同根であること - 2021年11月06日

 「脱炭素というゴールは同じだ。国や地域で手法に差が出ることを理解してほしい」と語る。
 この言葉の類似性に、思わずオヤッとなる。(中日 2021.11.06「JERA『CO₂ゼロは共有と』混焼挑む」)

 「歴史的、民族的、宗教的問題や他人の伝統を完全に無視することを考慮せず、外部モデルに基づいて他国で民主主義を構築しようとする試みや、他人に自分の価値観を押し付ける無責任な政策をやめなければならない」と、である。(sputnik 2021.09.10「ローマ教皇、アフガンにおける西側の行動を批判 図らずもプーチン大統領の発言を引用」)

 教皇は、「自国の価値観を他国に強制する無責任な政策や、歴史的、民族的、宗教的な問題を考慮せず、他国の人々の伝統を完全に無視して、外部のモデルに基づいて他国に民主主義を構築しようとする試みをやめる必要がある」と、独自にスペイン語に翻訳した言葉を用いた。

 “It’s necessary to stop the irresponsible policy of enforcing its own values on others and attempts to build democracy in other countries based on outside models without taking into account historic, ethnic and religious issues and fully ignoring other people’s traditions,” the Pope said, using his own translation into Spanish.

 フランシスコはまた、欧米の同盟国がアフガニスタンから撤退する際、「あらゆる事態が考慮されていなかった」と述べた。

 Francis also said that “all eventualities were not taken into account” in the departure of Western allies from Afghanistan.
(THE IRISH NEWS2021.09.01「Pope inadvertently quotes Putin to chide West's involvement in Afghanistan」)

 前者は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で46ヵ国が石炭火力廃止に同意したことを受け、また先に石炭火力を継続し世界に逆行する消極的な姿勢の日本に、国際環境団体CANから嘲笑的意味合いの「本日の化石賞(Fossil of the Day)」を与えられていた、その実状なども踏まえたJERAの小野田聡社長の発言なのだ。
 なお、この化石賞、COP26の議長国である英国も早々と"授与"されている。

 後者は、バイデン氏の云う、"アメリカにおいて有名なアフリカ系野球選手"のローマ教皇フランシスコ1世の発言である。アフガニスタンへの欧米の関与を非難したものである。(ParsToday2021.10.30「シリーズ:バイデン氏の失態・その2―ローマ教皇との面会における驚きの発言」)

 無理解や無理強いに対する釈明や批判であるが、その先には圧倒する状況がある。前者は"気候変動への対処"であり、後者は西側諸国挙ってのアフガニスタンへの侵略である。
 しかし、決定的相違は西側諸国の欺瞞性にある。自らに"押し付けられる"ときには言葉巧みに逃れ、他に其れを"押し付ける"ときには、謀略をめぐらし、執拗に批難し、無慈悲なまでに徹底することだ。
 欧米に対しその感が特に強くなる。

 日本なども西側に追従する国として、民主主義・人権などを強調し、他国を囲い込み抗する。
 ならば、今や"絶対的正義"にも近い、地球環境改善行動にも率先垂範すべきではないのか。
 でなければ単なる御都合主義の国となり、国際社会に向かい指導性を発揮するなど、望むべきもない。

註:訳は私訳です。


 老頭児の白昼夢に真理あり - 2021年11月03日

 ‹酒の中に真理あり›とは聞くが、"老頭児の白昼夢に真理あり"も、在りなのかも知れない。

 米国は、中国という銀幕に自身の姿を投影し、其の影に恐れ戦き反応し、際限のない妄想のなかで、もがく。
 <悪事身に返る>である。

 したがって、言動は欺瞞に満ち、突発的で政策に一貫性・論理性・政治道徳性を欠き、信頼性に欠ける。更に恣意的となると、政策のブレは国際社会を不安定化させる大きな要因となる。
 西側為政者の結束は常に国際社会に対し、信義誠実の原則に欠ける。

 現実対処(国益絡み)の場面では如何なる盟約事にも縛られないという"自由裁量"が、米の政治の特徴なのだ。つまり、その時になって見なければ、反故にされるか履行されるのか、判らないとい危うさが米国との関係には付き纏う。

 近くにはアフガニスタン敗走、AUKUS問題に見られる。

 米国のキャサリン・タイ通商代表は「近く、中国の貿易担当者と会談する機会があることを期待している」と。高報道官は「関税の問題に関して、中国の態度は非常に明確であり、一方的な追加関税措置は中国にマイナスであり、米国にマイナスであり、世界にマイナスだ。中米の経済貿易関係の本質は互恵・ウィンウィンであり、双方は相互尊重、平等を基礎として、対話と協議を通じてお互いが合理的な関心を寄せる問題を解決すべきだ」と強調。(人民網日本語版 2021.05.14「中米経済貿易交渉は近く開催か? 商務部がコメント」)

 その後は、2020年2月に発効の第1段階合意に関する未解決の問題を話し合うことで合意(10.08)したが、その後の動きはない。

 が、10月26日連邦通信委員会(FCC)、チャイナ・テレコム(アメリカ)が米国内で、国内州間および国際通信サービスを提供する資格を終了させた。

 その理由は、潜在的な安全保障上の脅威から国の通信インフラストラクチャを保護することだ。  第1に、本日の命令は、中国の国有企業の米国子会社であるChina Telecom Americas社が、中国政府による利用、影響、および支配の対象となっており、独立した司法監督を受ける十分な法的手続きなしに、中国政府の要求に応じることを余儀なくされる可能性が高いと判断している。
 · First, today’s Order finds that China Telecom Americas, a U.S. subsidiary of a Chinese state-owned enterprise, is subject to exploitation, influence, and control by the Chinese government and is highly likely to be forced to comply with Chinese government requests without sufficient legal procedures subject to independent judicial oversight.

 第2に、委員会が約20年前にChina Telecom Americas社に米国での電気通信サービスの提供を許可して以来、中国に関する国家安全保障環境が変化していることを考慮し、本命令は、China Telecom Americas社、その親会社、および中国政府が米国の通信にアクセスし、保存し、混乱させ、および/または誤配する機会を提供することにより、国家安全保障上および法執行上の重大なリスクをもたらすと判断した。
 · Second, given the changed national security environment with respect to China since the Commission authorized China Telecom Americas to provide telecommunications services in the United States almost two decades ago, the Order finds that China Telecom Americas ownership and control by the Chinese government raise significant national security and law enforcement risks by providing opportunities for China Telecom Americas, its parent entities, and the Chinese government to access, store, disrupt, and/or misroute U.S. communications, which in turn allow them to engage in espionage and other harmful activities against the United States.

 第3に、China Telecom Americas社の行動と委員会および他の米国政府機関に対する表明は、誠実さ、信頼性、信頼性の欠如を示すものであり、米国における電気通信サービスの提供が極めて重要であることを考慮して委員会および他の米国政府機関が電気通信事業者に求める基本的な信頼レベルを低下させるものである。
· Third, China Telecom Americas’ conduct and representations to the Commission and other U.S. government agencies demonstrate a lack of candor, trustworthiness, and reliability that erodes the baseline level of trust that the Commission and other U.S. government agencies require of telecommunications carriers given the critical nature of the provision of telecommunications service in the United States.

 第4に、本命令は、これ以上の緩和策を講じても、このような国家安全保障および法執行に関する重大な懸念に対処できないと判断している。
· Fourth, the Order finds that further mitigation would not address these significant national security and law enforcement concerns.
· Fifth, the Order finds that China Telecom Americas willfully violated two of the five provisions of the 2007 Letter of Assurances with the Executive Branch agencies, compliance with which is an express condition of its international section 214 authorizations.

 第5に、命令は、China Telecom Americasが行政機関との2007年保証書の5つの条項のうちの2つに故意に違反したことを判明した。これは、その遵守が国際セクション214認可の明示的な条件である。
· Finally, although it is not necessary to support these findings and conclusions, the Order finds that the classified evidence submitted by the Executive Branch agencies further supports the decisions to revoke the domestic authority and revoke and terminate the international authorizations issued to China Telecom Americas, and the determination that further mitigation will not address the substantial national security and law enforcement risks.

 最後に、これらの所見と結論を支持する必要はないが、本命令は、行政機関から提出された機密扱いの証拠が、China Telecom Americas に発行された国内認可の取り消しと国際認可の取り消しおよび終了の決定をさらに裏付けるものであり、これ以上の緩和策では国家安全保障および法執行上の重大なリスクに対処できないとの判断を示している。
· Finally, although it is not necessary to support these findings and conclusions, the Order finds that the classified evidence submitted by the Executive Branch agencies further supports the decisions to revoke the domestic authority and revoke and terminate the international authorizations issued to China Telecom Americas, and the determination that further mitigation will not address the substantial national security and law enforcement risks.
(FCC「FCC REVOKES AND TERMINATES CHINA TELECOM AMERICA’S AUTHORITY TO PROVIDE TELECOM SERVICES IN AMERICA 」)から抜粋引用。

 これ以上の開示は手続きが必要のようだ。約20年間続けていたのだから、反論を俟つか、具体的にその取り消し理由が挙げられない限り、門外漢には不明であり、突発的であり、一方的であると判断する以外にない。

 そう、約20年間といえば、無関係かも知れないが、アフガニスタンからの急遽潰走劇を連想させる。

 バイデン米大統領、二度目となる台湾発言である。‹二度あることは三度ある›で、更に発言が続くかもれない。

 つまり、一度目は8月にあった。同盟国を見捨てたとの批判に、「北大西洋条約機構(NATO)の同盟国が攻撃されればわれわれは(集団防衛を定めた)条約第五条で反撃する」、「日本とも同じ、韓国とも同じ、台湾とも同様だ」と。台湾については米高官が後に、『米国の台湾政策に変更はない』と声明を出し発言の修正を余儀なくされた」。

 そして、二度目は10月21日、CNNタウンホールでの発言である。午後8時00分~午後9時29分間の殆どが、バイデン氏が主唱する、「Build Back Better」計画の説明・Q&Aである。台湾に及ぶのは時間にして、最後の十数分程度の時間内ではなかろうか(CNN動画見ても不明)。

 Q 中国が極超音速ミサイルの発射実験を行いました。 軍事的に追いつくためにはどうすればいいのでしょうか? また、台湾を守ることを誓えますか?

 Q China just tested a hypersonic missile. What will you do to keep up with them militarily? And can you vow to protect Taiwan?

 大統領:はい、そうです。 私たちは、軍事的には、中国もロシアも、そして世界の他の国々も、私たちが世界史上最強の軍隊を持っていることを知っています。 私たちが、あるいは彼らがより強力になるかどうかを心配する必要はありません。心配しなければならないのは、彼らが重大な過ちを犯す可能性があるような活動をするかどうかということです。

 THE PRESIDENT: Yes and yes. We are — militarily, China, Russia, and the rest of the world knows we have the most powerful military in the history of the world. Don’t worry about whether we’re going to — they’re going to be more powerful. What you do have to worry about is whether or not they’re going to engage in activities that will put them in a position where there — they may make a serious mistake.

 だから私は、他のどの世界の指導者よりも、習近平と話をし、時間を共にしてきました。 だからこそ、"バイデンは中国と新たな冷戦を始めようとしている"という声が聞こえてくるのでしょう。 私は中国との冷戦を望んでいるわけではありません。私はただ、私たちが退くつもりはないことを中国に理解させたいのです。私たちの見解を変えるつもりはありません。

 And so, I have had — I have spoken and spent more time with Xi Jinping than any other world leader has. That’s why you have — you know, you hear people saying, “Biden wants to start a new Cold War with China.” I don’t want a Cold War with China. I just want to make China understand that we are not going to step back. We are not going to change any of our views.

 MR. クーパー:つまり、アメリカはもしもの時には台湾を守ると言っているのですか?

 MR. COOPER: So, are you saying that the United States would come to Taiwan’s defense if —

 大統領:はい。

 THE PRESIDENT: Yes.

 MR. COOPER: — China attacked?

 MR. 中国が攻撃してきたら?

 THE PRESIDENT: Yes, we have a commitment to do that.

 大統領:はい、私たちはそうすることを約束しています。

(「Remarks by President Biden in a CNN Town Hall with Anderson Cooper」OCTOBER 22, 2021 SPEECHES AND REMARKS) Baltimore Center Stage Baltimore, Maryland (October 21, 2021)から抜粋。

 しかし今度も、後から修正・補完というか、掛合い万歳的に"舌足らず"を弁護する。次にジェン・サキ報道官の応答を見る。

 Q それから、もうひとつ。 大統領は、中国に攻撃された場合、米国は台湾の防衛に乗り出すのかと聞かれ、"Yes, we have a commitment to do that "と答えました。 台湾と防衛協定に関連して、米国の政策に変化があるのでしょうか?

 And then, one more. The President was asked if the U.S. would come to Taiwan’s defense if attacked by China, and he said, “Yes, we have a commitment to do that.” Is there a shift in U.S. policy as it relates to Taiwan and a defense agreement?

 MS. PSAKI:そうですね、変化はありません。 大統領は政策の変更を発表していませんし、政策の変更を決定したわけでもありません。 私たちの方針に変更はありません。

 台湾との防衛関係は、「台湾関係法」に基づいています。 台湾関係法の原則のうち、米国が引き続き遵守するものは、もちろん、台湾が十分な自衛能力を維持することを支援することです。 もうひとつの原則は、平和的手段以外で台湾の将来を決定しようとする試みは、西太平洋の平和と安全に対する脅威であり、米国にとって重大な懸念であるというものです。

 オースティン国防長官も本日、この問題に言及し、国防長官として「両岸の問題が打撃を受けることは誰も望んでいない」と述べています。 確かに、バイデン大統領もそうです。 また、そうなる理由もありません。 これは私たちのアプローチを象徴していると言えます。

 続けて、ジェフ。

 MS. PSAKI: Well, there has been no shift. The President was not announcing any change in our policy nor has he made a decision to change our policy. There is no change in our policy.

 Our defense relationship with Taiwan is guided by the Taiwan Relations Act. Some of the principles of the Taiwan Relations Act that the United States will continue to abide by, of course, is assisting Taiwan in maintaining a sufficient self-defense capability. Another principle is that the United States would regard any effort to determine the future of Taiwan by other than peaceful means a threat to the peace and security of the Western Pacific and of grave concern to the United States.

 I would also note that Secretary Austin also spoke to this earlier today, and he said — as the Secretary of Defense, of course — “Nobody wants to see cross-Strait issues come to blows.” Certainly not President Biden. And there’s no reason that it should. And that is certainly emblematic of our approach as well.

 Go ahead, Jeff.

 Q 台湾についての便乗質問で、米国は戦略的に曖昧な政策をとっています。 彼は昨夜、かなり明確な発言をしているように見えました。 あれは意図的なものですか?

 Q Just piggybacking on that question about Taiwan, the U.S. policy one of strategic ambiguity on this. He seemed pretty unambiguous with what he said last night. Was that intentional?

 MS. PSAKI:私がお伝えできることは、私たちのポリシーは変わっていないということです。 彼はポリシーの変更を伝えようとしたわけではなく、ポリシーを変更する決定をしたわけでもありません。

 MS. PSAKI: What I can convey to you is that our policy has not changed. He was not intending to convey a change in policy nor has he made a decision to change our policy.

 Q わかった。 そして法案の話に戻ります。大統領は自信を持っているのでしょうか、それとも来週ヨーロッパに向かう前にこの法案の採決を望んでいるのでしょうか?

 Okay. And moving back to the legislation: Is the President confident or is he hoping for a vote on this before he heads to Europe next week?

(「Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki, October 22, 2021」)から抜粋。

 そのバイデン氏、脳機能の衰えがささやかれている(ParsToday2021.10.29「バイデン氏の失態 空想の人物との握手」)。

つまり、両義性というのは、文字通り<一つの言葉あるいは概念が二重の意味を持つという性質>(「広辞苑第六版」)であり、いずれか一方に"ぶれる"こともあろうが、要は<天秤に掛ける>のである。ではどんな時局や政治認識(国益)がそうさせるのか。
 "中国を抑えたい"が全てである。西側陣営の結束を呼び掛け、加えて東南アジア諸国にも対中国包囲網を推し進めようとする。

 それには相も変わらず、落剥した民主主義・自由・人権の旗を引っ提げてである。御負けに惨憺たる有様の国内状況(感染者:4592万3938人 死者:74万5380人 中日2021.10.31現在)を忘れてか、新型コロナまで政治道具化する、落魄ぶりなのだ。

「米シンクタンク・ピュー研究所が先進国を対象に実施した世論調査で、米国は世界の中でも、市民が自国政府に対して最も不満を抱いている国のひとつであることがわかりました。」(ParsToday 2021.10.27「米国市民の政府への不満は世界でも最高水準 世論調査で明らかに」、「REPORTOCTOBER 21, 2021 Citizens in Advanced Economies Want Significant Changes to Their Political Systems Dissatisfaction with functioning of democracy is linked to concerns about the economy, the pandemic and social divisions」)

 「アメリカの世界的な位置づけは歴然とした形で揺らぎ始めており、同国のバイデン大統領は、外交政策を含む様々な分野で問題に遭遇している」、「米政府は外交政策の分野において、目に余る数多くの誤った一歩を踏み出してしまった」、「世界各地におけるアメリカの干渉行為や好戦主義的な制裁の拡大により、政治、経済の面での同国の没落は過去数年前から予測可能でした」、「バイデン大統領は、公式表明の中で、アメリカがあらゆる分野で世界に追い越されていることを認めました」と。(ParsToday「米紙、『米の世界的位置づけは崩壊寸前』」)

 米国主導の西側諸国がアフガニスタンに残したものは、「アフガニスタンでは人口の半分に当たる2280万人が、深刻な飢餓の危機に直面しているほか、失業のまん延や資金の流動性といった危機により、同国は人道的な危機の瀬戸際にあり、5歳未満の子どもたち320万人がリスクにさらされている」という惨状だ。(ParsToday2021.10.27「WFP事務局長、『世界の飢餓問題、マスク氏保有資産の2%で解決の可能性』」)

 戦前の日本の植民地支配の特徴は、同化主義だった。
 もしも米国が主唱する自由が世界に万遍ない状態になった時、それでどうなるのだろうか。おそらく自由は、個人がより貧しく放置されるのを甘受しなければならない責任を自ら負うことを意味するだろう。また平等は個人の才能に全面的に責任を負うことを、さらに強く求められるであろう。そして、民主主義は民主主義の意義を持たず、飢えや貧困が今まで以上に蔓延するであろう。
 そのような世界は今、すでに出来している。それが自由主義(換言すれば、資本主義、新市場主義)の本質であり、行き着く結果であり、謂わば自由の意味する本来の結果である。

 自由を求め、そして自由に屈服・隷従する。

 似非民主主義、似非法治国家の在り方は寒空に裸のまま国民を外に放り出す非常な仕組みのことだ。
 <裸で物を落とす例なし>などと洒落ている場合ではない、命を落とすのだ。

 飢餓・貧困の上に築かれる自由であり、其の自由は勝ち残った一握りの者のためであり、そして何よりも、その自由がどのようなものであるかを、解釈するのは覇権を握る者に委ねられる。

 当然、米国の民主主義に普遍性はない。が、世界は米国のそれを守護神のように崇める。民主主義というのは唱えるものでなく、国民の日々の生活の場で実現させるものなのだ。他国にとやかく言うツールではないし、崇め、願望する対象でも決してない。
 米国内の民主主義の窮状をみよ。自国の状況を憂えることもせず、他国の非難を続ける。国内の問題から国民の耳目を逸らすための手段なのだ。

 嘆きは覇者に届かず掻き消される、なぜなら其の悲惨は歓呼で迎えた自由が招来したものであり、覇者も同様に来たる。自由とは血みどろの争いを意味する。

 為政者が国民に向かいて民主主義を、自由を、人権を唱えるとき、そこに或る種の不誠実や胡散臭さが感じ取られる。なぜ民主主義の国家にあって、言挙げする必要があるのだろうか。国民が言い募るなら未だしもだ。
 日本の岸田首相の唱える"新資本主義"なども其の口である。

 米国の唱える民主主義は現在の同化主義であり、植民地化である。

 「もし我々が手を差し伸べなければ文字通り死んでしまう4200万の人々を救うために必要なのは60億ドル(約6800億円)だ。複雑な問題ではない」、「一握りの超富裕層の人々が保有する資産のごく一部だけで、世界の飢餓問題の解決の助けになり得る」とし、ジェフ・ベゾス氏とイーロン・マスク氏の名を挙げた。(ParsToday 2021.10.27「世界の飢餓問題、マスク氏保有資産の2%で解決の可能性」)

 「在アフガニスタン・ユニセフ国連児童基金代表は、同国の子ども100万人が深刻な栄養不良にあることから、死の危険に直面していると警告」した。(ParsToday 2021.10.31「アフガンの子ども100万人が栄養不良」)

 さて、老頭児に従うブリンケン国務長官、台湾に言及する。

 台湾は、民主主義のサクセスストーリーとなっています。 そのモデルは、透明性、人権の尊重、法の支配を支持しており、国連の価値観と一致しています。 台湾は世界のハイテク経済に欠かせない存在であり、旅行、文化、教育の拠点でもあります。 私たちは、台湾を大切なパートナーであり、信頼できる友人であると考えている多くの国連加盟国のひとつです。

 Taiwan has become a democratic success story. Its model supports transparency, respect for human rights, and the rule of law – values that align with those of the United Nations (UN). Taiwan is critical to the global high-tech economy and a hub of travel, culture, and education. We are among the many UN member states who view Taiwan as a valued partner and trusted friend.

 国際社会がかつてないほど多くの複雑でグローバルな問題に直面している中、すべての関係者がこれらの問題の解決に貢献することが重要です。 これには、台湾に住む2,400万人の人々も含まれます。台湾の国連システムへの有意義な参加は、政治的な問題ではなく、現実的な問題です。

 As the international community faces an unprecedented number of complex and global issues, it is critical for all stakeholders to help address these problems. This includes the 24 million people who live in Taiwan. Taiwan’s meaningful participation in the UN system is not a political issue, but a pragmatic one.

 過去50年間の大半において、台湾が特定の国連専門機関に積極的に参加してきたことは、国際社会が台湾の貢献に価値を置いている証拠である。 しかし最近では、台湾は国連の活動に貢献することを許されていない。 ICAO(国際民間航空機関)の3年に1度の総会では、年間数千万人の旅客が台湾の空港を利用しているにもかかわらず、台湾からの参加はありませんでした。 COVID-19のパンデミックに対する台湾の世界レベルの対応から学ぶべきことは多いが、台湾は世界保健総会に参加していない。 世界中の市民社会のメンバーが毎日国連で活動していますが、台湾の科学者、技術専門家、ビジネスマン、芸術家、教育者、学生、人権擁護者などは、パスポートを持っているという理由で入国を拒否され、活動に参加することができません。

 The fact that Taiwan participated robustly in certain UN specialized agencies for the vast majority of the past 50 years is evidence of the value the international community places in Taiwan’s contributions. Recently, however, Taiwan has not been permitted to contribute to UN efforts. Despite the tens of millions of passengers traveling annually through its airports, Taiwan was not represented at the International Civil Aviation Organization (ICAO) triennial assembly. Although we have much to learn from Taiwan’s world-class response to the COVID-19 pandemic, Taiwan was not at the World Health Assembly. Members of civil society from around the world engage every day in activities at the UN, but Taiwan’s scientists, technical experts, business persons, artists, educators, students, human rights advocates, and others are blocked from entry and participating in these activities simply because of the passports they hold.

 台湾の排除は、国連とその関連機関の重要な活動を弱体化させるものであり、すべての機関は台湾の貢献から大きな利益を得ることができます。 私たちは、共通の課題を解決するために、すべてのステークホルダーの貢献を活用する必要があります。 だからこそ、私たちはすべての国連加盟国に、台湾関係法、3つの共同コミュニケ、6つの保証によって導かれる私たちの「一つの中国」政策に沿って、国連システム全体および国際社会における台湾の強固で有意義な参加を支援するために、私たちと一緒に行動することを勧めます。

 Taiwan’s exclusion undermines the important work of the UN and its related bodies, all of which stand to benefit greatly from its contributions. We need to harness the contributions of all stakeholders toward solving our shared challenges. That is why we encourage all UN Member States to join us in supporting Taiwan’s robust, meaningful participation throughout the UN system and in the international community, consistent with our “one China” policy, which is guided by the Taiwan Relations Act, the three Joint Communiques, and the Six Assurances.
(「Supporting Taiwan’s Participation in the UN System PRESS STATEMENT ANTONY J. BLINKEN, SECRETARY OF STATE OCTOBER 26, 2021」)

 グローバルタイムズは、「米国が国連で戦いたければ、中国は反撃する」と。

 米国のアントニー・ブリンケン国務長官は27日、台湾島の国連(UN)システムへの参加に対する米国の支持を表明した声明を発表した。これは、一つの中国の原則を損ない、台湾島を中国の主権から切り離そうとする米国の努力を著しくエスカレートさせるものだ。

 US Secretary of State Antony Blinken issued a statement on Tuesday which expressed US support for the island of Taiwan's participation in the United Nations (UN) system. This is a gross escalation of efforts by the US to undermine the one-China principle and separate the island from China's sovereignty.

 声明の中でブリンケンは、「台湾は民主主義のサクセスストーリーになっている」「その価値観は国連のものと一致している」とアピールしています。また、航空や公衆衛生が発達している台湾が、国際民間航空機関や世界保健総会(WHA)に代表として参加していないことに疑問を呈した。台湾が国連システムに有意義に参加することは、政治的な問題ではなく、現実的な問題である」と言い切った。

 In his statement, Blinken touted that, "Taiwan has become a democratic success story" and its values "align with those of the UN." He also questioned why Taiwan, which has advanced aviation and public health, was not represented at the International Civil Aviation Organization and World Health Assembly (WHA). He quibbled that, "Taiwan's meaningful participation in the UN system is not a political issue, but a pragmatic one."

 アメリカの現政権は、中国を攻撃する新しい戦場を開いている。彼らは偽善的に「一つの中国」政策の堅持を唱えながら、米国が言う「一つの中国」に台湾関係法や「6つの保証」などの全く逆の条件を加えて、このような行動ができることに驚きを隠せない。白昼堂々と悪党政治を行っているのである。

 The current US administration is opening up a new battlefield to attack China. It is amazing that they can act like this while hypocritically advocating their adherence to the one-China policy and adding completely opposite conditions such as the Taiwan Relations Act and the "Six Assurances" to what the US calls "one China". They are playing rogue politics in broad daylight.

 ブリンケンは、中国の主権を「民主的」に分割することの正当性を主張するために、この島に「民主的」というレッテルを貼った。彼は、国連がこのような分離独立の動きに協力する必要があるという異端を生み出そうとしている。アメリカの「価値観外交」が、この悪質な分離独立を正当な理由に塗り替えてくれると素朴に信じている。アメリカのソフトパワーの強さを過大評価している。

 Blinken labeled the island as "democratic" in order to assert the legitimacy of dividing China's sovereignty in a "democratic" way. He seeks to create the heresy that the UN needs to cooperate with such secessionist moves. He naively believes that US' "values diplomacy" will be able to whitewash this vicious secession into a just cause. He overestimates the coercive strength of American soft power.

 米国は、国連で「一つの中国」と「一つの台湾」を作り、このようなトリックを北京に圧力をかけるための長期的な交渉材料にしようとしている。これは、中国に対する新たな攻勢である。世界はこのことを見抜いており、Blinkenのレトリックは国際社会を欺くことはできない。台湾が民間航空や公衆衛生に関する国連機関との実務的なコミュニケーションを行うことが障害になったことはない。アメリカが今望んでいるのは、まさに政治的な打開策である。彼らは全世界を馬鹿にしているのだ!

 The US is trying to create "one China" and "one Taiwan" in the UN and turn such a trick into a long-term bargaining chip to pressure Beijing. This is a new offensive against China. The world can see this, and Blinken's rhetoric will not deceive the international community. Taiwan's practical communication with UN agencies on civil aviation and public health matters has never been an obstacle. What the US wants now is exactly a political breakthrough. They think the whole world is stupid!

 台湾当局は、一つの中国の原則を受け入れなければならない。それを前提とした取り決めがあってこそ、台湾は国際機関に参加できる。現在の民進党政権以前に、国民党政権は一つの中国を認め、WHAへの参加などについて台湾海峡を挟んでコンセンサスを得ていた。その後、民進党政権は1992年のコンセンサスを放棄し、政策宣言に「一つの中国」は見られなくなった。台湾の「独立主権」を繰り返し強調している。台湾のWHAへの参加は、もはや現実的ではない。台湾のWHA参加は、もはや現実的なものではなく、「台湾の主権」を世界に宣言するための政治的な全力疾走になっている。

 Taiwan authorities must accept the one-China principle. Only through an arrangement on this basis can the island participate in international organizations. Before the current Democratic Progressive Party (DPP) authority, the Kuomintang authority recognized one China, and a consensus was reached across the Taiwan Straits on issues including Taiwan's participation in the WHA. Since then, the DPP authority has abandoned the 1992 Consensus, and there is no longer "one China" in its policy declarations. Instead, all it repeatedly emphasizes is Taiwan's "independent sovereignty." Taiwan's participation in the WHA is no longer pragmatic. It has become a political sprint to declare "Taiwan's sovereignty" to the world.

 中国との対立に「新しい国連の火」をつけることで、アメリカは中国との競争を対立に発展させないと主張しているが、それが言葉遊びであることを再び証明した。ワシントンは、懸念していた北京の心臓部を刺した。後者に痛みを与えるような戦略的イニシアチブを取ろうとしている。

 By igniting a "new UN fire" in the conflicts with China, the US has once again proven that it is playing with words when it claims not to allow the competition with China to become a confrontation. Washington has stabbed Beijing in the heart of its concerns. It is trying to create a strategic initiative that will cause pain to the latter.

 中国は台湾問題に関して一歩も引くことはないだろう。アメリカの裏切り行為は、世界の大多数の国から支持されたり、反響があったりすることはないだろう。国連はアメリカが運営しているわけではない。また、国連憲章は文書に書かれているので、アメリカが国際社会を導いて誤解させることはできない。ワシントンと台湾島は、彼らの陰謀を実現することに成功しないだろう。彼らは失敗し続け、繰り返し恥をかくことになるだろう。

 アメリカが戦おうとすれば、中国は反撃するだろう。悪は国連で善を抑えることはない。また、善の姿を装おうとすることもないだろう。国連での次の戦いは、アメリカに "国際的な正義 "を教えてくれるだろう。

 If the US wants to fight, China will battle back. Evil will not suppress good in the UN. Nor will it ever try to disguise itself as good. The next battle in the UN will teach the US a lesson of "international justice."
(Global Times 2021.10.27「If the US wants to fight in UN, China will battle back」)

 中国外交部(外務省)の趙立堅報道官は27日の定例記者会見で、「もし米国が『台湾カード』を切る道を、結果を顧みずに突き進むのなら、必ず中米関係を破綻させるような多大なリスクをもたらし、台湾海峡の平和と安定を深刻に損ない、米側自身の利益も深刻に損なうことになる」と指摘する。
 また、「国連機関の台湾の有意義な参加は政治的問題ではなく、実務的問題だ。米国は国連の全ての加盟国に、国連機関及び国際社会への台湾の積極的で有意義な参加を米国と共に支持するよう促す」に対し、
 趙報道官は、「米側の声明は『一つの中国』原則及び中米間の3つの共同コミュニケの規定に深刻に違反し、自らの約束に背き、国際関係の準則に違反し、『台湾独立』勢力に深刻な誤ったシグナルを発するものだ。中国側はすでに米側に厳正な立場を表明するとともに、厳正な申し入れを行った」と述べ、以下の点を強調した。

(1)世界には中国は1つしかなく、中華人民共和国政府が全中国を代表する唯一の合法政府であり、台湾地区は中国の領土の不可分の一部だ。

(2)国連組織の活動への台湾地区の参加は、「一つの中国」原則に従い処理されなければならない。

(3)台湾当局は「台湾独立」分裂の立場を頑なに堅持し、92年コンセンサスを認めることを拒み、いわゆる「国際空間」を力の限り拡大し、「台湾独立」分裂の道を突き進んでいる。これは台湾海峡の平和と安定に対する最大の現実的脅威であり、近年の国際民間航空機関(ICAO)や世界保健機関(WHO)など国際機関への台湾地区の参加が度々壁にぶつかっている根本的原因でもある。

(4)「一つの中国」原則及び中米間の3つの共同コミュニケは中米関係の政治的基礎であり、米側が一方的に仕立て上げた、いわゆる「台湾関係法」と「6つの保証」は深刻に国際法と国際関係の基本準則に違反し、「一つの中国」原則に違反している。

 そして、趙報道官は、「我々は米側に対して、約束を厳守し、『一つの中国』原則及び中米間の3つの共同コミュニケの規定にしっかりと従い、国連総会第2758号決議を遵守し、無責任な誤った発言を止め、台湾地区によるいわゆる『国際空間』拡大への手助けを止め、『台湾独立』勢力に誤ったシグナルを発することを止め、中米関係の政治的基礎を実際の行動によって守るよう促す」と強調。
(人民網 2021.10.28「外交部「米国が『台湾カード』切り続ければ中米関係に破綻リスク」)

註:国連総会第2758号決議 2758 XXVI. Restoration of the lawful rights of the People's Republic of China in the United Nations. 「国際連合における中華人民共和国の合法的権利の回復」)

 2758(XXVI).Restoration of the lawful rights of the People's Republic of China in the United Nations

 The General Assembly,
 Recalling the principles the Charter of the united nations ,
 considering that the restoration of the lawful rights of the people's Republic of China is essential both for the protection of the Charter of the United nations and for the cause that the United nations must serve under the Charter,
 Recognizing that the representatives of the Government of the people's Republic of China are the only lawful representatives of China to the United nations and that the people's Republic of China is one of the five permanent members of the Security Council,
 Decides to restore all its rights to the people's Republic of China and to recognize the representatives of its Government as the only legitimate representatives of China to the United nations, and to expel forthwith the representatives of China kai-shek from the place which they unlawfully occupy at the United nations and in all the organizations related to it.
               1976th plenary meeting,
                  25 October 1971.

