過去への行進 2022年05月26日
明治政府の野望は、内外に亘っての甚大なる戦争の惨禍を齎し、先の敗戦を以って、潰えたかに見えた。
しかし今、日本国に、"権益"や"膨張主義"が許される余地など、何処にも求めようが無い状況にも拘わらず、明治政府の国家指導層の亡霊に憑かれたように、米国の走狗となって、駆け巡り、機会を狙う。
そう、末無しの‹狡兎死して走狗烹らる›である。
総理大臣伯爵山縣有朋の明治二十三年十二月六日 第一議會(通常)施政方針、「建軍國防の確立と帝國の進路」、「守權線の守禦と利益線の保護」から抜粋引用する。
「されば内治即ち内政は一日も忽にならぬことは勿論申す迄もないことゝ存じます。又是と同時に國家の獨立を維持し國勢の振張を圖ることが最緊要ことゝ存じます。此事たるや諸君及我々の共同事務の目的であつて獨り政府のなすべきことでは御座いますまい。將来政治上の局面に於いて何等の變化を現出するも、決して變化することは御座いますまいと存じます。大凡帝國臣民たるものは協心同力して此の一直線の方向を取つて、比の共同の目的に達することを誤らず進まなければならぬと思ひます。蓋し國家獨立自衛の道に二途あり、第一に主權線を守禦すること、第二には利益線を保護することである。其主權線とは國の領域を謂ひ、利益線とはその主權線の安危に、密着の關係ある區域を申したのである。凡そ國として主權線及利益線を保たぬ國は御座いませぬ。方今列國の間に介在して一國の獨立を維持するには獨り主權線を守禦するのみにては決して十分とは申されませぬ。必ず亦利益線を保護致さなくてはならぬことゝ存じます。今果たして吾々が申す所の主權線のみに止まらずして、其利益線を保つて一國の獨立の完全をなさんとするには、固より一朝一夕の話のみで之を爲し得べきことで御座いませぬ。必ずや寸を積み尺を累ねて、漸次に國力を養ひ又其成績を觀ることに力めなければならぬことゝ存じます。即ち豫算に掲げたるやうに、巨大の金額を割いて、陸海軍の經營に充つるも、亦此趣意に外ならぬことゝ存じます。寔に是は止を得ざる必要の經費である。」
当然にして、"主權線のみに止まらずして、其利益線を保つて一國の獨立の完全をなさんとする"方針は、主権線→利益線→主権線(利益線が主権線となり)という拡大路線とな。望むべくもなく、斯様な身勝手(希望的観測)思考の先途に待ち構えるのは"抵抗運動"であり、頓挫である。
また、明治二十四年二月十六日 第一議會豫算案本會議、「帝國の國是を確立し針路を明かにせん」、「國是の確立と完璧を期す」では、次のように述べている。
「此の二十有餘年の間、日一日も變更することのないものは即ち國是である。而して上下相擧げて希望を共にするものは即ち國是である。今上陛下の祚を践ませられたる以來、其詔勅を拝讀し奉るに、所謂御親征の詔より致しまして、帝國議會開會の勅語に至りますまで、十を以つて數ふるの多きに及びましたが、内には國民保安の道を盡させ給ひ、外には國威を中外に燿かさんことを望ませ給ひたる大御心は終始貫通して變ることのないことで御座います。斯の如き大御心は即ち我が帝國の一定の國是である。故に我が政府の先進諸氏は、此の聖慮を奉戴して、此の與望を擔ひ既往二十餘年間日夜辛苦經營致しまして、本邦百般の制度を立てましたので御座います。」
では、明治外交とは如何なるものなのか。以下、渡邊幾次郎著『明治外交史話』「帝國外交の本義」から抜粋引用する。
今から観れば、余りにも独善に陥り、また夜郎自大過ぎる感を与えるが、今に続く本質を衝いている。
「帝國外交の本義は何處にあるか。その根底となり、その精紳となり、その進路・方向を決定するものは何んであるか。思ふにそれは、明冶維新の精神・目的を恢弘するものでなければならぬ。しからば、明治維新の精神・目的とは何んであるか。それは王政を復古して天皇親政の統一日本を建設し、對外平等を實現して皇威を海外に振張することである。つまり、上下協力、擧國一致して歐米諸國を凌駕する對等平等の帝國を現出するためであつた。それはいふまでもなく、肇國の精神を恢弘することであり、天攘無窮の皇運を扶翼することであるのである。
維新以來の帝國外交は、これ等の目的を達成するためであつた。要するに天皇親政の統一日本を完成して天壌無窮の皇運を扶翼するがために、國際關係を調整し、處理し、その妨害たるものを芟除せんがためであつた。我が國が、臺灣を征伐し、琉球を併せ、不對等條約を改正し、日清日露の兩戰役を敢行し、世界大戰に参加し、或は朝鮮を合併し、満洲國の獨立を扶掖し、東亞新秩序の建設を標榜するに至つた今次の支那事變はかくして惹起されたのである。要するに帝國外交の窮極目標は、天壌無窮の皇運を扶翼することで、その着手は對外平等の實現を期するにあつたのである。我々の希望は、それ以上でもなく、それ以下でもない。我々が共存共榮といひ萬邦協和といふ理想と根抵とはそこにある。これ等の我が外交は時に消極となり、時に積極となつた。」
今日、斯様な考えは無いだろうと、否定されるかも知れないが、培かわれた"精神"といものは、例えば戦争の機運が熟するに従い、拠り所となって表出する。米国が自由や人権を御旗に侵略戦争・他国の政権転覆を謀るようなものである。
日本もいざと言う時の行動発動の精神的裏付けになる。
従って其の精神が立ち消えた訳でもなく、常に燻り続けているのが、現在の日本である。小国日本では我慢がならないということでもある。
愚かにも日本、万事に中国を敵視し、煽動し、包囲網を築くことを、与えられた外交目標とし、軍事力を強化に励む。
米国は言うに及ばず、英国、EU(NATO)などをも此の地域に呼び込む。
日本(自衛隊の山崎幸二統合幕僚長)は、NATO参謀長会議(05.19)に、初めて加盟国でないオーストラリア、ニュージーランド、韓国と共に出席する。
つまり、次の硝煙弾雨の地を準備するためである。覇権主義政権は戦争を不断に繰り返す。
恰も近未来に此の地域で‹伸るか反るか›の一大決戦が繰り広げられるかのようだ。
ウクライナ問題を‹千載一遇›のチャンスと捉える輩が、日本にも欧米側にも居る。
