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学名 Virgo 略号 Vir 20時の南中月日 6月上旬 星座設定者 プトレマイオス
乙女座は豊穣の女神デメテルであるとか、 デメテルの娘で冥界( の王 ハデスの妃( ペルセポネーであるとか、 正義の女神アストライアーであるとも伝えられております。アストライアーのお話はてんびん座ですることと致しまして、 ここではデメテルとペルセポネーのお話をする事に致しましょう。
豊穣( の女神デメテルと 大神ゼウスとの間の娘はペルセポネーと言いました。ペルセポネーはある時ニューサの野原で 花を摘( んでいるときに、 見事な水仙( の花が咲いているのを 見つけて、その花を摘み取ろうとしました。すると水仙のあった場所の地面がバックリと裂
( けて、 そこから黒馬に乗った冥界( の王ハデスが 突然( 現( れて、 ペルセポネーをさらって行きました。
ペルセプネーがいなくなった事に気が付いた、女神デメテルは娘を探しまわりました。 しかし幾ら探しても見つかりません。そしてデメテルは各地を旅して娘を訪ね歩きました。その度の途中で、水車を伝えたり、豆や無花果
( の栽培方法 などを人々に伝えたのだと言われております。そしてようやく娘がさらわれた現場を見ていたものがいると魔女ヘカテに教わりました。 見ていたのは太陽の戦車の馭者
( ヘーリオスでした。ヘーリオスはデメテルにペルセポネーがさらわれた一部始終を話しました。 話を聞きカンカンに怒ったデメテルは、ゼウスの所に訴えに行きました。
デメテル:「ゼウスよ、あなたの兄弟ハデスが私の娘をさらって冥界に連れて行きました。 裁きをお願いします。」ゼウス:「まあ。落ち着きなさい。その話しは聞いている。突然の事で驚いているようだが、 ハデスは我々の兄弟ではないか。またとない良縁ではないか。」
デメテル:「いえいえ。ハデスだけはいけません。あの子は春の子です。 日の光が一筋も入らない冥界になどに行っては、あの子は死んでしまいます。」
ゼウス:「ペレセポネーは仮にも神の娘だ、冥界でも生き長らえる素質ぐらいは持っていよう。」
その時デメテルはゼウスがいつもの雷電ではなく、金銀の素晴らしい細工の 雷電を持っているのに気がつきました。そうか・・・ゼウスはハデスに買収されていたのか。 これでは公平な裁きは期待できないと思いました。
デメテル:「そうですか。本当に娘は返してもらえないのですね。」
ゼウス:「今の怒りがおさまれば、良縁であったとわかるだろう。さあ もう地上に戻ってくれ」
デメテル:「わかりました。それでは頼まれるまでもう二度と戻ってきませんからね」
こうしてデメテルは天界を捨てたのです。
下界に降りてきたデメテルは老女に変じて、エレウシスに来ました。 デメテルはエレウシスの王子の乳母となり、彼を不死にしようと、 夜な夜な赤ん坊を火の中にいれて、死すべき部分を焼き尽くしてしまおうとしましたが、 メラネイラがその場を見て大声を上げてしまったので、赤ん坊は火に焼かれて死んでしまい、 デメテルはもとの女神の姿に戻ってしまいました。そうしている間に、デメテルが天界に戻らないので、作物は実らず、草や木は枯れてしまい、 人々は飢えに苦しむようになり、人々はオリュンポスのゼウスに向かって助けを求めました。
人々の訴えを聞きゼウスは伝令神ヘルメスにデメテルを呼んで来るように言いつけました。
オリュンポスに戻ったデメデルが何か言おうとした時にゼウスはさえぎりゼウス:「まあ、その、私はあまり、その、公平ではなかったようだ」
デメテル:「全く、その通りです。あの子がいない間は作物は実りません」
ゼウス:「もうわかった。ではこう裁定しなおそう。 ペルセポネーは冥界から戻す。但し、ペルセポネーが冥界にいる間に、ひとかけらでも 食べ物が喉を通ったらペルセポネーはもう地上に戻らない。これは 我々が世界を支配する前からの掟なのだ。私でもこれを破るわけにはいかない。」
ゼウスは、まだなにか言い足りないようなデメテルを止め、ヘルメスを呼び この裁定をハデスに伝えるように言いつけました。