 -国連第26回総会における政治問題-

 第1節 国連第26回総会における政治問題

 第26回国連総会は,1971年9月21日から開会され,102の議題について審議を重ね,153の決議を採決して12月22日閉会した。同総会期間中10月25日中国代表権に関する決議2758が採択され,その結果中華人民共和国が中華民国に代つて国連の活動に参加することとなつた。なお,朝鮮問題については,一般委員会の勧告にもとづき審議が第27回総会迄延期された。また今次総会では,ブータン,バハレーン,カタール(以上9月21日),オマーン(10月7日),アラブ首長国連邦(12月9日)の国連加盟が決定され,この結果加盟国の総数は132ヵ国となつた。

 1. 中国代表権問題

 本問題は1949年に中華人民共和国が成立してから20年余にわたつて争われてきたものであるが,第25回総会(1970年)でアルバニア決議案に対する賛成票が反対票を上回つて以来,中華人民共和国を国連に迎え入れたいという気運が盛り上り,この点に関しては加盟国の間にコンセンサスに近いものが生れるにいたつた。そこで第26回総会では中華人民共和国の国連参加に際し中華民国を国連より追放すべきか否かに争点が絞られたのであつた。

 まず,7月中旬にアルバニア等は「中華人民共和国政府の代表権回復,中華民国政府追放」を趣旨とするアルバニア決議案(共同提案国23ヵ国)を早々と事務局に提出したが,これに対して米国等は,9月にいたり,中華人民共和国の国連参加を認め,安保理常任理事国の席をこれに与えると同時に,中華民国の議席も認めるといういわゆる二重代表制決議案(共同提案国19ヵ国)および中華民国の追放は憲章18条に従い重要問題であり,3分の2の多数によつて決めるべきであるとする追放反対重要問題決議案(共同提案国22ヵ国)を提出した。わが国はすでに8月に木村外務大臣臨時代理より中華人民共和国の国連参加は阻まないが,中華民国の議席追放は反対であるとの基本方針を発表していたが,9月22日にいたり,佐藤総理より二重代表制決議案および追放反対重要問題決議案を共同提案する旨発表した。

 総会が始まると,議題採択等をめぐり一般委員会や本会議等で中華民国追放支持派と反対派の間で激しい論議が展開された後,注目のうちに10月18日より本件の本格審議が開始された。ここでは73ヵ国の多数が一般討論に参加したが,わが国の愛知首席代表も,わが方決議案は複雑かつ微妙な問題を漸進的に解決せんとする経過的な性格のものである等,わが国の立場を説明する発言を行なつた。

 表決は25日に行なわれた。この日の審議は午後3時から深夜の11時30分まで食事抜きでぶつ続けに行なわれた。その中で追放反対重要問題決議案は8票差で先議権を獲得したものの,決議案自体は賛成55,反対59,棄権15,欠席2で否決され,これに続いてアルバニア決議案は賛成76,反対35,棄権17,欠席3で採択された。この結果,二重代表制決議案は表決に付さないこととなつた。また,アルバニア決議案の表決に先立ち,中華民国代表は,これ以上総会の審議に参加しないことを宣言し,総会議場より退場した。こうして20年来続いた国連における中国代表権問題は劇的な幕切れとなったのであつた。(外務省HP -国連第26回総会における政治問題-)

 米中の緊張が高まる中、台湾のリーダーは、北京からの脅威は「日々高まっている」と述べ、台湾国内に米軍が駐留していることを初めて追認した。

 つまり、だから、侵入者(インベーダー)の存在を台湾総統が公認した。<獅子身中の虫>を飼いながら、「2,300万人が暮らすこの島は、自分たちを守り、民主主義を守り、国民にふさわしい自由をえるために日々努力しています。もし私たちが失敗すれば、この価値観を信じている人々は、これが自分たちが戦うべき価値観なのかどうか疑うことになるでしょう」と云う。

 例えば日本、民主主義、自由を享受する。そして国民に選挙で選ばれた者が代表し、国政に与り、法律を制定する等々、表向きは立派な民主主義の完成である。
 だが、能天気な国民の陰で、骨の髄までしゃぶりつくす者が日本国の奥の院に鎮座し、実質的に日本国を支配する。国民の代表も及ばないところでだ。それが敗戦後の日本の真実なのだ。
 似非民主主義、似非法治国家が戦後罷り通っているのだ。米国の執拗さと手口の巧妙さを、よもや忘れまいぞ。
 しかし、国民は<我関せず焉>というより、知らされることはない。ほんの一握りの権力者が、インベーダーと結託して、甘い汁を吸うという構造であり、経綸に与る。これは目先の政権が交代しようが米国の手先となり、抜本塞源はできない。
 日本国にフリーパスで出入り可能な侵入者、其の侵入者である米国が与えた似非民主主義・似非自由という飴をしゃぶる代わりに、戦後の日本は、否、国民は主権を失っている。
 侵略者を容れての民主主義、自由など在り得ない。表面では甘言を美辞麗句を操り、裏で睨みを利かす、米国の遣り方である。

 米軍が駐留・訓練していることなど、疾うに中国も承知の上だ。つまり、中米の暗黙の了解事項となっている。敢えて公表することは中国のメンツを潰し、怒らせる原因を作るだけで、台湾総統が口先だけで望む解決を更に疎遠にする。

 米国を引き入れる代償は大きい。

 米国の標榜する"民主主義"は覇権のためのものであり、その実態がいかなるものかを観察すればよい。特に今、「台湾は民主主義のサクセスストーリーになっている」などと、ブリンケン氏は持ち上げるが、内実は他の体制を選択する国を誹謗し、貶めるためである。何のためにか、つまり、民主主義が米国では機能していないことが、特に新型コロナウイルス感染で様々露呈したからだ。 由って民主主義の"サクセスストーリー"必要となる。
 勿論、米国ばかりか、西側でも然りである。基本的人権の根源ともいえる"生命の尊重"が蹴散らされている実情だ。
 直近では潰走に終わるアフガニスタン戦争での惨劇が自由主義・民主主義を金科玉条とする欧米諸国によって起こされたことを忘れまい。

 米国は醜い自身を"民主主義・自由・人権という仮面"で覆い、他を欺く。米国が何をしたのか、直視すべきであり、今、なぜ殊更、民主主義を<口の端に掛ける>のか、素朴に米国の鸚鵡返しのようでは、国民の生命を危機に曝し、政治家としては最悪の選択をすることになる。

 両岸のことは体制の違いに帰するのではなく、其れを際立たせるのでなく、両岸のことは両岸で、中国のことは中国で解決するという、他国の干渉を避けて平和裏に処置すべきである。
 台湾は、香港のような混乱をそそのかされて起こすのでなく、虎視眈々と漁夫の利を狙う者に機会を与えるのでなく、自分たちのことは自分達で決めるという姿勢に帰るべきだ。
 脅威が"日々高まっている"原因はいずれにあるのか、熟考すべきである。

 「台湾問題が鄧小平の言うように深刻な問題であることは昔も今も変わらない。しかし 2008 年の馬英九国民党政権発足以来,台湾海峡はかつてないほど平穏な状態にある。しかも歴史を振り返れば台湾海峡は,半世紀以上厳しい緊張下に置かれながら,一度も大きな戦争を経験していないのである。」(高橋 慶吉「アメリカの戦後台湾政策―形成期を中心に」)

 14億余の民が安穏に、貧なく生活できるという此の現実を、よく考えるべきだ。それぞれの職業に付き、糧を得、健やかに日々を過ごす、言挙げするまでもなく、民主主義の基本中の基本ではないのか。

 <命あっての物種>というではないか。

 民主主義は"売り物"ではない、したがって"押売り"の対象でもない。

 ローマ教皇フランシスコは、「歴史的、民族的、宗教的問題や他人の伝統を完全に無視することを考慮せず、外部モデルに基づいて他国で民主主義を構築しようとする試みや、他人に自分の価値観を押し付ける無責任な政策をやめなければならない」と。

 米国は右手を差し出しながら、左手で横っ面を張りに来る。しょっちゅうなので、相手も左手で<攻守所を変える>妙手を発揮する。

 台湾・台北(CNN)米中の緊張が高まる中、台湾のリーダーは、北京からの脅威は「日々高まっている」と述べ、台湾国内に米軍が駐留していることを初めて追認した。

 Taipei, Taiwan (CNN)The leader of Taiwan, the island thrust into the center of rising tensions between the United States and China, said the threat from Beijing is growing "every day," as for the first time she confirmed the presence of American troops on Taiwanese soil.

 蔡英文総統は、火曜日にCNNの独占インタビューに応じ、中国の南東海岸から200キロ(124マイル)も離れていない台湾は、民主主義の"標識"であり、民主主義の価値に対する世界的な信頼を守るために防衛する必要があると語った。
「2,300万人が暮らすこの島は、自分たちを守り、民主主義を守り、国民にふさわしい自由を得るるために日々努力しています。
「もし私たちが失敗すれば、この価値観を信じている人々は、これが自分たちが戦うべき価値観なのかどうか疑うことになるでしょう」。

 Speaking with CNN in an exclusive interview Tuesday, President Tsai Ing-wen said Taiwan, which is located fewer than 200 kilometers (124 miles) away from China's southeastern coast, was a "beacon" of democracy that needed to be defended to uphold faith worldwide in democratic values.

 「2,300万人が暮らすこの島では、自分たちを守り、民主主義を守り、国民がふさわしい自由を得られるよう、日々努力しています」。
「もし私たちが失敗すれば、これらの価値観を信じている人々は、これが自分たちが戦うべき価値観なのかどうか疑うことになるでしょう」。

 "Here is this island of 23 million people trying hard every day to protect ourselves and protect our democracy and making sure that our people have the kind of freedom they deserve," she said.
"If we fail, then that means people that believe in these values would doubt whether these are values that they (should) be fighting for."

 70年以上前の中国内戦終結後、国民党が台湾に撤退して以来、台湾と中国本土は別々に統治されてきた。現在、台湾は民主国家として繁栄しているが、中国本土の与党である中国共産党は、一度も支配したことがないにもかかわらず、台湾を切っても切れない領土の一部とみなしている。

 Taiwan and mainland China have been separately governed since the Nationalists retreated to Taiwan at the end of the Chinese civil war more than 70 years ago. Taiwan is now a flourishing democracy but the mainland's ruling Chinese Communist Party (CCP) continues to view the island as an inseparable part of its territory -- despite having never controlled it.

 現在、台北と北京の関係は過去数十年で最も悪化しています。今月初め、中国軍は記録的な数の戦闘機を台湾周辺に派遣し、外交官や国営メディアは、台湾が中国共産党の方針に従わなければ侵略される可能性があると警告した。
 このような軍事力の誇示は、ドナルド・トランプ大統領とジョー・バイデン大統領の下で台湾と米国の関係が強化された結果でもある。大量の武器販売や米国政府高官の訪問は、台湾の国際的地位を高め、北京を敵に回している。
 蔡英文はCNNとのインタビューで、台湾の大統領としては数十年ぶりに、訓練目的で島に駐留する米軍の存在を認めました。米軍の公式駐屯地が最後に残ったのは1979年で、その年はワシントンの公式外交承認が台北から北京に変わった年だったが、昨年のメディア報道では小規模な駐屯を示唆していた。
 米軍は2020年初め、米軍特殊部隊が台湾で兵士を訓練している様子を撮影した動画を投稿し、その後削除した。台湾国防省は2020年11月、米軍が台湾で地元の兵士を訓練していることを地元メディアに発表し、その後否定した。
 蔡英文は、現在、島にいる米軍関係者の数を正確には言わないが、"人々が思っているほど多くはない "と述べた。蔡英文は、「米国とは防衛能力の向上を目的とした幅広い協力関係にあります」と述べた。

 Today, relations between Taipei and Beijing are at their lowest point in decades.
Earlier this month, China's military sent a record number of warplanes into the air around Taiwan while diplomats and state-run media warned of a possible invasion unless the island toes the CCP line.
The displays of force are partly the result of strengthening ties between Taiwan and the United States under Presidents Donald Trump and Joe Biden. Large arms sales and high profile visits by US officials have bolstered Taiwan's international standing and antagonized Beijing.
In her interview with CNN, Tsai became the first Taiwan President in decades to acknowledge the presence of US troops on the island for training purposes. The last official US garrison left in 1979, the year Washington switched formal diplomatic recognition from Taipei to Beijing, though last year media reports hinted at small deployments.
The US military posted and then deleted a video in early 2020 that showed US Army Special Forces training soldiers in Taiwan. In November 2020, Taiwan's Defense Ministry announced and then denied to local media that US troops were training local soldiers on the island.
Tsai wouldn't say exactly how many US military personnel are on the island at present but said it was "not as many as people thought." "We have a wide range of cooperation with the US aiming at increasing our defense capability," she said.

 高まる中国と台湾の緊張感
 Rising China-Taiwan tensions

 元貿易交渉担当者兼法学教授であった、蔡英文は2016年に台湾初の女性総統に就任しました。この歴史的な勝利は、国民党の前任者が中国本土との緊密な関係を築こうとしていたことに反対する学生たちの大規模な抗議行動の後に実現した。
 今週初め、蔡英文がCNNを伴い台北市内を散策した際には、何百人もの地元市民が手を振って蔡英文に声をかけ、蔡英文の労をねぎらい、自撮りを求めた。
 しかし、蔡英文の大統領職は、台湾海峡の向こう側から容赦なく攻撃され、嘲笑されている。蔡英文が大統領に就任して以来、北京と台北の関係は急速に悪化している。

 A former trade negotiator and law professor, Tsai became Taiwan's first female president in 2016, a historic win, which came after large student protests on the island against her Nationalist predecessor's move to form closer ties with mainland China.
When Tsai took CNN for a walk around Taipei earlier this week, hundreds of local citizens waved and called out to her, thanking her for her hard work and asking to pose for selfies.
But Tsai's presidency has been relentlessly attacked and ridiculed from across the Taiwan Strait -- since Tsai took office, relations between Beijing and Taipei have fast deteriorated.

 中国政府は、ツァイと彼女の所属する民進党は、現状を支持する公式声明にもかかわらず、正式な台湾独立を支持していると考えている。これは、台湾が公式の宣言なしに自治を維持する取り決めである。
 以前の政府を超えて発展した中国との経済的および外交的関係は崩壊し、中国軍は島への圧力を強めている。

 The Chinese government believes Tsai and her party, the Democratic Progressive Party, are in favor of formal Taiwan independence, despite her public statements favoring the status quo -- an arrangement by which Taiwan remains self-ruled, without an official declaration.
Economic and diplomatic ties with China, developed over previous governments, have frayed, and the Chinese military has ramped up its pressure on the island.

 台湾の国防省によると、10月最初の5日間だけで、戦闘機、核搭載爆撃機、対潜哨戒機、空中早期警戒管制機など計150機が台湾の防空識別圏に飛来した。
これは、中国政府が慎重に実行した武力の誇示であり、台湾からの反応を引き起こす可能性のある領域に踏み込んだが、台湾の領空には入らなかった。

 8月にワシントンが発表した7億5000万ドルの武器売却や、同月に米国主導のクアッド外交政策グループが台湾支援に賛成する声明を出すなど、米台関係の温和化の兆しがさらに見えてきた中での今回の工作であった。
 中国の習近平国家主席は10月8日の大演説で、台湾と大陸の「平和的統一」を改めて宣言した。この演説では侵略については言及していないが、習近平はこれまでにも軍事行動を排除していない。  中国の台湾事務弁公室の報道官は8日、"再統一"のために武力を行使する権利を有していることを確認した。

 In the first five days of October alone, Beijing flew a total of 150 fighter jets, nuclear-capable bombers, anti-submarine aircraft and airborne early warning and control planes, into Taiwan's Air Defense Identification Zone, according to the island's Defense Ministry.
It was a carefully executed show of force by the Chinese government -- straying into areas where it would provoke a response from Taiwan but not entering the island's airspace.

 The maneuvers came after further signs of warming US-Taiwan ties, including a $750 million arms sale announced by Washington in August and a statement by the US-led Quad foreign policy group in favor of supporting the island the same month.
In a major speech on October 8, Chinese President Xi Jinping again pledged "peaceful reunification" between Taiwan and the mainland. Although he made no mention of an invasion in the speech, Xi has previously refused to rule out military action.
A spokesman for China's Taiwan Affairs Office confirmed Wednesday that Beijing reserved the right to use force to pursue "reunification."

 台湾総統、中国との会談に前向き
 Taiwan President open to China talks

 蔡英文は自他ともに認める内向的な性格だが、自分の島の熱心な擁護者であり、国民の猛烈な弁護者である。
 蔡総統は10月10日の国慶節で、中国の軍事行動の拡大を受けて、台湾は"中国が敷いた道"に従うことを強要されないと述べ、"台湾の人々が圧力に屈するという幻想を抱いてはならない"と語った。
 蔡英文は火曜日にCNNの取材に応じ、日本、韓国、オーストラリアを含む地域の民主的パートナーに台湾を支援するよう呼びかけた。
 "権威主義政権が拡張傾向を示すとき、民主主義国は団結して立ち向かうべきだ。台湾はその最前線に位置している」と述べた。

 Although a self-confessed introvert, Tsai is a passionate defender of her island and a fierce advocate for her people.
On Taiwan's National Day on October 10, in response to growing Chinese military action, President Tsai said Taiwan could not be forced to follow "the path China had laid out for it."
 "There should be absolutely no illusions that the Taiwanese people will bow to pressure," she said.
Speaking to CNN Tuesday, Tsai called on regional democratic partners, including Japan, South Korea and Australia, to help support the island.
 "When authoritarian regimes demonstrate expansionist tendencies, democratic countries should come together to stand against them. Taiwan is on the front lines," she said.

 蔡英文は2020年に得票率を上げて再選されたが、2期目の一環として、台湾の軍事力を急速に近代化したいとCNNに語っていたと。
 8月、台湾は新しい戦闘機(F-16と思われる)に14億ドルを投じると発表した。また、2020年12月には、国産の潜水艦8隻の建造を開始した。
 蔡英文はCNNに対し、政府は従来の戦闘力ではなく、小さな島を守るための軍備をもっと整える必要があると語った。
 蔡英文はCNNのインタビューに答えて、"我々は中国から受け継いだシステムを持っていますが、それは非常に異なる国です。広大な土地を守る方法と小さな島を守る方法は異なります。ですから、軍隊がどのように構成されるべきかという伝統的な考え方を変えなければなりません"と述べた。
 しかし、蔡英文は、北京との関係改善の可能性を捨てたわけではないと付け加え、中国の習近平国家主席がその気になれば、会談に応じると述べた。
 "習近平氏には、台湾の政府や人々ともっと対話をしてもらい、台湾のことをもっとよく知ってもらいたいと思います。そしてもちろん、中国の状況を理解するためにも、もっと努力したいと思っています"と述べた。
 "私たちは中国との対話を望んでいると何度も言ってきましたが、これこそが両岸関係の管理において誤解や計算ミス、判断ミスを避けるための最良の方法です"と付け加えた。

 蔡英文 米国は我々を守ってくれるだろう
 Tsai: US would come to our defense
 アメリカとその地域のパートナー国との間には、攻撃を受けた場合に台湾への支援を保証するような条約はない。しかし、台北と北京の間で緊張が高まるにつれ、台湾への支援を表明する国も出てきた。
 日本の岸信夫防衛大臣は9月中旬、CNNのインタビューで"台湾で起きていることは日本に直結している"と述べ、この地域の貿易ルートの安全が脅かされた場合には東京が対応すると語った。  また、バイデン米大統領は、CNN主催のタウンホールで、中国が侵攻してきた場合に米国が台湾を守るかどうかという質問に対し、毅然とした態度で臨んだ。

 "はい、そうすることを約束します"と述べました。ホワイトハウスはその後、バイデン氏の発言を否定し、蔡英文はCNNの取材に対し、米大統領の発言の意味について人々は"異なる解釈"をしていると述べた。
 しかし、蔡英文は、台湾が中国本土から攻撃を受けた場合、"米国との長期的な関係を考えれば、米国や他の地域の民主主義国が助けてくれるだろう"と考えていると述べた。
 "台湾は孤独ではありません。私たちは民主主義国家であり、自由を尊重し、平和を愛しています。そして、この地域のほとんどの国と価値観を共有しており、地理的にも戦略的に重要な位置を占めています"と述べ、世界の半導体サプライチェーンにおいて台湾が主導的な役割を果たしていることを指摘し、地域の大国は台湾の安全を守ることに"共通の関心"を持っていると付け加えた。
 蔡英文は、軍事支援がなくても台湾は自衛できるのかという質問に対して、"できる限り"自衛すると答えた。しかし、繰り返しになりますが、友人や志を同じくする国々の支援を得ることが重要です。
 台湾を守るために必要なのは、軍事力だけではない。米国は台湾への支援を強化する一環として、国際的な統治機関、特に国連への台北の参加拡大を働きかけ始めている。
 米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、月曜日に公式ツイッターで、台湾は"重要なパートナーであり、民主主義のサクセスストーリーである"と述べ、国連での役割を拡大するよう求めている。1971年に台北の国連席を奪った北京は、それ以来、台湾を国際舞台からほとんど締め出すことに成功している。
 蔡英文は、台湾が国連でより大きな役割を果たすことは、長い間、台湾政治のあらゆる側の方針であったと述べた。彼女は、北京を怒らせることは心配していないと言う。
 "私たちは、国連システムの一部になりたいという希望を表明してきました。中国には中国の物語があります。そして、それは国際社会が判断することです"と彼女は言った。

 Tsai: US would come to our defense
There are no treaties between the US and its regional partners that would guarantee assistance to Taiwan in the event of an attack. But as tensions have risen between Taipei and Beijing, some countries have expressed support for the island.
 Japan's Defense Minister Nobuo Kishi told CNN in an interview in mid-September that "what's happening in Taiwan is directly linked to Japan," and Tokyo would respond to any threats to the security of trade routes in the region.
 In a town hall hosted by CNN on Thursday, US President Biden was firm on the question of whether the US would defend Taiwan in the event of a Chinese invasion.

 "Yes, we have a commitment to do that," he said. The White House subsequently played down his comments and, speaking to CNN, Tsai said people have "different interpretations" of what the US President meant.
 However, Tsai said she believed if Taiwan came under attack from mainland China, the US and other regional democracies would come to its aid, "given the long-term relationship we have with the US."
 "Taiwan is not alone because we are a democracy, we respect freedom and we are peace lovers. And we share values with most of the countries in the region and geographically we are of strategic importance," she said, pointing to the island's leading role in the global semiconductor supply chain and adding regional powers had a "common interest" in keeping the island safe.
 When asked if Taiwan could defend itself without military assistance, Tsai said the island would defend itself "as long as we can...But let me reiterate, it's important that we have the support of our friends, and also like-minded countries," she said.
 Defending Taiwan doesn't just involve military might. As part of the growing US support for Taiwan, Washington has started pushing for greater participation by Taipei in international governing bodies, especially the United Nations.
 US Secretary of State Antony Blinken said on his official Twitter Monday that Taiwan was a "critical partner and a democratic success story" and called for it to have a greater role at the UN. Beijing, which took Taipei's seat at the UN in 1971, has since been successful in largely squeezing the island off of the international stage.
 Tsai said it has long been the policy of all sides of Taiwan's politics for the island to take a greater role at the UN. She said she wasn't concerned about aggravating Beijing.
 "We have expressed our hope that we want to be part of the UN system. And China has their story to tell. And it's for the international community to judge," she said.

 蔡英文:習近平の中国は"より野心的"

 蔡英文の在任期間は、より自己主張の強い北京の台頭と重なっており、習近平はここ数十年で最も強力な中国の指導者と考えられている。
 2017年からの2期目の政権で、習氏は中国が世界的にどのように位置づけられるかを変え始めている。習氏の下で、中国の軍事力はより大きく、より高度になり、中国の海軍艦隊の規模は米国のそれを追い越した。
 今週、習近平は会議で、軍は兵器開発において"新境地を開拓する必要がある"と述べたばかりである。
 同時に、習近平の外交目標は、"戦狼外交"と呼ばれる猛烈なナショナリズムを持った外交官を外務省内で登用することにつながっている。彼らは、非常に議論の多いデリケートな問題について、声高に中国の立場を守ることを厭わない。
 蔡英文は、ますます力を増す隣国の脅威を認識しているという。"彼らは、より野心的で、より拡張主義的です。そのため、これまで彼らに受け入れられていたものが、今は受け入れられないかもしれません"と語った。

 しかし、蔡英文は、政治体制の違いはあっても、両政府が平和に共存できると信じていると述べた。それがこの国の人々、中国の人々、そしてこの地域の人々の期待ではないでしょうかと述べまた。
 蔡英文は、中国共産党がこの地域や世界とどのような関係を築きたいのかを決定する時が近づいていると述べた。
 中国が台湾近くの島を占領した場合、米国には良い選択肢がほとんどない、と戦争ゲームは結論づける。
 "習近平は、地域や世界のすべての人と平和的な関係を築きたいのか、それとも支配的な立場に立って、誰もが習近平の言うことを聞き、中国の言うことを聞くようにしたいのか"と彼女は語った。
 蔡英文は、習近平の下で権威主義的な支配が強まっているにもかかわらず、中国の民主主義に対する希望を捨てていない。
 "民主主義は時に混沌としています。しかし、最終的には、人々が平和的に共存できるような社会秩序を確立するための最良の統治方法を見出すことができるのです"と語る。
 法律上、蔡英文は2期しか務められませんが、2024年1月に退任するまでの残り2年半の間に、成し遂げなければならないことがたくさんある。
 蔡英文の優先課題は、台湾を世界につなげることと、他国の政府が台湾を分断しようとする動きに対抗して台湾のコミュニティを強化することである。
 蔡英文は、国民をより "結束"させた指導者として記憶されることを望んでいるという。
 "この地を守るために、この地をより安全でより強靭なものにするために、最大限の努力をした人として記憶されることを願っています"と述べた。

 Tsai's time in office has coincided with the rise of a more assertive Beijing, with Xi now considered the most powerful Chinese leader in decades.
 During his second term in power since 2017, Xi has begun to change how China positions itself globally. Under Xi, the country's military has grown larger and more advanced, with China's naval fleet overtaking that of the US in terms of size.
 Just this week, Xi told a conference the military needed to "break new ground" in weapons development.
 At the same time, Xi's foreign policy goals have led to the promotion of fiercely nationalistic diplomats, known as "wolf warriors," inside the Foreign Ministry, who are willing to vocally defend China's positions of highly controversial and sensitive issues -- with Taiwan often being called the reddest of Beijing's "red lines."
 Tsai said she recognizes the threat from the island's increasingly powerful neighbor.
 "(They're) more ambitious, more expansionist. And therefore things that were acceptable to them, may not be acceptable to them now," she said.

 However, Tsai said she believed the two governments could still live together in peace despite the differences in their political systems.
 "If we can sit down and talk about our differences and try to make arrangements so we can coexist peacefully? I think that is the expectation of our people here, and the people in China, as well as the people in the region," she said.
 Tsai said the time was approaching for the Chinese Communist Party to decide what sort of relationship it wanted to have with the region and with the rest of the world.

 "Does Xi want to have a peaceful relationship with everybody in the region or in the world, or does he want to be a in a dominant position so that everybody listens to him, listens to China?" she said.
 Tsai hasn't given up hope for democracy in China though, despite moves towards greater authoritarian control under Xi.
"Democracy sometimes is chaotic. It's messy, confrontational, but at the end, you find the best way to govern, the best way to establish a social order so that people can live together peacefully," she said.
 By law, Tsai can only serve two terms but, with just two-and-a-half years left in office before she steps down in January 2024, she still has a lot to get done.
 Her priorities include connecting Taiwan to the world and shoring up its community against attempts by other governments to divide it.
 Tsai said she hopes that she is remembered as a leader who left her people more "united."
 "I hope they will remember me as someone who made the utmost effort to protect this place, to make this place more secure and more resilient," she said.
(CNN 2021.10.28「Taiwan's President says the threat from China is increasing 'every day' and confirms presence of US military trainers on the island」)

 "この地を守るために、この地をより安全でより強靭なものにするために、最大限の努力をした人として記憶されることを願っています"と云うが、ならば為すことは"ただ一つの意志決定"のみであって、願うことではない。

 CNN記事中、少し気になるのは、「中国本土の与党である中国共産党は、一度も支配したことがないにもかかわらず、台湾を切っても切れない領土の一部とみなしている」で、"一度も支配したことがないにもかかわらず"の箇所である。
 台湾の法的地位未決論があるが、この点に言及するなら、一度支配した日本ならば、領土の一部としてもよいのか、或は主張してもよいのか、ということになる。勿論、両岸ともこの説は取らないが。

「台湾地区の指導者・蔡英文氏が米軍が訓練目的で台湾地区に駐留していることを認めたことについて、外交部(外務省)の汪文斌報道官は28日の定例記者会見で、「米側と台湾地区とのいかなる形の公的交流や軍事的結びつきにも断固として反対し、米側による中国への内政干渉に反対する。米艦は最近繰り返し台湾海峡で武力を誇示し、挑発と攪乱を行い、『台湾独立』勢力に深刻な誤ったシグナルを発し、台湾海峡地域の平和と安定を脅かしている」と指摘」

 「台湾地区問題において『脅迫』をしているのが一体誰なのか、国際社会は見抜いている。両岸統一は歴史の大勢であり、正しい道だ。『台湾独立』は歴史の流れに逆らっており、行き止まりの道だ。民進党当局が『独立を図る』行為をしても、台湾地区が中国の一部であるという不動の事実はみじんも変えられず、国際社会が『一つの中国』原則を一致して堅持するという現実を揺るがすことはできない」と述べた。」

 「『台湾独立』を図るのは前途のない道であり、『台湾独立』を支持するのも後戻りできない道だ。国家の主権及び領土的一体性を守る中国国民の強固な決意、断固たる意志、強大な能力を、いかなる国も、いかなる者も見くびるべきではない」と。(人民網日本語版 2021.10.29「台湾地区指導者が米軍駐留を認める 外交部「『台湾独立』に前途はない」)

 中国の王毅国務委員兼外相は、米国が台湾の国連への"意味のある参加"を求めたことに対し、「台湾は中国本土との統一以外に未来はなく、中国の一部であること以外に国際的な法的地位はない」と述べた。

 The island of Taiwan has no future other than reunification with the Chinese mainland, and it has no international legal status other than being part of China, Chinese State Councilor and Foreign Minister Wang Yi said in response to US calling for "meaningful participation" of Taiwan in the UN.

 アメリカやその他の国々は、50年前に一国主義を止めることができなかったし、21世紀になっても成功する可能性ははるかに低い。もし彼らが固執すれば、その代償を払うことになるだろうと、王氏はG20サミットに出席するローマで金曜日に語った。

 The US and some other countries could not stop the one-China principle 50 years ago, and they are much less likely to succeed in the 21st century. If they persist, they will pay the price, Wang said Friday in Rome, where he will attend the G20 summit.

 これは、中国との外交関係を構築する際の政治的コミットメントに違反しており、決議2758で表明された国連加盟国の一般的な意志を無視している。これは、中国と外交関係を結ぶ際の政治的コミットメントに違反し、決議2758に示された国連加盟国の一般的な意志を無視するものであり、国連憲章の原則を損ない、台湾海峡の平和と安定を破壊するものであると王氏は述べた。

 Recently, the US and some other countries attempted to make breakthrough on the Taiwan question, which violates their political commitment made while establishing diplomatic ties with China and ignores the general will of UN members expressed in the Resolution 2758. The move also undermines the principles of the UN Charter and destructs the peace and stability in the Taiwan Straits, Wang said.

 一つの中国という歴史的・法的事実に異議を唱えることはできず、14億人の中国国民が平和的統一を追求することを抑えることはできない、と王氏は語った。

 The historical and legal facts of one China cannot be challenged, and the 1.4 billion Chinese people's pursuit of peaceful reunification of the country cannot be held back, Wang said.

 1971年、国連総会は圧倒的多数で決議2758を採択し、国連における中華人民共和国の合法的な議席を回復することが決定された。

 王氏の発言は、米国のアントニー・ブリンケン国務長官が今週、台湾島の国連システムへの参加に対する米国の支持を表明した後に行われた。

 国務院台湾事務弁公室の高官は金曜日、統一後、台湾の平和と平穏は完全に保証され、経済発展も促進される。

 台湾事務弁公室のLiu Junchuan副主任は、中国中部の湖北省宜昌市で開催された"国家統一と国家の若返り"をテーマにしたセミナーで、統一後、台湾の同胞はグローバル・ガバナンスに共同で参加し、人類の未来を共有する共同体を構築すると述べた。

 In 1971, the General Assembly of the UN adopted with an overwhelming majority Resolution 2758, and the decision was made to restore the lawful seat of the People's Republic of China in the UN.

 Wang's remarks were made after US Secretary of State Antony Blinken this week expressed US support for the island of Taiwan's participation in the UN system.

 A senior official from the Taiwan Affairs Office of the State Council said on Friday that after reunification, Taiwan's peace and tranquility will be fully guaranteed and its economic development will be enhanced.

 After reunification, Taiwan compatriots will jointly participate in global governance and the building of a community with a shared future for mankind, Liu Junchuan, deputy head of the Taiwan Affairs Office, said at a seminar themed "National Reunification and National Rejuvenation" held in Yichang, Central China's Hubei Province on Friday.

(Global Times 2021.10.30「Taiwan has no future other than reunification with mainland, no intl status other than being part of China: FM Wang Yi」)

 国務院台湾事務弁公室の劉俊川副主任はこのほど、中国大陸との統一後は、台湾島の財政収入を十分に活用して人々の幸福度を高めることができると述べた。それにもかかわらず、台湾の大陸委員会は土曜日に声明を発表し、現在の国際情勢と両岸の関係を認識していないとして大陸を攻撃した。統一後の台湾島の発展経路に関する大陸の傲慢な設定と希望的観測は、台湾の2300万人の人々によって長い間断固として拒否されてきたと主張した。また、台湾の関連業務について、大陸は嘘と妄想にとらわれていると非難した。

 Liu Junchuan, deputy head of the Taiwan Affairs Office of the State Council, recently said that after reunification with the Chinese mainland, the Taiwan island's fiscal revenue can be fully used to improve people's well-being. Nonetheless, Taiwan's Mainland Affairs Council issued a statement on Saturday attacking the mainland for not recognizing the current international situation and cross-Straits ties. It claimed the mainland's arrogantly setting and wishful thinking about the development path of the Taiwan island after reunification has long been firmly rejected by Taiwan's 23 million people. It also accused the mainland of being stuck in lies and delusions regarding relevant work about the island.

 いったい誰が嘘と妄想にとらわれているのか?中国大陸なのか、民進党政権なのか。いったい誰が国際情勢や両岸関係を誤解しているのか。そして、誰が海峡両岸の状況の先行きを見誤っているのか。

 Who on earth is long stuck in lies and delusions? The Chinese mainland or the Democratic Progressive Party (DPP) authority? Who on earth misunderstands the international situation and cross-Straits relations? And who is misjudging the future of the situation across the Straits?