しかし、未来を先取りすれば、日本は先の侵略・植民地獲得での、大戦の悲惨な結果を美事し糊塗するような"甘い歴史認識"が、全く通用しない過酷な結末を迎える。
日本は分割統治されることになる。
何よりも米国(欧米側)は日本を見捨てる。所詮日本は、欧米側の使い捨ての‹ぱしり›程度役が妥当なのだ。
米国の真の目的は、中国を弱体化し、米国の思う儘にしようとする、覇権である。従って、米国は戦場へ現れての直接戦争当事者とはならない。
中国と直接対峙すれば、"核戦争を招く恐れ"がある。現在のウクライナ戦争の如く、"金=兵器投入と口先介入"に従事する。米軍の"Show the Flag 、Boots on the ground"など、望むべくもない。
いざとなると、基地の兵は日本から事前に引き揚げている。
欧米側は、中国(+ロシア)・北朝鮮対台湾・日本・韓国(西側陣営)を主とする、アジア人同士の戦いを画策し、西側陣営に軍事支援をし、利を得る。其の為に長期戦に持ち込ませる企みとなる。
- 万国尚戎馬 故園今若何 -
➀台湾を契機として、日本(米国)・韓国が動く
②欧米西側諸国(NATO)は動かず、風見鶏を決め込む
③北朝鮮は自国が不利となれば、韓国・日本に核使用
④米国の核の傘の実効無し、米国発動せず
⑤米国・中国・ロシア間の核抑止理論が働く、と云うか、米国が中ロと談合する
⑥此の時点で日韓、米国に完全に裏切られる
⓻ロシアの権益確保
⑧日本、分割(三分割)統治され消える
⓽韓国は北朝鮮に統一される
⓾台湾は当然にして中国の帰属となる
⑪日本の戦争当事者は、そう、帝国主義、覇権主義、軍国主義、全体主義など、悪夢の再現で、戦争犯罪者となり、侵略などの戦犯に問われ、処刑される
と、大きな筋を描くと此の様になる。
ヘインズ米国家情報長官、中国は台湾への軍事侵攻に「自信が持てずにいる」、欧米の一致した厳しい対ロ制裁に「驚いている」などと分析する。阿房臭いとしか云いようがない。‹其の手は桑名の焼蛤›の類である。こんな分析が米国家情報長官のものなのか。
中国は米国のように目先の利益で狂奔しない。中国は百年でも待つことができる国であるのを、忘れないことだ。
歴史が浅く文化的蓄積も乏しく落着きの無い米国とでは、懐の深さに、中国と大差が出る。
ウクライナの状況を見て、ロシア侵攻前の台湾の人々は、60%以上が台湾救援に米軍隊出兵を信じていた。が、今(04.26)は米軍隊派兵を信じないが、56%にまで及ぶ。
しかし、フィンランドとスウェーデンのNATO加入、なぜこの時期なのか。この時期だからか。それでも、自治権を捨ててまで、安全な場所から態々御出座しに及ぶとは。‹火中の栗を拾う›のか。
NATOの拡大は火薬庫に火を放つようにも見える。何故かと云えば、ロシア侵攻の理屈が、NATO拡大にあるからだ。
トルコのエルドアン大統領、トルコに制裁を科すスウェーデンとフィンランドのNATO加盟を認めないというが…。米国の猛烈な外交駆け引き(取引)で変わるだろう。
今、中国はウクライナ紛争をじっくり研究する。
ストレステストで持久力等も試すだろう。かなり欧米側は今次の事で、手の内を曝け出している。ロシアの戦況をも併せ‹他山の石›とするだろう。
また、「プーチン大統領がウクライナ戦争の敗戦を自分の政権の「存立の脅威」とみなし、核兵器を使用する可能性があるという米情報機関の見通しが示された」(HANKYOREH2022.05.12「米国家情報長官、プーチンの核兵器使用の可能性に言及」)と。
ならばどうして、ウクライナに軍事支援を増幅し、状況を其れへと向かうよう煽るのか。
核爆弾の非人道的威力は、人類史上初めて実戦で広島に原子爆弾を投下した米国自身が識るところではないのか。
例え使用されたとしても、戦争を早期に終了させるため等と言われたら、米国はロシアを詰り、非難することができるのか。欺罔者の言である。
米国が仲介すれば、停戦となる事も可能なうえに、核兵器の使用などと態とらしく、口外する必要もない。
米国による原爆投下での被害は、「人間ができる最悪のことだ」と、EUのミシェル大統領。(ParsToday 2022.05.14)
その広島市当局、原爆の犠牲者を追悼する式典にロシア代表を招待しないと。広く世界に反核の意志を伝える式典であるのに、偏頗な対応である。寧ろ現状を考慮したら、是非ロシアに参加して貰うべきではないのか。
ガルージン大使、「これまで平和記念式典に出席するたびに感じたのは、この恐ろしい民間人大虐殺を行った国はどこなのか、日本側のスピーチからはさっぱりわからない、という思いだ」(ParsToday 2022.05.25 ロシア駐日大使、「広島平和記念式典へのロシア代表招待見送りは恥ずべき措置」)と。
中国は斯様な愚か者に煽られて、世界経済の破滅を招く、戦争をすると思うのか。今でさえ、逆制裁で欧米諸国民は苦しんでいる。更に制裁に加わらない国にも食料危機が及ぶ。
米国は其れを思え。
ロシア産エネルギーに頼る東欧諸国のハンガリーやスロバキアなどが難色を示し、EU内で対露制裁(第6弾)の合意ができないでいる。
「現在、欧州諸国へのロシア産天然ガスの供給に長期的に取って代わることができる供給業者はない」。(ParsToday 2022.05.22 仏月刊紙、「欧州が露産ガスの代替物がないことを認める」)
「ハンガリーとしては、一種の原子爆弾に等しく、前代未聞の集団移民や飢餓を生み出すことになる性急な対ロシア制裁に反対である」、「我々は今後、厳しい冬を迎える。ウクライナでの軍事紛争は、我々を厳しい状況に陥れることになる。それは、我々がEUの加盟国だからだ」、「ハンガリーは、物価高騰を招くことになる非論理的で容認できない対ロシア経済制裁に賛成していない」。(ParsToday 2022.05.22 ハンガリー首相、「対ロシア制裁は一種の原爆」)
在フィリピン米大使館付近で、バイデン米大統領の極東アジア訪問開始と同時に抗議者らが集結し、警察と衝突。(ParsToday 2022.05.22「フィリピンで、バイデン氏のアジア訪問に市民が抗議」)