さて一方、ペルセポネーはハデスに冥界に連れて行かれ、 何をするにも粗野なハデスに悩まされましたが、 ハデスはやがてペルセポネーに親切に接するようになりました。ハデスはペルセポネーに財宝を贈り、王座を作ってあげたり、ペルセポネーの気を惹こうと それは一生懸命でしたが、 ペルセポネーは「そんな物など欲しくありません。早く私を母のもとへ帰してください。」 と言っておりました。
ハデスはその言葉を聞くたびに苦い顔をして、また贈り物を探しに行くのでした。
それを繰り返しているうち、ペルセポネーはここの生活もそんなに悪いものではないと 思いはじめました。確かに太陽の光も射し込まなく、花もない世界ではありましたが、 誰もが恐れるハデスを右往左往させる力を自分が持っているのだと気がつきはじめました。
冥界の物を食べるともう地上には戻れなくなります。そこでハデスはペルセポネーに 冥界の物を食べさせようと、いつもいつも最高の食事を用意しました。 ペルセポネーは冥界に来て以来ずっと何も食べてないので、お腹が減ってどうしようもなかったのですが、 そんな素振りは見せないで、母のもとに帰るまで何も食べないと言いつづけておりまsた。ある時冥界を散歩している時に、大好きなザクロの実がなっているのを見つけました。 ペルセポネーは辺りをうかがい、誰も見ていないことを確かめるとザクロを3つ食べてしまいました。
丁度その時、ゼウスの裁定を伝えに来たヘルメスが到着した合図の音が聞こえたので、 ペルセポネーはハデスの宮殿に戻りました。
さて、宮殿についたペルセポネーは、従兄弟のヘルメスを見つけました。 そしてその傍らにはハデスがなんとも情けない顔をして立っておりました。ヘルメス:「それではゼウス様の裁定をお伝えする。ペルセポネー、 あなたの母デメテルはあなたに帰ってきてほしいそうです。ハデスは承知してくれました。 それからここでは何も食べていないね。そうか、それなら良い。」
ヘルメスはそう言い終わると、ペルセポネーを抱えて空中へ舞いあがり冥界を後にしました。 その時ペルセポネーは、彼女の世話をしていたアスカラポスがザクロの実を持って、 ハデスの所へ駆け寄るのが見えました。
ヘルメスがペルセポネーを抱えてオリンポスに戻った時には、 すでにハデスが先に到着していました。そしてゼウスはもう裁定を終えていました。ゼウス:「ペルセポネー。お前はザクロの実を3つ食べたのだから、毎年1年の四分の一は 冥界で暮らさなければならない。」
ペルセポネー:「お母様、そんなにお嘆きにならないで。」
デメテル:「お前があんな薄暗く気味の悪いところにいるかと思うと、 私は辛いのよ。私が辛いのだから全てのものが苦しまねばならない。 ペルセポネー。お前があの悪者と一緒にいる間は、花も草もはえないようにします。」
こうして、季節が生まれ、ペルセポネーが冥界に行っている間の冬には、 花も咲かず、草も枯れてしまうようになったそうです。
えっと、本にはザクロを食べた数が3つとか4つとかバラバラで、個数ではなく三粒などと 言う本が有りますので、困りましたが(^^; 取り敢えず3つにしました。そうすれば12ヶ月の内三ヶ月って事になりますでしょ。
おとめ座の一等星スピカは「麦の穂」と言う意味があります。 作物にもよりますが、おそよ3月20日、春分の日の頃、日が暮れてまもなく東の空にスピカが見えます。 この頃までに種を植えると良いのですね。そして、半年後9月20頃には夕方西の空に スピカが沈みます。この頃から刈り入れをすればよいのですね。カレンダーなどが日常ではなかった時代には、おとめ座のスピカは農事の目安になったそうです。
デメデルにはエレウシスに大変大きな信仰がありましたが、 なんだか良く書いた本が見つからないので、またの機会にしようと思います。
参考引用文献
A1☆星座手帳・草下英明著・教養文庫・658・c028
A2☆星座の話・野尻抱影著・ちくま文庫・490・476
A3☆星座神話クラブ・脇屋奈々代著・誠文堂新光社
A5☆仕事と日・ヘーシオドス・松平千秋訳・岩波文庫・赤107-2
A4☆ギリシア・ローマ神話辞典・高津春繁著・角川書店