エリダヌス座 

★星座のお話へ▲天文民俗学目次へ ■ホームページへ


学名Eridanus
略号Eri
20時の南中月日1月中旬
星座設定者プトレマイオス


簡易星座解説

星座解説



簡易星座解説
●エリダヌス座
 フランスにある実在の川です。パエトーンはアポローンの太陽の戦車に乗らせてもらったのですが 暴走し、太陽が軌道を変えたため地上は集熱地獄になってしまいました。 ゼウスはこの大惨事を止めるため雷電でパエトーンをエリダヌス川に打ち落としたといいます。

 この暴走したときに、太陽の戦車が地表をかすったリビアは焼けて砂漠になってしまったといいます。 


星座解説
●二人の少年
 むかし「エパポス」と「パエトーン」という二人の少年がおりました。

エパポスは大神ゼウスの子、パエトーンは太陽神アポロンの子でありました。 エパポスはオリンポスの山を度々訪れて、ゼウスに色々な事を教えてもらえる事を自慢しました。

 エパポス「な〜パエトーン、君は父親のアポロンにあった事はあるのかい?」

 まだ父親にあったことないパエトーンは、くやしまぎれに、言いました。

 パエトーン「ああ!しょっちゅうだよ。僕も東の宮殿に行って色々教えてもらうよ」

 エパポス「教えてもらうって、どんなこと?太陽の戦車の乗り方とかか?」

 パエトーン「そうさ!」

 エパポスは、意地悪そうな顔をして、

 エパポス「だいたい太陽は丸くて、戦車なんかどこにも見えないじゃないか。 へ。おまえ、うそいってんだろ!」

 パエトーン「君が見ているのは車の片輪だけじゃないか。向こう側にももう1つ太陽があって 戦車はその間に乗っているのさ。そしてあまりに遠くて、まぶしいから見えないだけなのさ。 僕は手綱(たづな)だってとったことがあるんだ。」

 パエトーンは一気にまくしたてました。エパポスは知らない事を言われ、 少しすねたように、こう言ったのです。

 エパポス「へ〜じゃ〜戦車ってことにしてやるよ。でも君の父親が君を戦車に乗せるなんて いう事は信じないよ。だいたい君はアポロンの子供じゃないんじゃないか?」

 パエトーン「じゃ〜証拠をみせてやるよ、これから東の宮殿に行って頼んで見るさ。」

 エパポス「君が手綱をとっている証拠は?なんで君が運転しているとわかるんだ?」

 パエトーン「そうだな。君の家までいったら高度を下げて、家の上を回ってやるよ」

●東の宮殿へ
 と、パエトーンはいったものの、本当は母からお前は太陽神アポロンの子供だと 聞かされているだけで、父アポロンにはあったこともありませんでした。

 パエトーンは父アポロンがどこに住んでいるかも知りません。ただ太陽は東から昇るので、 どこまでも東に行けば、きっと東の宮殿にたどり着ける確信がありました。

 悔し紛れで出た嘘を真にしてやろうと、パエトーンは何日も旅を続けましたが、 ついには力尽き倒れて気を失ってしまったのです。

●約束
 パエトーンが森のはずれの草原で倒れている上空を、 偶然アポロンのお使いカラス(からす座)が飛んでいて、 このままではパエトーンが狼に食べられてしまいそうだとアポロンに告げました。 そしてアポロンはお使いカラスに、パエトーンを東の宮殿まで連れてくるように命じたのです。

 宮殿に連れてこられたパエトーンはやがて気がつき、目の前の玉座にとてつもなく 大きく美しい姿をみました。パエトーンは思わずひざまずいて

パエトーン「父上、息子のパエトーンで御座います」

アポロン「クリュメネの子だな。母や娘達は元気か?」

パエトーン「はい父上、皆息災にしております」

アポロン「お前は何しに来たのだ?そもそも、神の前に出る者の作法は知らないのか?」

パエトーン「あらかじめ招待を受けなければならない作法があるのは心得ております。 しかしゼウスの子エパポスに侮辱を受け、嘘を真にしようと決心したので御座います。 作法を守らなかった失礼はどうかお許し下さい。」

アポロン「・・・わての子やな(^^;・・・
では願いを言って見ろ。何でもしてやろう。」

パエトーン「本当になんでもですか」

アポロン「できることなら、なんでもしてやろう」

パエトーン「では、太陽を曳く戦車を運転させて欲しいのです。

●四頭だての太陽の戦車
アポロン「悪い事は言わない。それだけはやめたほうが良い。」

パエトーン「何故です。今なんでもとおっしゃったではありませんか。」

アポロン「神として誓った以上約束は守る。だがな、お前の身を心配しての 事なのだ。太陽は熱く、馬は気が荒い。私以外には無理なのだ。どうしてもなのか。」

パエトーン「はい、是非とも」

アポロンはもう一度何かを言いかけ、少し間を置いて


アポロン「昔運命の女神が、地が焦土と化し滅びると予言していた事はこの事なのか・・・ それをこの私が・・・わかったよパエトーン。しかし馬の手綱をとるだけで、その軌道は 馬に任せて、お前は決してなにもするな。」