「韓国の一部の市民団体は、同国首都ソウルでバイデン米大統領の訪韓に抗議するデモを開催」(ParsToday 2022.05.21 米大統領の訪韓に、首都ソウルで抗議デモ)
イタリアでは、複数の大都市で、市民らがNATO北大西洋条約機構に反対する大規模なデモを開催した。(ParsToday 2022.05.21 伊で、大規模な反NATOデモが実施)
「日米会談・クアッド戦争会議粉砕!中国侵略戦争阻止」、集会の主催者の1人、高山俊吉弁護士は「非常に危険な行動にいま入ろうとしている。日本と米国が中国に対して、また改めて侵略戦争をしようとしている」と。(ParsToday 2022.05.22 東京で、バイデン氏来日に反対するデモが実施)
嘘で固めた米国の同盟強化は同盟諸国にとって、逆噴射の効果として作用している。
しかし中国、核心的利益については、米国に対して強い警告を発する。(Global Times 2022.05.20「China walks the talk, firm in defending core interests: Global Times editorial」)
楊潔篪氏、米国国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリバン氏との電話会談で、台湾問題に対する最近の米国の行動と発言は全く異なると強調し、米国が「台湾カード」に固執し、さらに誤った道を進めば、必ずや事態を深刻な危機に導くと指摘。中国は自国の主権と安全保障上の利益を守るために断固とした行動をとり、米国は中国がその約束を守ることを期待できると。
つまり、中国は有言実行すると、厳しい警告を発した。中国の魄力が伝わる。
また、バイデン米大統領が韓国と日本を訪問する際、米国と同盟国との会談で台湾の島が重要な話題になるだろうことに、米国とその下僕たちは、台湾問題における「サラミ・スライス」戦術の速度と範囲を加速させているとも言う。
時折、"見当識"に疑問符の付くバイデン氏、確か此れで同様の事が三度目である。
台湾についての発言の事である。
➀ 一度目は2021年8月にあった。同盟国を見捨てたとの批判に、「北大西洋条約機構(NATO)の同盟国が攻撃されればわれわれは(集団防衛を定めた)条約第五条で反撃する」、「日本とも同じ、韓国とも同じ、台湾とも同様だ」と。台湾については米高官が後に、『米国の台湾政策に変更はない』と声明を出し発言の修正を余儀なくされた」
② 二度目は10月21日、CNNタウンホールでの発言である。午後8時00分~午後9時29分間の殆どが、バイデン氏が主唱する、「Build Back Better」計画の説明・Q&Aである。台湾に及ぶのは時間にして、最後の十数分程度の時間内ではなかろうか。
MR. COOPER: So, are you saying that the United States would come to Taiwan’s defense if —
大統領:はい。
THE PRESIDENT: Yes.
MR. COOPER: — China attacked?
MR. 中国が攻撃してきたら?
THE PRESIDENT: Yes, we have a commitment to do that.
大統領:はい、私たちはそうすることを約束しています。
しかし今度も、後から修正・補完というか、掛合い万歳的に"舌足らず"を弁護する。次にジェン・サキ報道官の応答を見る。
Q それから、もうひとつ。 大統領は、中国に攻撃された場合、米国は台湾の防衛に乗り出すのかと聞かれ、"Yes, we have a commitment to do that "と答えました。 台湾と防衛協定に関連して、米国の政策に変化があるのでしょうか?
And then, one more. The President was asked if the U.S. would come to Taiwan’s defense if attacked by China, and he said, “Yes, we have a commitment to do that.” Is there a shift in U.S. policy as it relates to Taiwan and a defense agreement?
MS. PSAKI:そうですね、変化はありません。 大統領は政策の変更を発表していませんし、政策の変更を決定したわけでもありません。 私たちの方針に変更はありません。
そう、以上の二つはブログ「老頭児の白昼夢に真理あり」(2021年11月03日)に書いた。そして、‹二度あることは三度ある›で、更に発言が続くかもれない、とも書いた。
③ そして、三度目が東京で出た。
When asked if the US would become directly involved in a conflict between China and Taiwan, including through the use of military force, Biden said “Yes,” adding that “it’s a commitment we made.”(RT 2022.05.23 US ready to fight China over Taiwan – Biden)
Biden’s handlers have a habit of walking back the president’s unscripted statements and the White House swiftly sought to add clarity, according to TV reports from Tokyo. However, the White House waffle did not contradict Biden’s statement, simply stating that it did not reflect a change in policy.