 民進党政権は、台湾を「主権のある独立した国」と主張し、海峡を挟んで国と国との関係を築こうとしている。事実を見てみよう。国連には台湾の席があるのか?世界の主要国は台湾と外交関係を持っているのか?台湾の地域リーダーは、他国の首都で国家元首が敷いているレッドカーペットを踏めるのか?オリンピック会場では、"中華民国"の"国旗"が"国歌"とともに掲げられるのか? あえて国を名乗る必要があるのか?それは完全に一時的な分離主義政権である。

 The DPP authority claimed that Taiwan is a "sovereign and independent country," trying to forging ties across the Straits as those between countries. Take a look at facts. Is there a seat for the island at the UN? Do major powers in the world have diplomatic relations with Taiwan? Can Taiwan regional leaders step on a red carpet, rolled out by heads of states in other countries' capitals? Will the "national flag" of the "Republic of China" be raised with a "national anthem" at the Olympic venue? How can it dare call itself a country? It is totally a temporary separatist regime!

 この島の将来を決めるのは、2300万人の台湾人なのか?それとも14億人の中国国民が決めるべきことなのか?シンガポールのように、中国との歴史的なつながりもなく、中国との法的・憲法的な伝統もない、中国系民族が住む地域であれば、その島の将来は確かに地元の人たちが決めるべきでだろう。しかし、台湾は歴史的には中国の一部だった。近代になって日本に侵略され、占領されたが、1945年に日本の植民地支配から中国が取り戻した。

 Should the future of the island be decided by the 23 million Taiwan people? Or by the 1.4 billion Chinese people? If the island is a region where ethnic Chinese people live but has no historical ties with China, nor legal and constitutional traditions linked to China, such as Singapore, its future should certainly be decided by locals. However, Taiwan has been a part of China historically. It was invaded and occupied by Japan in modern times but then was recovered by China from the Japanese colonial rule in 1945.

 国民党は、内戦(1945〜49年)に敗れて台湾に逃れた後、台湾と中国大陸は法的にも憲法上も同じ国に属すると主張してきた。国民党が台湾を統治していた数年前までは、大陸と協調して一国主義を貫いていた。民進党は地方選挙で勝利したため、中国の主権から島を分離し、2300万人の人々に台湾の将来を決めてもらおうとしている。14億人の中国国民の願望と意志に、どう応えればいいのか。台湾の一時的な政治的混乱のために、中国の主権が譲歩して離脱を受け入れるべきなのか?

 After the Kuomintang lost the Chinese civil war (1945-49) and fled to Taiwan, the party has insisted that both the island and the Chinese mainland belong to the same country legally and constitutionally. Until several years ago when the Kuomintang was ruling the island, it coordinated with the mainland and maintained the one-China principle. The DPP won regional elections and thus has been trying to have the island secede from China's sovereignty and let 23 million people decide Taiwan's future. One must ask: How can 1.4 billion Chinese people's desire and will of reunifying the county be responded to properly? Should China's sovereignty yield and accept the secession just because of Taiwan's temporary political disturbance?

 台湾の主権は中国に属しており、14億人が共同で所有している。もし民進党当局が、台湾の主権は中国の主権から分離でき、「2300万人」のものでしかないと主張するなら、これは根本的な対立である。

 Taiwan's sovereignty belongs to China, which is jointly owned by 1.4 billion people. If the DPP authorities insist that Taiwan's sovereignty can be separated from the sovereignty of China and only belongs to "23 million people," this is a fundamental confrontation.

 民進党が対立を続ければ、最終的には実力がものを言う。これが法則であり、至極当然のことである。民進党当局は、台湾には"独立"した未来に導くことができる"民主的な力"があると宣伝している。これはカルト的な扇動であり、自己欺瞞である。

 Should the DPP authorities continue the confrontation, the strength will have the final say. This is the law and the overriding truth. The DPP authorities touted that Taiwan has the "democratic power" that can lead the island to an "independent" future.
This is cult-styled instigation and self-deception.

 私たちが言う強さとは、両岸対決の展開を左右する軍事力や経済力のことだけではない。誰の主張が国際法上の支持を得られるかということでもある。確かに、ハード的な軍事力や経済力では、大陸が絶対的に有利だ。また、国際法レベルのソフトパワーも持っている。

 The strength we are talking about is not only the military and economic power that can determine how the cross-Straits confrontation evolves. It is also about whose claims can gain support from the international law. Undoubtedly, the mainland has an absolute advantage in terms of hard military and economic power. It, too, has soft power at the level of international law.

 民進党政権と台湾の急進勢力は、米国が包括的かつ軍事的に台湾を防衛することに期待を寄せている。しかし、事態の進展により、ワシントンが台湾に信頼できる軍事的保護を提供できないことが次第に明らかになってきた。ワシントンは、もはや両岸の状況の発展を支配できる決定的な力ではないのである。

 The DPP authorities and radical forces within Taiwan are pinning their hopes on the US to comprehensively and militarily defend Taiwan. However, the development of the situation has made it increasingly clear that Washington cannot provide Taiwan with reliable military protection. Washington is no longer a decisive force that can dominate the development of the cross-Straits situation.

 劉副代表が描いた統一後の生活の光景は、いずれ実現するだろう。それは決して中国大陸の「希望的観測」ではない。むしろ、民進党当局の統一への抵抗は、傲慢な希望的観測である。中国大陸は両岸統一を実現するだけの力を持っている。しかし、民進党当局の反対運動はいずれ潰されるだろう。それを維持する力はない。それは時間の問題である。そして、それは明らかに加速的に近づいている。民進党政権は、あまり傲慢になってはいけない。歴史で頭を整理すべきである。

 The scene of life after reunification deputy head Liu described will eventually come true. It is by no means "wishful thinking" of the Chinese mainland. Instead, the DPP authority's resistance to reunification is arrogant wishful thinking. The mainland has enough power to realize cross-Straits reunification. However, the DPP authority's opposition will eventually be crushed. It has no strength to sustain. It is just a matter of time. And it is apparently approaching in an accelerated way. The DPP authority should not be too arrogant. They should clear their heads with history.
(Global Times 2021.10.31 Who is lost in lies and delusions, DPP authorities or Chinese mainland?」)

 「『偉業は.偉人を得ずして成ることがない。そして、偉人たちは偉大たらんと決意する意志力により偉大になる』
 ドゴールは、そう書いている。強い意志を持ち、他者の意志を動かすすべを知っている。私が前章までに書いてきた指導者たちは、程度の差こそあれ、いずれも歴史に自己の意志を刻んだ人々だった。彼らが通常人より一段と高いところにいるのは、彼らがそうあろうと"願望"したからではなく、"決意"したからである。この差が、権力とその行使を理解するうえで非常に大切になってくる。願望は受け身だが、決意は能動。追随者は願望し、指導者は決意する。」(『指導者とは』リチャード・ニクソン著 徳岡孝夫訳 文春文庫 2013年12月20日第1刷発行 414頁)

 「ちよつと見たところでは、われわれの時代に偉大な指専者と目された人は、みなずいぶん高齢だったという感がする。だが、よく考えると、その印象は誤りであって、多くの指導者が『荒野にさまよう』過去を持ち、その間に得た洞察力と英知、復帰のための闘争が養った力などが、のちに威力を発揮したのだった。チャーチル、ドゴール、アデナウアー、みな一般人ならとっくに隠居している年齢になってから人きな仕事をした人である。戦う英国を率いて立ったチャーチルは、すでに六十六歳だった。ドゴールは六十七歳で第五共和制をつくった。アデナウアーが首相になったのは七十三歳である。トゴールは七十八歳でなお人統領であり、チャーチルは八十歳で首相、アデナウアーに至っては八十七歳で依然として首相だった。」(同上書 452頁)

 "トゴールは七十八歳でなお人統領であり"、この点でいうと、"バイデンは七十八歳でなお大統領であり"となって、見事に合致する。と云うか、バイデン氏の生年月日は、1942年11月20日であるから、直ぐにトゴールを越す。

 そうすると、これまで見てきたところでは、後から修正を入れられている点から、強い意志の力ではないようだ。その部下の補正を覆すこともないのだから。
 つまり、単なる"追随者の願望"に当て嵌まるようだが、それとも違う、ましてや"荒野にさまよう"のでもなく、"無意識言動"のようにみえる。

 もっとも<朝改暮変>はアメリカの十八番なのだ。

 トルーマンが,国共内戦に対する中立的立場を明確にし,台湾への軍事介入を否定する声明を発表したが、朝鮮戦争勃発で、台湾海峡に第七艦隊を派遣決定、つまり、非介入方針からの"大転換"だった。(高橋 慶吉「アメリカの戦後台湾政策―形成期を中心に」)

 「ブッシュ政権は当初から世界の軍縮の流れに逆らい、過去苦労して国際的軍縮の方向に向けた努力をかってに一国主義的見地から破ってしまう。包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准に反対し、生物兵器の開発・生産・貯蔵・使用を禁止した「生物兵器禁止条約」の強化案を廃案に追い込んだ。レーガン大統領のSDIの後続とも取れるミサイル配備計画(MD)との関連で、弾道弾迎撃ミサイルの配備を制限した米-ロ間のABM制限条項に関し、二〇〇一年一二月、一方的に脱退通告、そして最後に地球温暖化を防ぐ京都プロトコルからもアメリカの経済に反するという理由で離脱した。九月一一日のテロで、その日から世界が変わったようなことを言うが、それより以前から軍産複合体を復活させ好戦的であった。クリントン時代の一九九四年に禁止した小型原爆の研究開発の再開にブッシュ・ジュニア大統領は二〇〇三年署名し、原爆使用の可能性をラムズウエルド国防長官も検討している。九・一一を戦争と称して、米国民の支持率を上げ、戦時状態を持続させようとする。いったいブッシュ・ネオコン政権は何を考えているのか、理解に苦しむところがある。」(「アメリカと日本 相克の半世紀 科学技術の国際競争力」中山茂著 朝日選書2006.02.07 257頁)

 一国主義(手前勝手主義)はアメリカの宿痾のようだ。世界は、ならず者国家アメリカにいつまで翻弄・蹂躙され続けるのか。帝国・覇権主義の破壊的アメリカは、国際社会の不安定要因である。

 無能政権の執拗さが更に世界をカオスに陥れる。

 老頭児の白昼夢に真理あり…か。

 此の病者に塗油するもの出でよ。

 では序に、此方も<昔者荘周夢為胡蝶>、真の実在に触れるか。

(註:訳は私訳です。)


 故意なのか、無知なのか - 2021年10月27日

 新聞の見出し、「ウイグル問題で応酬 国連委 43ヶ国非難声明×中国反論」に違和感を覚える。

 寧ろ産経新聞(THE SANKEI NEWS)の「ウイグル人権 欧米43カ国が懸念声明も62カ国が擁護」(2021.10.22)のが、受け入れ易いし、事実を偏見なく映している。

 ×印はこの場合、対戦カードの"対"の意味であろう。よもや"カップリング"の其れではなかろう。

 本文33行の記事を読み進めれば、下段最後から5行目に「中国を擁護するキューバなど六十二カ国」云々とある。
 よもや野球で、中日3-5ヤクルトで試合終了の時、"中日3×ヤクルト"とは云うまいし、書けないし、意味不明となろう。
 この点でも、直截な表現で産経新聞の見出しのほうが優る。

 43ヶ国非難声明に中国反論と、"43ヶ国対中国一カ国"のみのように際立たせ、中国を悪役に仕立て、孤立無援のごとくに謀る、いわゆる欧米側(特にG7)の封じ込め策とうに身内意識を重ね、それとなくメディアが忖度・加担し、読者を煽るようでは、時局を見誤る偏見を読者に植え付けることになる。
 また、日中関係の対立を醸成する印象操作とも受け取られ兼ねない。

 ちょっとした偏向報道も積もれば‹蟻の穴から堤も崩れる›で、他国に対する憎しみ・蔑みの感情が国民に蔓延り、延いては要らぬ紛争の火種づくりともなる。
 歴史が教えるところである。

 依怙贔屓はメディアの自殺であると考えるべきだ。

 "×"での公平を期すならば、見出しは例えば、"ウイグル問題で応酬 国連委 43ヶ国非難声明×62ヶ国の中国擁護声明"、とかではないだろうか。

 いずれにしても、報じるメディアは、非難側の事実関係も反駁側の事情も知り得ないのが、本当のところではないのか。ならば余計、両者を公平・中立に扱い読者に報じる必要があろう。
 さもないと、メディア自身が容易に権力側の餌食となり、害を垂れ流す構図となる。

 因みにThe Asahi Shinbunも「43 countries criticize China at U.N. for repression of Uighurs」(THE ASSOCIATED PRESS October 22, 2021 at 12:50 JST)似た様である。

 その43カ国であるが、32カ国がアフガニスタン駐留多国籍軍に参加、残りの11カ国は同盟国・連邦加盟国・アメリカと自由連合盟約(=COFA)国・特別な協調関係国などである。

 20年に及ぶ欧米(西側)総出のアフガニスタン戦争、其処では人道も人権も皆無、あるのは殺戮・拷問などで、為たい放題が罷り通る。

 "新疆ウイグル自治区の状況を特に懸念"と、非難する其の事が、今其処にある非難する側の指弾される現実なのだが、メディアの追及は甘い。
 由って、他国を非難・讒言することで抜け抜けと、敗走後のアフガニスタンの惨劇を忘却の彼方に葬り去ろうとする。
 そして、性懲りもなく更に西側は新たな戦場を求め駒を東アジアに進め、シナ海・太平洋・インド洋を我が物顔に遊弋する。

 西側は、中国を苛つかせ誘い出す、その難癖の手口は、不誠実にも台湾を殊更云い立てることである。まるでそうすることが"正義"のように。

 欧米列強と組む日本、中国に向かう姿は"きな臭い既視感"呼び覚ますではないか。

 西側諸国は惨めな潰走に終わっても、戦争は人権・人道無視の最たるものだと銘ずることなく、次の標的に向かう。

 が、残されたアフガニスタンの試練は続く。

 「アメリカとその同盟国は2001年、テロとの戦いや治安確立を口実にアフガニスタンを攻撃しましたが、この占領行為は同国で、戦闘や衝突、経済インフラの消失の原因となり、さらに情勢不安、テロ、麻薬生産量も増加させました」と(ParsToday 2021.10.26「米元特使が、アフガンでの自国の失敗を認める」)。

 新型コロナウイルスによる73万5801人の死者数(10.24 現在米ジョンズ・ホプキンズ大)は、米国の何を物語るのか。人権・人道・福祉の原点である、生命保全が軽視されている証拠ではないのか。
 米国の人口 329,065千人に対し死者の数は73万7321人であり、中国の人口 1,441,860千人に対し、4849人なのだ。この差の現実を直視すべきではないのか。(WHO2021年版の世界保健統計=World Health Statistics 中日2021.10.27)
 他国の制度を非難することで、死者の数は減らせないし、生命軽視では唱道する人権などで他に説教するなど、烏滸がましい。

 「こうもりが夜中に鳴き騒いだところで、真昼の太陽の光はふりむきもせぬし、精衛が海を埋めようと石を口にくわえたところで、大海原の勢いはびくともせぬ。しかしながら、闇が光を乱し、ちっぽけなものが偉大なものを馬鹿にするならば、髪の毛一本すら微動だにせぬとはいえ、民の耳目をけがすこととなり、腰の坐らぬともがらは、偽りの言葉にふりまわされていつまでも道に迷い、本末顚倒の連中は、邪説の尻を追いかけまわして永遠に浮かばれぬであろう。」(『大乗仏典<中国・日本篇>4 弘明集 広弘明集』中央公論社 昭和六十三年三月二十日初版発行 12頁)

 では43カ国非難声明だが、次のようである。

新疆ウイグル自治区の人権状況:共同声明
フランス国連代表部は43カ国を代表して、国連総会第3委員会で地域横断的な声明を発表した。

私は、以下の43カ国を代表して、この地域横断的な共同声明を発表することを光栄に思います。
アルバニア、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、エスワティニ、フィンランド、ドイツ、ホンジュラス、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、ラトビア、リベリア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、マーシャル諸島、モナコ、モンテネグロ、ナウル、オランダ、ニュージーランド、北マケドニア、ノルウェー、パラオ、ポーランド、ポルトガル、サンマリノ、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、トルコ、イギリス、アメリカ、そして私の母国であるフランスです。

私たちは、新疆ウイグル自治区の状況を特に懸念しています。

信憑性のある報告書によると、100万人以上が恣意的に拘束されている「政治的再教育」キャンプの大規模なネットワークが存在していることがわかっています。拷問や非人道的な扱い、強制的な不妊手術、性的・ジェンダー的暴力、強制的な子供の分離など、広範囲かつ組織的な人権侵害の報告が増えています。また、宗教・信条の自由、移動・結社・表現の自由、ウイグル文化に対する厳しい制約があります。広範囲にわたる監視は、ウイグル人やその他の少数民族の人々を不当に標的とし続けています。

私たちは、国連の特別手続きが3月29日に発表した声明や、国連の専門家が発表した宗教的・民族的少数派への集団的抑圧について述べた書簡で表明した懸念も共有しています。

そこで私たちは、中国に対し、国連人権高等弁務官とその事務所、および関連する特別手続きの任務保持者を含む独立したオブザーバーの新疆への即時かつ有意義で自由なアクセスを認めること、および新疆に関連するCERDの8つの勧告を早急に実施することを求めます。我々は、これまでの調査結果を発表するという高等弁務官の発表を歓迎するとともに、可能な限り早く発表することを奨励する。新疆ウイグル自治区の人権状況に対する懸念に鑑み、我々はすべての国に対し、ノン・ルフールマンの原則を尊重するよう求める。また、中国に対し、ICCPRを遅滞なく批准することを求めます。

私たちは、中国が法の支配の完全な尊重を確保し、人権保護に関する国内法および国際法上の義務を遵守することを強く求めます。

ありがとうございました。

Human rights situation in Xinjiang: joint statement
On behalf of 43 countries, the French Permanent Representative to the United Nations gave a cross-regional statement at the UN General Assembly Third Committee.

I have the honor of delivering this cross-regional joint statement on behalf of the following 43 countries: Albania, Australia, Austria, Belgium, Bulgaria, Canada, Croatia, Czech Republic, Denmark, Estonia, Eswatini, Finland, Germany, Honduras, Iceland, Ireland, Italy, Japan, Latvia, Liberia, Liechtenstein, Lithuania, Luxembourg, Marshall Islands, Monaco, Montenegro, Nauru, Netherlands, New Zealand, Northern Macedonia, Norway, Palau, Poland, Portugal, San Marino, Slovakia, Slovenia, Spain, Sweden, Turkey, United Kingdom, United States, and my own country France.

We are particularly concerned about the situation in the Xinjiang Uyghur Autonomous Region.

Credible-based reports indicate the existence of a large network of “political re-education” camps where over a million people have been arbitrarily detained. We have seen an increasing number of reports of widespread and systematic human rights violations, including reports documenting torture or cruel, inhuman and degrading treatment or punishment, forced sterilization, sexual and gender-based violence, and forced separation of children. There are severe restrictions on freedom of religion or belief and the freedoms of movement, association and expression as well as on Uyghur culture. Widespread surveillance disproportionately continues to target Uyghurs and members of other minorities.

We also share the concerns expressed by UN Special Procedures in their 29 March statement and the letter published by UN experts describing collective repression of religious and ethnic minorities.

We thus call on China to allow immediate, meaningful and unfettered access to Xinjiang for independent observers, including the UN High Commissioner for Human Rights and her Office, and relevant special procedure mandate holders, as well as to urgently implement CERD’s eight recommendations related to Xinjiang. We welcome the High Commissioner’s announcement to present her findings to date and encourage publication as soon as possible. In view of our concerns about the human rights situation in Xinjiang, we call on all countries to respect the principle of non-refoulement. We also call on China to ratify without delay the ICCPR.

We urge China to ensure full respect for the rule of law and to comply with its obligations under national and international law with regard to the protection of human rights.

Thank you. (出典:GOV.UK https://www.gov.uk/government/speeches/joint-statement-on-the-human-rights-situation-in-the-xinjiang)

 では次に62カ国側を見る。

62カ国が中国の人権促進・保護を支持する共同声明(2021.10.21)

10月21日、キューバは62カ国を代表して、第76回国連総会第3委員会において、中国の国情に適した人権発展の道筋を支持し、人権の名のもとに中国の内政に干渉することに反対する共同声明を発表しました。

共同声明は、国家の主権、独立、領土保全の尊重、主権国家の内政に干渉しないことが、国際関係を支配する基本的な規範であることを強調しています。香港、新疆ウイグル自治区、チベット関連の問題は中国の内政であり、いかなる外部勢力の干渉も許されない。共同声明は、中国が香港特別行政区において「一国二制度」を実施することを支持することを改めて表明しています。

共同声明では、すべての当事者が国連憲章の目的と原則、普遍性、公平性、客観性、非選択性の原則を遵守し、各国の国民がそれぞれの国情に応じて人権発展の道を独自に選択する権利を尊重し、すべての人権を同じように重視して取り扱うべきであるとしています。また、すべての国に対し、多国間主義、連帯、協力を堅持し、建設的な対話と協力を通じて人権を促進、保護することを求めています。共同声明では、62カ国が人権の政治化や二重基準に反対することを強調しています。また、政治的な動機や偽情報に基づく中国への根拠のない申し立てや、人権を口実とした中国の内政への干渉にも反対しています。

62 countries made joint statement in support of China's promotion and protection of human rights 2021/10/21

On October 21st, Cuba delivered a joint statement on behalf of 62 countries at the Third Committee of the 76th Session of United Nations General Assembly to support China’s human rights development path suitable for its national conditions, and oppose any interference in China’s internal affairs in the name of human rights.

The joint statement stresses that respect for sovereignty, independence and territorial integrity of states and non-interference in internal affairs of sovereign states represent basic norms governing international relations. Hong Kong, Xinjiang and Tibet related issues are China’s internal affairs that brook no interference by any external forces. The joint statement reiterates support for China’s implementation of “one country, two systems” in the Hong Kong Special Administrative Region.

The joint statement states that all parties should abide by the purposes and principles of the Charter of the United Nations and the principles of universality, impartiality, objectivity and non-selectivity, respect the right of the people of each state to choose independently the path for human rights development in accordance with their national conditions, and treat all human rights with the same emphasis. It calls upon all states to uphold multilateralism, solidarity and collaboration, and to promote and protect human rights through constructive dialogue and cooperation. The joint statement emphasizes that the 62 countries oppose politicization of human rights and double standards. They also oppose unfounded allegations against China out of political motivation and based on disinformation, and interference in China’s internal affairs under the pretext of human rights.
(出典:http://chnun.chinamission.org.cn/eng/hyyfy/t1916014.htm)

 62カ国側の経緯詳細は、「100 countries support China on human rights amid US-led smears at UN session」(By GT staff reporters Published: Oct 22, 2021 10:27 AM Updated: Oct 22, 2021 04:45 PM)をも参照されるとよい。

註:訳は私訳です。

引用・参照

中日新聞 2021.10.23 朝刊4面右下の見出し、「ウイグル問題で応酬 国連委 43ヶ国非難声明×中国反論」


 錯誤大国、アメリカ - 2021年10月18日

 米国は常に侵略(攻撃)を受ける側よりも大きな不安を擁している。故に、侵略する。

 が、その不安は"すべての事物または出来事が存在するには十分な理由がなければならない"という、正気の思考を守れていないからである。特に理性も知性も失った欧米・西側に与する国々は、正気にかえるべきである。

 米国は妄想を抱いた国である。それも甚だしく常軌を逸している。そのような米国は信頼するに足りる国なのだろうか。妄想は国の内外を問わず、国民であろうが同盟国であろうが、全てが疑心の対象となる。
 まさに米政権は嘘の連発で、そして自分の嘘に搦め捕られ自分自身を見失う、‹病膏肓に入る›である。

 他国土の侵略では、世界的諜報(スパイ)網を駆使し、陰謀・権略を恣にし、戦闘員は無論の事、一般市民の殺人、強姦、虐殺、拷問を繰り返す、加えて有りと有らゆる新兵器等の実験の場にする。
 他国土の荒廃、環境汚染等は端から問題ともしない非道ぶりなのだ。

 そう、「我々はうそをつき、だまし、盗む」(ポンペオ前米国務長官)と自らに言及する。
 しかし、此の米国に向ってまともに意見をし、非難あるいは制裁を加えようとする西側諸国は皆無であり、勿論、人権・自由を楯に取っての無軌道ぶりを諫めることなど、できやしない。
 そう、できないのだ。世界一の軍事力と経済大国の米国に刃向かうなど、自殺行為となるからだ。民主・人権・自由の価値観の建前上の擁護者に説教すれば、下手すると逆に"制裁"を喰らうことになる。‹尾を振る犬は叩かれず›だ。それに、何と言っても、合点尽の‹同じ穴の貉›だからでもある。

 戦争中には何も言わないのに、米国が言葉の裏付けもないまま、夜逃げ同然にとんずらを決め込む段になると、逃げ出す側の人権・人道云々を言い募り、バリアを築く。西側諸国の二枚舌が忙しくなる。所詮、民主・人権・自由の価値観などは仲間内のものであり普遍性もなく、他国を侵略・批難するツールと化している。

 米国に雷同し徒党を組んで戦場に駆り立てられ、まんまと権謀術数の罠に掛かるのが、西側諸国の実情なのだ。親ガモの米国が右と云えば右を、左と云えば左を向く、子ガモ連なのだ。
 ‹目高も魚の中›で、日本も末席を汚し‹頭の上の蠅も追えない›、否、"頭の上の爆弾も避けられない"のに、一丁前の口をきく。「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、防衛関係費の増額を目指す」(「自民党政策BANK」)と、"子ガモ連"ぶりなのだ。「新しい資本主義」と言い募るが、資本主義に新しいも古いもないはずで、それこそ言葉の綾で、資本主義を進めた結果の二極分化(富者と貧者)による社会基盤の弱体化を取り繕うだけである。資本主義を制御できる訳ではない。
 或いは社会主義国家と比較し、その標榜する自由主義と資本主義の劣弱性を隠ぺいするためなのか。

 自民党新総裁に選出された(09.29)岸田文雄前政調会長も、"民主主義など基本的価値観を守る"ことを外交安全保障の政策の一つに挙げた。
 つまり、民主主義などの基本的価値が自壊作用を起しているという認識なのか、或は他の政治体制に取って代わられるという危機感を懐いているのか、何方にせよ、米国を含め西側諸国が民主主義・自由・人権等を声高に云い募るのは、劣弱となっている証なのだろう。さもなければ、国際社会に対立を引き起こす爲のものであろう。

 思想主義的対立あるいは国家体制の角逐を安全保障の一環と位置付けるのなら、自由主義的社会制度(民主的政治制度)は既に理論的に破綻している。

 引き摺られ国家の先行きは、‹飛鳥尽きて良弓蔵めらる›の運命か。「戦略上の信頼というのは、言葉として矛盾していると多くの人が考える。戦略家たちは、仮想敵の言い分を限られた範囲内でしか信頼しない。なぜなら言い分は変化するものだからである。そして、主権国家の根本とは、他国の制約を受けずに自ら決断を下す権利を有していることである。主権国家同士の関係には、必ずと言っていいほど、互いの国力に基づく一定の脅威が存在する。」(『キッシンジャー回顧録 中国(下)』ヘンリー・キッシンジャー著 岩波現代文庫2021年1月15日第1刷発行643-644頁)

 しかしこの観点からすると、日本のみならず、‹同じ穴の貉›国家群のドンのみが主権国家である資格を有することから、演繹すると、今や、米国と中国のみが夫々の主権国家を代表することになるか。"国家群"にとって肝心なことは、そのような主権国家は、"仮想敵の言い分"を‹手の平を返す›ように可能であることから、注意を怠らず、深入りしない行動を取ることだ。それが、"永遠の属国化"を逃れる外交方策である。

 先人の言を辿って見よう。現代の欧米一辺倒の政治家では見抜けない、英米の狡猾さ、二枚舌、偽善性を指摘する。しかし、彼、近衛公の指摘も、必ずしも単に否定された訳ではなく、自己肯定、正当化への踏み台としたのだ。

 『非常時局にたつ近衛公』78-80頁からの抜粋。
 「曾てバーナード・ショウは其の「運命と人」の中に於てナポレオンの口を藉りて英國精呻を批評せしめて曰く『英國人は自己の欲望を表すに當り道徳的宗教的感情を以てする事に妙を得たり。しかも自己の野心を神聖化して發表したる上は、何處迄も其目的を貫徹するの決斷力を有す。強盗掠奪を敢てしながらいかなる場合にも道徳的口實を失はず、自由と獨立を宜傅しながら殖民地の名の下に天下の半を割いて其の利益を壟斷しつゝあり」と。ショウの言ふ所稍々奇矯に過ぐと雖、英國殖民史を讀む者は此言の少くも半面の眞理を穿てるものなることを首肯すべし。
 吾人は我國近時の論壇が英米政治家の花々しき宜言に魅了せられて、彼等の所謂民主主義人道主義の背後に潜める多くの自覺せざる又は自覺せる利己主義を洞察し得ず、自ら日本人たる立場を忘れて、無條件的無批判的に英米本位の國際聯盟を謳歌し、却つて之を以て正義人道に合すと考ふるが如き趣あるを見て甚だ陋態なりと信ずるものなり。吾人は日本人本位に考へざる可からず。
 日本人本位とは日本人さへよければ他國はどうでもかまはぬと云ふ利己主義に非ず。斯ろ利己主義は誠に人道の敵にして、戰後の新世界に通用せざる舊思想なり。吾人の日本人本位に考へよとは、日本人の正當なる生存權を確認し、此權利に對し不當不正なる壓迫をなすものある場合には、飽く迄も之と爭ふの覺悟なかる可からずと言ふ也。これ取りも直さず正義人道と人道主義とは必ずしも一致せず、吾人は人道の爲に時に平和を捨てざる可らず。
 英米論者は平和人道と一口に言ひ、我國にも之に倣ひて平和即人道也とする迷信家あれど、英米人の平和は自己に都合よき現狀維持にして之に人道の美名を冠したるもの、ショウの所謂自己の野心を神聖化したるものに外ならず。彼等の宣言演説を見るに皆日く、世界の平和を攪亂したるものは獨逸の専制主義軍國主義なり、彼等は人道の敵なり、吾人は正義人道の爲に之を膺懲せざる可らず、即ち今次の戰爭は専制主義軍國主義に對する民主主義人道主義の戰なり暴力と正義の爭なり、善と惡との爭なりと。吾人と雖今次戰爭の主動原因が獨逸にありし事即ち獨逸が平和の攪亂者なる事は之を認むるのみならず、戰爭中に於ける獨逸の行動が正義人道を無視したる暴虐殘忍の振舞多かりし事に對しては深甚の憎惡を禁ずる能はざるものにして、英米の論者が是等の暴力的行爲を罵るは誠に當然なりと思考するものなれど、彼等が平和の攪亂者を直に正義人道の敵なりとなす狡猾なる論法に對して、其の根據に於て大に不服なきを得ず、平和を攪攬したる獨逸が人道の敵なりとは歐洲戰前の狀態が人道正義より見て最善の狀態なりし事を前提として初めて言ひ得る事なり。知らず、歐洲戰前の狀態が最善の狀態にして、此狀態を破るものは人類の敵として膺懲すべしとは何人の定めたることなりや。」(『非常時局にたつ近衛公』福岡醇祐著 昭和十二年十月五日發行東京閣 国立国会図書館デジタルコレクション)

 "戦争は人権侵害の最たるものだ"という自覚が、西側諸国には皆無に近い。
 民主国家には人権問題が皆無であるかの如く、鉄面皮を以て、体制の相違する国家を責め立てる。しかも、讒言でだ。

 新型コレラ・変異株が猖獗を極める最中、その侵略の旗印である民主・人権・自由は機能したのだろうか。否、今、自由主義体制がその人権、つまり、国民福祉の基本である人命の点で、台頭する政治体制を異にする国家に甚だしく見劣りするのが、現状である。
 国民の生命保全を政治の第一に置くことが、真の民主・人権の基礎であることを、忘失している。その様な国家は国民の信頼を失い衰亡への途を辿る。

 "戦争は敵味方に関係なく人権侵害の最たるものなのだ"との自覚が無い米国に、他国を非難・制裁する資格はない。その批難・制裁がまた人権侵害になっていることに気付くベきである。
 病魔におかされた世界一のテロリスト国家である米国は最早恢復不能なのか。狂気は宇宙空間にまで及ぶ。「米国は宇宙空間をあたかも『戦闘行為を行える新たな領域』のごとく、あからさまな態度をとり、宇宙軍、宇宙司令部を個別に創設した」と(sputnik2021.08.26)。

 「不屈の自由作戦(Enduring Freedom)」、2001年10月7日アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン政権への軍事攻撃を開始、同年11月タリバン政権は崩壊。が、執拗に20年も戦争を続けた。そして、米主導の西側は敗けた。

 今年(2021年)、バイデン米国大統領は8月31日迄の駐留米軍の撤退を表明。
 が、撤退の迫る中、反政府武装勢力タリバンが政権を短期間で奪取し、‹元の木阿弥›となる。不屈(不朽)自由作戦が"腐朽の不自由作戦"に堕落した瞬間だ。米国傀儡政権のガニ大統領は逸早く国外(ウズベキスタン)逃亡。アフガン政府は15日にタリバンに降伏を宣言。米国の“面子”は丸潰れとなった。“面子”の問題は中国だけに限らない。

 ‹面目玉を踏みつぶ›されたのを耐え忍ぶこともできず、米国は ‹恥の上塗り›をする。
 バイデン大統領、「(アフガン軍)自ら戦わない戦争で米軍が戦ったり、死んだりすることはできない」と、アフガン軍・政府を批判する始末である。しかし、この理屈はおかしい。なぜなら米国が撤退云々する迄は、アフガン軍や政府は共に戦っていたことの証明となるからだ。
 米軍が敗走することはアフガン軍・政府も知り、"一将逃げ去りて万骨枯る"では浮かばれないと考えたのか。米国が勝手に侵攻し、勝手な思惑でアフガニスタンを‹引き摺り回›し、勝手に敗走したのだ。全ては米国の所為である。‹敗軍の将は兵を談ぜず›である。
 「米国防総省は最新の報告書の中で、現役の米陸軍兵士の過去3カ月間の自殺件数が、昨年同時期と比べて46%増加したと発表」(ParsToday 2021.10.16「米陸軍兵士の自殺数が、46%増加」)。