パエトーン「はい、ありがとうございます。」

 パエトーンは喜び勇んで、太陽の戦車に走りよりました。 太陽の戦車はピュロエイス・コオオス・アイトン・プレゴンの四頭の馬に曳かれており、 アポロンはそれぞれの馬を丁寧になでてやりました。

パエトーン「父上、そろそろ空が明るみはじめました。」

アポロン「くどい様だが、絶対になにもするな。もう行くが良い。」

 「では」とパエトーンは馬に出発の合図を送り、太陽の戦車は出発したのでした。

●暴走
 四頭の馬は順当に軌道(黄道)を走り始め、しばらく経った時でした。 パエトーンは案外運転が楽な事に安心し始めました。その内あのゼウスの子エパポスの家が 前方の遥か下に見えたのです。

 パエトーンはエパポスに自分が運転している事を教え様と、戦車の高度を下げて行きました。 さてあとどのくらいだろうと、戦車から体を乗り出して下を見ると、家々の屋根には火がつき、 そして道行く人の衣服に火がついて、煙がもうもうと上がっている所が目に入りました。

 人々はゼウスにあの太陽を何とかしてくださいと祈りを捧げました。 パエトーンはビックリして、急に高度を上げました。すると今度は高度が上がりすぎてしまい、 地上は暗くなり寒さで皆凍りつき始めました。

 人々はゼウスにあの太陽を何とかしてくださいと祈りを捧げました。 この時、四頭の馬は戦車を操縦しているのがアポロンでないことに気がつきました。 四頭の馬は荒れ始め、軌道上にサソリがうようよいることに驚いて、ついには 太陽の軌道を大きく外れて暴走し始めたのです。

●集熱地獄
 軌道を大きく外れた太陽の戦車は、そのまま地上に突進しました。 戦車は一度地上に激しくぶつかり、ぶつかった地上は焼け焦げて砂漠になってしまいました。 これが現在のリビア砂漠です。

 四頭の馬はそれぞれめいめいの方向に走るため、太陽の戦車は、地上をあっちにいったり、 こちにいったり迷走しました。地上は焼け、川の水は干上がり、地や川の精霊達も、 ゼウスに助けを求めました。

 ゼウスはオリンポスの山で、地上が異常なまでに騒々しいので、下界を見下ろしたところ、 太陽の戦車が暴走しているところを見つけました。「アポロンは何をやっているんだ!」と 太陽の戦車の御者を見ると乗っているのはアポロンではありません。

 このままでは全世界が焼き尽くされてしまうと思ったゼウスは雷電を投げ、 太陽の戦車の御者を叩き落しました。

●エリダヌス川
 パエトーンは黒焦げになり、そのままエリダヌス川に墜落しました。 エリダヌス川の水の精女達はパエトーンの無残な亡骸を拾い、川のほとりに埋めました。

 パエトーンの姉妹のヘーリアデス達はパエトーンの死を悲しみ、 パエトーンの墓でいつまでも泣きつづけたそうです。

 やがてヘーリアデス達の体はポプラの木に変わり、流れ落ちた涙は琥珀になり エリダヌス川に沈んだと言う事です。そして今でも川で琥珀が採れるのだそうです。


●川
 エリダヌス座はギリシア神話ではエリダヌス川に結び付けられています。 エジプトではナイル川。バビロニアではユーフラテス川。ローマではポー川と 近くにある川に結び付けられていたようです。

 エリダヌス川では琥珀が採れるので、このお話しが出てきたのではないかといわれております。

●琥珀
 琥珀がどんなのか知らない方は、下記の博物館でみてね。

琥珀博物館


参考引用文献
A1★星座神話クラブ・脇屋奈々代著・誠文堂新光社
A2★ギリシア・ローマ神話辞典・高津春繁著・角川書店
A3★21世紀星座早見ガイド・林完次著・講談社・B1069
A4★星座ガイドブック秋冬編・藤井旭著・誠文堂新光社
A5★『星座の神話』・原恵著・恒星社

B1☆星座手帳・草下英明著・教養文庫・658・c028
B2☆星座の話・野尻抱影著・ちくま文庫・490・476

C1★ギリシャ神話・アポロードロス著・岩波文庫(紀元1−2世紀)
C2★変身物語・オウィディウス著・岩波文庫(紀元前1世紀)
C3★ギリシャ神話英雄伝説・C.キングズレイ著・中央公庫(1856年)
C4★ギリシャ・ローマ神話・T.ブルフィンチ著・ちくま文庫(1855年)
C5★ギリシャ神話・呉茂一著・新潮文庫(昭和44年)

D1★ギリシャ神話小辞典・B.エヴスリン著・教養文庫


★星座のお話へ▲天文民俗学目次へ ■ホームページへ