が、三度目となると、そう、‹三度目の正直›とも云う。
“Biden has been corrected twice in the past on defending Taiwan and it was dismissed as ignorance or a mistake, but people are looking at this differently now – this could be a historic moment as this is no longer ambiguous, this is strategic clarity,” said Alex Neill, a Singapore-based defense correspondent who specializes in China.(英文:ASIATIMES2022.05.23 In Tokyo, Biden puts two boots into China)
台湾は、至って冷静に受け止めている。
「ホワイトハウス『台湾政策に変更なし』 ホワイトハウスは記者会見後、バイデン氏の発言について「台湾に関する政策に変更はない」と釈明した。米国の「一つの中国」政策と、台湾海峡の安定と平和への関与を改めて示したものだとし、『台湾関係法にのっとり、防衛に必要な軍事的手段を台湾に提供する約束についても確認した』と説明した。」
「バイデン大統領と米国政府が、台湾との約束が盤石だと改めて示したことに心からの歓迎と感謝を表明する」と。
(フォーカス台湾 2022.05.23 バイデン氏、台湾有事の軍事関与は「約束」 海峡の平和と安定支持)
だが、米軍が台湾の為に、中国人民解放軍(PLA)と戦うことは無い。つまりは、認知症的に"ひとつのことにこだわり続ける"、バイデン氏の気質の現れである。むしろ、三度とも直後に釈明されているところから、釈明の方に米政策の本音在りと見るのが妥当である。
もし、打合せのうえ、漫才の様に"ぼけと突っ込み"を演じているのだとしても、三度目となるとネタ切れ感が出るうえ、老いの繰り言である。
自民党の佐藤正久氏、バイデン大統領、「”Yes, That’s the commitment we made.”と明確に発言したのだ」とし、「ただ、バイデン大統領がここまで発言した以上、日本自らが外交力、防衛力を車の両輪として更に強化することが極めて大事であり、日本そして我々政治家も覚悟が求められる」、「今日のウクライナを明日の台湾、尖閣にしてはならないという観点から、中国に対してウクライナ侵略に関する明確な批判を行うよう強く求めると同時に、中国の武力による台湾統一、あるいは尖閣有事に備えて、日米同盟における日本の役割・任務・能力を拡大させ、抑止力、対処力を向上させることは待ったなしである」と。(ブログ 2022-05-24 13:58:32「米大統領発言から見る台湾防衛への姿勢明確化」)
バイデン氏、二期目目は無いと思わなければなるまい。不安定な米政権と歩むには、与する国も、‹危ない橋を渡る›ことになる。
繁栄のためのインド太平洋経済枠組み(IPEF)に関する共同声明 に、"よまい言"は含まれないし、台湾は参加させられない。
つまり、両義性こそ、米国が不利益から遁走するための仕掛けである。
日本、舞い上がっている場合なのか。岸防衛相は、「日米両国の基本的な役割分担は変わらないとしたうえで、みずからを守る体制を強化し、日本が果たす役割を拡大する必要がある」(NHK 2022.05.24)と。先途の岐路で、大きな陥穽が待ち構える道を選んだか。
結局は日本も危機を煽られ、防衛費の拡大を迫られ、米国の軍事産業を儲けさせる、という段取りの中に埋め込まれる。米国にとって、同盟諸国は一番の鴨葱なのだ。
‹舟中の敵国›、味方と恃む者でも、いつ裏切って反旗をひるがえすかも分からない。
米国の核戦力などで、日本を守ることは到底叶わない。日米同盟の抑止力とは何の為か、争いごとの増幅の爲ではないのか。しかも、‹一旦緩急あらば›、日本単独で対処させられるのが、落ちである。
「自由で開かれたインド太平洋」で、日米とも都合のいい夢を見るか。
そう、日本、ロシアの超兵器、サルマトRS-28、「NATO北大西洋条約機構への贈り物」を貰うことの無きよう、言動には注意すべきである。
日米豪印首脳会合共同声明(2022.令和4.年5月24日)、ウクライナ紛争、未だ先行きも、停戦への兆しも見えないのに、そして其の和平への仲介もせずに、対ロシア制裁、対ウクライナへの武器支援等をする側(インドは除く)が、インド太平洋への影響を評価した。
そして、4か国は、「欧州連合のインド太平洋における協力のためのEU共同コミュニケーション及び欧州のインド太平洋地域への関与強化を歓迎する」と。
此の“自由で開かれたインド太平洋”を時化空にする積りのようだ。但し、インドに配慮したのか、ロシアには言及していない。つまりは御都合主義なのだ。
戦争は更に次の戦争を生むことも稀でない。
日米首脳共同声明「自由で開かれた国際秩序の強化(2022.令和4.5.23)、繁栄のためのインド太平洋経済枠組みに関する声明(5.23)、日米豪印首脳会合共同声明(5.24)、異曲同工である。
米国の穢い政策の為せることである。
併しながら日本、米国の核兵器の先制不使用宣言に反対し、米国核兵器の国内配備で核共有をと、安倍晋三元首相は促す。日本は再三再四の核炸裂を懲りずに欲するのか。因果なものだ。
日米などで、東シナ海や台湾海峡を巡る連携強化を謳っても、米国の空手形に終わるだけだ。上述したように、中国は米国に強い警告を発している。
其れでも米国を"踏み切り板"にし、日本は冒頭で引用した"頓挫する夢想"を追うのだろうか。
岸田首相よ、駒となるを喜ぶ勿れ。詭計に嵌る莫れ。
日本が戦争に勝利することを望む国など、誇大妄想‹夜郎自大›の自国以外、少なくともアジアには無い、歴史を識るならば。本心米国でさえも望まないだろう。
万が一戦争にでもなれば、逃げ場所もなく狼狽える。危難を免れても食料・インフラ等のパニックは目に見えている。端から他国(米国)頼みなど、全く当てにならない。
幾ら考えても、此の四畳半日本、もう戦争は不可能であり、そして懲り懲りではないのか。所狭しに設置された原発など、脆弱国丸出しの薄いガラスの城の如くである。
"騒ぐ者達"は肝に銘ずべきである。
本質的に無防備国家なのだ。無防備国家は軍事力で庇護することは不可能に近い。