 「アフガン軍・警察の死者は米軍の三十倍近くとされ、米軍関係者からも『米軍が助けないと分かったからアフガン軍は戦わなかったのだ』との指摘も出ている」。
 バイデン氏、血迷うたか、同盟国を見捨てたとの批判に、「北大西洋条約機構(NATO)の同盟国が攻撃されればわれわれは(集団防衛を定めた)条約第五条で反撃する」、「日本とも同じ、韓国とも同じ、台湾とも同様だ」と。台湾については米高官が後に、『米国の台湾政策に変更はない』と声明を出し発言の修正を余儀なくされた」(中日2021.08.24)。
 (註)
 ・日米相互協力及び安全保障条約の第五条[共同防衛]には、「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
 ・北大西洋条約の第五条は、締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。したがつて、締約国は、そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が、国際連合憲章第五十一条の規定によつて認められている個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執ることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する。
 ・米韓相互防衛条約は、第一条 締約国は、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて、国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、国際連合の目的又は締約国が国際連合に対して負つている義務と両立しないいかなる方法によるものも慎むことを約束する。第二条 締約国は、いずれか一方の締約国の政治的独立又は安全が外部からの武力攻撃によつて脅かされているといずれか一方の締約国が認めたときはいつでも協議する。締約国は、この条約を実施しその目的を達成するため、単独に及び共同して、自助及び相互援助により、武力攻撃を阻止するための適当な手段を維持し発展させ、並びに協議と合意とによる適当な措置を執るものとする。(日本政治・国際関係データベース)
 ・台湾については、「日米安保体制と台湾の国家安全保障 ―周辺事態法の適用を中心として― 著者 呉 春宜」に詳しい。

 ヘンリー・ジャクソン協会のサム・アームストロング氏は、「中国は、西洋の安全保障、自由の価値、国際的な法の支配を脅かし、危険にさらすような行動を続けている」、「中国には帝国主義的な野心があり、米国は一国の自決権と民主主義の原則を信じている」と。(THE SUN 2021.10.08「FLASHPOINTS Map reveals eight places where WW3 may erupt as expert says US-China conflict would be ‘most devastating in history’」)

 しかし、上述のサム・アームストロング氏の言葉は、そっくり米国にこそ当て嵌まるだろう。また、中国は、アメリカがアフガニスタンから撤退したことを喜んでいるのは間違いないとも言うが、バイデン大統領は逆に、"アメリカがアフガニスタンであと10年も泥沼にはまること"をと言っている。どちらにしろ、他国のことより、自国の行為(政策)を見直すべきだ。

 なお、ここで台湾の為政者について例えると、米国に扇動され暴徒化し、失敗した香港の雨傘運動に酷似している。米国にとっては民主であろうが、非民主であろうが無関係に御都合主義の権略を以て世界を非建設的な状況に追い込むことは、米国の歴史が証明している。
 それ故に、台湾は“一触即発”の状態となっている。既に米軍は台湾に潜入し、台湾兵士に手ほどきを授けている。米国が危機をもたらす。

 ダニエル・L・デイビス中佐(退役軍人)のINSIDER紙への寄稿内容抜粋:

 中国の攻撃を抑止する最善の方法は、台湾が自国の防衛に投資し、万が一、中国が武力行使に出た場合に最も厳しい痛みを与えることができる種類の防衛兵器や訓練を獲得するよう促すことだ。

 しかし、私たちは率直に言って、中国が抑止力を持たず、どんなに大きな代償を払ってでも台湾を攻撃する時が来るかもしれないことを認めなければならない。北京がそのような破壊的な道を選んだ場合、米国は中国との勝ち目のない戦争に巻き込まれて悪い状況を悪化させないようにしなければならない。

 誇りや民主主義への理解ある親近感から戦争を選択すれば、米国の軍事力は大きく損なわれ、台湾の占領を阻止できない可能性が高く、軍事的損失から回復するのに数十年かかる。

 要するに、中国と戦うことで失うものはすべてあり、得るものは何もない。しかし、勝ち目のない戦争に巻き込まれることを拒否することで、多くのものを得ることができる。

 もし中国が台湾を攻撃すれば、中国の侵略者に対して無期限のゲリラ戦を行うことが台湾の防衛戦略の一部であるため、今後何年にもわたって中国は首にアブラムシを抱えることになる - ベトナム戦争を通じて私たちが経験したように -。中国の通常攻撃がうまくいったとしても、軍艦、戦闘機、兵士などでかなりの損失を被ることになる。

 そうなると、たとえ成功したとしても、中国人民軍はひどく弱体化し、侵攻前のレベルまで戦力を回復させるには10年以上かかる。その間に、ヨーロッパや他のアジア諸国を説得して、我々と一緒になってバランスのとれた連合を組むことははるかに容易になり、北京の経済的目標は今後何十年にもわたって複雑化するだろう。

 台湾をめぐる中国との勝ち目のない戦争に巻き込まれることを拒否すれば、中国に対する我々の比較優位は劇的に高まります。中国の軍事力は戦闘による損失で著しく低下しますが、我々とすべての同盟国は完全な強さを発揮する。

 したがって、我々は台湾の自衛能力の強化を全力で支援し、台湾の政治指導者に現状維持を促すべきである。

 中国は台湾との最終的な統一を望んでいるが、武力を使わずに統一したいと考えている人が圧倒的に多い。現状が維持されている限り、また、台湾が自衛できるために中国軍が侵攻する際のコストが十分に高い場合には、海峡を挟んだ戦争が起こる可能性は低くなるだろう。(INSIDER 2021.10.11「The US can't fight China for Taiwan, but it can help Taiwan make China think twice about starting a war」)

 台湾を"カモ"にし、その上米国にも実利があるという思考である。肝心要は、米国は台湾を守らないということだ、つまり、台湾のために中国と一戦は交えない。
 そうすると、米国に倣い‹ちょっかいを出›している日本が、"友達信頼"で代理応戦することになるか。今の鼻息では駈付けさせられそうだ。

 タリバン報道官は米軍撤退について、「最後の米兵がカブールの空港を後にした。わが国は完全な独立を手に入れた」と(REUTERS 2021.08.31「タリバン「完全な独立」を宣言、カブールでは祝砲」)。
 「流血事態とタリバンとの衝突を避けるために国を離れた」と、腐敗した傀儡政権、ガニ大統領。国民を見捨てて逸早く逃れ、‹後は野となれ山となれ›である。米国がその逃亡を知らない筈はない。
 無能を極めたバイデン大統領、今更めく言辞を弄するが、前任者のトランプ氏も、「我々がカネを払うのをやめて撤退するや否や、戦うことを止めたのだ」、そして、最新兵器を手放した米軍にトランプ氏は激怒し、「数十億ドル、数十億ドルだぞ。最新型ヘリ『ブラックホーク』は今後、ロシアや中国、その他の国々の手にわたり、研究が進むだろう。なぜなら、世界でも最新の技術が使われているからだ」とも。(sputnik 20021.08.18)
 勝手に侵略し、勝手に逃げ去る米国の‹負け惜しみの減らず口›なのか。米国に問題解決能力なし、当事者としての自覚もなし、唯々問題を起すのみだ。

 イスラエルの新聞エルサレム・ポストは、「世界の管理は決してアメリカに任されるべきではなかった。アフガニスタンでの敗北は、米国の最後の帝国主義的戦争であるべきだ」、「そうした状況で、米国内の大都市はスラムの拡大により荒廃している。教育を受けておらず、貧しく、みじめで希望のない生活を送っている数百万の市民が住む場所、つまりアメリカ帝国は、自国民にすら関心を持たないものに変わってしまっている」と(ParsToday 2021.08.31)。
 極めて的を射た発言である。

 米国は、他国の人々の人権を侵害したり、低俗な政治的策略を弄したりするのではなく、まともな国として行動し、資源を米国民の福祉と人権の向上に投入することをお勧めする。そのような茶番劇は何の得にもならず、国際社会の笑いものになってしまうからだと。(Global Times 2021.09.17「US should act as a decent power to improve human rights rather than collude with terrorist group to contain China: Chinese mission spokesperson」)

 米国の支配者層は、産業界や金融界のトップ、国防総省の長官、妥協した議員、帝国主義的な大統領など、何十年にもわたって、国民に不利益な自分たちの利益を追求してきた。例えば、文明国の仲間入りをして国民健康保険を提供する代わりに、戦争とその準備のために年間1兆ドル以上の税金を費やしている。
 彼らは、自分たちが同じ利益を共有していると国民に偽って信じ込ませることで、このようなことをやってのける。人々は、外敵からの脅威に常にさらされており、保護する必要があると延々と言われる。確かに、これは保護のための騒動だ。
 その上、アメリカの軍事的冒険は、国内で自分たちを守るためだけでなく、海外でアメリカの自由の理想を広めるためのものだというセリフを聞かされている。それどころか、狭い利益を追求する米国の攻撃によって、罪のない民間人が何十万人も死んでいる。米国を攻撃する現実的な意図を持たない政府が、無慈悲な敵として標的にされる。軍国主義の支配者集団が暴走し、血と国民の財宝を貪っているのである。
 その一方で、国民健康保険制度を構築したり、住宅を提供したり、公的な高等教育を受けさせたりするための資金はないのだ。このように、国民にとっては悲惨だが、支配者にとっては素晴らしい政策に沿って国民を誘導する手品は、エリートの利益と大部分が結託している企業メディアによって可能になっている。体制側のメディアは、戦争の動機や国内で高まる絶望の理由を隠蔽している(Consortium News 「Consortium News: Exposing the Myths of America」2021.09.20)。

 米国は撤退間際になっても、そして其の後も、"聖戦の入れ子"と戦わざる得ない宿痾に苦しむという、"聖戦の虜"になった。加えて表向きの理由、民主・自由・人権・人道等の虜にもなっており、国家が存続する限り、"永遠の戦争"に従事することになる。

 永遠の戦争のための十分条件は、決して戦争をしないことである、と。
 時間や財源に制限されずに自由に戦うことができるようにするために、我々の組織は単に正式な戦争を宣言しないことを見つけ出した。(The American Conservative 2021.09.14「he Sufficient Condition For Forever War Is Never War」)。

 それとも、永遠の戦争でない"戦争"をすることになるのであろうか。アメリカ統合参謀本部議長のような人物が居れば、"狂気の政治家"に歯止めを掛けることができるかも知れない。(CNN 2021.09.17「New book reveals top US general's secret call to Chinese counterpart」)

 "李将軍、あなたと私はもう5年の付き合いになります。もし攻撃するなら、事前に連絡するつもりだ。驚くようなことはしません。突然のことではありません"と、マーク・A・ミリー陸軍大将。(BREITBART 2021.09.29「Milley Admits Telling Chinese Counterpart He’d ‘Probably’ Call Him if Attack Was Coming」)・(参考:SCMP 2021.10.03「China feared US was trying to provoke a reaction ‘that could lead to war’ in last days of Donald Trump’s presidency」・「SCMP 2021.09.28 Top US military official defends phone calls to Chinese counterpart made during final days of Trump presidency」)

 「アメリカ政府は良く、仲間割れした一家のような様相を示すことがある。」(『秘史朝鮮戦争』I・F・ストーン著 199頁 青木書店1966年12月1日再版発行)

 バイデン大統領、米国外交政策のビジョンについての演説で、"アメリカは戻ってきた。外交が我々の外交政策の中心に戻ってきた"、"アメリカの同盟関係は我々の最大の資産であり、外交でリードすることは、同盟国や主要なパートナーともう一度肩を並べることだ"と。(https://www.state.gov/dipnote-u-s-department-of-state-official-blog/america-is-back-president-biden-outlines-his-vision-for-u-s-foreign-policy/ 2021.02.05「“America is Back”: President Biden Outlines His Vision for U.S. Foreign Policy」)

 しかしながら演説を裏返す刮目すべき出来事はアフガニスタンから始まった。"心を同じくして"、同盟国はアフガンから‹後脚で砂をかけ›ながら、敗走した。残したのは‹後は野となれ山となれ›で、更なる無秩序、終結しない恐怖のテロ、逃げざまを曝して顕れた西側同盟諸国内の不信感、いずれにせよ、"敗けた、逃げた、仲間を見捨てた"となる。

「アフガン南部カンダハール市内最大のシーア派モスクにおいて15日金曜正午、金曜礼拝の最中に、このモスクの入り口と内部で2つの爆発が発生し、これまでに62名が死亡、68名が負傷」(ParsToday 20021.10.16「アフガン南部のモスクで爆発により数十人が死傷、ISISが犯行声明」)。

 レトリックを駆使する。「我々は、アフガンで歴史的な退避作戦を終え、最後の任務を終了した」、「戦争が終わった今、わが国の外交官や国際機関が率いる新しい章が始まった」と。(中央日報 2021.09.02)
 何事も無かったように振る舞い、その"醜さ"を包み隠し、"散乱した腐敗物や塵埃"の後片付けは"国際機関が率いる新しい章が始まった"と、其方に ‹下駄を預ける›狡智さだ。

 アフガンに関し、頬被りを決め込み、難は他に在りと、既に過去のことなのだろう。

 "アメリカの同盟関係は我々の最大の資産"の意味が闡明になる"意外なできごと"が持ち上がった。
 「AUKUS」である。オーストラリア・英国・米国の頭文字を並べた、 ‹屋上屋を架す›、否、更なる小さいマトリョーシカ人形の作製である。勿論、対中国牽制・包囲網の強化が表看板であることは国際情勢を齧る者なら、速答する。
 ANZUS(1951年)、Five Eyes(1956年)、クアッド(2007年)、そしてAUKUS(2021年9月)と、オーストラリアを取り巻く安全保障同盟関連である。

 インド太平洋地域の平和、安定、繁栄のためという御為倒しを言って、創設された此のAUKUS、同盟国のフランスには、‹寝耳に水›のようだ。其許りか、ただ事ではないのだ。仏と豪の間で進めていた潜水艦の開発計画が破棄され、660億ドル(約7兆2147億円)規模の建造契約が反故にされた。豪のモリソン首相と仏の間で、云った聞かぬの悶着が起きている。(契約額:sputnik 2021.09.16)

 要するに、フランスは米(英)国に横取りされたのだ。勿論、一番の鴨葱は豪である。

 「フランスはその自覚はないが、われわれはアメリカと戦争状態にある。そうだ。終わることのない戦争、経済戦争だ。一見、死者のない戦争に思えるが、じつは命がけの戦争だ」(『The American Trap―アメリカが仕掛ける巧妙な経済戦争を暴く』フレデリック・ピエルッチ マチュー・アロン著 ビジネス教育出版社)。

 「フランスの憤りは、米国の同盟国に対する背信行為の黒歴史に新たなページを加えたに過ぎない。長年にわたって欧州の政府要人に対する大がかりな盗聴を行い、新型コロナウイルス感染症の発生後は欧州の感染症対策物資を横取りし、さらにはアフガニスタンからの撤兵に際しては同盟国に一切配慮せず、至る所で徒党を組む米国は、実際に同盟国に苦汁をなめさせている。横暴な「アメリカ・ファースト」の考えの下で、米国は同盟国を自らの政治的利益を図るための道具と見なしており、そのために米国の作り上げた同盟国の体制はますます緩んだものになっている。
 英国とオーストラリア両国が考えねばならないのは、米国という、何度も信義に背いてきた同盟国に対して、自国の利益のために火中の栗を拾う価値があるのかどうかということだ。米国は核兵器保有国として、英国とつるんでオーストラリアのような非核保有国が軍事的な核技術を持つことに公然と手を貸すのは赤裸々な核拡散行為であり、朝鮮半島の核問題やイランの核問題などのホットな問題の解決に対して深刻なマイナスの影響をもたらし、国際的な平和と安全を害する。
 米国のような友人がいれば、他にまだ敵が必要か?-欧州理事会のドナルド・トゥスク前議長のこの警告は既に無数の事実によって証明されている。英国とオーストラリアがもしそれを忘れるなら、必ず悲しい結末を迎えるだろう」(CRI 2021.09.18「背後から刺す米国が英国とオーストラリアを売り払わないとは限らない」)。

 仏のルドリアン外相は、この騒動をフランスとアメリカ、オーストラリアとの関係における"危機"と述べた。(France24 2021.09.18「Australia made‘huge mistake’by cancelling submarine deal, French ambassador says」)

 オーストラリアがフランス製潜水艦を購入する契約を破棄したことについて、オーストラリアとアメリカの"二枚舌"、"侮辱"、"嘘"を非難し、同盟関係ではそのような遣り方は通用しないと。
 パリでは怒りの声が上がり、エマニュエル・マクロン大統領はキャンベラとワシントンの大使を召還するという前代未聞の行動に出た。(FRANCE24 2021.09.19「PM Morrison rejects French accusation that Australia lied over cancelled submarine deal」)

 ルドリアン氏は、これを「後ろからの一撃」と表現し、バイデン政権の行動は、ドナルド・トランプ氏の長い間ヨーロッパの同盟国を苛立たせた突然の政策変更の行動に、匹敵するものだと述べた。
 この騒動は、アメリカ最古の同盟国に深い溝をもたらし、バイデン政権下のパリとワシントンの関係がトランプ後にルネッサンスを迎えるという期待を打ち砕いた。(FRANCE24 2021.09.19「PM Morrison rejects French accusation that Australia lied over cancelled submarine deal」)

 「AUKUSは6月のG7サミットで極秘に合意、フランスは除外されていた。AUKUSは6月に開催されたG7サミットの中で合意形成されていたが、その内容はフランス側に通達されていなかった。英国政府が管理する合意文書には『極秘』と但し書きがされている」と(sputnik 2021.09.19「AUKUSは6月のG7サミットで極秘に合意、フランスは除外=英紙」)。

 オーストラリアのバーナビー・ジョイス氏は、フランスの怒りに対し、両大戦中に「何万人ものオーストラリア人がフランスの地で亡くなった」ことから、オーストラリアがフランスへの「親近感」や「愛情」を証明する必要はないと、反撃する。(The Guardian 2021.09.20「Barnaby Joyce says Australia proved its commitment to France during world wars amid Aukus dispute」)

 つまり、これらが米国の最大の資産の真の意味なのだ。"資産"であるからにして、如何様に運用・処分しようが、米国の都合次第なのだ。
 今や、EUも離れたイギリスである、米英と結託し、日本同様に真っ当な意見も理屈も持たない、そして米傀儡のスコット・モリソン首相は、‹鴨が葱を背負ってくる›という御誂え向きの相手なのだ。

 同じ鴨葱仲間の日本の茂木外相、無邪気にも、豪のペイン外相と電話で会談し、「オーストラリアが、アメリカ、イギリスと新たな安全保障の枠組みを創設したことを歓迎する意向を伝え、引き続き、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を深めていく方針を確認」と。(NHK WEBNEWS 2021.09.17)
 同じ穴の貉国家の日本、先々の事は毛程の心配もないようだ。

 第百代首相に選出された(10.04)岸田文雄首相、豪首相との電話会談で、「AUKUS創設を歓迎し、両首脳は東シナ海および南シナ海での一方的な現状変更の試みや経済的威圧に強く反対することで一致した」と。
 歓迎の理由は何なのだろうか。その理由を聞きたいものだ。(sputnuk 2021.10.05「岸田首相、豪首相と電話会談 AUKUS創設を歓迎」)

 協定が締結された数日後、インド外務省は、インド、日本、オーストラリア、アメリカの4カ国で構成されるQuadパートナーシップにオーカスは「関係ない」と述べた。オーカスは、米国の政策におけるインド離れを示す可能性もあるとの懸念か。インドが地域包括的経済連携協定(RCEP)からの離脱を決めたことも、またインドは、南シナ海、新疆ウイグル自治区、台湾、日韓の安全保障など、欧米の広範な関心事とはいまだに無縁である。また、多国間フォーラムにおいても、欧米諸国と一緒になってこれらの問題について懸念を表明することはない。(「SCMP 2021.10.02I「the Aukus alliance a sign of a US pivot away from India?」)

 米国は"問題"を後に残す遣り方で、将来の"蜜"を得る。

 米国は既にランド・パワー(Land Power)の地位を失いつつあり、頼はシー・パワー(Sea Power)、"自由で開かれたインド太平洋"であるが、ジェスチャー(実質は台湾を食い物・中国へは軍拡・領土拡張の名目を付与)ばかりで、本気ではやる気がない。したがって、豪・日本・インド・韓国などを煽て中国の前面に立たせる。"金儲け"では同盟国も売り喰らう、共食いの様相が進む。これが新自由主義市場の成れの果だ。

 EUは、もはや経済的なメジャープレーヤーとしてだけでは満足せず、戦略的に自律した地政学的勢力の重要な拠点となることを望んでいる。フランスがEU理事会議長を務める予定で、「欧州防衛に関するサミット」を開催する。
 米国のアフガニスタン撤退は、明らかにEUが防衛強化に向けて大きな一歩を踏み出すきっかけとなっている。欧州は撤退に反対するだけでなく、その方法にも反対している。さらに重要なことに、多くのヨーロッパ人は、アフガン撤退はアメリカが孤立主義に戻り、ますます頼りなくなっていることの表れだと考えている。
 そのため、彼らはワシントンへの依存度を下げたいと考えていると、中国社会科学院ヨーロッパ研究所の馮仲平所長は『環球時報』に語っている。(Global Times 2021.09.16「EU eyes geopolitical power in 2021 SOUA, loses faith in US」)

 さてマクロン大統領、"脳死状態"に陥っているNATOをどうするのか、独立した欧州防衛軍の設立を目指すのか。フランスは2022年1月1日に6ヶ月間の交代EU議長国を引き継ぐが、すでにEU内でのより緊密な軍事的統合への支持が高まっているようだ。9月2日、EUのジョセップ・ボレル外交政策局長は、「アフガニスタンでの出来事の後、今日ほど欧州の防衛力強化の必要性が明らかになったことはない」と言及した。一方で、5,000人規模の即応部隊の創設が提案されている。(Consortium News 2021.09.29「The ‘Atlantic Era’ & Europe After Angela Merkel」)

 「『はっきりさせておきたい。核武装した潜水艦ではない。動力に原子炉を使う通常兵器の潜水艦だ』。バイデン大統領は十五日の発表で、原潜導入に際し、NPTを完全に順守すると強調」とバイデン氏。」(中日2021.09.17)

 が、素直に頷けない。

 原子力潜水艦は、それ自体は核兵器の一種ではないが、核兵器を運搬する可能性を持っている。また、大量破壊兵器を運ぶための重要なプラットフォームにも属している。
 世界で原子力潜水艦を保有しているのは、核兵器を保有している中国、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、インドの6カ国のみであるが、これらの国はすべて核兵器を保有している。原子力潜水艦と核兵器が表裏一体の関係にあることは明らかだ。
 「AUKUS」は核兵器の材料となる核分裂物質を拡散する。NPT第3条第2項では、各加盟国は、さまざまな保障措置の対象とならない限り、特別な核分裂物質を非核兵器国に提供しないことを約束している。
 三国間(日中韓)の安全保障パートナーシップは、地域の軍拡競争を引き起こすことがほぼ確実である。  インド太平洋地域におけるキャンベラの平和の実績は、決して輝かしいものではない。韓国、ベトナム、アフガニスタンなどで不当な戦争に参加したオーストラリア軍があった。このように、オーストラリアが水中攻撃能力を強化することは、自国の安全保障を守るために軍拡競争の悪循環に陥る可能性のある近隣諸国にとっては朗報ではない。(GT 2021.09.19「AUKUS plans to provide nuclear submarines to Australia seriously endangers nuclear non-proliferation」)

 日本は好機と受け取り、防衛関係費の増額を目指す。

 政権の主は替われども米国は、同盟国等を言葉で操る仕方(表現)が相違するだけで、トランプ前政権と何等変わらない、"自利(国)本意"の閉じ籠り、後退りが外交政策の底意となる。攻めているように見せて、実は引いている。他国を指嗾し、自らは矢面になるのを避け、‹鷸蚌の争い›を仕掛ける。

 西側諸国はバイデン政権の麗句に騙され、更に絶え間ないフェイク(新疆での大量虐殺、強制労働、強制不妊手術、新型コロナの武漢研究所流出説等)を鵜呑みにし、中国を叩き、中国包囲網作り、中国を人権問題等で一斉に批難する。それに企業も同調するが、真剣に人権問題を憂いるならば、米国産の物も企業は逸早く調達を見直すべきである。例えば、企業の恐れる"米国の一方的制裁は違法"であることを知るべきだ。 国連人権理事会で特別報告者は制裁の解除を求める。
 しかし、である。米中貿易は国際社会が騒ぐほどには新型コロナの影響を考えても落ちていない。ここにも米中の限られた市場でのパイの奪い合いというより、中国を世界経済から排除することは今や不可能に近い上、排除側も死活問題となる。
 よって中国市場から他国を排除し米国が入り込むという寸法なのかも知れない。

 中国の国連大使は月曜日、新疆、香港、チベットに関する問題での米国の根拠のない発言を非難し、米国にその傲慢さと偏見を捨てるよう求めた。
 中国の張軍国連常駐代表は、第76回国連総会第3委員会でこのように発言した。
 張氏は、「中国は、国連という場を悪用して意図的に対立を誘発し、人権問題を捏造して中国の内政に干渉することに断固として反対する」と強調。アメリカがこれ以上間違った道を歩まないようにと訴えた。  同特使は、新疆でのいわゆる「強制労働」や「ジェノサイド」の主張は、米国の前政権がついた「世紀の嘘」だが、現政権はすべての嘘を継承し、"不誠実な外交 "という古い道を歩み続けていると述べた。
 嘘を1000回繰り返しても、やはり嘘である。数え切れないほどの事実が、米国の非難が根拠のないものであり、混乱を引き起こし、中国の全体的な発展を抑制するための政治的な必要性から作られたものであることを証明している。中国はこれに断固として反対し、拒否する」と述べた。
 一方、張氏は国際社会に対し、米国の人権状況に注意を払うよう呼びかけ、米国はアメリカ先住民を血まみれで弾圧し、アフリカ系アメリカ人を奴隷にしたことを無視することを選び、その暗い過去を歴史の中に埋めようとしていると指摘した。
 また、米国は民主主義と人権の擁護者であると思われがちだが、実際には民主主義と人権の最大の破壊者であると述べ、世界は対立よりも対話を必要としており、各国は分裂を生むよりも協力を選択すべきであると指摘した。
 「米国が対話と協力の正しい道に戻り、人権の促進と保護のために実践的かつ積極的な措置をとることを期待している」と述べた。
 同セッションでは、キューバ、シリア、北朝鮮などの国の代表も発言し、米国の理不尽な非難を批判し、人権を口実にした米国の他国への内政干渉に反対した。(GT 2021.10.05「China’s UN envoy refutes US’ lies concerning China, urges US not to repeat mistakes」)

 本日は米国の「先住民族の日」である。ジョー・バイデン米国大統領は、大統領として初めてこの日を記念する宣言を発表した。しかし、米国にはもっと多くのことができるはずなのだ。カナダが植民地化という大量虐殺の歴史を清算しているように、米国もそうしなければならない。これは、国内での道徳的な必要性だけでなく、世界中の虐待的な政権に対抗する信頼できる相手でありたいと願うならば、不可欠なことである。
 5月には、カナダのブリティッシュ・コロンビア州にあるカムループス・インディアン・レジデンシャル・スクールで、215基の無縁墓地が発見された。また、6月にはサスカチュワン州のレジデンシャル・スクール跡地で751基の墓が発見された。中には3歳の子供もいた。カナダ全土で4,000人から10,000人の子どもたちがこのような"学校"で亡くなったと考えられている。
 しかし、先住民の子どもたちを全寮制の学校に強制的に参加させることは、カナダだけの慣習ではなかった。アメリカにも、政府の許可を得た同じ虐待の長く暗い歴史がある。19世紀から20世紀にかけて、政府が資金を提供し、多くは教会が運営する先住民族の寄宿学校が全米で350校以上も存在した。
 幸いなことに、バイデン氏が内務省にデブ・ハーランド氏を任命したことで、彼女は先住民初の内務長官となり、米国政府は初めてこの植民地時代の虐待の歴史に取り組む道が開かれた。内務省は6月に、連邦政府の寄宿学校の遺産を包括的に見直す「Federal Indian Boarding School Initiative」を発表した。(FP 2021.10.11「The United States Must Reckon With Its Own Genocides」)

 それは、フランスの歴史上、最も暗い日のひとつでした。1961年10月17日、アルジェリアの独立戦争が終わりに近づいていた頃、パリの警察はパリの中心部で行われたフランス人アルジェリア人のデモを残酷に弾圧した。
 その夜から数日間、デモ参加者は殴られたり、殺されたり、セーヌ川に投げ込まれて溺死させられた。 このデモは、アルジェリアの独立を目指して戦っていた民族解放戦線(FLN)のフランス支部が、パリ警察のモーリス・パポン長官によるアルジェリア人への外出禁止令に対抗して呼びかけたものであった。
 警察、政治家、メディアはこの大虐殺を隠蔽した。イギリスの歴史学者ジム・ハウスとニール・マクマスターは、2006年に発表した研究論文「1961年のパリ」の中で、この事件は西欧の戦後史の中でも「最も暴力的な」抗議行動の弾圧であったと指摘している。"1961年のパリ:アルジェリア人、国家によるテロ、そして記憶"。
 数十年間、公式の死者数は3人だった。今日では、10月17日の夜だけで少なくとも48人が殺害されたという点では一致しているが、多くの歴史家は、死者数は100人をはるかに超えると考えている。
 1999年、パリの検察当局は「大虐殺」があったことを公式に認めた。(FRANCE24 2021.10.13「October 17, 1961: A massacre of Algerians in the heart of Paris」)

 エマニュエル・マクロン氏は、1961年10月17日にアルジェリアの独立を支持するために行われたデモで、少なくとも120人のアルジェリア人が殺害された残忍な弾圧を記念する最初のフランス大統領となった。「この悲劇は長い間、隠蔽され、否定され、隠されていた」とも付け加えた。
(FRANCE24 2021.10.16「acron condemns 'inexcusable' police crackdown on 1961 Paris protest of Algerians」)

 米国はカオスを狡猾に創造し、そしてカオスに手を突っ込んで、ぼろ儲けを狙う。それが同盟国であっても、更に背信行為であっても意に介しない、非情な仕打ちをとる。そして、後は口から出任せの巧言で誑かす。

 米国は常に同盟国をも駒として利用する。米国は同盟国を裏切ることが可能な大国なのだ。つまり、事態が米国に不利になると、鉄面皮を前面に、泣き言を並べて芝居を演じる。「彼らが戦おうとしない戦争で、米軍がこれ以上戦っても死んでもいけない」とかである。
 20年も続いたのではないか。それは彼らも戦っていた証ではないのか。
 「これ以上、国益のない戦争に留まる失策を繰り返さない」(東亜日報 2021.08.18)と、バイデン氏。
 が、真に国益を考えるならば、アフガン戦争は起きなかった。国益とは、軍産複合体及び自国企業の利益なのだ。間違っても国民の為の利益になる事ではない。

 例えば、バルト海を経由してロシア沿岸部とドイツを結ぶガスパイプライン「ノードストリーム2」に米国が反対する。それは米国が液化天然ガスのEUへの輸出を促進したいからである。勿論、御為倒しを言う、「欧州のエネルギー安全保障にとって都合が悪い」、ウクライナは「ロシア産ガスのトランジッド料金を失う恐れがあるため」など(クリミア問題)で反対する。(sputnik日本 2019.11.18 2021.07.14)
 ‹持而盈之、不如其已›、というものだが、米国には通じないか。

 が、バイデン氏も多少は国民の目を意識してか、斯うも云う。
 「米国の超富裕層は本来支払うべき税金を納めていない。その額はあわせて1600億ドルに達する」、「トップの1%は 1600億ドルもの納税を逃れている。それは彼らが毎年支払うべきものだ」と。そして「私は誰かを罰するするつもりはない。私は資本主義者だ。100万ドル、10億ドル稼ぐことができるのであれば、神様があなたがたを祝福しているのだ。私がお願いする事は一つ。中流階級の人々と同じく誠実に税金を払ってほしい。しかし現状はそうなっていない」と。(sputnik 2021.09.17「超富裕層が1600億ドルの税金逃れ=バイデン氏」)

 体制は違っても、誰かと似た発言ではないか。特に"私は資本主義者だ"と断るのも胡散臭いし、態とらしいが。岸田首相は"新資本主義"と誑かす。

 そう、習総書記は、「独占禁止を強化し、公正競争政策の実施を踏み込んで推進することは、社会主義市場経済体制を整備するうえでの内在的要請だ。新発展構造の構築、質の高い発展の推進、共同富裕の促進という戦略的観点から…」と強調。(人民網日本語版 2021.08.31「習近平総書記「独占禁止と不正競争防止を強化」」)
 「中国は小康社会を全面的に構築させ、人間の全面的発展の推進、共同富裕という目標に向かってまい進している」と(CRI 2021.08.28「中国共産党が「発展の奇跡」を生み出した理由」)。

 格差解消政策での「共同富裕」という考え方は、むしろ真っ当な考え方ではないのか。資本主義一辺倒の毒された頭脳からは生まれない発想であり、特長ある政策だ。

 「先富論」という発展観を中心としていたことから、一部分の地域が先に豊かになり、一部分の人々が先に富を得ることしかできなかったのである。中国では、『2020 年に全面的小康社会の建設を実現する』と宣言した以上、安定性と協調性を保つために、共に豊かになるという『共同富裕論』のビジョンを持つことが重要になってくる」、「中国政府は 21 世紀初頭の 20 年を、逃すべからざる戦略的な意味を持つ重要な契機だと認識しており、その一挙手一投足は、世界に多大な影響を与えるに違いない」(「2020 年全面的小康社会への展望 孟 健軍 経済産業研究所」2012.04)。

 "共同富裕"、壮大な目標へ踏み出す。自由主義社会が国民生活へ過酷な状態を強いて、足踏み情態か、或は福祉緊縮という後退の最中、何れの体制に分があるのか、冷静に考えればわかることだ。
 計らずも、世界的に猛威をふるう新型コロナウイルス感染対応が、リトマス試験紙となる。

 米国民や米軍協力者のアフガン人が難を逃れるために空港に群衆が押寄せる。
 「数時間以内に確実にテロがある」、「『もう一度ある』。機密情報は正確だった。二回目は近くのバロンホテル周辺」(中日新聞2021.8.28)と。“機密情報は正確だった”とは、何か連想させるではないか。そう、“手術は成功、だけど患者は…”の類だ。機密情報が正確ならば、何故に緊急避難行動を取れなかったのか、である。
 結局この二回目の件は、米国防総省が爆発は一度だけと訂正をした(8.27)。更に「米紙ニューヨーク・タイムズは28日、米当局者を引用して、米軍が『イーグル・ベース(Eagle Base)』と呼ばれるカブール空港近くのCIA基地を爆破したと報じた。米軍の機密情報や最新の軍事装備がタリバンの手に渡らないようにするための措置だった」、「CIA基地の爆破は事前に計画され、約180人の犠牲者を出したカブール空港爆発事件とは関係がないことが明らかになった」と。(東亜日報 2021.08.30「カブールの2回目の爆発音はCIA基地を爆破する音だった」)

