であった可能性を示唆していると思います。


参考引用
●比較神話学の展望○松原孝俊・松村一男編○青土社
P47〜52 スサノヲは金星か より
この項目は大林太良氏の研究中間報告を、私流に読み砕いたものです。
著書には、読み過ぎである可能性もあるとあると書かれておりましたこと申し添えます。

参考
○神話の系譜○大林太良著○講談社学術文庫

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