ならば、有事法制のような事態を想定した場合、特に他国からの攻撃を考慮した時、ジュネーヴ追加議定書の第59条に云う無防備地域であることの宣言を、各自治体が紛争前に恒久的にできるようにすべきである。
直接住民の福祉を願う地方自治体としては精一杯の出来ることであろう。
つまり、
(a)すべての戦闘員が撤退しており並びにすべての移動可能な兵器及び軍用設備が撤去されていること。
(b)固定された軍事施設の敵対的な使用が行われないこと。
(c)当局又は住民により敵対行為が行われないこと。
(d)軍事行動を支援する活動が行われないこと。
との条件で、紛争当事者が無防備地区を攻撃することは、手段のいかんを問わず、禁止される。
今は無理でも、国際社会に働きかけるべきではないか。
他国も含め、戦争が誘発されるような事に加担し、巻き込まれるようなことは最も恐れ避けなければならないことである。また一方側に付く制裁などに加担するのではなく、国際社会に平和を期することを訴える国となるべきである。
例え、土壇場に追い込まれたとしても、戦争は避けるという強い国民的意志を、固めることが肝心である。
が、今の日本、戦争のできることに自ら首を突っ込みたくて、うずうずしている。態々ロシアを煽り、中国を苛つかせることを遣り捲っている。どのように見ても、愚かな行為としか映らない。何故なら日米(G7)が主張することは根拠薄弱であり、"いちゃもんをつけたくてつける"という類である。そして魂胆も丸見えである。
ロシア外務省は、日本との平和条約交渉は不可能となったと(SPUTNIK 2022.05.20「日本との平和条約交渉は不可能となった=露外務省」)。また、「日本は信頼できる有望なパートナーのイメージを失った」とも(SPUTNIK 2022.05.20「過去3か月で日本は信頼できる有望なパートナーのイメージを失った=露外務省」)。
無論、日本側の言い分は、"その責任はロシア側にあり"である。しかし、国益を犠牲にして、ご破算するような外交政策を採るのは、"小判鮫国家"だからだ。
G7のように徒党を組み、国際社会を二分裂させるような対立関係に持ち込むのでなく、必要なら国際間の事柄を話合い(交渉)で処理すべきなのだ。
それでも、戦争になれば、勝敗を最終的に決めるのは、"地面対地面、人口対人口"、つまり国土の広狭であり、人口の多少である。勿論広い方が、人口の多い方が勝利を掴み、生き残る確率は高い。
そう、北方の安全は自ら断ち切り、西方に向かっては態々波風を立て自らを追い込み、南方には其の魂胆が見透かされているとも知らず、賢しら口を叩いて回り、そして肝心の東は‹遠水は近火を救わず›で、‹尾羽打ち枯ら›し、欺瞞に満ちた言動のみが今も達者という体たらくである。
嘗て宰相山県有朋が演説で打った‹利益線›などは失せた。北も南も疾うに日本を脅かす存在とり、特に北は核ミサイル性能向上に勤しみ、日本近海の水面にミサイルの飛沫をあげる有様だ。
つまり、利益線どころか日本の‹主権線›も確保でき無い二進も三進も行かない丸裸同然、敵基地攻撃能力(得意の言葉操作で、反撃能力に名称変更)など、真逆の対応であるというのが、実情ではないのか、此の日本。
東アジア・東南アジアの中の"黄色忌避欧米憧憬症の自尊心欠如国家、アジア忘れのアジア日本"、既に此のアジアの"火薬庫"的存在となっている。
歴史忘れて、北東アジアに害を為すか。
頼みの綱のG7、自身が蒔いた剝き出しの新自由主義の毒気が未だに抜けず自家中毒症気味で、最早共食いか或いは新たな植民地獲得かの切羽詰まった状況に追い込まれ、八方破れのいつもの愚策、戦争(揉め事)を画策する。
日本の首相、意味不明の口癖となっている‹法の支配に基づく自由で開かれた秩序の形成が極めて重要›など、一見名宛人不明の発声で強調し、近隣の諸国を煽るが、一番先に耳元で声を大に言い聞かせる相手が、米国であることを忘れている。
米国主導の新たな経済連携「IPEF=インド太平洋経済枠組み」なども、所詮は食い詰め者の為せる業であり、経済的圧力、軍事的圧力で飽く迄覇権を狙う目的の‹屋上屋を架す›愚策である。
煎じ詰めれば、他国の足を引っ張る非建設的な在り様は国際社会にとって、忌むべきことである。
G7の"しゃかりき"になってのロシア産石油の禁止も、基本的には"希望的観測"となるであろう。サハリン1・サハリン2の権益の去就にも影響が出るか。
食糧もエネルギーも儘ならぬ日本、G7で"右へ倣え"では、国を売るに等しい。
経済安全保障の強化を図る新たな法律なども、白蟻に食い荒らされたような日本、入るも出ずるも閉じて如何なることになるのか。国民に対する背信行為である。
米国がそうであるように、不自由な国に限って、法の支配を無視する国に限って、自由を法の支配を、強調してみせる。しかし、国際社会は疾うにお見通しである。
お隣のユン・ソクヨル新大統領も、「自由民主主義と市場経済の体制を基盤に国民が真の主人となる国へと再建し、国際社会で責任と役割を果たす国をつくらなければならないという時代的な要求を受けてこの場に立った」と就任演説を打つ。
なぜ自由の国であるのに、自由を強調するのか。つまり、"後ろめたい"との認識があるからか。民主主義の国なら、国民が主であるのは当然なのだが、"真の"というくらいだから、矢張後ろめたいのであろう。
まさか揃いも揃って、何処ぞの国への"当て付け"の積りなのだろうか。だとしたら、御門違いも甚だしい。‹頭の上の蠅も追えない›のに。
更に、北朝鮮の核開発の中断と経済改善策の呼び掛け等は、北朝鮮が‹鼻で笑›いそうな提案である。今次のウクライナの件でもそうであるが、核を所有することの意を強くしたことであろう。
そんな子供騙しが通じる筈がない。ユン・ソクヨル新大統領の先が見える。
米国は、もう北朝鮮を攻撃することはできないだろう。北は核のターゲットに、韓国及び日本が入っている上に、自国も危うい。北朝鮮は賢いのだ。
北朝鮮は現在核兵器を45個ほど保有し、2年後には65個程に増えるだろうと。(東亜日報2022.05.21 米核物理学の権威、「北朝鮮、2024年までに核兵器65個を保有」)
未だ戦争終了の糸口も見えないロシア・ウクライナ(ウクライナにおけるロシアの特殊軍事作戦)であるのに、次の火種を東アジアで準備する始末である。
そう、斯様なことばで、「ウクライナはあすの東アジアかもしれない」(NHK 2022.05.05「【詳細】岸田首相会見」)と。言わずもがなのことを言う。