 しかし、である。放棄された850億ドル(約9兆3630億円)相当分の米兵器がアフガン掌握組織タリバンに奪取されたとし、米共和党のジム・バンクス下院議員は、「これらの兵器には、200機の軍用機とヘリコプター、2,000機の装甲車両、67万5,000丁の銃器類が含まれている。そして、アフガンでタリバンが捕獲したブラックホークヘリコプターの数は現在、世界の85%以上の国々が持つ数よりも多くなっている」、「タリバンは、今月15日にアフガン全土に拡散、掌握した後、米軍基地と米兵を攻撃し、大量の武器、弾薬、軍用機、ヘリコプター、装甲車両を戦利品として押収」と。(ParsToday 2021.08.29「アフガン掌握組織タリバンが、米製兵器850億ドル相当分を奪取」)

 偵察用ドローンなど最新兵器も多く含まれているいるのではないか。

 タリバンは米国から提供されたブラックホークやA-29攻撃機を含む48機の航空機を保有しており、NATO加盟国30カ国のうち、10カ国を上回る空軍力を有していることになる、と。(Mailonline 2021.09.01「Thank you, America: Taliban now has up to 48 aircraft including US-supplied Black Hawks and A-29 attack planes after Afghan army's collapse left them with more air power than many NATO nations」)

 「米アフガン復興担当特別監査官(SIGAR)によると、6月30日基準でアフガン空軍が運営する軍用機は167機だった。ブラックホークと呼ばれるUH-60軍用ヘリ33機をはじめ、Mi-17ヘリが32機、A-29軽攻撃機が23機などだ」。アフガン駐留米軍の顧問だったジョナサン・シロデン博士、「タリバンが航空機を得るのは容易だったかもしれないが、これを運用するのは難しいだろう」と。( 中央日報 2021.08.30「米国、9兆円の装備捨てて撤退…タリバン、先端武器強国になった」)

 訓練したアフガニスタン空軍要員がタリバン側に寝返るという選択肢も考慮したら楽観視もできないだろう。何しろ世界最強の軍事・経済大国と20年も戦って勝利した相手なのだ。現実に操縦している。

 「アフガニスタン駐留米軍の最大基地であり、作戦運用の心臓部だったバグラム空軍基地が、中国の手に渡る可能性があるという指摘が相次いでいる。現実となれば、激化する米中の戦略競争の中で「米国の失敗」を浮き彫りにする象徴となるという評価が出ている」と。
 さらに、「タリバンが中国やパキスタンと協力することになれば、米軍が残していった軍事装備が中国側に渡る可能性があり、中国はこれを分解し、組み立てることによって、自国の国防技術の向上に利用しうる」。(ハンギョレ 2021.09.09「米軍の駐留していたアフガン・バグラム空軍基地、中国の手に?」)

 と、まあ、後知恵の出ること。が、何をいまさら、である。‹采は投げられた›し、一目散に逃げた結果なのだ。未練たらしいことを言うな、アメリカよ。軍事力でも敗けた、敗戦国から戦勝国への戦争賠償と贖罪のつもりで、更に加えてアフガンの復興に武器を持たず、手をも貸すか。

 「タリバン暫定政権は米英をはじめ、アフガンを攻撃したそのほかの国に対し、同国での20年間にわたる戦争に関して、数十億ドルの賠償金を支払うべきだ」と(ParsToday 2021.10.10「タリバンが、アフガンを攻撃した国からの賠償受け取りを要求」)。

 「アフガニスタンで権力を掌握したタリバンの政府代表は、9日から10日にかけてカタールで行われた米国代表団との会談で、困窮しているアフガニスタン国民への人道支援と慈善団体への支援に同意した。」(sputnik 2021.10.11「アフガニスタンで権力を掌握したタリバンの政府代表は、9日から10日にかけてカタールで行われた米国代表団との会談で、困窮しているアフガニスタン国民への人道支援と慈善団体への支援に同意した」)

 西側諸国の総逃亡劇中に、アメリカ軍兵士13人を含む100人以上が死亡した。他方では爆破テロで170人が死亡し、少なくとも200人以上が負傷との情報もあり。犠牲者の大半は子供を含むアフガン人とのこと。(26日:首都カブールにある国際空港付近での爆破テロ事件)。

 バイデン氏、「事件を起こした者を許さず、代償を払わせる」と宣言(中日 2021.08.28「バイデン氏「代償支払わせる」アフガンテロで演説」)。“やってます振りの最後屁”のような米国の対ISドローン攻撃で、代償を払う必要もない子ども6人を含む1家族9人(犠牲者が10人とも)が命を落とした。全く罪を重ねるものだ。
 犠牲者の遺族は、「『ここに来て、面と向かって謝罪すべきだ。この事件の犠牲者はテロリストではなかった。そのことはいまや、米国にも全世界にも明らかになった』と訴えた。」(ParsToday 2021.09.19「アフガン遺族らが、米軍誤爆に関する対面謝罪を要求」)

 アフガン情勢をイスラエル高官は、「米国の恐ろしい情報戦敗北と無様な逃亡」、「この逃亡は米国と同盟関係にあるすべての国にとって、恐ろしいことだ」と(ParsToday 2021.8.18「イスラエルがアフガン情勢について、「米の恐ろしい敗北と無様な逃亡」」)。

 まさに〈図星を指され〉た。それだからという訳ではあるまいが、イスラエルのベネット首相との会談中、「居眠りジョー」をやらかした(ParsToday 2021.8.29「バイデン米大統領が、イスラエル首相との会談で居眠り」)。

 米国は逃げる際に、大量の武器が放置され、タリバンへの置き土産となった。新タリバン政権が無能なガニ傀儡政権に替わっても、米中央情報局の‹食指が動く›のだろうか。

 20年間にわたるアメリカのアフガニスタン駐留で、24万1000人の殺害、2兆2600億ドル戦費が伴った。殺害された人数は米軍:2448人、NATO(北大西洋条約機構)軍:1144人、アフガン兵:6万9000人で、報告の死者には70人のジャーナリストと444人の支援隊員も含まれる(ParsToday 2021.08.18「20年にわたる米軍アフガン駐留の結果は、死亡者24万人と2兆ドル超の出費」)。

 なお、ブラウン大学ワトソン研究所、「COSTS OF WAR:戦争の代価」によると、9/11後のアフガニスタン・パキスタン・イラク・シリア・シリア/ISIS・イエメン他の直接戦死者は、897,000-929,000人にのぼる。(ブラウン大学ワトソン研究所 2021.09.01「Human Cost of Post-9/11 Wars:Direct War Deaths in Major War Zones,Afghanistan & Pakistan (Oct. 2001 – Aug. 2021); Iraq (March 2003 – Aug. 2021); Syria (Sept. 2014 – May2021); Yemen (Oct. 2002-Aug. 2021) and Other Post-9/11 War Zones1」)

 また、9/11以降の主要な戦争地帯(アフガニスタン・パキスタン・イラク・シリア他)に起因する推定費用は2001FY-2022FYで、2.29兆米ドルに上る。(ブラウン大学ワトソン研究所2021.09.01「The U.S. Budgetary Costs of the Post-9/11 Wars」)

 9.11以降の数年間、人権や市民的自由の活動家たちは、米国政府とその同盟国によるテロ容疑者や一般の米国市民の扱いについて、大きな懸念を表明してきた。
 米国は、国内はもとより、イラクやアフガニスタン、さらには人権基準の緩い数十カ国で、何十万人もの人々を拘束した。多くのテロ容疑者は、裁判を受けることなく拘束され、拘束に異議を唱える効果的な方法もなく、国際法で義務付けられている国際赤十字による現地視察も行われなかった。2021年6月現在、グアンタナモ・ベイには40名の被収容者が残っている。(「COST OF WAR」https://watson.brown.edu/costsofwar/costs/social/rights)

 他には環境への負荷、温室効果ガスの問題なども引き起こしている。米国は、国際社会で責任を取ることのない"アウトロー大国"でもあるのだ。

 アフガン戦争の敗北は、米国にとって正に‹Anger punishes itself=怒りは自らを罰する›の悪夢のような結末を引き出した。

 さて米国のアフガニスタン敗走の顛末(中国との電話の件も含む)は、米国上院軍事委員会の声明に詳述されている。(「STATEMENT OF GENERAL MARK A. MILLEY, USA 20TH CHAIRMAN OF THE JOINT CHIEFS OF STAFF DEPARTMENT OF DEFENSE AFGHANISTAN HEARING SEPTEMBER 28, 2021」)
 軍が最終的に撤退する前の8月の11日間で、アフガン軍と政府が崩壊する予測した見積もりはなかった。崩壊のスピード、規模、範囲は驚きの連続だった。彼らはいまだにアルカイダとの関係を断っていない。私たちが相手にしているのは誰なのか、全く想像がつかない。米国を攻撃する目的で再結成されたアルカイダやISISは、非常に現実的な可能性がある。
 泥沼にはまりこんで二進も三進も行かない軍部の苦悩がありありとである。
 始めは疾風怒涛の勢い後には‹借りて来た猫のよう›にか。

 世界は壊滅的な正規軍同士の戦争よりも、グローバル時代の"群雄割拠の新しい戦争形態"の時代に突入している。したがって米国といえども、梟雄の一員であって、制御は不可能となる。

 バイデン氏は選挙公約であった「2001年9月11日に発生した同時多発テロに関する機密資料を6か月以内に公開するようメリック・ガーランド司法長官に命令した」と。しかし、一部公開で真相に迫れるのだろうか。(sputnik 2021.09.04「バイデン氏、9.11に関する秘密資料の公開を司法長官に命令=ホワイトハウス」)

 数々の疑義が呈された9・11同時多発テロは、首謀者オサマ・ビンラディンと彼の下にあったアル・カーイダと呼ばれるグループとされるが、ビンラディンは2011年5月2日、アメリカ海軍特殊部隊(SEALS)と中央情報局(CIA)のヘリコプター部隊に、パキスタン北部イスラマバード近郊のアボタバードの邸宅に潜んでいたところを、殺害された。(参照:2013.01『現代用語の基礎知識』)

 ウサマ・ビンラディン容疑者の遺体は、アラビア海で水葬(2日)された。「米国としては、同容疑者の『墓』を海とすることで、一部過激派が埋葬場所を聖地化することを避ける意図もあったもよう」と(REUTERS 2011.05.03「ビンラディン容疑者をアラビア海で水葬、米空母でイスラム教の葬儀」)。

 死人に口なしである、真の原因究明もなされないまま、まさに葬られた。再発防止の対策も全く不用とし、手っ取り早い方法である殺害を以て一件落着なのだ。

 2002年にパキスタンでアブ・ズバイダが逮捕されたとき、ジョージ・W・ブッシュ政権は、彼をアルカイダの作戦責任者であり、オサマ・ビンラディンのナンバー3であると偽った。その後4年間、CIAはズバイダーをタイやポーランドの“秘密軍事施設”に送り込み、悪質な拷問を加えた。2006年、ズベイダはグアンタナモに連行され、今日に至っている。彼は一度も罪に問われたことがない。
 アブ・ズベイダの拷問は、上院情報特別委員会の2014年の報告書に徹底的に記録されている。実際、10月6日に行われた米国対ズベイダ訴訟の最高裁口頭弁論では、複数の判事が彼の処遇を "拷問 "と称した。
 ズベイダの弁護士は、上院の拷問報告書を参考にした準備書面の中で、彼が受けた拷問について次のように詳述している。
 2002年の1ヶ月間に83回、傾斜した板に頭を足よりも低くして縛り付けられ、その間にCIAの契約者が水を鼻から喉に流し込み、死を目前にした。また、手錠をかけられて何度も壁に叩きつけられたり、裸で天井のフックに何時間も吊るされたりした。11日間連続で起きていることを強要され、眠りに落ちると何度も冷水を浴びせられた。棺桶ほどの大きさの細長く高い箱に押し込められ、さらに椅子の下に収まるほどの箱に押し込められ、何時間も放置された。彼は、CIAが“直腸の水分補給”と表現した、特に異様な屈辱を受けた。
 それにもかかわらず、バイデン政権は、マイク・ポンペオ元CIA長官が公表すれば国家安全保障に悪影響を及ぼすと述べたため、ズベイダの有名な拷問は“国家機密”であると高等裁判所に伝えた。
 最終的にこのケースでの問題は 拷問を秘密にしておけるかどうかだ。 民主主義においては、その答えはノーでなければならないい、とズベイダの代理人であるジョセフ・マーグリーズ弁護士は語った。国家機密の原則は、我々の名の下に行われた拷問の説明を妨げるために使われてはならない。もし国家機密が拷問を守ることを意味するならば、いつの間にか守るべき国家がなくなってしまう。(consortiumnews.com 2021.10.10「AFGHANISTAN, INTERNATIONAL, LEGAL, POLAND, TERRORISM, THAILAND, TORTURE, U.S., U.S. CONGRESS, U.S. SUPREME COURRT Biden Tells Supreme Court Torture Is a State Secret」)

 米国は次からつぎへと憑物が付いたごとくに流れて行くという、モビセントリック(mobicentric)性を持つ。
 言わば、米国は"自転車操業国家"なのだ。動くこと、そして漕ぐ力は、相手に‹難癖を付ける›ことから得る。米国の存在を顕示するのに、他の選択肢を探るのでは生温いと思っている、先ずは言掛りをつけ揺さぶり、後は相手の出方次第で強面または懐柔策となる。孤立性が強く国際協調性に欠ける。

 米国に必要なのは中国の助力であろう、特に文化・思想面からくる哲学ではないのか。それもメーテルリンクの童話劇、青い鳥に学んでからだ。

 「合衆国では、人は老後を過ごすために入念に家を建て、しかも屋根を葺いているうちにこれを売却してしまう。果樹園を開墾して、収穫を刈り取るのは他人に任せる。専門職に就いてはすぐに辞める。ある土地に落ち着いてもすぐに気が変わって別の場所で新たな生き方を求める。」、「ついに死が訪れて、この歩みを止めるまで、アメリカ人は、常に逃げていく完全なる至福を求めてこの無駄な追求を飽きることなく続ける。」(『アメリカのデモクラシー 第二巻(上)』トクヴィル著 岩波文庫 234頁)

 さて、バイデン大統領、アフガニスタンでの我々の任務は、国家建設ではなかったはずだ、と。本当だろうか。
 アフガニスタンでの私たちの任務は、国家建設ではありませんでした。統一された中央集権的な民主主義を構築することは想定されていませんでした。
 アフガニスタンにおける私たちの唯一の重要な国益は、今も昔も変わらず、アメリカ本土へのテロ攻撃を防ぐことです。(「Remarks by President Biden on Afghanistan」2021.08.16)

 西側諸国総掛りの様相であったアフガニスタン侵攻は、不朽の自由作戦(Operation Enduring Freedom-Afghanistan 略称:OEF-A)と国際治安支援部隊(International Security Assistance Force 略称:ISAF)の二本柱であった。前者が米軍主導の対テロ戦争、後者がアフガン新政権を支持するための多国籍軍による戦闘である。

 以下にその根拠を引用する。

 「United Nations S/RES/1368 (2001)
 Security Council Distr.: General
           12 September 2001

 Resolution 1368 (2001)
 Adopted by the Security Council at its 4370th meeting, on
 12 September 2001
 The Security Council,
 Reaffirming the principles and purposes of the Charter of the United Nations,
 Determined to combat by all means threats to international peace and security
caused by terrorist acts,
 Recognizing the inherent right of individual or collective self-defence in
accordance with the Charter,
 1. Unequivocally condemns in the strongest terms the horrifying terrorist
attacks which took place on 11 September 2001 in New York, Washington, D.C. and
Pennsylvania and regards such acts, like any act of international terrorism, as a
threat to international peace and security;
 2. Expresses its deepest sympathy and condolences to the victims and their
families and to the people and Government of the United States of America;
 3. Calls on all States to work together urgently to bring to justice the
perpetrators, organizers and sponsors of these terrorist attacks and stresses that those
responsible for aiding, supporting or harbouring the perpetrators, organizers and
sponsors of these acts will be held accountable;
 4. Calls also on the international community to redouble their efforts to
prevent and suppress terrorist acts including by increased cooperation and full
implementation of the relevant international anti-terrorist conventions and Security
Council resolutions, in particular resolution 1269 (1999) of 19 October 1999;
 5. Expresses its readiness to take all necessary steps to respond to the
terrorist attacks of 11 September 2001, and to combat all forms of terrorism, in
accordance with its responsibilities under the Charter of the United Nations;
 6. Decides to remain seized of the matter」

 「安保理決議1368(訳文)外務省

 安全保障理事会は、
 国際連合憲章の原則及び目的を再確認し、
 テロ活動によって引き起こされた国際の平和及び安全に対する脅威に対してあらゆる手段を用いて闘うことを決意し、
 憲章に従って、個別的又は集団的自衛の固有の権利を認識し、
 1.2001年9月11日にニューヨーク、ワシントンD.C.、及びペンシルバニアで発生した恐怖のテロ攻撃を最も強い表現で明確に非難し、そのような行為が、国際テロリズムのあらゆる行為と同様に、国際の平和及び安全に対する脅威であると認める。
 2.犠牲者及びその家族並びにアメリカ合衆国の国民及び政府に対して、深甚なる同情及び哀悼の意を表明する。
 3.すべての国に対して、これらテロ攻撃の実行者、組織者及び支援者を法に照らして裁くために緊急に共同して取り組むことを求めるとともに、これらの行為の実行者、組織者及び支援者を援助し、支持し又はかくまう者は、その責任が問われることを強調する。
 4.また、更なる協力並びに関連する国際テロ対策条約及び特に1999年10月19日に採択された安全保障理事会決議第1269号をはじめとする同理事会諸決議の完全な実施によって、テロ行為を防止し抑止するため一層の努力をするよう国際社会に求める。
 5.2001年9月11日のテロ攻撃に対応するため、またあらゆる形態のテロリズムと闘うため、国連憲章のもとでの同理事会の責任に従い、あらゆる必要な手順をとる用意があることを表明する。
 6.この問題に引き続き関与することを決定する。」

 「United Nations S/RES/1386 (2001)
 Security Council Distr.: General
          20 December 2001

 Resolution 1386 (2001)
 Adopted by the Security Council at its 4443rd meeting, on
 20 December 2001
   The Security Council,
   Reaffirming its previous resolutions on Afghanistan, in particular its
 resolutions 1378 (2001) of 14 November 2001 and 1383 (2001) of 6 December
 2001,
   Supporting international efforts to root out terrorism, in keeping with the
 Charter of the United Nations, and reaffirming also its resolutions 1368 (2001) of 12
 September 2001 and 1373 (2001) of 28 September 2001,

   Welcoming developments in Afghanistan that will allow for all Afghans to
 enjoy inalienable rights and freedom unfettered by oppression and terror,
   Recognizing that the responsibility for providing security and law and order
 throughout the country resides with the Afghan themselves,
   Reiterating its endorsement of the Agreement on provisional arrangements in
 Afghanistan pending the re-establishment of permanent government institutions,
 signed in Bonn on 5 December 2001 (S/2001/1154) (the Bonn Agreement),

   Taking note of the request to the Security Council in Annex 1, paragraph 3, to
 the Bonn Agreement to consider authorizing the early deployment to Afghanistan of
 an international security force, as well as the briefing on 14 December 2001 by the
 Special Representative of the Secretary-General on his contacts with the Afghan
 authorities in which they welcome the deployment to Afghanistan of a United
 Nations-authorized international security force,

   Taking note of the letter dated 19 December 2001 from Dr. Abdullah Abdullah
 to the President of the Security Council (S/2001/1223),

   Welcoming the letter from the Secretary of State for Foreign and
 Commonwealth Affairs of the United Kingdom of Great Britain and Northern
 Ireland to the Secretary-General of 19 December 2001 (S/2001/1217), and taking
 note of the United Kingdom offer contained therein to take the lead in organizing
 and commanding an International Security Assistance Force.」

 「【アフガニスタン暫定政権の発足】外務省
 米軍等による軍事行動の進展とともに、アフガニスタンの和平・復興に向けた国際社会の取組も進んだ。  11月14日、安保理は、アフガニスタン和平に関する安保理決議1378を採択した。この決議の骨子は、新たな暫定政権成立に向けた努力への強い支持、国連の中心的役割の確認、暫定政権への支援の提供、タリバン支配下ではなくなった地域での安全及び治安の確保に向けた努力への支援の奨励の4点である。
 さらに、11月27日から12月5日にかけて、ドイツのボンにおいてアフガニスタン各派代表者会合(ボン会合)が開催された。この会合には、国内外の四つの主要アフガニスタン人グループと国連の代表者が参加した。このほか、多くの主要関係国の外交団がオブザーバーとして開・閉会式及び署名式に出席し、会合の推移を会場の外から注視した。
 会合自体は非公開で、全体会合のほか、アフガニスタン各派間、あるいは国連と各派代表団との間で個別の会談を行う形で進められた。ボン会合では、11月13日にブラヒミ国連事務総長特別代表が発表した構想に基づき、新政権樹立に向けた道筋や治安維持の方策につき議論が続けられた結果、各派が合意に達し、12月6日に合意文書への署名式が行われた。
 ボン会合での決定を受けて、12月22日にはハミド・カルザイ氏を議長とする暫定行政機構の発足式典がカブールで開催され、暫定政権が対外的にアフガニスタンを代表することになった。今後、暫定政権設立後6か月以内に、緊急ロヤ・ジルガ(国民大会議)がザヒル・シャー元アフガニスタン国王により招集され、国家元首の選定等移行政権に関する事項につき決定される。さらに、移行政権設立後18か月以内に憲法制定ロヤ・ジルガが招集されることとなっている。
 また、もう一つの重要な問題であるアフガニスタン国内での治安の維持について、12月20日、国連憲章第7章の下、安保理は、行動する国際治安支援部隊の設立を認める決議1386を採択した。この決議は、カブール及びカブール周辺地域の治安の維持においてアフガニスタン暫定政権を支援することを目的として掲げている。任期は6か月と規定され、英国主導で活動の調整が進められている。」

 まさに、"アフガニスタンにおける恒久的な政府機関の再構築"であり、"新たな暫定政権成立に向けた努力への強い支持、国連の中心的役割の確認、暫定政権への支援の提供"なのだ。これらが国家建設ではなかったはず、と云えるのであろうか。

 20年近くにわたって米国が介入し、何千億ドルもの税金を投入したにもかかわらず、永続的な軍隊と市民社会が根付かなかった国に米軍を駐留させることの無意味さを強調していると主張した。(the japan times 2021.08.17「Biden defends U.S. exit from Afghanistan as criticism mounts」)

20年近くに及ぶ米国の介入にもかかわらず、永続的な軍隊と市民社会が根付かなかったと、バイデン氏、‹語るに落ち›た。

 西側が考える新たな民主的政権樹立に向け居続けたのは紛れも無い。"米軍を駐留させ続けることの無益を物語っている"と主張するが、全面的失敗を糊塗する弁解に過ぎない。
 別言すれば、20年近く欧米諸国(西側)総出のテロ撲滅の戦いを続け、挙句の果てがテロに敗れ追い出された、ということになる。

 不朽の自由作戦と国際治安支援部隊という二本柱は意に適わず倒壊した。‹砂上の楼閣›を建てたのか。

 アフガン新政府発足式典に、「タリバンはアフガニスタン新政府発足の宣言式典に、トルコ、イラン、中国、ロシア、パキスタン、カタールの6カ国を招いた」と。(Parstoday 2021.09.07「アルジャジーラ、『アフガン新政府発足式典に一部諸国が招かれる』」)

 「アフガニスタンで、先月同国を掌握した組織タリバンが結成する内閣が、2001年の米同時多発テロ事件記念日に当たる今月11日に、就任宣誓式を開催」とは、式典が“米国と同時”か。

 そしてタリバンは暫定政府発表で、「女性や少数民族の権利、報道の自由などを認めると」、「すべてはイスラム法の範囲内」、そして幹部は「民主主義のシステム」でないと云う。(中日 2021.09.08)

 国連のテロリストに載るハイバトゥラ・アクンザダ(Mullah Hebatullah Akhundzada)が実質的に国家運営を担うようだ。米国は暗殺するのか。米国は85カ国でテロ対策活動を行っている。

 タリバンがISIS-Kのカブール北部の隠れ家を襲撃した。
 タリバンのスポークスマンがAP通信に語ったところによると、同グループはカブールの北に位置するアフガニスタンのパルワン州にあるISIS-Kの隠れ家を急襲したという。ビラル・カリミ報道官は、タリバンが数人のISIS-Kメンバーを殺害、逮捕したと述べたが、具体的な人数は明かさなかった。
   ISIS-Kは主に東部のナンガルハル州を拠点としており、同グループはナンガルハル州の州都であるジャララバードでのタリバンに対する複数の攻撃に責任を負う。
 アメリカは、ISIS-Kを楯に取って正当化し、アフガニスタンで監視を続けたり、潜在的な空爆を行ったりしている。しかし、タリバンは、ISIS-Kやその他のテロリスト集団との戦いにはいかなる支援も必要ないとし、米国が無人機でアフガンの領空を侵犯していると非難している。
 ISIS-Kは、8月26日にカブールで発生した100人以上のアフガン民間人と13人の米軍兵士が死亡した自爆攻撃に責任がある。8月29日、米国はカブールで無人機による攻撃を行い、ペンタゴンは当初、ISIS-Kのメンバーを殺害したと主張していた。しかし、この攻撃は無実の援助者を標的としており、彼と彼の家族9人(7人の子供を含む)が死亡した。(ANTIWAR.COM 2021.10.01「Taliban Raids ISIS-K Hideout North of Kabul」)

 「ICC・国際刑事裁判所が、アフガニスタンでのアメリカの犯罪行為に目をつぶり、同裁判所の取調べ担当の判事らに対し、アフガンの現支配勢力タリバンやテロ組織ISISの犯罪に関する捜査・取調べの許可を出すよう求めてい」る。(ParsToday 2021.10.03「アフガンでの米の犯罪に目をつぶるICC」)

2001年9月23日、大統領は大統領令13224により、国際緊急経済権限法(50 U.S.C.1701 etseq.)に基づいて国家緊急事態を宣言、その宣言は2021年9月23日以降も有効でなければならないとし、1年間継続する。(「Notice on the Continuation of the National Emergency with Respect to Persons who Commit, or Support Terrorism」2021.09.15他)

 誰がタリバンを今日のようにしたのか?もしアメリカが軍隊に反対するのであれば、なぜ最初にタリバンと交渉のテーブルにつき、タリバンと合意し、アシュラフ・ガーニ政権を放棄したのか?
 タリバンの正統性は、アメリカとの交渉後に高まったのだ。同様に、アメリカの支援を受けたガーニ政権の失敗により、タリバンの政権奪取が現実のものとなった。ワシントンが、いわゆる民主主義や人権をめぐる西洋の価値観の観点から新政権に失望していると口々に言うが、劉氏によれば、"なぜこのことを考えないのか?タリバンに機会を提供したのはアメリカではないのか?"と。
 アメリカは、タリバン政府を糾弾しているときには説得力がなく、この点で世界の世論を支配しようとしながら、自分がしたことを忘れたふりをしている。(Global Times 2021.09.08「Western media in no position to lash out at new Afghan government」)
 尤もな疑問である。

 ジョージ・ブッシュ一世流に言えば、「私はアメリカ合衆国について決して謝罪しない。事実はどうでもよい」のだろう。「地上唯一の超大国はであるということは、決して謝罪する必要がないということである」と。(『アメリカの国家犯罪白書』ウィリアム・ブルム著 350頁)

 米紙、「米無人機がアフガンで民間人を誤爆した可能性が浮上」と。
「米国防総省は米軍が撤退を完了する前日の8月29日、無人攻撃機「リーパー」による空爆で、ISISが計画していた攻撃を阻止したと発表しました。」(ParsToday 9月 11, 2021「米紙、「米無人機がアフガンで民間人を誤爆した可能性が浮上」」)

 この件について、米下院軍事委員会公聴会(2021.9.29)で言及している。
 また、8月29日には、ドローンによる攻撃で10人の民間人が死亡するという悲劇的なミスがあった。このミスを受けて、私をはじめとする人々はこの悲劇については、説明責任を果たすための措置や手順の変更など、タイムリーで包括的かつ透明性の高い調査の結果が提供されることを期待する。(「Opening Statement (As Prepared) Chairman Adam Smith House Armed Services Committee Hearing:“Ending the U.S. Military Mission in Afghanistan”September 29, 2021」)

「米軍攻撃で民間人殺害 遺族「謝罪だけでは済まされない」
 現地時間17日、米中央軍のマッケンジー司令官は、米軍が8月29日にアフガニスタンで行った無人機による攻撃は、「テロリスト」に命中したのではなく、子ども7人を含む民間人10人の不幸な死を招いたと認めました。マッケンジー司令官は事件について遺憾の意を表し、「すべての責任を負う」と謝罪しました。(CRI 2021-09-19 18:27「米軍攻撃で民間人殺害 遺族『謝罪だけでは済まされない』」)

 ドローンの誤爆によるアフガンの犠牲者遺族は今、アメリカに面と向かっての謝罪を求めている。

 大日本帝国憲法第3条「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」と同様で、米国も神聖不可侵なのだろうか。国家無責任の原則が罷り通るのか。米国は民主主義の国家なのだろうか。

 軍事力・経済力の超大国は“投げ遣り”を得意技とする。アフガンの阿鼻叫喚の地に‹後脚で砂をかける›のか、米国よ。
 悪いのはすべて米国以外という訳だ。まるで“駄駄っ児”同然である。

 さて、其のタリバン側からドーハ合意に違反したとの非難がある。合意の曖昧さにより齟齬をきたしているようだ。

 タリバンは、米国がタリバン幹部への制裁を維持することで、2020年2月に両者が締結した和平合意に違反していると非難している。ドーハ合意では、ワシントンは、アフガン内の交渉が始まった後、米国と国連のタリバン制裁の両方を解除するよう努力すると約束した。
 ドーハ合意では、アフガニスタン国内での協議が始まった後、米国は「2020年8月27日までにこれらの制裁を解除することを目標に、アフガニスタン・イスラム首長国のメンバーに対する米国の現行制裁と報奨リストの管理上の見直しを開始する」としている。
 また、米国は「2020年5月29日までにこの目的を達成することを目指して、アフガニスタン・イスラム首長国のメンバーを制裁リストから除外するために、国連安全保障理事会の他のメンバーおよびアフガニスタンとの外交的関与を開始する」としている。(ANTIWAR.com 2021.09.09「Taliban Accuse US of Violating Doha Agreement By Keeping Sanctions」)

 合意内容は、外務省HPに依れば以下のようだ。が、詳細は不明。

(1)米国とタリバーンは,2020年2月22日から同28日まで,7日間の「暴力削減」期間を経て,2月29日にカタールの首都ドーハにおいて,米国のハリルザード・アフガニスタン和平担当特別代表とタリバーンのバラーダル政治事務所長の間で合意に署名。合意は,
(ア)タリバーンがアフガニスタン国内でのテロ活動を許さないことを条件とする,駐アフガニスタン米軍及び外国軍の段階的撤収や,
(イ)信頼醸成措置としての囚人交換及び
(ウ)3月10日からのアフガニスタン人同士の交渉開始等を主な内容とするもの。署名式には我が国からは髙橋克彦アフガニスタン・パキスタン担当特別代表(中東アフリカ局長)及び須永和男駐カタール特命全権大使が出席。
(2)また同日,アフガニスタンの首都カブールにおいて,ガーニ大統領,エスパー米国防長官及びストルテンベルグNATO事務総長の出席の下で,アフガニスタンと米国によるアフガニスタン和平に関する共同宣言が発表された。(外務省)

 なお、最近のアフガニスタン公聴会によれば、以下のようである。

 10年後の2020年2月29日、Khalilzad大使がMullah Beraderとドーハ合意に署名したとき、米国はアフガニスタンに12,600人の米軍、8,000人のNATO軍、10,500人の請負業者を配置していた。
 これは、10年間の複数政権による撤退であり、19ヶ月や19日の撤退ではない。
 ドーハ合意では、タリバンが一定の条件を満たすことで、タリバンとアフガニスタン政府の間で政治的合意が成立することを条件に、アメリカは軍の撤退を開始することになっていた。
 タリバンに適用される条件は7つ、米国に適用される条件は8つであった。タリバンは条件の1つである米軍への攻撃を行わなかったが、ドーハ合意の下での他の約束を完全に守ることはできなかった。おそらく米国の国家安全保障にとって最も重要なことは、タリバンがアルカイダを放棄したり、アルカイダとの提携を解消したりしていないことである。
 2020年2月から10月までの8カ月間に、ドーハ協定の規定に従って、米軍を12,600人から6,800人に、NATO軍を8,000人から5,400人に、米国の請負業者を9,700人から7,900人に削減し、アフガニスタンから計画的に後退させていった。
 ドーハの条件のひとつは、タリバンの暴力行為を減らし、全国的な停戦を実現することだった。2020年の戦闘シーズンの間、タリバンは国中で常に平均より高いレベルの暴力を維持していた。(「STATEMENT OF GENERAL MARK A. MILLEY, USA 20TH CHAIRMAN OF THE JOINT CHIEFS OF STAFF DEPARTMENT OF DEFENSE AFGHANISTAN HEARING SEPTEMBER 28, 2021」)

 が、"米国に適用される条件8つ"については、述べていない。

 ローマ教皇フランシスコは、「歴史的、民族的、宗教的問題や他人の伝統を完全に無視することを考慮せず、外部モデルに基づいて他国で民主主義を構築しようとする試みや、他人に自分の価値観を押し付ける無責任な政策をやめなければならない」と。
 プーチン大統領が先にメルケル首相との会談(8.20)で、「アフガニスタンにおける西側の行動を批判し、『タリバン』の急速な権力掌握は、西側が独自の民主主義のビジョンを植え付けようとする試みが無意味であることを示したと指摘」していた。(sputnik 202109.01「ローマ教皇、アフガンにおける西側の行動を批判 図らずもプーチン大統領の発言を引用」)

 また、中国の汪報道官、「各国は独立で自主的に自国の国情と実際に合った発展の道を選ぶ権利を有する。アフガニスタン情勢は、外部から移植し民主的モデルを無理に押し付けるやり方は混乱と不安定をもたらすだけであり、最終的に失敗に終わることを示している」と指摘。(CRI 2021.09.02「外交部、米国がアフガニスタンでの失敗を繰り返さぬよう希望」)

 ノーム・チョムスキー氏は、「国際的な世論調査では、アメリカは世界平和を脅かす最大の脅威と考えられているとする結果が出ている」と。「アフガン攻撃は国際法違反だったのみならず、正当と認められる事由も一切なかった」と語る。また、「アメリカの力は著しく凋落しているが、この現象はトランプ前大統領が国家の権威を大きく汚すもっと前から、既に始まっていた」とも。(ParsToday 2021.09.09「米哲学者チョムスキー氏、『米の対テロ戦争が世界の大半を破壊』」)

 ジャック・ミジリー(Jack Midgley)元米軍司令官、「同国での米国が失敗することは予期できたことだった」、「この米国最長の戦争による混乱を終わらせることは、回避できるものではなかった。それは、米政府がこの戦争を誤った目的により始めていたからだ」と。(ParsToday 2021.09.09「元米軍駐アフガン司令官が、政府の失敗を認める」)

 米国の支配による平和(Pax Americana)などは、所詮、‹乱離骨灰›となる類なのだ。

 ここでリズ・ピーク(Liz Peek)氏の意見を聞くことにする。

 バイデン、ブリンケンの失敗 - 弱く、無謀なリーダーシップが一連の災害を引き起こし、米国を苦しめる、と。
 これらの大惨事は神の仕業ではなく、愚かな政策が誤って実行された結果の惨事である。
 バイデン政権は急降下している。大統領の支持率は下がり続けており、アメリカ人がここ数日の災害を熟考し、その責任を真っ向からジョー・バイデンに求めるようになれば、さらに悪化するだろう。

 アフガニスタンでの罪のない人々の殺害、予防接種を受けていない何万人ものハイチ人の不法入国、わが国の最初の同盟国であるフランスに対する侮辱的な扱い、大統領のコロナウイルス予防接種計画に対するFDAの非難などを総合して考えると、わが国は、能力がそれほど高くなく、平凡な人材に囲まれた傲慢な人物によって運営されていると結論づけられる。

   これらの大惨事は、落雷やその他の神の御業ではなく、愚かな政策が誤って実行された結果の惨事だ。ジョー・バイデンはこれらの災難をすべて自分自身にもたらしている。

 バイデンは、この問題がすべて解決して、国の"変革"というより重要な仕事に戻れることを望んでいるが、アフガニスタンをバックミラーに映し出すことは難しいだろう。毎日とは言わないまでも、毎週のようにタリバンの残虐行為が報道されれば、軍の忠告に反して急いで撤退しようとしたバイデンの無謀な決断が思い出される。

 吹き倒されないのは、バイデンの弱点が知られてきたことだ。大統領は、彼が賢い人間ではないことを知っている。

 彼は長年にわたり、自分の学歴を疑う人にはキレたり、ロースクールでの成果を嘘で塗り固めてきた。また、盗用が発覚したことも一度や二度ではない。自分の知的能力を疑う人に限って、自分のクラスのランクを偽り、他人の考えやスピーチを盗む。

 アメリカの大統領は、メンサレベルのIQを持っている必要はない。しかし、自分が何を知らないかを知ることは必要だ。優秀な人材を雇い、その助言に耳を傾ける謙虚さと洞察力が必要なのだ。

 それはバイデンではありません。彼の軍事顧問は、アフガニスタン政府は持ちこたえられないかもしれないし、タリバンがすぐに国を乗っ取るかもしれないと彼に言った。彼はよく知っていた。

 また、彼はAチームを選んでおらず、それは特にアメリカの他国との取引において現れている。

 バイデン氏の外交政策に関する世論調査では、賛成が40%、反対が54%と散々な結果となっている。

 この低い評価を支えているのが、アントニー・ブリンケン国務長官である。ブリンケンの最初の外交任務は、3月にアラスカで行われた中国側との会談で、北京のトップ外交官である楊潔篪に恥をかかされたことだ。  ブリンケンは、中国の人権侵害について世界的な関心を(米国だけでなく世界を代表することを目指しているので)語ったが、期待されていた楊の簡潔な外交的回答の代わりに、米国の人種差別や民主主義を輸出しようとする努力についての15分間の厳しい叱責を受けたのである。

 特に中国から米国への挑戦が高まる中、弱腰で無為なリーダーシップは許されない。

 長官は、争論に対する準備ができていなかった。彼は、トランプではない新政権の使者として祝福されることを期待していた。彼は間違っていたが、さらに悪いことに、彼は楊に立ち向かうことができず、代わりに弱さを露呈した。

 今年初め、バイデンがプーチンに首脳会談を懇願し、ノルドストリーム2パイプラインを建設する企業への制裁を解除することで、渋るロシアの指導者を買収しなければならなかったのは、おそらくブリンケンの賛意でのことだろう。これは、過去にウクライナへの天然ガス輸出を政治的利益のために遮断したことのある敵国への、想像を絶する手土産だった。

 大統領が撥ね付けられたのはこれだけではない。明らかにバイデンは、最近の90分間の電話会談で、中国の習近平国家主席に面会を求め、断られた。後にバイデンは、この会話の報道は"真実ではない"と述べましたが、多くの関係者がこの屈辱的なやりとりを確認している。

 最近では、フランスを怒らせてしまい、大使を召喚させるという異例の事態にまで発展した。ブリンケンは、インド太平洋地域で勢力を拡大している北京に対抗するため、米国、オーストラリア、英国の3カ国を結びつけ、原子力潜水艦の製造に必要なアメリカのツールをオーストラリアに提供する防衛協定を締結した。

 この協定で損失者となるのは、最古の同盟国であるフランスで、オーストラリア向けに660億ドルの潜水艦製造契約を締結してた。最も不快なのは、パリがこの取引を知ったのは、公に発表される数時間前だったということだ。フランスに内密の警告を与えなかったのは、許しがたい冷遇だ。

 しかし、ブリンケンの欠点が最も目立つのは、アフガニスタンの惨状に直面したときである。議員の質問に対して、彼は国内に残っているアメリカ人やグリーンカード保持者の数や、彼らの解放についてどのように交渉しているのかについては、はぐらかされた。彼の行為は失礼なものだった。

 アフガニスタン撤退の際には、国務省が難民の避難や収容について不十分な計画を立てていたことが明らかになり、結局、彼らはひどい生活を強いられた。

 批判に反論したブリンケンは、すぐにトランプ政権のせいにして、"我々は期限を受け継いだ。我々は期限を受け継いだが、計画は受け継いでいない"と、説明する。

 そのどちらも真実ではない。軍の撤退に必要な条件を定めた計画はあったし、"期限 "もなかった。実際、バイデン・チームは期限を2回もずらしたのだ。

 ブリンケンは、タリバンがアメリカ人や自国民を尊重して扱うことを約束し続け、"タリバンを国際社会の期待に沿うようにする "と言っている。 まるで、"国際社会"から非難されれば、タリバンは女子に6年生以上の教育を受けさせないという決定を変えるかのように。

 ブリンケン氏は筋金入りのグローバリストで、クリントン大統領が中国の世界貿易機関への加盟を奨励したり、イランが国際社会に再び加わるために必死になっていると主張したりするような、心地好いばかげた考えを信じている。このような人たちは、私たちの敵を増長させ、私たちの同盟関係を弱める。

 バイデン自身が、習近平に座談会の開催を懇願するなど、こうした恥ずべき行為を画策した可能性もある。しかし、ブリンケンが大統領を導き、適切な助言をすることができないのであれば、彼は辞任すべきである。(FOXNEWS 2021.09.20「Liz Peek: Biden, Blinken failing – weak, feckless leadership creating series of disasters, hurting US」)

 米国民は今、「アメリカ国民の55%が米軍の屈辱的なアフガン撤退を理由に、バイデン米大統領の辞任を求めている」と。(ParsToday 2021.10.04「米国民の大半がバイデン大統領の辞任を要請 世論調査で」)

 クイニピアック大学が実施した調査結果、「53%の市民がバイデン大統領の職務を否定的に評価しており、指示すると答えた市民の割合はわずか38%だった。3週間前の支持率は42%で、支持しないと答えた人の割合は50%だった。支持しないと答えた人のうち、移民政策に反対した市民が67%、対外政策に反対した市民が58%、経済対策に反対した市民が55%だった」。(sputnik 2021.10.07「バイデン氏の支持率続落、38%まで低下」)

 日米豪印の四カ国(クアッド:quad)は、9月24日に対面式の初の会合を米ワシントンで開催。
 「台頭する中国をにらみ、民主主義的価値観を共有する四カ国で結束、アフガニスタン情勢などでは、イスラム主義組織タリバンによる暫定政権の承認に前向きな中国などの動向について意見交換する見通し」と。(中日 2021.09.10)

 しかし、バイデン大統領、中国対策など語るに落ちる米国の無為無策の現われではないか。中国対策より、‹同じ穴の貉›側の無様な敗戦の面汚しを少しでも挽回しようとするなら、一刻もはやくアフガニスタンの復興に力を注ぐべきではないのか。
 大体このクワッドの枠組み、何がしたいのか。死に体の日本の菅首相(安倍前首相の操人形)・オーストラリアのモリソン首相は"中豪戦略経済対話の枠組での全ての活動無期限停止"・インドのモディ首相、米国のニッキー・ヘイリー元国連大使が「中国はアフガンにおいて、パキスタンと協力してインドに対する攻勢の水準を高める可能性が大きい」(ハンギョレ 2021.09.09「米軍の駐留していたアフガン・バグラム空軍基地、中国の手に?」)と、煽りを入れているが、基本的には常に二股を掛けざる得ない(言い換えれば股裂き状態)なのだ。
 日豪の木偶坊、インドの半傀儡を集めても、建設的な意見は土台無理な相談だ。

 気になるのは「民主主義的価値観を共有」の"民主主義的"であるが、なぜわざわざ民主主義的というのであろうか。「民主的=民主主義にかなっているさま。民主主義に基づいていること」・「民主政治=民主主義に基づく政治。主権が人民にあり、人民の意思に基づいて運用される政治」(広辞苑第六版)などは使用する。
 が、短い言葉、“民主的”ですっきり表現できるのに、“民主主義的”と云うのだろうか。
 穿った見方をすれば、新型コロナで見せた民主国家の極めてお粗末な対応ぶりと、その底の浅い人権意識や人種差別そして劣化した福祉政策が露わになったゆえに、“民主主義的=民主主義的もどき”と、自虐的意味を込めているのだろうか。

 現在の国際状況から観ても、米国の云う“民主主義的価値観”などは取り立てる意味も喪失した。
 ローマ教皇も言うように、「歴史的、民族的、宗教的問題や他人の伝統を完全に無視することを考慮せず、外部モデルに基づいて他国で民主主義を構築しようとする試みや、他人に自分の価値観を押し付ける無責任な政策をやめなければならない」との、お説教が聞こえないか。
 クワッドなどは全く無意味であり、米国の陰謀の手段に過ぎない。
 そう、揃ってアフガニスタンに常駐ということになるやも知れない。その役割はスポイラー(spoiler)だ が。

 バイデン大統領は、「世界は急速な変化の最中にある。米中関係は世界で最も重要な二国間関係であり、米中がどのように相互作用し、付き合うかは世界の未来に大きな影響を与える。両国が競争のために衝突に陥る理由はない。『一つの中国』政策を変える意図は米国にない。米国は中国側と率直な交流や建設的な対話をより多く行い、協力可能な重点・優先分野を定め、誤解や誤判、不測の衝突を避け、米中関係を正しい軌道へ押し戻すことを望んでいる。米国は気候変動など重要問題について中国側と意思疎通や協力を強化し、より多くの共通認識を形成することを期待している」と。(人民網日本語版 2021.09.10「習近平国家主席がバイデン米大統領と電話会談」)

 米国の報道では以下のようだ。つまり、台湾については、両者(国)の思惑絡みで発表か。米国にとっては駆け引きのツールであり、中国にとっては核心的利益事なのだ。ある意味では夫々が"話してもよいことだけを好き勝手に話している"という訳だ。
 しかし、である。中国の報道には筋が通っている。米国は論理に歯抜けがあり過ぎる。

 米国側の発表は、ジョセフ・R・バイデン・ジュニア大統領は、本日、中華人民共和国の習近平国家主席と会談しました。両首脳は、広範かつ戦略的な議論を行い、我々の利益が一致する分野と、我々の利益、価値観、視点が異なる分野について議論した。両首脳は、この2つの問題について、オープンで率直に取り組むことに合意しました。この話し合いは、バイデン大統領が明らかにしたように、米中の競争を責任を持って管理するための米国の継続的な取り組みの一環である。バイデン大統領は、インド太平洋および世界の平和、安定、繁栄に対する米国の永続的な関心を強調し、両首脳は、競争が紛争に発展しないようにするための両国の責任について議論した。(THE WHITE HOUSE SEPTEMBER 09, 2021「Readout of President Joseph R. Biden Jr. Call with President Xi Jinping of the People’s Republic of China」)

 ジョセフ・R・バイデン・ジュニア大統領は、本日、中国の習近平国家主席と会談しました。大統領は、旧正月を迎えた中国の人々に挨拶し、幸運を祈る気持ちを伝えました。バイデン大統領は、米国民の安全、繁栄、健康、生活様式を守り、自由で開かれたインド太平洋を維持するという優先事項を確認しました。バイデン大統領は、北京の強圧的で不公平な経済活動、香港での弾圧、新疆での人権侵害、そして台湾を含む地域での自己主張の高まりに対する根本的な懸念を強調しました。また、両首脳は、COVID-19パンデミックへの対策、世界的な健康安全保障、気候変動、兵器拡散防止などの共通の課題についても意見交換を行いました。バイデン大統領は、米国民と同盟国の利益のためには、実用的で結果を重視した関与を追求することを約束した。(THE WHITE HOUSE FEBRUARY 10, 2021「Readout of President Joseph R. Biden, Jr. Call with President Xi Jinping of China」)

 次は、「WHITE HOUSE Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki, September 10, 2021」から中国関係を抜粋した。

 Q また、別の話題ですが、中国の習近平国家主席との電話会談がありました。 あれはどのくらいの時間だったのでしょうか? また、G20で直接会うことについても話し合われたのでしょうか?

 MS. PSAKI:通話時間は約90分でした。 大統領は、公の場で話しているように、過去に習主席と多くの時間を過ごしており、今回の通話でもその共通の経験を活かしました。 そのため、非常に親近感のある通話となりました。 率直なものでした。 意見の異なる部分を避けることはありませんでしたが、その口調は説教臭くもなく、見下しているわけでもなく、尊重されていました。 時間は90分でした。

 今後のミーティングに関しては、何も予習することはありません。 今回の電話では、コミュニケーションのチャンネルをオープンにしておくことが重要だと述べました。 習近平が中央集権的であり、彼の手中にある権力のために、リーダーレベルで習近平に直接働きかけることが重要であることがわかりましたので、それがこの電話の重要性でした。 さまざまな話題を取り上げました。

 MS. PSAKI:はい、わかりました。 どうぞお進みください。

 Q ジェンさん、ありがとうございました。 昨夜の習近平国家主席との会談の続きですが、ちょうど2週間前、COVIDの起源を解明しようとして情報機関が空振りに終わったとき、大統領はこのパンデミックの起源に関する「重要な情報」が中華人民共和国に存在すると言いました。 昨夜、中国の大統領と話をしたとき、彼は言っていたように彼に圧力をかけたのでしょうか?

 MS. PSAKI:そうですね、すべての話題をリストアップして説明するつもりはありません。 今の答えはとてもドラマチックなものでしたが、もう一度始めます。

 議論されたすべてのトピックのリストを説明するつもりはありません。 彼らはCOVID-19を含む、さまざまな国境を越えた問題を議論しました。 COVID-19の起源を理解することは、もちろん、この政権の主要な関心事です。 私たちは、中国におけるWHOの第2段階の調査を引き続き支持し、中国に対してCOVID-19の起源に関するさらなる調査を許可するよう求めています。

 また、両首脳が話し合ったテーマの1つに、両首脳の間でプライベートな話し合いができることの重要性があります。 これは、これまでに行われてきた中国との低レベルの交流とは対照的です。 これは、これまでの中国との低レベルの交流とは対照的です。

 Q つまり、中国が持っているという情報を得るために、国際的な調査機関を入れるように大統領が要請したと理解してよいのでしょうか?

 MS. PSAKI:そのことは何度も公に伝えてきました。
 それが私たちの立場と見解であることは、彼らも承知していると思います。

 Q しかし、公にはしていません。 この90分間の電話会談で、彼らが話したのは...。

 MS. PSAKI: 繰り返しになりますが、ピーター、これは私たちが何度も、さまざまなレベルで伝えてきたテーマです。 今回の電話では、これ以上、読み上げることはできません。

 Q 違法な補助金の疑いに関する新たな調査を含め、貿易問題を議論するために内閣の一部のメンバーが会合を開くという報道がありました。 それを確認していただけますか? また、昨夜の習近平氏との電話会談では、競争が紛争に発展するのを防ぐことについて話していましたが、この会議との関連はどうでしょうか? 新たな貿易調査は、敵対関係をエスカレートさせるものでしょうか?

 MS. しかし、昨夜の習近平国家主席との90分間の会談では、経済的な話題は主要な部分ではありませんでした。 また、最終的な成果を出すことを目的とした通話でもありませんでした。

 彼らの中には、その多くが米国にやってくる者もいるでしょう。 あるものは他の第三国に行くでしょう。それはプロセスの一部です。 それがプレッシャーだとは思いませんが、それは常に我々が話し合ってきた計画の一部なのです。 彼らの多くは、米国でのプログラムを受ける資格があるでしょう。 その中には他の国に行く人もいるかもしれませんが、それも計画の一部です。

 Q ありがとう、ジェン。 中国についてですが、電話会談の詳細をあまり話したくないのはわかりますが、会話の中に人権問題は含まれていましたか? また、気候変動に関する次のCOPサミットで、中国が積極的な役割を果たすという印象を大統領は受けましたか?

 MS. PSAKI:中国がCOPサミットでどのような意図を持っているのか、私が語るつもりはありません。 もちろん、気候問題を中心に、さまざまなテーマが議論され、COPサミットは国際社会にとって次の大きなチャンスであることは言うまでもありません。 また、人権についても議論され、大統領はいつものように人権問題を提起しました。

 Q 習近平国家主席との電話会談では、台湾についての言及はありましたか?

 MS. PSAKI: 確認しなければなりませんが、この資料には台湾に関する記述はありません。(THE WHITE HOUSE SEPTEMBER 10, 2021「Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki, September 10, 2021」)

 が、米国は台湾を"ちらつかせ"、ことさら中国の神経を逆撫でする。

 米国、台湾島が求めるなら本気で教えよう。「Teach the US, Taiwan island a real lesson if they call for it」

 土曜日の英紙フィナンシャル・タイムズによると、ワシントンは台湾島からの要請を真剣に検討しており、米国の首都にあるミッションの名称を "台北経済文化代表処 "から "台湾代表処 "に変更することを検討しているという。また、ホワイトハウスのカート・キャンベル・アジア顧問がこの要請を支持しているとも伝えられている。ワシントンは、このような変更がもたらすリスクを評価している。この報道は、台湾で強い反響を呼んでいるが、米政府も台湾当局もコメントを出していない。

 また、米国と台湾の"国家安全保障"担当高官が金曜日にワシントンDCから車で1時間弱の距離にあるメリーランド州アナポリスで直接会談を行ったとの報道もあった。この2つのニュースは、中国と米国の国家元首が電話で会話したという報道の直後に明らかになった。

 なお、米国と台湾が名称変更を行うことは、ワシントンが"一つの中国"政策を基本的に放棄することを意味し、台湾問題をめぐる大きな変化となる。リトアニアは以前、台湾島に"台湾代表事務所"という名称で事務所を設置すると発表し、台湾島も同じ名称でリトアニアに事務所を設置する計画を発表していた。これには中国大陸から強い抵抗があった。もしアメリカが同じことをすれば、間違いなく同盟国に広くデモンストレーション効果をもたらし、これらの国々で台湾島のミッションの名称変更が相次ぐことになるだろう。

 米国は、それが重要かつ深刻な問題であることをよく知っている。中国大陸の反応を試すために、ある情報をリークしているのだ。しかし、本当に試すべきことがあるのだろうか?中国本土は、この問題を対決の転機に追い込むのであれば、挑戦を受け、アメリカとの対決に備える以外に選択肢はない。アメリカがワシントンにある島のミッションを「台湾代表部」と改称すれば、中国大陸はリトアニアにしたような軽い罰則的な対応をするはずだ。その際、中国は駐米大使を召還することが予想され、それが "最低の外交的反応 "となる可能性が高い。そうしないと、中国はこれまで守ってきた一つの中国の原則に威信をかけられない。

 米国の扇動・誘導により、一部の欧米諸国は "台湾カード "を使いたくて仕方がない。大国を無視して小国だけを処罰してもうまくいかない。一つの中国の原則のボトムラインを守るということは、アメリカが一線を越えようとするのを抑止することだ。そうでなければ、"台湾代表部"が次々と首都に出現する可能性に直面することになる。

 外交上の措置だけでは当然足りない。アメリカと台湾島が名前を変えれば、中国の"反分裂国家法"のレッドラインに触れる疑いがあり、中国大陸はアメリカと台湾島の横暴に対抗するために、厳しい経済的・軍事的措置を取らざるを得なくなる。その際、中国大陸は台湾島に対して厳しい経済制裁を行い、状況に応じて台湾島の経済封鎖も行うべきだ。

 軍事的には、中国大陸の戦闘機が台湾島の上空を飛行し、台湾島の空域をPLAの哨戒エリアに入れるべきだ。これは中国大陸が遅かれ早かれ取らなければならない措置なのだ。今回の名称変更は、中国大陸にとって、台湾島に対する主権的主張を強化する十分な理由となる。台湾軍は、PLAの戦闘機の飛行をあえて止めないことが予想される。台湾側があえて発砲すれば、中国大陸は躊躇なく"台湾独立"勢力に決定的かつ破壊的な打撃を与えるだろう。

 さらに重要なことは、今回、中国大陸がアメリカと台湾島に目をつぶれば、次のステップでは間違いなくさらに踏み込んでくるということだ。報道によると、台湾島の対外問題担当リーダーであるジョセフ・ウー氏は、金曜日にアナポリスで行われた米国と台湾島の安全保障担当高官の会談に参加したという。次回は、ワシントンDCの米国務省でも会議を公開する可能性がある。米国は年内に"民主化サミット"を開催するが、米国と台湾島の横暴を抑えなければ、ワシントンは本当に蔡英文をサミットに招待するかもしれない。それは、1995年に李登輝元台湾地域リーダーが"OB"として訪米した時よりも、はるかに性質の悪いものになるだろう。

 中国大陸がこれを我慢して、平和のために怒りを飲み込めば、平和が訪れるのだろうか。中国大陸が断固とした反撃をしなければ、アメリカの軍艦が台湾島に停泊し、戦闘機が台湾島に着陸し、軍隊が再び台湾島に駐留することになるかもしれない。その時、中国の大国としての威信はどうなるのか。国際的に自国の利益を守る体制をどうやって維持するのか。

 事実、台湾問題については意志の対立が形成されている。 中国が"台湾問題はわが国の核心的利益の問題である"と宣言している以上、この正確な国益のボトムラインを何としても守るために、毅然とした行動を取らなければならないのである。民進党の権力者が本当に戦争を誘発するリスクを冒してまで名称変更を推進し、アフガニスタンで大失敗したばかりのアメリカが新たな戦争に巻き込まれることを恐れないのであれば、大陸は何を恐れているのだろうか。

 遅かれ早かれ、台湾海峡は状況を一変させるような嵐に見舞われることになりそうだ。そして、現在のアメリカと台湾島の行動を見ていると、たとえ一歩後退したとしても、すぐにまた一歩前進することは間違いない。だからこそ、今は台湾海峡で彼らを吹き飛ばすための万全の準備が必要なのだ。

 アメリカは、中国とアメリカの "競争"が "衝突"に発展しないことを願って、言葉を弄している。台湾問題での中国大陸との"競争"が深刻な紛争に発展することは間違いなく、そこには一切の余裕がないことを、我々は行動ではっきりと伝えなければならない。(GT 2021.09.12「Teach the US, Taiwan island a real lesson if they call for it: Global Times editorial」)

 台湾問題で中国を挑発するリトアニアの動きに追随すれば、米国はより厳しい対応を迫られるだろう。

 中国と米国のトップリーダーが電話会談を行い、世界で最も重要な二国間関係の回復に希望をもたらした同じ日に、台湾の分離独立派当局は、2人の「高官」を米国高官との微妙な秘密の会談に送り込み、ワシントンに島の代表事務所の名称を"台湾"に変更するようワシントンに働きかけた。これは、一つの中国の原則を挑発し、台湾の分離独立主義を奨励する重大な動きである。

 中国外交部の通話後の声明によると、中米関係の緊張した状況を変えたいとの米側の要請を受けての習近平国家主席との金曜日の電話会談、関係を軌道に乗せるための具体的な行動には消極的であったが、ジョー・バイデン米大統領は一つの中国政策を変える意図はないと述べた。

 中国大陸の専門家は、バイデン政権が民進党当局に分離独立をさらに促すことを検討しているという報道が事実であれば、これはワシントンの対中政策が矛盾しており、バイデンの言葉と行動が一致していないことを示しているという。これは、中米関係改善のための努力を脱線させ、問題をさらに悪化させる可能性がある。

 独立派の民進党当局は、トラブルを誘発したり、米国の一部の政治家を翻弄したりして、中米関係回復の可能性を妨害しようとしていると指摘し、米国がリトアニアのように中国の主権を挑発すれば、中国の報復はもっと厳しくなる可能性があり、そうでなければ、誰も一つの中国の原則を尊重しなくなるだろうと述べた。

 もしアメリカがワシントンの島の代表事務所の名前を変えたら、中国の駐米大使を呼び戻すのが最も基本的な対応になるだろう、と専門家は言う。台湾の分離独立主義を抑止するために人民解放軍(PLA)がより直接的な行動を取るようになるため、台湾海峡ではより多くの報復が行われるだろう。中国大陸のアナリストは、民進党当局が米国の高官との間でより多くのトリックを使えば使うほど、中国の国家統一の実現が早まると警告している。

 曖昧なサイン

 「フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、米国の内部事情に詳しい複数の関係者によると、ワシントンは台湾の民進党当局が米国の首都にある事務所の名称を"台北経済文化代表処(TECRO)"から"台湾代表処"に変更するよう要請することを"真剣に検討している"という。」

 この要請は、中国の主権と核心的利益に深刻な異議を唱え、中国とリトアニアの関係を大きく後退させ、そのためにバルト諸国が大きな代償を払ったリトアニアの提案と同じものである。

 ホワイトハウスのアジア担当アドバイザーであるカート・キャンベル氏は、この変更を支持していると、この議論を知る2人の人物がFT紙で報じている。また、国家安全保障会議の内部や国務省のアジア担当者からも、この要請は広く支持されているとも言われています。最終的な決定はなされておらず、バイデンが大統領令に署名する必要があると、この問題に詳しい人物は語っている。バイデン政権は、今回の報道に対して明確な回答や正式な確認をしていない。

 中国社会科学院の研究員であるLü Xiang氏は、日曜日の環球時報に、これは米国政府が中国と交渉する際に頻繁に使う非常に一般的なトリックであると語った。つまり、会議や電話で何か良いことを言って話を進め、水面下で何か悪いことをして圧力を高めるというものだ。

 "アメリカのメディアによると、バイデン政権の下級官僚たちは、中国の官僚たちが自分たちと話すのを嫌がっていると不満を持っているそうです。これは非常に賢明ではない方法だ"と、リュウは言う。

 その結果は極めて深刻だ。なぜなら、それは一つの中国の原則に反し、中米外交関係の政治的基盤を揺るがすものだからだ。台湾の地域リーダーを "民主化サミット" に招待するのと同じくらい重大なことで、中国は大使を呼び戻すだけでなく、PLAの戦闘機が島の領空を飛び交い、現状を変えようとするアメリカの挑発に対処するため、より直接的な行動を取るだろう、とLü氏は指摘する。

 中国外交学院国際関係研究所の李海東教授は、環球時報に、FTの報道が事実であれば、"米中関係を軌道に乗せるというバイデンの約束には疑問があり、偽善的であることを示している ″と、述べた。

 "あるいは、バイデンが、政府内の異なる部門間で効果的なコントロールを発揮できなかった弱い大統領であることを証明している。反中国の強硬派と、緊張を緩和して中国との協力関係を求めようとする現実的な当局者が、影響力と権力をめぐって競争しており、バイデンはそれらを統一することができない"と、李氏は言う。

 アメリカ大統領からの電話だけでは、関係を修復するのに十分ではなく、中国は言葉よりも行動を重視していると李氏は述べた。"残念ながら、バイデン政権のこれまでの行動は、詐欺的で、無責任で、破壊的である"と、強調しました。

 リュー氏は、バイデン政権が大陸と台湾のバランスを取ろうとしているのか、あるいはバイデン氏の許可を得ずに行動している下級官僚がいるのかに関わらず、アメリカがTECROの改名を認めれば、中国は厳しく厳格な報復を行うだろうと述べた。アメリカは、非常に賢明でない近視眼的なミスを犯して、中国との関係を軌道に乗せるという希望を握りつぶすことになるだろう、と。

 トラブルメーカー

 台湾分離派の民進党当局は、中国と米国の間で常に緊張関係にある。FTによると、ワシントンの台湾事務所の名称変更要請に関わったある人物によると、民進党当局はトランプ政権末期に米国とこの問題を協議し、正式には3月にバイデン政権に要請を行ったという。民進党当局の"高官"がFTに語ったところによると、当局は以前から変更を強く求めていたという。

 また、FTの報道では、"米国の内部議論について説明を受けた複数の人物が、ワシントンは台湾からの名称変更の要請を真剣に検討していると語った"とも伝えている。

 "しかし、米国内の議論について説明を受けた"複数の人物"とは誰なのか。ホワイトハウスの関係者なのか、それとも民進党当局が雇った第三者のブローカーなのか。復旦大学の国際関係と公共行政学院のShen Yi教授は、いわゆる"改名検討"をメディアに発表したのは、明らかにホワイトハウスではなく、台湾当局である"と述べている。

 民進党当局の"関係者"は、自分たちのやったことに満足し、中米関係にもたらした影響を誇示しているかもしれないが、あまりにも傲慢で無知であるとShen氏は指摘し、民進党が米政府関係者とのコミュニケーションに使用しているいわゆる "特別チャンネル"は、ワシントンDCに入ることさえできないと強調した。

 "改名して誰が得をするのか?バイデン政権ではない。なぜなら、これは中米関係を修復しようとする意図に反し、かえって緊張をもたらすものであり、バイデンの内政問題への優先順位とは関係がない。民進党当局は、この緊張状態を利用して分離独立主義を誇示し、島の有権者を騙すことができるからだ。つまり、メディアに情報を流した"情報源"は、中米関係の回復に困難をもたらそうとしている人たちなのです"と、沈氏は指摘する。

 台湾の分離主義者は、中国大陸が台湾問題を解決するための作戦を開始すれば、すぐにアメリカから見捨てられる存在になることを理解すべきであり、トラブルを起こすために策を弄すればするほど、彼らの破滅と国の統一が早く訪れることになると、大陸の専門家は述べている。(GT 2021.09.12 11:23 PM「Recovery of China-US ties sees 'troublemaking from Taiwan island' US will receive much tougher response if follows Lithuania's step to provoke China on Taiwan question」)

 台湾は、2つの大国の間の緊張の源だ。在ワシントン台湾公館の名称変更要請に関わった人物によると、台北はトランプ政権末期に米国とこの問題を協議し、3月にバイデン政権に正式な要請を行ったという。台湾の高官によると、台北は以前から変更を強く求めていたと。

 ワシントンは、1979年に外交上の承認を台北から北京に変更したため、テクロを大使館として扱っていない。中国は、公式名称である中華民国や地理的名称での国際的な表現に反対しており、これは主権国家としての主張を強化するものだと考えているからである。

 米国での名称変更に関する議論に詳しい2人の人物によると、この変更が象徴的なジェスチャーであり、中国と米国および台湾との間の緊張を悪化させても、実際の利益はほとんどないという点が難点であるという。

 米国と台湾の高官は、金曜日にメリーランド州アナポリスで「スペシャル・チャンネル」と呼ばれる微妙な協議を行う予定だった。台湾側の代表には、台湾の国家安全保障担当顧問と、米国が台湾の高官の首都訪問を制限しているためにワシントンを訪問できない台湾の外務大臣ジョセフ・ウー氏が含まれている。

これまで北京との対立を避けるために秘密にされてきた「特別チャンネル」での会談は、バイデン氏のチームが台湾とハイレベルな直接会談を行う初めての機会となる。

バイデン氏は、香港の民主化運動への弾圧やウイグル人への迫害など、中国に対して鷹揚な態度をとってきた。また、中国が台湾の「防空識別圏」に戦闘機を増派したことで、台湾に対する緊張が高まっている。

 ジャーマン・マーシャル・ファンドの台湾専門家であるボニー・グレイザー氏は、名称変更の推進に疑問を呈し、米国と台湾は "中国を後押しする象徴的なステップではなく、台湾の安全保障を強化する意味のある行動にエネルギーを集中すべきだ "と述べている。(INSIDER VOICE 2021.09.10「Washington risks the ire of Beijing over the proposal to change the name of Taiwan’s US office.」)

 しかし、中国は米国と戦火をを交えてはいけない。勝ち負けではなく、米国との争いは“破壊”が結果であり、決して生産的でも建設的でもないからだ。それに、中国が築いてきた国富を失ってはならない。人民ためである。

 中国は米国を去なすだけの力がある。

 血糊の付いた人権、平和、人道、自由、民主主義と嘘の旗を引っ提げて、米国が次に流れ行先は…。

 バイデン米大統領の発言の中に、方向づけがされている。抜粋する。

 3つ目は、世界におけるアメリカのリーダーシップの回復です。
 世界中を旅したことのある皆さんはもちろん、国連大使もよくご存知だと思いますが、この4年間、アメリカは本当に八方塞がりの状態でした。多くの地位を失いました。このことは、私の右隣に座っている相棒の国務長官に言うまでもありません。彼はそれをよく理解しています。
 トランプ前政権の過去四年間で米国は不利な立場に置かれたと。"リーダーシップの回復"については、是まで見てきたように、トランプ以上に同盟国からも厳しい批難を受け、信頼を失うという苦しい破目に陥る。