当然、中国からは「台湾は中国領土の不可分の一部で、完全に中国の内政問題だ。ウクライナ情勢と同列に論じることはできない」、「日本は台湾問題についてとやかく言う資格はない」、「いわゆる中国の脅威を宣伝するのは、自らの軍備増強の口実探しのためだ」との反論、批判が飛ぶ。(ParsToday 2022.05.07「中国外務省、岸田首相の台湾発言に反発」)
岸田政権、一体米国の何を信じて駆け回っているのだろうか。例えば、米国の政策の何処に、中国の言う、建設的な"互恵・ウィン・ウィンの協力"が見出せるというのだろうか。
他国を仲間に引き入れ、自国の草刈場、若しくは使い走りにし、あとは‹野となれ山となれ›が米国の関の山なのだ。
つまりは、"身の破滅"に向かわせる、此れが米国手招きの恐ろしさなのだ。
米国に、正義、人権、人道など在ると思うな。あっても其れは米国人の本の一握りの人の為であり、他国の為には皆無である。
他国の為に在るように見せ掛ける時は、内部攪乱のため、侵略のため、讒言のための口実等に使うときである。
バイデン大統領が提唱するIPEF(インド太平洋経済枠組み)構想(2021.10東アジアサミット)なども、結局は中国包囲、敵対視の下であり、中国を讒誣し、間口を彼方此方へと思い付くままに広げ過ぎ、延いては"道連れ"の市場縮小へ向かうか、或は雲散霧消する運命であろう。
13カ国で立上げた(2022.05.23)IPEF、「繁栄のためのインド太平洋経済枠組みに関する声明」を見ても、中国睨みでは、不確かなものとなろう。世界経済は全てに中国を必要としていることを強いて無視するのであるから、実効性に無理がある。参加国のGDPなども中国がくしゃみをすれば、世界GDPの40%を占める米国と12の国、途端に萎むことになる。
令和3年度(2021年度)ASEANにおける対日世論調査結果 V.今後の重要なパートナーでは、中国48%で首位、日本43%、米国41%、ASEAN40%、韓国28%、UK27%、EU26%、豪州23%、ドイツ16%、ロシア16%と続いている。
なお、令和元年度 ASEAN(10か国)における対日世論調査結果では、日本が51%、中国が48%であった。中国は変化なしゆえに、日本が勝手に転けたか。
時の政権の在り方が色濃く世論に反映され、切り離すことは出来ない。
攻守同盟が直ちに‹攻守所を変える›ことになるのか。
バイデン氏は西側の救世主ではない。寧ろ"潰し屋"であり、"仲間食い屋"なのだ。
世界経済の体系は相互主義であり、事細かなネットワークが張り巡らされている。今や其の中心、大黒柱でもある安定志向の中国を仲間外れにすることなど不可能と云ってもよい。
それに明日もわからぬ不安定な米政権に、安定した長期的建設的推進が可能かどうか、大いに危惧される。世界経済の混乱と停滞を招くだけである。
「対立ではなく対話を、壁を築くのではなく壊すことを、デカップリングではなく融合を、排除ではなく包摂を、そして公平正義の理念に基づいてグローバルガバナンス体系の変革をリードしなければならない」と、中国の習近平国家主席。(CRI 2022.05.20「デカップリングでなく融合してこそ、世界経済は早期に危機を抜け出せる」)
まさにその通りではないか。欧米西側は自らの進めてきた搾取政策である、新自由主義、新植民地主義が干涸び、最早旨味も絞り出せなくなり、陋劣な手段、中国締め出しの籠作でパイの奪い合いを謀る。
奪うしか能の無い米国、共食いはできても、建設的な歩みはせず、パイの創造には不向きである。
その米国の内政は御寒いものだ。国民の生命保全も儘ならず、新型コロナウイルスによる死者が、100万2742人に上り、感染者数も8350万5417人(2022.05.25日現在 米ジョンズ・ホプキンズ大)となっている。
此れは大虐殺にも等しい。‹頭の上の蠅も追えない›のに、他国の人権を構うことができるのか。呆れ入る。
しかし、西側メディア、一人の哀れには大騒ぎするも、百万人の死者には冷淡なのだ。一人の死も百万人の死も同じではある。が、其の政策は問われるべきではないのか。
メディアの感覚が麻痺しているのだろう。
EUを米英で引っ掻き回し、"商売"し、次の草刈り場としてアジアに迫る。日本、韓国、そして台湾は、米国益(覇権)の対中国用の囮なのだ。
敵か味方かの思考対立しか持たない米国の対立を求める姿勢では、紛争の火種とはなっても、世界経済に寄与する能力も其の気も無い事は、アジアの国々は知っているし、また知らねばならない。その様な米国に、利用され捨てられる"駒"にはなるまい。
尚、日本、‹屋上屋を架す›どころか、国益を損なう恐れのあるIPEFへの参加について、政府は如何なる影響を及ぼすのか、アジア太平洋経済協力(APEC)やCPTPPとの関連などと合わせ、国民に説明する必要があろう。
悪事仲間内に更に秘め事の悪事あり。‹口に密あり腹に剣あり›の米国に踊らされるか。
前政権と同様、"柵"を平気で切って捨てる米政権に、各国が‹下駄を預ける›など、経綸を賭ける、博奕に等しい。
米国と一蓮托生の西側諸国は、一方的敵対行為の姦策を弄する己たちの自損行為で、ブラックホール化しようとしている。
要は文化無き文明が滅び行くのを観ることになる。
欧米諸国は‹餓鬼の断食›の上に"餓鬼化"している。
米国にいの一番に駆けつける英国については次のような言葉もある。
「イギリス人は同盟国をだますことに、無上の喜びを感じている。第一次大戦中、イギリスはロシアとフランスをだまし続けた。チャーチルなどは、目を離すと人のポケットに手を突っ込んで、一コペイカでも盗み取る。ローズヴェルトはそうではない。ローズヴェルトは、より大きな額にしか興味がない。しかしチャーチルは、たった一コペイカでも盗み取る。」
И・スターリン(一九四四年三月、ユーゴ共産党幹部M・ジラスとの会話より)(『ヨーロッパ分断1943』広瀬佳一著 中公新書1994年7月25日発行66頁)
「日清戰爭頃陸奥外務大臣は、今にして歐洲の一勢力と充分結ぶ所なければ、將來東洋の平和を保持し、我が權益を維持し難しと唱へてゐた。其の一勢力とは英國か露國の外はないが、陸奥は『英國は人の憂ひを憂へて之を援けんとするドン・キホーテではない。日英同盟論の如きは夢想である。虚榮である。畫餅である」と排斥してゐた」(『日英外交裏面史』柴田俊三著)「一〇 日英同盟の締結」130頁)
「然るに英國は泰然と傍觀し、而して戰爭行進中佛國が渦中に卷き込まれることを怖れ、佛國と協約を結んだ。是れ英國自身同盟により、參戰の義務より免れんとした保身術である。何處までも實利的勘定高いのは英國だ。