 前にも言いましたが、私たちは今、21世紀、つまり21世紀の第2四半期に向けて、中国をはじめとする多くの国々と決定的な競争をしているのです。これらの国々の多くは、独裁政治が未来であると考えています。民主主義国家は独裁国家に対抗できない、なぜなら技術的にもその他の面でも物事が急速に変化しているため、民主主義国家はどのように行動すべきかについてコンセンサスを得るために行動をまとめることができないからだと。

 まあ、私はそのような考え方を完全に否定しますし、アメリカ人の大多数もそうだと思います」

 世界の指導者たちとの会話や会議で、私は、民主主義はより有能であり、アメリカは戻ってきたのだということを、プーチンとの会議を最後に8日から9日ほど過ごして帰ってきたところですが、絶対に明確にしています、世界への予防接種に役立っているかどうかにかかわらず。(「Remarks by President Biden Before Cabinet Meeting to Mark Six Months in Office JULY 20, 2021」)

 しかし、米国が頼みとする軍事面でも、「米軍の技術変革の進み方は遅く、米国はこの分野で中国と競争することはできないとの見方」を、米国防総省のソフトウェア担当主任エンジニアを務めていたニコラス・シャイラン氏は示す。「15〜20年後に中国と競争するチャンスは我われにはない。現在すでにすべてが決まっている。私の考えでは、すべてがすでに終わっている」、「中国は人工知能(AI)と機械学習の分野における成果のおかげで、『世界制覇に向かっている』と。(sputnik 2021.10.11「米国にとって、中国との技術競争は「すでに終わっている」=米国防総省の元エンジニア」)

 更に「英紙『フィナンシャル・タイムズ』によると、中国は8月、核の搭載が可能な極超音速兵器の実験を行っていた。これに関し、米当局者は予想をはるかに上回る中国の技術力に衝撃を受けたと同紙が報じている」、「今回の実験について知る関係者の一人は、『いかにしてこのような技術を獲得できたのか理解できない』と評している」(sputnik 2021.10.17「中国の極超音速兵器実験、米国に衝撃」)。

 今回の実験について知る関係者の一人は、「いかにしてこのような技術を獲得できたのか理解できない」と評している。」

 更に AUGUST 31, 2021での発言。
 そして、ここで重要なことを理解する必要があります。世界は変化しています。私たちは、中国と真剣に競争しています。ロシアとの多面的な課題に取り組んでいます。 また、サイバー攻撃や核拡散にも直面しています。

 21世紀の競争におけるこれらの新しい課題に対処するには、アメリカの競争力を強化する必要があります。そして、私たちは両方を行うことができます。テロと戦い、現在も将来も存在し続ける新たな脅威への対応の両方を行うことができます。

 中国やロシアにとって、アメリカがアフガニスタンであと10年も泥沼にはまること以上に、この競争で望んでいることはないだろう。

 この20年間、わが国を導いてきた外交政策のページをめくるにあたり、私たちは失敗から学ばなければなりません。

 私にとって、最も重要なことは2つあります。 1つ目は、達成できない目標ではなく、明確で達成可能な目標を掲げてミッションを設定すること。 そして2つ目は、米国の基本的な国家安全保障上の利益に明確に集中することです。

 アフガニスタンに関するこの決定は、アフガニスタンだけの問題ではありません。 他国を作り変えるための大規模な軍事作戦の時代に終止符を打つことなのです。

 アフガニスタンでは、テロリストを捕まえて攻撃を阻止するという対テロリズムの任務が、対反乱戦、国家建設、つまり民主的でまとまりのある統一されたアフガニスタンを作ろうとするものへと変化しました。

 このような考え方や大規模な部隊展開から脱却することで、私たちはより強く、より効果的に、より安全に自国で活動できるようになります。

 私たちは、世界中の女性や少女のために声を上げているように、アフガニスタンの人々、特に女性や少女の基本的な権利のために声を上げ続けます。 そして、人権が私たちの外交政策の中心であることを明確にしてきました。(「Remarks by President Biden on the End of the War in Afghanistan AUGUST 31, 2021」)

南シナ海における非合法かつ広範な海洋権益の主張は、南シナ海沿岸国の航行・飛行の自由、自由貿易・通商の自由、経済的機会の自由を含む海洋の自由に対する深刻な脅威となっている」(「第7艦隊、航行の自由作戦を実施」米国第7艦隊広報部より、という文言を繰り返す。(「7th Fleet conducts freedom of navigation operation From U.S. 7th Fleet Public Affairs」) Posted July 12, 2021」)

 米国沿岸警備隊は、インド太平洋沿岸警備地域に尽力している。現在、第二次世界大戦以来最大の造船計画を進めているところだ。
 米国太平洋艦隊の副司令官であるブレイク・コンヴァース海軍少将は、先週発表した米国防総省の声明をほぼそのまま繰り返し、北京の新たな不適切な主張をけん制した。ご指摘の通り、南シナ海を含む非合法かつ広範な海洋権益の主張は、海洋と上空飛行の自由を含む航行の自由、自由な貿易と合法的な商取引に対する深刻な脅威となっている」と述べた。(SCMP 2021.09.10「US Coast Guard modernises fleet, expands presence in Indo-Pacific to counter ‘bad actors in the region’」)

 “地域の悪しき行為者”とは誰のことか、米国自身のことであるなら、正解である。

 世界の警察として容喙する癖は一朝一夕には治まらない。それに、この僻み根性はどうしたものだろう。泥沼を作ったのも、其の泥沼にはまり込んで身動きがとれなくなったのも、米国が自ら望んだこと、為した事なのだ。つまりは‹身から出た錆›である。他国を邪推するものでもなかろう。

 詰まる所、流れ行先は、敵する相手に中国、競争する相手に中国、 ‹寝ても覚めても›中国在りで、中国、中国なのだ。それも、中国のシナ海、中国のインド・太平洋を目指す。そう、既にシナ海・インド・太平洋が中国の領海のような騒ぎなのだ。

 本来なら全努力をもってアフガンに対処すべきであるのに、米国のカマラ・ハリス副大統領は、対中国批難を武器に、東南アジアへの米国利益の足固めである。国際社会に恥じいる心は皆無である。  ベトナムでは米国人の碑に向い「たぐいまれな米国人だった。非常に勇敢で、英雄の人生を生きた」と、とんちんかんなのだ。米国に過去は無しだ。

 ハリス米副大統領、「北京の振る舞いはルールに基づいた秩序と各国の主権を損なう」と非難、「同盟国・友好国と共にこの脅威に立ち向かう」宣言、インド太平洋地域への「米国の関与を再確認する」ために東南アジアを訪れたとも強調。「この地域は、米国の安全保障と繁栄のため決定的に重要だ」と表明。航行の自由や障壁のない商業活動といった「開かれたインド太平洋」を追求する。新型コロナウイルス対策では、米国のワクチン供与は「無償で、ひも付きではない」と説明、中国の「ワクチン外交」との違いをにじませた。(中日 2021.08.25)

 まるで救世主の降臨・託宣するが如くの高飛車な物言いではないか。アフガニスタンの現状など東南アジアは知る必要もない、ただ米国に從い米国の祝福を受けよ、ではないか。本質的にアジア蔑視なのだ。そして、米国の"草刈り場"としか見ていないという態度である。この地域は、“米国の安全保障と繁栄のため決定的に重要だ”と本音を隠さない。
 唯々諾々では、この地域もアフガニスタンと同様、戦場となり、血の海となる。アジアは欧米の"いちゃもん"には距離を置くべきだ。地政学的には欧米に残された最後の“食い荒らす”場なのだ。

 “Put your word back into its place;for all who take the sword will perish by the sword”(『THE HOLY BIBLE』COLLINS'CLEAR-TYPE PRESS1952 MATTHEW26.52)であるが、未成熟国家であるアメリカは、意に介さず争いの種を蒔き散らし、目先の対立をでっち上げ、“他国の不利は自国の利”とばかりに、侵略・略奪する。

 バイデン氏、「アフガンだけでなく、他国を立て直すための大規模軍事作戦の時代を終わらせる」と。「正しく、賢明で、最善の決断だった」自画自賛する、"身勝手"な振舞ではないか。侵攻された側の後始末はどうするのか。「民主的で団結したアフガン国家の建設」といった「他国を立て直すための、大規模な軍事作戦の時代を終わらせる」と表明。(中日 2021.09.01)

 英海軍の最新鋭空母クイーン・エリザベスを中核とする打撃群の司令官スティーブ・ムーアハウス准将は、「日本寄港は今回の航海の要だ」、「新たに現れつつある脅威」に対応するため、共同訓練を通じた相互運用性の向上が重要と指摘。(中日 2021.09.08)

 “新たに現れつつある脅威”というが、この地域にとって最たる脅威は欧米諸国であった、そして近未来の最大の脅威は、争いを利とする米・英が軸となってもたらされる。その‹危ない橋を渡る›引き込み人が“今回の航海の要”とされる“脱亜入欧日本”であり、脅威作りに一役も二役も買っている。
 アメリカは“アメリカの裏庭”で中国の影響拡大と云うが、米国は20年間も中国の近所で戦争を繰り広げ、そして中国の中庭で、台湾、香港等を使嗾しているではないか。何も生み出さない非生産的な米国より、生産的な中国のが格段に優っている。

 エルサルバドルに関しては、1980年代広範にわたって拷問が行われ、拷問に関与した治安部隊はいずれもCIAや米軍と密接な関係をもっていた。米国は財政から60億ドル(1980~92年)費やし有意義な社会変革を挫折させた。92年に内戦が終了したとき、7万5000人の一般市民命を落とした。内戦後も反対派は右翼の「死の部隊」を恐れた。(『アメリカの国家犯罪全書』ウイリアム・ブルム著2003年5月30日第2刷発行)

 そして“合言葉”は、近隣諸国を覆い隠し騙す口実“自由で開かれたインド太平洋”である。自由とか開かれたと唱えれば、まるで国際社会を代表するかの如くであり、印象操作である。これは自国民への謀ともなる。
 「航行の自由作戦」と称しているが、米国は海の憲法とも呼ばれ国連海洋法条約(正式名称:海洋法に関する国際連合条約: United Nations Convention on the Law of the Sea)にも加盟していないのだ。

 中国の国連臨時代理大使は、「米国は国連海洋法条約の締約国ではないのに、条約の裁判官であるかのように他国にあれこれ批判や指図をし、無闇に干渉しており、海洋問題において全く信頼性がない。米国が安保理で南中国海仲裁判断を宣伝するのは、完全に政治的企てだ。南中国海仲裁裁判で、仲裁裁判所は『国家同意』の原則に背き、越権審理を行った。事実認定と法律適用に明らかな錯誤があり、その判断は無効で、いかなる拘束力もない」(人民網日本語版 2021年08月10日)と。

 米国のアフガニスタンからの避難を支援するために北アラビア海に展開していた空母ロナルド・レーガンとその打撃群は金曜日、南シナ海に向けて航行し、同地域に戻ってきた。  米海軍によると、日本を拠点とする空母は、南シナ海で飛行作戦、海上打撃作戦、対潜水艦作戦、戦術訓練を行う予定で、北京との緊張関係を煽る。(ANTIWAR.COM 2021.09.24「US Aircraft Carrier Sails Into South China Sea After Afghanistan Deployment」)

 結局、謀略のめぐらす先は、中国・ロシアなのか。前に引用したノーム・チョムスキー氏の云うとおりか。
 ジョー・バイデン大統領は就任早々、「必要な時は競争、可能な時は協力、避けられない時は対決」と対北京政策を定めていた。あれから9ヶ月、ワシントンと北京の関係はほとんどが3番目に分類される。(LE FIGARO 2021.09.28「Chine-États-Unis: le dangereux face-à-face」)

 「世界の管理は決してアメリカに任されるべきではなかった。アフガニスタンでの敗北は、米国の最後の帝国主義的戦争であるべきだ」、「この敗北は、世界を支配するための"アメリカ帝国"が終わりに近づいたことを示した」、「アメリカ帝国という、浪費、矛盾、野心にあふれた同国史上の時代は終わろうとしている。120年前にハワイやフィリピンを占領したことから始まったものは、今では規模の面では取るに足らず、コスト面では膨大なものとなり、目的の面では無関係なものに至っている」、アメリカの軍事費、年間7700億ドル以上であることに触れ、「そうした状況で、米国内の大都市はスラムの拡大により荒廃している。教育を受けておらず、貧しく、みじめで希望のない生活を送っている数百万の市民が住む場所、つまりアメリカ帝国は、自国民にすら関心を持たないものに変わってしまっている」、「帝国主義の歴史や国際情勢、アメリカ社会の特徴を踏まえれば、撤退だけが、アメリカが世界で果たすべき唯一の仕事である」と。(ParsToday 2021.08.3「イスラエル紙、『アメリカ帝国は直に終焉する』)

 「米国の発言は完全に自分の基準で他人を推し量っている。自身の失敗の口実探しをしながら、世界で強権政治を引き続き推し進めようとする米国の覇権的な本質を再び露呈している」と指摘。(CRI 2021-09-06 22:10「米国は自らの失敗の口実を探すべきではない=外交部」)

 が、その"21世紀の第2四半期への競争"が、徒党を組んでの「航行の自由作戦」や「開かれたインド太平洋」の標語を掲げての、中国周辺の海域を"うろつく"ことなのである。都度、中国に叱正を浴びるという繰り返しである。が、結局は中国の対応・体制強化に一役も二役も買っている。

 "より有能な民主主義"が自国第一と予防接種をしている現実が以下の有様なのだ。

 世界の新型コロナウイルス感染者(2021.10.17 現在) 米ジョンズ・ホプキンズ大
 米国  :感染者 4491万6462人 死者 72万4153人
 インド :感染者 3406万7719人 死者 45万2124人
 ブラジル :感染者 2163万8726人 死者 60万3152人
 英国  :感染者 844万3882人 死者 13万8940人
 ロシア :感染者 787万0529人 死者 21万9342人
 インドネシア:感染者 423万4011人 死者 14万2933人
 タイ  :感染者 178万3701人 死者 1万8273人
 韓国  :感染者  34万2396人 死者   2660人
 豪   :感染者  14万3204人 死者   1532人
 中国  :感染者  10万8891人 死者   4849人
 日本  :感染者 171万3471人 死者 1万8032人(日本10.13 現在:アワー・ワールド・インデータ)
 世界全体感染者2億4048万2128死者 489万6346人(中日)

 ジェン・サキ報道官は、はっきりと、70万人に達した時点で、私たちは皆、思案することになるでしょう。 これは、パンデミックによって失われた驚くべき恐ろしい数の命であり、愛する人、両親、祖父母、そして多くの場合、子供を失った人々です。
 大統領が具体的にどのような行動をとるかについては、詳細が決まり次第、またご報告したいと思います。(「Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki, October 1, 2021 OCTOBER 01, 2021 PRESS BRIEFINGS」)
 そして、バイデン大統領、「癒すために私たちは覚えておかなければなりません、COVID-19によるアメリカ人の死が70万人という痛ましい節目を迎えても、その悲しみに無感覚になってはなりません。この日、そして毎日、私たちはこのパンデミックで亡くなったすべての人々を記憶し、魂の一部を失った愛する人たちのために祈ります。」、「まだ予防接種を受けていない方は、ぜひ予防接種を受けてください。あなたとあなたの大切な人たちの命を救うことができます。そして、COVID-19を克服し、一つの国として共に前進していきましょう。」(「Statement by President Joe Biden on 700,000 American Deaths from COVID-⁠19 OCTOBER 02, 2021」)

 アメリカのリーダーシップの回復を願うのなら、先ずは自国民の救済に腐心すべきではないのか。世界一の感染者数と死者数は、基本的人権無視の最たるものてあり、政治の空白を証明するに十分である。
 その米国が世界の心配をしても、空々しい。

 ジョー・バイデン米国大統領は、水曜日(9.22)に国連総会(UNGA)の傍らでグローバルCOVID-19サミットを開催した。このサミットには「100以上の国、100以上の団体が参加する」と宣言していたにもかかわらず、参加したのはカナダ、EU、南アフリカなど、わずか数カ国・団体にとどまった。これは、「米国のグローバル・リーダーシップ」の現状を表している。(GT 2021.09.23「Low attendance at Global COVID-19 Summit shows weak US leadership」)

 米国は自らの行為を正当化するために、他国(者)を讒言し或は批難する。偽善的な行為・言動の最たるは人権・人道・自由・民主主義の点において現れる。これ等の点に於て、本来は非難されるべき自国のために、煙幕を張っている。

 パンデミックとの戦いにおいて、中国は間違いなく最も人道的な国であることが強調されなければならない。流行が始まって以来、中国は人命第一を主張してきた。人民第一、生命第一を掲げ、人々の生命、健康、安全を何としても守ってきた。これは、人の命を軽視し、政治や党の利益を優先する米国や一部の欧米諸国とは対照的である。寧ろそれらの西側諸国のCOVID-19の患者の命よりも、中国では猫の命の方が大事にされているといっても過言ではない。(GT 2021.09.29「China takes cat lives more seriously than some Western countries treat COVID patients」)

 このことについては、あなたに少しお話しました。 去年のトランプの帽子をかぶった子供たちと写真を撮ったのですが、彼らにとっての本当の問題は、次のようなことだと思います。今後4年、5年、6年、10年の間に、私たちは民主主義が機能することを証明できるのか、できないのか。
 私は、昨晩ではなく一昨日の夜に、習近平国家主席と1時間半以上も長い会話をしました。 また、プーチン大統領との1対1の首脳会談も行いました。 他の人たちとも話しました。21世紀には民主主義が機能しないと本気で信じている独裁者がたくさんいます。冗談ではありません。世界は急速に変化し、人々は分裂しているので、民主主義で人々をまとめてコンセンサスを得ることはできず、成功できるのは独裁者だけだと考えているのです。(「Remarks by President Biden After Visiting with Firefighters and Their Families on the 20th Anniversary of the September 11th Attacks」2021.09.11)

 民主主義が機能しないのではなく、その民主主義の理想を体現する“米政権”が機能していないのだ。つまり、米国の人権・人道・自由・民主主義の在り方は、米国自身の為だけに通用し、他国民に及ばないという、普遍性を持たないものだからなのだ。否、米国民の爲にも人権・人道・自由・民主主義は機能していない。
 他国を独裁者などと度々言及するのは、米国自身が民主主義よりも優れていると、或は理想と内心憧憬しているからではないのか。少なくとも、切った張ったのビジネスの世界に身を置いた前任者は、そのような体制に親和性を抱いていたのではないか。

 中国の華春瑩報道官は、「民主的か否かを判定するうえで肝要なのは、国民の期待やニーズ、願いにかなっているか否か、国民に具体的利益をもたらしているか否かを見ることであり、スローガンを叫ぶだけであってはならず、実際の成果を見る必要があると、我々は繰り返し述べてきた。米国は1%の階層が所有し、1%の階層が統治し、1%の階層が享受している。これが民主主義なのか?」(人民網日本語版 2021.09.28)

 「れわれアメリカ人は、半世紀以上にわたって、アメリカは「自由世界」の指導者であると教わってきた。そうであるならば、次のように尋ねることは正当であろう。追従者はどこにいるのか。ほかの政府や指導者たちが、アメリカが単に一万ポンドの巨人であるという以外の理由で、アメリカ政府の世界観に動かされているという証拠はどこにあるのか。知的あるいは道徳的リーダーシップに対する忠誠と敬意はどこに見られるのか。朝鮮、ベトナム、アフガニスタン、ペルシャ湾岸、ユーゴスラビアなどで行なった戦争への支持を取り付けるため、米国が、賄賂や強迫、詭弁に訴えなくてはならなかったのはなぜか。
 米国は、国連において、人権や平和、核武装解除、経済的公正の促進、南アフリカのアパルトヘイトに対する闘い、イスラエルの無法な行為などに関する総会決議に、しばしば、他の一、二ヶ国ともに、驚くほど一貫して反対してきている。」(『アメリカの国家犯罪白書』ウイリアム・ブルム著2003年5月30日第2刷発行 「世界と対立するアメリカ―国連を舞台に」)

 現代の巨獣(リヴァイアサン=Leviathan)である米国は、偽善的な行為を欺瞞に満ちた言動で"正当化"する。正当化に窮すると、もともと道理も理性も持ち合わせないため、敵愾心を燃やし、血を見る。結果は、圧倒的に有利にも拘わらず、尻尾を巻く破目に陥る。

 さて、『巨人論』でのリヴァイアサン、人間の生活は「すべての人に対する各人の戦争」と前提するならば、遂には相互の破滅となる。これを押しとどめるには、公権力若しくは国家であるが、これも一面に於ては"リヴァイアサンとも"称せられ、一つの道徳的巨人である。「国家とは、一社会内に於ける各人の相互契約に依りて彼等の意志の合体するに到れる一人格にして、この人格は社会の秩序及び平和ために社会内に在る一切の権力を自由に行使得るものなり」と。
 そして、"リヴァイアサン"、君主国家に採用された。(『政治思想の変遷』高橋清吾 著1928)
 が、今、代表的民主国家に採用され、暴威を振るう、アメリカが其れである。
 中国とってアフガン戦争の20年間は、敗戦とドッジ・ライン下の財政金融引締め政策で不況に喘ぐ日本の、朝鮮戦争時の特需景気のそれではない。それは中国が世界に向って生産的・建設的貢献を無視したとの結果をも意味しないであろう。むしろ逆である。中国が世界経済に向きあっての互恵的な努力の結果であろう。

 何とも無様な負け方、そして敗走劇を演じものである。
 「首都カブールの空港付近では、出国を望む多くの群衆を尻目に、米国人らはタリバンとの特別合意のおかげで「秘密」の出口に誘導され、特別ゲートから出国」していた。(sputnik 2021.09.01「米国とタリバンが「秘密合意」 タリバンが米国人を特別機まで誘導し、無事出国させていた CNN」)

 敗けた軍事大国が敵としていた側に頼り、裏口逃避とは何とも惨めな姿ではないか。それは、これ迄の協力者をも見捨てたことを意味する。

 日本も嘗て日本人居住者を置き去りにし、軍が逸早く逃走した。「関東軍に置き去りにされた婦女子・幼児主体の在留邦人は、ソ連軍の猛攻下を逃げまどって殺傷され、あるいは集団自決し、さらに略奪・暴行・強姦をくわえられた。日本への報復にたちあがった中国人に襲われたものもいた。そしてその前途は飢餓と酷寒と疫病の中の惨憺とした逃避行であった」(『十五年戦争小史』江口圭一著 249頁 )と。

 最も自由主義陣営のメディアの在り方も不思議な特性を持つ。
 一つに米国陣営中心のニュース・ソースに依拠していること、そしてそれが世界の中心のような報道に偏向する。次に人権・自由・民主主義の問題になると、米国は既に"遵守"しているかの錯覚をし、米国以外の国の同問題に批判を集中させ、拡声器と化す。まさに国民を誤誘導する。
 事実確認(調査)の報道など皆無に近い。民主主義・自由主義の世界に在りながら、米国に臣従し、木偶の坊報道となり、批判も腰を入れた報道は無く、適当に誤魔化し、御用新聞と化し毎日せっせと報道する。  メディアが米国と同様に過ごすならば、早晩自由主義陣営は偽善の罠に填まり、足元から崩落する、その時には縋る藁も無い。
 アメリカのリード(綱)から離れよ。

 1面トップ記事にゴシック体で、「中国念頭覇権主義けん制」の見出し(中日 2021.09.26)、思わず、吹き出す。これでは、譬えれば、ライオンが被食者に向い、"この熊猫は猛獣だ、みんな注意せよ!"と云うようなものだ。批判するどころか、メディアが‹御先棒をかつぐ›の体である。
 報道の狼少年化である。

 否、少なくとも、以下(THE WHITE HOUSE HP)の中には"覇権主義"も"けん制"も皆無である。この記事は"十八番の忖度"で書いたのか、あるいは"予定稿"なのか、配信記事そのままなのか。いずれにしろ、国家間の好悪は斯様に醸成される。メディアが戦争の準備をするか。

  ①Quad Principles on Technology Design, Development, Governance, and Use SEPTEMBER 24, 2021
 

  ②Joint Statement from Quad Leaders SEPTEMBER 24, 2021
 

  ⓷Fact Sheet: Quad Leaders’ Summit SEPTEMBER 24, 2021
 

  ④Remarks by President Biden, Prime Minister Morrison, Prime Minister Modi, and Prime Minister Suga at Quad Leaders Summit SEPTEMBER 24, 2021


  ⑤Background Press Call by Senior Administration Officials Previewing the Quad Leaders Summit and Bilateral Meeting with India SEPTEMBER 24, 2021(September 23,2021)
<記者:china 4回、応答:china 3回 South China Sea 1回、hegemony・authoritarian 0回>

  ⓺U.S.-India Joint Leaders’ Statement: A Partnership for Global Good
SEPTEMBER 24, 2021
 

 ②クアッド共同声明から抜粋

 我々、オーストラリア、インド、日本、米国の首脳は、本日、初めて"クアッド"として直接会談した。この歴史的な機会に、私たちはパートナーシップを再確認し、私たちが共有する安全保障と繁栄の基盤である地域、―自由で開かれたインド太平洋、さらには包括的で弾力性のある地域を再確認する。前回の会合からちょうど6カ月が経過した。
 今回の四カ国首脳会議は、私たち自身と世界をインド太平洋に、そして私たちが達成したいと願うビジョンに再び焦点を合わせる機会である。我々は共に、インド太平洋およびその先の安全と繁栄を強化するために、国際法に根ざし、強制に屈しない、自由で開かれたルールベースの秩序を促進することを再確認する。 我々は、法の支配、航行と上空飛行の自由、紛争の平和的解決、民主主義の価値、国家の領土保全を支持する。我々は、様々なパートナーと協力することを約束する。我々は、ASEANの一体性と中心性、およびASEANのインド太平洋に関する展望に対する我々の強い支持を再確認するとともに、―インド太平洋地域の中心―であるASEANおよびその加盟国と、―実践的かつ包括的な方法で協力することに向けた我々の献身を強調する。また、2021年9月に発表された「インド太平洋における協力のためのEU戦略」を歓迎する。

 しかし、である。この巧言の裏には、法の無視・民主主義の価値観の押付・人権無視・自由という名の無軌道・侵略等で、死屍累累の荒寥たる風景が置き去りにされていることを忘れまい。
 馬に跨った警備隊員がハイチの移民を追い回す光景は、非人道的そのものではないのか。

 このハイチでも、「三十年にわたって、米国は、デュバリエ家による独裁を支持し、それから、改革派の聖職者大統領ジャン・ベルトラン・アリスティドに反対した。また、CIAは『死の部隊』や拷問者、麻薬商人たちと緊密な関係を維持して活動続けた。」、アリスティドを「復帰させるにあたっては、アリスティドに対し、、富裕層を犠牲にして貧困層を助けたりはしないと文字通り誓わせていた。また自由市場経済に從うことも。」、「労働者たちは文字通り飢餓ラインの給与しか得ない状態がつづくことを意味する。」(『アメリカの国家犯罪全書』ウイリアム・ブルム著2003年5月30日第2刷発行)

 ⓺米国・インド共同首脳声明から抜粋

 両首脳は、米国とインドの間の特別な絆を支え、75年近いパートナーシップを維持してきた、両国の国民の間の深く活気に満ちた絆を称えた。 両首脳は、自由、民主主義、普遍的人権、寛容と多元主義、すべての市民に平等な機会を与えるという共通の価値観を再確認し、他の人々がこれを受け入れるよう奨励し、持続可能な開発と世界の平和と安全に向けた努力を追求することを約束した。

 "自由、民主主義、普遍的人権、寛容と多元主義、すべての市民に平等な機会を与えるという共通の価値観を再確認"をしなければならないのは、米国自身である。その形骸化、否、米国に斯様な価値観は本当に端から根付いていたのだろうか。国際社会は米国の仮面をはぎ取る努力をすべきである。唯々諾々として従う"同じ穴の貉国家"も同様である。自由、民主主義、普遍的人権等の実行の伴わないキャッチ・フレーズ化した辞句は何等の影響も与えない、鴻毛の如し。ただ其の言たるや、 ‹真綿に針›なのだ。

 「The Quad and AUKUS will weaken ASEAN」から抜粋。
 「東シナ海や南シナ海を含む海洋のルールベース秩序に対する挑戦に対応するため、特に国連海洋法条約(UNCLOS)に反映されているような国際法の遵守を支持する」ことを再確認した。
この声明は、中国が南シナ海で不法な主張をしていると考えていることを示唆している。これは、米国にとってやや厄介なことです。というのも、米国は大国の中で唯一、国連海洋法条約を批准していないからだ。インドや日本、そして東南アジアの一部の国々が懸念しているにもかかわらず、米国はこの四つのグループが反中国の安全保障パートナーシップになることを明らかに望んでおり、その方向に推し進めようとしている。

 クアッド会議の声明では、「我々はASEANの統一性と中心性を強く支持することを再確認する」と真顔で宣言している。しかし、米国が主導した安全保障パートナーシップの効果はその逆である。

 実際、ASEAN諸国の中には、米国が中国を拘束し封じ込める努力を進めるための地域的ツールとしてQuadを利用したいと考えているように見える。ASEANの中心性をサポートするのではなく、もしQuadが有効であれば、地域の安全保障管理、特に南シナ海での安全保障管理の中心となるだろう。

 中国とアメリカの間に挟まれ、どちらかを選ばなければならなくなることを避けるのが彼らの基本的な関心事である。カンボジアとラオスはしっかりと中国の陣営に入っており、シンガポールとフィリピンは、アメリカが望むほどではないにせよ、アメリカに味方しているようだ。明らかに、外部勢力の圧力によってASEANの亀裂が広がっている。

 マレーシアが、1971年にASEANの創設メンバーであるインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイが合意した「平和、自由、中立のゾーン」であることを引き続き確保することを再確認している。これは、このような状況下で、このASEANの基本原則への支持を表明することに消極的なブロックのメンバーに、ある種の圧力をかけることになる。

 クアッドメンバーはASEANの願望にリップサービスをしているが、ASEANのメンバーが西洋の民主主義的価値観をますます敬遠するようになり、地域の安全保障問題を管理する上で効果がないことから、ASEANに対する信頼を失っているようである。

 米国がASEANに対してどのような意図を持っていようとも、それが援助であろうと弱体化であろうと、その結果は後者である。そして、弱体化し分裂したASEANは、戦略的ライバルである中国を利することになる。さらに、これらの動きは、この地域の地政学的プレートの動きを加速させ、苦境に立たされている組織に、新たな、そして重要な、さらには存在意義のある課題を突きつけている。( ASIA TIMES 2021.09.27「The Quad and AUKUS will weaken ASEAN」)

 中国に対抗したいという思いから、クアッド諸国は「インド太平洋」構想に知的・外交的に投資したが、結束力の問題は未解決のままだった。歴史的に見ても、アジア人は前世紀に植民地支配から解放され、苦労して主権を獲得して国を築いてきた経緯があるため、多国間主義は複雑な思想を持っている。

 中国の台頭に対する不安は、アメリカの国旗を支持するには不十分である。これが「インド・太平洋」構想の大きな断層である。アメリカは遅ればせながら、インドを従順なパートナーにはできないことを理解しているようだ。

 インドと中国との関係は最適とは言えないが、中国に近づくことに興味を持っているのは自明のことである。簡単に言えば、地政学的に、インドが自律的なアクターであることが求められている。

 インドは中国と敵対したり、代理外交兵器として利用されたりしても何の得にもならないし、他人の中国への対抗意識を背負う理由もない。基本的にインドは、ASEAN諸国と同様に独自の戦略的利益を持っており、アジア大陸の安定のための利害関係者である。

 これまでのところ、四カ国協議会の成果はどちらかというと乏しいものでした。今回の共同声明も、ほとんどが一般論で語られている。(ASIA TIMES 2021.09.27「The meandering nature of the Quad Quadrilateral Security Dialogue's first in-person leader summit at the White House was ultimately a muted affair」)

 さて、台湾の呉釗燮外交部長(外相)は、米国、英国、オーストラリアの間で最近締結された軍事協定(AUKUS)を台湾は歓迎していると述べた。台湾と同じ志を持つパートナーである米国、英国、オーストラリアーが、インド太平洋を守るために、より高度な防衛力を獲得するために互いに協力し合っていることを嬉しく思う」と述べた。(ANTIWAR.COM 2021.10.04「Taiwan’s FM Wants Australia’s Help to Prepare for War With China」)

 さて、どうなることやら、‹窮鼠猫を噛む›か。そうなると、間違いなく、戦端が開かれる。恐らく、米・英・豪、乗らないだろう。精々武器を売り儲けるのに利用するだろう。

 ネッド・プライス米国国務省報道官は次のように述べた。
 米国は、中華人民共和国が台湾付近で挑発的な軍事活動を行っていることを非常に懸念しており、これは不安定化させ、誤算のリスクを伴い、地域の平和と安定を損なうものである。私たちは、中国が台湾に対する軍事的、外交的、経済的な圧力や強制力をやめるよう強く求める。
 我々は、台湾海峡の平和と安定に変わらぬ関心を持っている。我々は、台湾が十分な自衛能力を維持することを引き続き支援し、3つのコミュニケ、台湾関係法、6つの保証に示された我々のコミットメントを維持する。米国の台湾に対するコミットメントは揺るぎないものであり、台湾海峡両岸および地域の平和と安定の維持に貢献している。我々は、共通の繁栄、安全保障、価値観を推進し、民主的な台湾との関係を深めるために、友人や同盟国と協力していく。(U.SDEPARTMENT of STATE 2021.10.03「Increasing People’s Republic of China Military Pressure Against Taiwan Undermines Regional Peace and Stability」)

 中国外交部の華春瑩報道官は、「台湾は中国の台湾であり、米国があれこれと言及すべきではない」として、「米国の関連発言は一つの中国原則と中米間三つの共同コミュニケの規定に著しく反するもので、誤った無責任なシグナルを発信した」と。
 華報道官はまた、「一つの中国原則は中米関係の政治的基礎であり、台湾問題において、米国が遵守すべきことは一つの中国原則と中米間の三つの共同コミュニケである」とした上で、「中国はあらゆる必要な対策を講じて、いかなる『台湾独立』の企みであっても粉砕する。中国の国家主権と領土保全を守る決心と意志は確固不動のものだ」と。(CRI 2021.10.05「米国は中国の台湾に言及すべきではない=外交部」)

 中国は以前から反駁している。
 「華報道官は「世界に中国は一つしかなく、台湾地区は中国の領土の不可分の一部だ。『一つの中国』原則は中米が外交関係を樹立し、発展させるうえでの政治的な基礎であり、根本的な前提条件だ。米国が当時一方的に制定したいわゆる『台湾関係法』及び米側のいわゆる対台湾『6つの保証』は『一つの中国』原則及び中米間の3つの共同コミュニケの規定に深刻に違反し、国際関係の基本準則に深刻に違反し、中国の内政に粗暴に干渉し、完全に誤った不法で無効なものであり、中国政府は当初から断固反対してきた。米側が遵守すべきは『一つの中国』原則及び中米間の3つの共同コミュニケの規定であり、『台湾関係法』や『6つの保証』などではない」と指摘。」(人民網日本語版 2020.09.02「外交部、『一つの中国』原則と中米共同コミュニケの厳守を米側に促す」)

 確かに中国の主張するように、米国の対応は矛盾している。

 Q 中国 - 中国 -

 MS. PSAKI:どうぞ。

 Q フォローアップをお願いします。

 Q - 再び飛行機を送った-。

 MS. PSAKI:次はエメラルドさんにお願いします。

 Q 中国は再び台湾上空に戦闘機を送りました。 ホワイトハウスは、中国の行動をどのように解釈していますか? また、このような緊張関係を緩和するために何ができるでしょうか?