而して坐ながら日露戰爭により利益を占めたのは英國であつた。即ち露國の戰後疲弊せるに乘じ、一九〇七年(明治四十年)英露協約を締結して、波斯(イラン)、アフガニスタンに利權を攘張し、また酉蔵に於ても有利なる權益を得、斯くて英國の賓庫と恃む印度の衛りを鞏固にし、英露間多年の權力爭ひを一掃した。カイゼルは此英國の立廻りを見て、日本は英國の爲め戰つたのだと毒づいたのである。」(『日英外交裏面史』柴田俊三著)「二 日露戦争と同盟」136-137頁)
また、同上書の自序に言う。長くなるが引用する。
此の英国の文字を米国に変えて見れば、世界状況判別の一助となろう。
「硝烟濛々と東西兩洋を包み、爆聲殷々と砲彈の雨を降らしつつ、今や全世界を擧げての非常時、萬國は興亡存癈の断崖に立ち、戰々競々一日とても安き日はない。凡そ戰爭ほど悲慘なる破壊的行爲なく、幾多貴重なる生命も建築物も財産も資材も、倏忽一瞬にして奪ひ去らるゝのである。誰しも此殺伐なる戰爭を好む者はなからう。しかも奸まざるに戰爭は週期的に起り來り、永久に戰爭を絶滅せしむることは出來ない。止むに止まれぬ原因が、そにに伏在してゐるからである。
戰爭は更に次の戰爭を生むことも稀ではない。ヴエルサイユ平和條約は、既に平和を確保する眞正條約でなく、次の戰爭を豫約する危瞼性を帶んでゐた。是を以て國際聯盟、華盛頓條約ロカルノ條約。不戰條約等、平和論者は如何に藻掻き苦んだことか。然れども戰爭を防止すべく餘りに微力であつた。是等の平和的條約を尻目に、一九三七年支那事變、一九三九年第二次歐洲戰爭起り、平和の女神をして澁面を造らしめてゐる。
萬國をして各其の所を得せしめよ、これが世界平和を齎らすべき鐡則である。此鐡則を無視し如何に平和條約網を張り廻すと雖も、唯一時の気休めにして何時かは戰爭は起らざるを得ない。殊に華盛頓條約はどうだ。平和の假面を裝つた僞約で、ヴエルサイユ平和條約を改造し惡化した所の戰爭誘導條約ではなかつたか.斯くして満洲事變、支那事變は當然起らねばならなかつたのである。
英國が歐洲の西陲たる小島を根城とし、僅かに四千餘萬の人口を以て.世界四分の一の領土と、世界四分の一の人口を支配するのは是れ大なる不自然にして、萬國をして其の所を得せしむる所以でなく、そこに戰爭は醞醸せらるゝのである。世界は英國の牢獄だ。英國が後退せざれば世界の平和は望むことは出來ない。換言すれば英國は戰爭の源泉である。
日本、支那と國は隔つれども、二千年来の親交あり.同種同文、東洋主義の王道により.和やかなる雰囲気中に生々して.共存共榮、太平洋の波打際に平和を樂しむべく、戰爭しなければならぬ原因は何物もない。だが、執念の蛇はアダムとイヴに禁制の木の實を喰はせ、人間苦を與へた。此執念の蛇は即ち英國だ。英國は實利實益を重んずる功利哲學の信奉者である。功利の爲めには凡ゆる智嚢を絞り、老獪陰險なる謀略を廻らす。日支兩國を噛み合せ、蔭に廻つて漁夫の利を占めんと欲するのだ。東洋禍乱の根源を釋ぬれば即ち英國の介在にあり、吸血的英國策の方寸により、同種相食むと云ふ慘劇を演じつゝあるのは、眞に悲愴である。
日本は今や末曾有の時艱に遭遇してゐる。しかも國の總力を擧げて時艱を克服し、東亞新秩序建設の大使命を果さなければならない。だが其處には英國と云ふ障碍物が横たはつてゐる。日本は此障碍物を排除することにより、初めて天業を全うし得るのである。
凡そ英國に觸るゝ程のものにして、英國の毒牙にかけられ痛手を負はなかつたものはなからう。日本は鎖國の夢に酎醉すること二百有餘年、徳川幕府の末葉に當り、國勢萎靡せる時、英國に接觸したのは最も不幸なるものであつた。日本は英國の飽喫する一臠の美肉たらざるを得なかつたのである。日本は英國の爲めに威嚇され、脅迫され、搾取され、精紳上物質上の大損害を蒙つた。若し一歩を誤れば第二の印度たる運命に陥つてゐたかも知れない。然れども日本は神國だ。自ら發憤して國力を恢弘し英國と桔抗することになつた。英國たるもの晏然たるを得ず、日英の摩擦は遂に今日の時艱に遭逢したのである。古來英國が如何にその魔手を伸ばして日本を苦しめたか。其の跡を檢討し來りて、恐怖すべき英國の手段を知り、知つて以て英國の謀略を退け、事變完遂に資せんとす欲するのが即ち本書の目的である。
昭和十六年八月」
また、次のような大隈重信の論も如何か。『大隈伯演説集』から抜粋する。
「斯ふ云ふやうに其時支那は分割する、支那は滅びるものと極めた。尤も機敏なる外交家政治家は或は夫程までに思はなかつたが、先づ概して支那は再び恢復は出來ない、滅びるものであると斯う見た。僅かの間にさう云ふ變化來して居る。而して夫れから僅五年を經過する内に又變つて來た、なかなか支那と云ふ國は容易に滅ぼすことは出來ないのである、支那は孔子が産れた國である、孔子の産れた國は滅びない、開闢以來の外交史を見ても支那は滅びぬ。我輩も嘗て孔子の門人であるが、孔子の産れた國は容易に滅びるものでない、孔子の産れた國であるや否は措いて、結局我輩の論は當時支那を滅ぼすことはむずかしい、若し支那を滅ぼしたならば――支那の領地を取つたならば、其爲めに歐羅巴の文明を破壊されて仕舞ふに相違ない、陸海軍を以て支那人を年々百萬人殺した所が四百年掛る。年々百萬人殺す爲めに支那は武器を動かさなくとも、少なくとも歐羅巴人の十分の一位は殺す、其時は數百年掛つて立てた歐羅巴の文明は全く亡びて野蠻となつて仕舞ふ。夫程には悟らなかつたかも知れぬが、どうも結局六ヶしいと云ふことを悟つたに相違ない。夫で僅かの間に三變した、私のはま―粗雜の議論であるが……、山田君の御議論は大分明らかである。至極私は御同意を致すのである。最後に歐洲人は嘗て支那人を恐れたやうな怖れはないが、商業の上で將來歐羅巴の文明を壊されはしないかと云ふ虞を懐いて居ると云はれたが、是れ亦誤つて居る。一遍誤ると又同一のことを繰返するものである、歐羅巴人はえらい思つたが、えらくない證據は支那問題であります。僅か六七年の間に五度も違つた。」(『大隈伯演説集』「第四 日英同盟の影響」明治三十五年四月二十日、東邦協會講談會に於ける演説なり。四三-四四頁 明治四十年十月十五日發行 早稲田大學編輯部編纂)
メディアもロシア悪しの連日報道で、岸田政権を後押しする。が、日露戦争時のように政府と新聞に煽られて、開戦論等に傾かないよう、国民が冷静さを保つべきである。
しかし、「世界は英國の牢獄だ。英國が後退せざれば世界の平和は望むことは出來ない。換言すれば英國は戰爭の源泉である」と。
その邪悪性のDNAをそっくり引き継いだのが、米国である。
が、"ウクライナはあすの東アジアかもしれない"としたら、どうなるのか。無論、台湾植民地化もG7による中国分割なども起こり様がない。
あるとすれば、物の見事に廃墟・占領化された日本であり、‹元の鞘へ収まる›台湾であろう。
"ウクライナはあすの東アジアかもしれない"の其のウクライナとは、日本の事である。
であるならば知るが好い。味方とする欧米側の在り方を。丸で"金儲けの権化"である。核炸裂で決着など、固より欧米側は望まない(ウクライナが核攻撃されようとも、傍観する)が、戦争を長引かしての"儲け"、そして敵対国の弱体化(此の場合は中国か)を、日本と台湾を扱き使って、上手く立ち回るという寸法である。
さて日本、国の長期債務残高が2021年度末で、1017兆1000億円になった。
何も驚くことはない。日露戦争では国家予算の約6倍を費やし國力の限界を試した。戦費の4割以上が英・米からの借金(外債)で賄ったのだ。(『日本近現代史を読む』新日本出版社2010年1月10日初版)
安倍晋三元首相、「機関銃の弾からミサイル防衛の(迎撃ミサイル)『SM3』に至るまで、十分とは言えない。継戦能力がない」と、防衛費増の必要性を強調する。(ParsToday 2022.05.22 安倍元首相;日本には「継戦能力がない」、防衛費の増額が必要)
先に、安倍晋三元首相、「一千兆円ある(政府の)借金の半分は、日銀か買っている」、「日銀は政府の子会社だ。六十年の(返済)満期が来たら借り換えても構わない。心配する必要はない」と(中日2022.05.11「日銀は政府の子会社だ」)。
実際その通りなのだろう。超インフレでもならない限り、預金の利子がゼロに近くても、下手すれとマイナス状況であっても、国民は何の文句も言わないし、暴動も起きない。
つまり、国民は満足していると思うべきなのだろう。
例えば、貸借対照表(単位:百万円)、令和2年度 国の財務書類(一般会計・特別会計)の、本会計年度(令和3年3月31日)を見る。
資産合計 720,790,938 負債合計 1,375,954,353 資産・負債差額の部 △ 655,163,414である。総括的に655兆1634億円余が公債等による赤字である。公債だけを取り上げれば、1083兆9313億円余となる。
(注2) 国が保有する資産には、国において直接公共の用に供する目的で保有している公共用財産のように、売却して現金化することを基本的に予定していない資産が相当程度含まれている。このため、資産・負債差額が必ずしも将来の国民負担となる額を示すものではない点に留意する必要がある。
(注3) 負債の部の公債(本会計年度1,083.9兆円)については、基本的に将来の国民負担となる普通国債残高(956.4兆円)のほか、財政投融資特別会計等の公債残高を含み、国の内部で保有するものを相殺消去している(55ページの「③公債の明細」参照)。
しかし、(注2)にもあるように、「売却して現金化することを基本的に予定していない資産」なのだ。が、有価証券 119,683,572の中味が不明だが、米国債分があっても、橋本龍太郎首相の件を思い出す。「米国債を売りたい衝動に駆られることがある」と。が、「もし売るようなことがあれば(米国への)宣戦布告とみなすと脅された」 (https://moneyworld.jp/news/06_00014880_news)。
したがって、貸借対照表の資産、参考にはなっても、既に諸々の結果のストックを表しているだけである。
民間ならば、倒産法でも適用されない限りは、健全性の指標になる等である。
日銀と安倍前首相の関係というより、日銀は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」(日本銀行法第二条)、そして、「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」(同法第四条)、また、「日本銀行の資本金は、政府及び政府以外の者からの出資による一億円とする」、「2 前項の日本銀行の資本金のうち政府からの出資の額は、五千五百万円を下回ってはならない」等と(同法第八条)定められている。
民間企業の例を採るなら、"子会社"であり、其の上、方針の決定等も第四条からすれば支配されている状態である。第三条の日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保などは、日本銀行法内で自家撞着に陥っているのだ。第十九条もそうである。
つまり、実質基準で云えば、第二十三条総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する、から云っても、"忖度"や"睨み"も含めて子会社以下なみであろう。法の在り方から云っても、議決権などは無関係にちかい。
よって安倍前首相の言、軽薄感漂うが、事実を突いている。日銀は、借り換えプラス・アルファで打出の小槌化している。
財政規律?基礎的財政収支(プライマリー・バランス)、常に先延ばしで、此の頃は話題にもならない。
‹大鉈を振るう›ことが出来ないのでは、‹千年河清を待つ›である。
恐らくプライマリー・バランスとは、長期債務残高と国民の金融資産2000兆円とのバランスのことであろうか。
岸田首相、内憂外患、課題山積の日本の行く末、安倍派頼みか。
ハリス(Townsend Harris)は、幕府との間に日米修好通商条約・貿易章程を締結の際、幕府側の岩瀬肥後守忠震全権委員らを称し、「斯る全權を得たりしは日本の幸福なりき、彼の全權等は日本の爲に偉功ある人なりき」(『幕府衰亡論』福地源一郎著 七十六頁)と。
斯様な本物の知性の持主は、当今の政治家には見当たらず。
日本の不幸なり。
孔子曰。益者三友。損者三友。友直。友諒。友多聞。益矣。友便辟。友善柔。友便佞。損矣。
"世界は米国の牢獄だ。米国が後退せざれば世界の平和は望むことは出来ない。換言すれば米国は戦争の源泉である"と、声高に話すか。
米国よ、汝らの政策は無駄なり。
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酔い痴れて 崖っぷちを覗く 日本危うし
酔っ払いに 投げ棄てられる 日本国憲法
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