 MS. PSAKI: 中華人民共和国が台湾の近くで挑発的な軍事活動を行っていることに懸念を抱いています。
 私たちは、中国が台湾に対する軍事的、外交的、経済的な圧力や強制をやめることを強く求めます。また、私たちは、台湾海峡の平和と安定に変わらぬ関心を持っています。 だからこそ、私たちは台湾が十分な自衛能力を維持するための支援を続けます。
 我々は、3つのコミュニケ、台湾関係法、6つの保証に示されているように、我々のコミットメントを維持する。
 台湾に対する我々のコミットメントは揺るぎないものであり、台湾海峡および地域の平和と安定の維持に貢献している。
 私たちは、中国による台湾への圧力や強制を懸念することを公私ともに明らかにしており、今後も状況を注意深く見守っていきます。

 Q それから、台湾についての補足です。この数時間の間に、中国は52機の航空機を台湾の領空に送り込んだと報道されています。 国務省やあなたのこのような強い声明は、北京では聞き入れられていないようです。 さて、どうする? 次の展開は?

 MS. PSAKI: 私たちは...

 Q どのように(聞き取れず)?

 MS. PSAKI:私たちは個人的にも連絡を取り合っており、外交チャンネルを通じて明確なメッセージを伝えています。 そのための適切な場所はここでしょう。

 Q 大統領は話されましたか?

 MS. PSAKI:いいえ、大統領は話していません。 しかし、私たちは、高官が現地のさまざまな関係者と連絡を取り合っています。(OCTOBER 04, 2021 PRESS BRIEFINGS「Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki, October 4, 2021」)から抜粋。

 茂木外相、10月に入って、中国戦闘機が台湾の防空識別圏に大挙進入した件で、「日本としては、台湾をめぐる問題が当事者間の対話によって平和的に解決されることを期待するというのが、従来からの一貫した立場だ」、「さまざまな事態を考えながら、どのような対応がとりうるのか、どのような準備を進めなくてはいけないのか、しっかり検討していきたい」と。(THE SANKEI NEWS 2021.10.05「中国機の台湾威圧に茂木外相「平和的解決を期待」」)

 「戦争には二つのことが大事です。一つは敵を撃つこと――損害を与えること。もう一つは損害に対して我慢する事です。すなわち敵に最大の損害を与え、自分の損害に堪え忍ぶことであります。この見地からすると、次の決戦戦争では敵を撃つものは少数の優れた軍隊でありますが、我慢しなければならないものは全国民です。」、「いよいよ真の決戦戦争の場合には、忠君愛国の精神で死を決心している軍隊などは有利な目標ではありません。最も弱い人々、最も大事な国家の施設が攻撃目標となります。工業都市や政治の中心を徹底的にやるのです。でありますから老若男女、山川草木、豚も鶏も同じにやられるのです。かくて空軍にによる真に徹底した殲滅となります。」(『世界最終戦争』 元陸軍中将石原莞爾著毎日ワンズ新書版)

 石原莞爾は、東亜大同の王道対西洋覇道の両文明の決勝戦であるから、"最終戦争の中心は太平洋"であろうとする。が、太平洋を含むだけでなく、全世界を巻き込んだ"核戦争"となるうえ、"王道・西洋覇道"の区別なく、"生きとし生ける物"が滅する。
 日本は"王道"のまとめ役にはなれず、西洋覇道側の仲間であるが、悲惨な結果は同じか。

 ここで広島原爆の証言者 沼田鈴子さんの言葉を紹介する。「それは真実を求める知恵を一人ずつが持って欲しいということです。最高の幸せは平和なんです。でも平和は待っていて来るものではありません。命にかかわるすべてのことに目を向けていかなければなりません。すべて他人事ではない。地球上のすべてが仲間なんですから。」『週刊金曜日』2000.1.14(298号29頁)

 さて、時代を遡り、日本を見る。
 非欧米地域に侵出する理屈付けに、欧米強国が作りあげた国際法秩序、いわゆる、"万国公法"が罷り通った19世紀半ば頃にまで。

 岩倉具視、木戸孝允、大久保利通、伊藤博文らの権略家達が武力で幕府を倒した。実に「明治維新の中核は、幕府を倒すのであつた」(『明治維新 上卷』尾佐竹 猛著)と。
 その戊辰戦争の血腥さの残る日本を後にし、1871年(明治4年)岩倉使節団は横浜を出港した。
 使節団は1873年(明治6年)3月15日、ビスマルクの招宴に臨んだ。

 以下引用する。

 「〇本日ノ享会ニ於テ、侯親ラ其幼時ヨリノ実歴ヲ話シテ言フ、方今世界ノ各国、ミナ親睦礼儀ヲ以テ相交ルトハイヘトモ、是全ク表面ノ名義ニテ、其陰私ニ於テハ、弱肉相凌キ、大小相侮ルノ情形ナリ、予ノ幼時ニ於テ、我普国ノ貧弱ナリシハ、諸公モ知ル所ナルヘシ、此ノ時ニ当リ、小国ノ情態ヲ親ラ閲覧シ、常ニ憤懣ヲ懐キシコトハ、今ニ耿耿トシテ脳中ヲ去ラス、カノ所謂ル公法ハ、列国ノ権利ヲ保全スル典常トハイヘトモ、大国ノ利ヲ争フヤ、己ニ利アレハ、公法ヲ執ヘテ動カサス、若シ不利ナレハ、翻スニ兵威ヲ以テス、固リ常守アルナシ、小国ハ孜孜トシテ辞令ト公理トヲ省顧シ、敢テ越エス以テ自主ノ権ヲ保セント勉ムルモ、其簸弄凌侮ノ政略ニアタレハ、殆ト自主スル能ハサルニ至ルコト、毎ニ之アリ、是ヲ以テ慷慨シ、一度ハ国力ヲ振興シ、一国対当ノ権ヲ以テ、外交スヘキ国トナラント、愛国心ヲ奮励スル、数十年ヲ積テ、遂ニ近年ニ至リ、纔ニ其望ミヲ達シタルモ、只各国自主ノ権ヲ全クスルノ志願ニスキサルナリ、然ルニ各国ハ、ミナ当国ノ兵ヲ四境ニ用ヒタル跡ヲ以テ漫ニ憎悪シ、軍略ヲ喜ヒ、人ノ国権ヲ掠ムルモノト、非議スルト聞ク、是全ク我国ノ志ニ反セリ、我国ハ、只国権ヲ重ンスルニヨリ、各国互ニ自主シ、対当ノ交リヲナシ、相侵越セサル公正ノ域ニ住センコトヲ望ムモノナリ、従来ノ戦ヒモ、皆日耳曼ノ国権ノタメ、已ムヲ得サルニ用ヒタルコト、幸ニ世ノ識者ハ察スル所ナルベシ、聞ク英仏諸国ハ、海外ニ属地ヲ貪リ、物産ヲ利シ、其威力ヲ擅ニシ、諸国ミナ其所為ヲ憂苦スト、欧州親睦ノ交ハ、未タ信ヲオクニ足ラス、諸侯モ必ス内顧自懼ノ念ヲ放ツコトハナカルナラン、是予カ小国ニ生シ、其情態ヲ親知セルニヨリ、尤モ深ク諒知スル所ナリ、予カ世議ヲ顧ミスシテ、国権ヲ完ニセル本心モ、亦此ニ外ナラス、故ニ当時日本ニ於テ親睦相交ルノ国多シトイヘトモ、国権自主ヲ重ンスル日耳曼ノ如キハ、其親睦中ノ最モ親睦ナル国ナルヘシト謂ヘリ、交際ノ使臣、相宴会スル際二、此語ハ甚タ意味アルモノニテ、此侯ノ辞令ニ嫻ヘルト、政略ニ長セルトヲヨク識認シテ、玩味スヘキ言ト謂ツヘシ、」(『特命全権大使 米欧回覧実記 三』岩波文庫2009年11月16日第18冊発行 329-330頁)

 外務宰相ビスマルク侯が使節団を宴に招いたときに話した内容である。聞かされた側は大いに合点が行ったのではなかろうか。なぜなら、万国公法に基ずく世界秩序の本意を聞かされたのであるから、我が意を得たりと、大いに彼等謀略家は自分達の過去に御墨付を得た思いでもあったろう。  そして、其の後の日本を侵略へと誘う論理的・思想的背景となったと考えられる。ビスマルクは“言い分け”の言辞も聞かせた。

 「輔車唇歯とは隣國相助くるの喩なれども今の支那朝鮮は我日本國のために一毫の援助と爲らざるのみならず西洋文明人の眼を以てすれば三國の地利相接するが爲に時に或は之を同一視し支韓を評するの價を以て我日本に命ずるの意味なきに非ず例へば支那朝鮮の政府が古風の専制にして法律の恃む可きものあらざれば西洋の人は日本も亦無法律の國かと疑ひ、支那朝鮮の士人が惑溺深くして科學の何ものたるを知らざれば西洋の學者は日本も亦陰陽五行の國かと思ひ、支那人が卑屈にして耻を知らざれば日本人の義侠も之がために掩はれ、朝鮮國に人を刑するの惨酷なるあれば日本人も亦共に無情なるかと推量せらるゝが如き是等の事例を計れば枚擧に遑あらず之を喩へば比隣軒を並べたる一村一町内の者共が愚にして無法にして然も殘忍無情なるときは稀に其町村内の一家人が正當の人事に注意するも他の醜に掩はれて堙沒するものに異ならず其影響の事實に現はれて間接に我外交上の故障を成すことは實に少々ならず我日本國の一大不幸と云ふ可し左れば今日の謀を爲すに我國は隣國の開明を待て共に亞細亞を興すの猶豫ある可らず寧ろ其伍を脱して西洋の文明國と進退を共にし其支那朝鮮に接するの法も隣國なるが故にとて特別の會釋に及ばず正に西洋人が之に接するの風に從て處分す可きのみ惡友を親しむ者は共に惡友を免かる可らず我は心に於て亞細亞東方の惡友を謝絶するものなり(明治十八年三月十六日)」(『續福澤全集第二卷』編者 慶應義塾 昭和八年七月二十日第一刷發行 岩波書店「脱亞論」四〇-四二頁)

 「日清の戰爭は文野の戰爭なり」
 以下抜粋。
 「扨日清間の戰爭は世界の表面に開かれたり文明世界の公衆は果たして如何に見る可きや戰爭の事實は日清兩國の間に起りたりと雖も其根源を尋ぬれば文明開化の進歩を謀るものと其進歩を妨げんとするものとの戰にして決して兩間の爭に非ず本來日本國人は支那人に對して私怨あるに非ず敵意あるに非ず之を世界の一國民として人間社會に普通の交際を欲するものなれども如何せん彼等は頑迷不審にして普通の道理を解せず文明開化の進歩を見て之を悦ばざるのみか反對に其進歩を妨げんとして無法にも我に反抗の意を表したるが故に止むを得ずして事の茲に及びたるのみ即ち日本人の眼中には支那人なく支那國なし只世界文明の進歩を目的として其目的に反對して之を妨ぐるものを打倒したるまでのことなれば人と人、國と國との事に非ずして一種の宗教爭ひと見るも可なり苟も文明世界の人々は事の理非曲直を言はずして一にも二もなく我目的の所在に同意を表せんこと我輩の決して疑はざる所なり」、「寧ろ文明の誘導者たる日本國人に向ひ三拝九拝して其恩を謝することなる可し我輩は支那人が早くから自から悟りて其非を悛めんこと希望に堪へざるなり(明治二十七年七月二十九日)」(續福澤全集第四卷』編者 慶應義塾 昭和八年十二月三十日第一刷發行 岩波書店170-171頁)

 扨この論、福澤の頼む"文明世界"は理非曲直を問題としないが、其の"文明世界"が問題としたのは、"利害"なのだ。日本は列強の利害と衝突し、ロシア・ドイツ・フランスは"極東の平和"を名目として遼東半島の返還を迫った(三国干渉)。1895(明治28)年5月10付で天皇は、「大局ニ顧ミ,寛洪(かんこう=寛大さ)以テ事ヲ処スルモ,帝国ノ光栄ト威厳トニ於テ,毀損スル所アルヲ見ズ」  「この後,日本は「臥薪嘗胆」をスローガンにロシアへの敵意を強め,軍拡を進めました。一方,列国は中国の分割支配に本格的に乗り出すことになりました。」(「山口県文書館所蔵アーカイブズガイド-学校教育編(4)-」)

 つまり、福澤の云うところの"文明世界"は、ビスマルクの本質を突く話に比し、単なる"書生論"に過ぎないのだが、現代に至るも払拭できない中国(朝鮮)に対する蔑みの感情を、日本人に植え付けた罪深さがある。

 「公の條約改正締結理由書」1887年(明治20年7月9日)
 「二十年七月九日に意見書を草し、治外法權の制を廢除して我が帝國を泰西諸國對等の地位に進めるために、何故既述の如き讓與を要したかを明らかにし、内閣へ提出した。(省略)公が外務大臣として内閣に提出した最後の意見書である。(以下省略)」
 「惟ルニ今ヤ宇内ノ形勢ハ、將ニ何等ノ運ヲ成シ、我國ヲ何等ノ地位ニ置カントスルモノナル乎。本大臣ハ請フ試ニ之ヲ陳ゼン。夫レ泰西各國ガ、其力ヲ展開シテ新地ヲ外ニ求ムルハ、一朝一夕ノ事ニアラズ。殊ニ第十九世紀ノ初メヨリ以來、即チ七八十年以來、歐洲各國ノ間ニテハ事物整頓シテ妄リニ憾動ス可カラザル事トナリシヨリ、此等各國ハ益々其力ヲ殖民拓地ノ政略ニ專ニシ、駸々トシテ今日ノ勢ヲ致シタリ。即チ印度・柬蒲塞・交趾ノ如キハ弱肉已ニ強食トナリタル者ナリ。然レドモ本大臣ガ今特ニ各大臣ノ注意ヲ喚ント欲スル者ハ、歐洲各國ガ三四年以來更ニ一層其力ヲ亞細亞・亞非利加ノ間ニ展開シテ、漸ク將ニ東洋ノ表ニマデ其勢力ヲ震ハシメントスルニ至リタルノ事實ナリ。嗚呼、今ヤ亞細亞・亞非利加ノ兩大洲ハ、將ニ歐洲各國ガ逐鹿ノ場トナラントセリ。而シテ其ノ此等ノ場ニ於テスルノ馳駆ハ、各自本國ノ艱難安危ヲ醸スノ虞甚ダ少ナキモノナレバ、各國ハ甚ダ他顧ノ憂ナクシテ力ヲ之ニ用ル事ヲ得テ、互ニ呑噬ノ雄ヲ競ヒ、殆ンド現今歐洲各國一定ノ國是トナレリ。(以下省略)」
 「蓋シ本大臣ハ以爲ラク、之ニ處スルノ道惟ダ我帝國及ビ人民ヲ化シテ、恰モ歐洲邦國ノ如ク、恰モ歐洲人民ノ如クナラシムルニ在ルノミ。即チ之ヲ切言スレバ、歐洲的一新帝國ヲ東洋ノ表ニ造出スルニ在ルノミト。(以下省略)」
 「斯ク本大臣ハ經濟上の利害ヲ辯ジ置キ、此ヨリ復タ主タル問題ニ歸ランニ、本大臣ハ更ニ前ノ斷言ヲ反覆シテ以テ之ヲ提起ス可シ。我帝國ヲ化シテ歐洲的帝國トセヨ。我國人ヲ化シテ歐洲的人民トセヨ。歐洲的新帝國ヲ東洋ノ表ニ造出セヨ。(以下省略)」
 (『世外井上公傳 第三卷』著作者井上馨侯傳記編纂會 昭和九年三月五日發行906-919頁 抜粋引用)

 「日本の場合は、『人種』という構想が明治時代から流入し、初めて福沢諭吉によって紹介されたようである。言うまでもなく、欧米列強の『人種論』、『白人優勢説』が日本では激しい論争のきっかけになったが、必ずしも単に否定された訳ではない。むしろ、議論が二つに分かれた:『白人優勢説』に『賛成』し、日本に適合することを狙う『日本人白人説』 と、『白人優勢説』を『否定』する汎アジア主義的『アジア民族・黄色人種盟主論』である。前者が日本のアジア大陸進出に正当性を与える思想になるが、後者も短期目的とした『アジア民族盟主』成立の為、日本によるアジア大陸の植民地化を肯定し、遠い将来でのアジア対欧州の衝突を予想したのである。しかし、後者の思想はアジア全体の欧米列強からの独立を唱えながらも、最終的に日本によるアジアの植民地化を拒否できなかったのは、その思想の矛盾の中心的な問題であった。(「岐路に立つ日本外交一第一次世界大戦末期における『人種闘争論』と『独逸東漸論』一」サーラ・スヴェン ドイツ・日本研究所・「Japanese Foreign Policy at a Crossroads:Discourse on"Racial Conflict" and "The German Advance to the East", 1917-1921 Sven Saaler (Germa Institute for Japanese Studies(DIJ), Tokyo」)(国立国会図書館デジタルコレクション)

 その欧米強国が作りあげた世界の秩序の法「万国公法」、阿片戦争(1840-42年)に敗れた清国でも、1864年には『万国公法』の名で漢訳され、これを次の年に幕府の開成所が刊行していた。

 欧米視察後、岩倉具視はプロイセン憲法を模範とすべきとし、これに伊藤博文も賛同した。
 アジアで初の憲法、大日本帝国憲法が天皇の名をもって、1889年に制定された。

 1890年(明治23年12月6日)衆議院第一回通常会にて総理大臣(伯爵山縣有朋)は演説する。
 「國家ノ獨立ヲ維持シ、國勢ノ伸張ヲ圖ルコトガ最緊要ノコトヽ存ムジマス、此ノ事タルヤ諸君及我々ノ共同事務ノ目的デアッテ、獨政府ノナスベキコトデ御座リマスマイ、將來政事上ノ局面ニ於テ何等ノ變化ヲ現出スルモ、決シテ變化スルコトハ御座リマスマイト存ジマス、大凡帝國臣民タル者ハ協心同力シテ、此ノ一直線ノ方向ヲ取ツテ、此ノ共同ノ目的ニ達スルコトヲ誤ラズ、進マナケレバナラヌト思ヒマス、蓋國家獨立自榮ノ道ニ二途アリ、第一ニ主權線ヲ守護スルコト、第二ニハ利益線ヲ保護スルコトデアル、其ノ主權線トハ國の疆域ヲ謂ヒ、利益線トハ其ノ主權線ノ安危ニ、密着ノ關係アル區域ヲヲ申シタノデアル、凡國トシテ主權線、及利益線ヲ保タヌ國ハ御座リマセヌ、方今列國ノ間ニ介立シテ一國ノ獨立ヲ維持スルニハ、獨主權線ヲ守禦スルノミニテハ、決シテ十分トハ申サレマセヌ、必ズ亦利益線ヲ保護イタサナクテハナラヌコトヽ存ジマス、今果シテ吾々ガ申ス所ノ主權線ノミニ止ラズシテ、其ノ利益線ヲ保ッテ一國ノ獨立完全ヲナサントスルニハ、固ヨリ一朝一夕ノ話ノミデ之ヲナシ得ベキコトデ御座リマセヌ、必ズヤ寸ヲ積ミ尺ヲ累子テ、漸次ニ國力ヲ養ヒ其ノ成蹟ヲ觀ルコトヲ力メナケレバナラヌコトト存ジマス、即豫算ニ掲ケタルヤウニ、巨大ノ金額ヲ割イテ、陸海軍ノ經費ニ充ツルモ、亦此ノ趣意ニ外ナラヌコトト存ジマス、寔ニ是ハ止ムヲ得ザル必要ノ經費デアル」。

 「日本帝国ノ国防方針」(1907年:明治40年)は、「日本と一想定敵国間の『一国戦』を基本として、満州と清国南部さらにはアジアの南方に発展するという『南北併進』の国家戦略を、次のような海外攻勢戦略によって達成することを構想している。この戦略は、満州における攻勢作戦によって露国軍を撃破する大陸攻勢戦略と、米独仏の在東亜艦隊の撃破とその根拠地を覆滅する海洋攻勢戦略の二つの柱で構成されている。」

 そして、日英同盟については、「然レトモ日英同盟新協約締結ノ結果、同盟ヲ以テ同盟ニ対スル関係ハ、列国利害ノ繋ル所、何時戦端ヲ開クノ動機ヲ惹起スルヤ測ラレサルモノアリ。是レ帝国ノ国防ニ重大ナル 関係ヲ及ホスモノニシテ、慎重ナル考慮ヲ要ス。…英露開戦ニ当リ、戦争ノ基源孰レニ在ルヲ問ハス…我ハ直ニ協約上ノ義務ヲ負担セサルヘカラサルニ至ルヘケレハナリ。…英独露ノ関係等、何時、其衝突ヲ惹起スルヤモ測ラレス、果シテ其衝突ヲ現実ニスルコトアランカ、独国ハ露国ト手ヲ携ヘテ起ツコトヲ謀ルナルヘク、其結果、我モ亦起チテ日英同盟ノ義務ヲ分担セサルヘカラサルニ至ルヘシ。」
 「このように基本方針には、同盟対同盟の戦争発生の原因が主として英国と露国・独国の関係にあり、日本は同盟の義務によって戦争に巻き込まれる、といった文脈で書かれている。そして、日英同盟についての意義付けも、日英連合戦略の方針的内容も記述されていないし、まして日本国防の「骨髄」といった位置付けは何処にも見られないのである。」
 「日英同盟に関する内容は、「用兵綱領」の第四項以下に表れる。第四項では、次のような 協同作戦の方針が記述されている。」
 「日英同盟協約ニ基キ、英国ト協同シテ戦争スル場合ニ在テハ、共同ノ敵ニ対シ互ニ相策応シ、友軍全体ノ利ヲ謀ルヲ目的トシテ作戦スヘシト雖モ、相互ノ計画ニ於テハ直接ノ連合作戦、若クハ陸兵、或ハ艦艇等ヲ以テスル直接ノ援助ヲ期待セサルヲ要ス。」
 「これは、連合作戦どころか相互の増援も行うことなく、日英はそれぞれの自己の作戦計画に基いて作戦し、それらが相互に牽制作用を及ぼして効果を上げることを期待する、という考えが基本となっている」。
 「田中義一中佐が1906(明治39)年に起草した「随感雑録」の中で指摘した、以下のような日英攻守同盟に関する評価が、陸軍中央の中堅参謀の意見を表していた。」
 「露国極東侵略ノ鋒鉾ヲ中央亜細亜方面ニ牽制シ、或ル時期間ハ固ヨリ我ニ利益ヲ呈スヘキモ、作戦上ヨリ観察スレバ、英国ガ土耳機斯旦方面ニ向テスル牽制ハ、露国ニ取リテ決シテ大ナル苦痛ヲ感スルモノニアラズ。」(「第二次日英同盟と国防方針」黒 野 耐 国立国会図書館デジタルコレクション)

 国際社会の法は詰まる所、秩序・平和の維持である。
 国際的な経済機関であるIMF・世界銀行・WTOは、先進諸国、その中でも特に超大国である米国の影響下にある。国連の場でも経済力・軍事力を以て牛耳り、意に副わないと、前任者トランプ氏のように、TPP(2017.1永久離脱)、ユネスコ(2017.10離脱)、イラン核合意(2018.5離脱)、UNHRC(2018.6)、INF(中距離核戦力全廃条約)(2019.8離脱)、パリ協定(2019.11離脱)、WHO(2020.7脱退)などで、揺さ振りをかけ、列を崩す。
 そして、米国内法によって、他国等に制裁をしまくる。その制裁が人権問題や貧困・暴力をもたらす。そして、米国に跳ね返る。

 国連特別報告者、「米の一方的な制裁は違法」、と。
 「一方的な制裁による人権の影響を担当する、アレナ・ドゥハン国連特別報告者が、アメリカの一方的な制裁は違法だとしました。
 IRIB通信によりますと、アレナ・ドゥハン特別報告者は国連人権理事会の会合で、『アメリカや一部のヨーロッパ諸国による一方的な制裁は違法だ』と強調し、これらの制裁の解除および、一方的制裁行使の制限に向けた、安保理の枠組みでの明白な方策の採択を求めています。
 また、2019年にアメリカ議会で可決された対アサド・シリア政権制裁法・シーザー法に触れ、『このような法案は、各国の国外での制裁実施の代表例だ』と述べました。
 シーザー法は、昨年6月1日から発効しており、この法に基づき、アメリカ政府はシリアの法人や個人に対する制裁を行使しています。
 米国政府はまた、この法を使ってシリアの復興段階で同国の同盟国に打撃を与えようとしています。
 アメリカは2011年以降、テロリストを支援する目的で、シリアに各種の制裁を行使しています。シリア危機は2011年、サウジアラビアやアメリカ、およびその同盟国の支援を受けた複数のテロ組織が、地域のパワーバランスがシオニスト政権イスラエルに有利となるよう、シリアに大規模な攻撃をしかけたことから勃発しました」(ParsToday 2021.09.19「国連特別報告者、『米の一方的な制裁は違法』」)。

 まさにビスマルクが使節団に話したこと、"大国ノ利ヲ争フヤ、己ニ利アレハ、公法ヲ執ヘテ動カサス、若シ不利ナレハ、翻スニ兵威ヲ以テス、固リ常守アルナシ"とに符合する。
 そして、"英仏諸国ハ、海外ニ属地ヲ貪リ、物産ヲ利シ、其威力ヲ擅ニシ、諸国ミナ其所為ヲ憂苦スト、欧州親睦ノ交ハ、未タ信ヲオクニ足ラス"なのだ。

 しかし日本、何をか勘違いし、"日本人白人説:日本のアジア大陸進出に正当性を与える思想"を採用し、78年後に第二次世界大戦で敗戦の句点となった原子爆弾の投下を以て、白人説は消えたかと思いきや、実は‹換骨奪胎›、今に生きる。
 その典型が、"日本を、取り戻す"なのだ。それは敗戦後の歴史で形づくられた、"骨と胎"、を戻し、本来の趣意:"海外ニ属地ヲ貪リ、物産ヲ利シ、其威力ヲ擅ニシ"という英仏諸国(欧米)の有様、"日本人白人説"、それはまた同時に、"大国ノ利ヲ争フヤ、己ニ利アレハ、公法ヲ執ヘテ動カサス、若シ不利ナレハ、翻スニ兵威ヲ以テス、固リ常守アルナシ"へ再突入することなのだ。日本国民の手に取り戻すのではなく、万世一系の天皇に統治を御任することなのだ。これが"日本を、取り戻す"の真意なのだ。

 中国を誹謗中傷しながら、正義面しては性懲りもなく‹同じ穴の貉国家›の欧米は徒党を組んで、"インド太平洋・シナ海・東南・北東アジアへと軸足をアフガンから移す"。手先となるのは‹同じ穴の貉国家›の日本である。
 今、平和憲法と惨禍の歴史を沈めて、護衛艦の空母化が始まる。

 「日米より六九年も前に始まった米中関係」で、「本書の一番の価値は、日本が明治以降、ほとんど無視してきたこの米国と中国との間の、日本には持ち得なかった関係の重さをかみしめさせてくれることかもしれない」と。(『キッシンジャー回顧録 中国(下)』岩波現代文庫2021年1月15日第1刷発行 697頁)

 政治に携わる者が心すべきことでないのか。

 中国国防部の譚克非報道官は8/26日の定例記者会見で、「日本はある一時期から、国際関係の基本準則を顧みず、いわゆる『中国の軍事的脅威』をみだりに誇張し、中国の正当かつ合法的な海洋活動を不当に非難し、自らの軍事力拡張の口実にしている。これは大きな間違いであり無責任でもある」と、述べた。

 「譚報道官は、「釣魚島及びその附属島嶼(日本名・尖閣諸島)は中国固有の領土だ。中国は南中国海諸島及びその周辺海域に対して、争う余地のない主権を有している。国家の主権・安全保障・発展上の利益を守る中国の決意と意志は揺るがない。同時に中国は、関係する係争を対話と協議によって解決するよう尽力している」と指摘。
 「『中国はこれまで武力で他国を脅迫したことはなく、軍事的拡張をしたこともなく、他国民を奴隷的に酷使したこともない。一方、近代以降頻繁に対外侵略戦争を発動し、アジア各国の民衆を抑圧し、奴隷的に酷使し、中国を含む地域諸国に長く続く甚大な惨禍をもたらしたのは、まさに軍国主義の日本だ。こうした歴史的原因から、近年の日本政界要人による靖国神社参拝、軍国主義の美化という間違った行為や、他国周辺への軍事力配備の持続的増加といった危険な動向は、中国などアジア各国の注視と懸念を招いている。我々は日本に対して、侵略の歴史を反省し、歴史の教訓を汲み取り、中国に対するデマやイメージ毀損を止めて、近隣諸国との相互信頼の増進、地域の平和・安定維持に資することをより多く行うよう促す』とした。」(「日本の『中国の軍事的脅威』誇張に中国が断固反対」人民網日本語版 2021.08.27)

 さて、食指が動いたか。
 防衛省が子ども向けに「はじめての防衛白書~まるわかり!日本の防衛~」をホームページで公開した。

 以下抜粋する。

 なぜ日本はアメリカと同盟を結んでいるの?

 日本とアメリカは日米安全保障条約という約束を結んでおり、その中では、日本が攻撃された場合には、日本とアメリカが共同で立ち向かうことが決められています。この約束によって、もしもどこかの国が日本に対して攻撃をしようとしても、その国は自衛隊だけではなく、世界一の軍事力を持つアメリカ軍とも直接対決することを覚悟しなければなりません。相手国から見ると、世界一の軍事力を持つアメリカと戦うと大きなダメージを受けることは明らかなので、日本を攻撃するのはやめておこう、と思いとどまることになるのです。
 また、日本の周りには、大きな軍事力を持っている国家が集中し、中には核兵器を持っている国もあります。こうした国々が軍事力をさらに強化したり、軍事活動を活発化させたりしているため、日本の周りの地域はとても不安定になっています。こうした中で、日本にいるアメリカ軍は、日本とアメリカの利益を守るだけではなく、地域の国々に大きな安心をもたらす存在でもあります。日本とアメリカの協力関係はインド太平洋地域の平和と安定にとても重要な役割を果たしているのです。
 「自由で開かれたインド太平洋」という考え方

 国際社会の安定と繁栄の鍵を握るのは、成長著しい『アジア』と潜在力あふれる『アフリカ』の「2つの大陸」、また、自由で開かれた『太平洋』と『インド洋』の「2つの大洋」の交わりにより生まれるダイナミズム(活力)です。
 アジアとアフリカのつながりを向上させ、インド太平洋地域全体の安定と繁栄を促進させるためには、インド太平洋地域を、ルールに基づく、自由で開かれたものにすることが必要です。
 日本は、このような考え方に基づき「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンをかかげています。日本が提唱したこの考え方は、アメリカ、オーストラリア、東南アジア諸国、インド、ヨーロッパ諸国にまで広がり、多くの国から賛同や支持を得ています。
 防衛省・自衛隊は、以下の三つの方針で「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向けた取組を行っています。
 ❶防衛協力・交流を活用し、日本の生活を支える商船、タンカーなどが安心して海上交通路を航行し続けることができるようにすること
 ❷国同士がお互いの理解を深め、信頼関係を築きながら、不測の事態(予測できないような衝突など)を回避すること
 ❸関係各国と協力し、地域の平和と安定に貢献すること
 主要な海上交通路が通っていることやエネルギー安全保障の観点から、東南アジア、南アジア、太平洋島しょ国、中東・アフリカ、中南米の国々に対しては、次のページで紹介する防衛協力・交流の様々なツールを活用しながら、協力を強化することとしています。
 また、こうした取組は、同盟国であるアメリカや、オーストラリア、インド、イギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国、カナダ、ニュージーランドといった「自由で開かれたインド太平洋」の考え方を共有し、インド太平洋地域につながりを持つ多くの国々との間で協力して行っています。(防衛省大臣官房企画評価課 防衛白書作成事務室2021年8月14日)

 子ども向け、小学校高学年(5・6学年)~中学生が対象とのこと。はっきり言って分かりやすいし成程と思う。しかし、例えば、「日本の周りには、世界の中でも大きな軍事力を持っている国が集まっている」とし、中国・北朝鮮・ロシアに付いての説明を続けるも、何故か朝鮮半島としながら韓国の説明は除いている。
 つまり、"大きな軍事力を持っている国が集まっている"が、ねっ、分るでしょ、誰が敵か、という"サブリミナル効果"を狙う。

 本来なら世界最大・最強の核大国・軍事力を誇る米国に付いても説明が必要なのだが、"仲良し"であると片づけている。なお、「国際の平和及び安全を維持する」国際連合との関連も説明必要ではないのか。
 まぁ、突っ込みどころ満載なのだが、一つ防衛省にお聞きしたのは、最悪で、どんな戦争を予想していますか?その"予想"でも、岸防衛相・茂木外相のように"囲い込み・牽制"策を"同じ穴の貉"側として国際社会に訴える続けるのが国民のため、否、世界の爲になると思いますか?

 仮想敵国である中国を取って見ても、「第二次日英同盟と国防方針」の如く、国防方針は日本対一国の戦争が基本に構想されたように、"中国対日本"となるやもの予測も立てているのだろうか。どうも、「はじめての防衛白書~まるわかり!日本の防衛~」では、仲良し友達頼みのようだが。

 6月11日の日英首脳会談、菅首相とジョンソン英国首相、「菅総理から、英空母打撃群のインド太平洋地域派遣と日本寄港を歓迎する旨述べ、両首脳は、日英及び多国間での共同訓練の実施等に向けた調整を加速することで一致しました。また、両首脳は、経済安全保障分野での連携を確認しました。」(「日英首脳会談」外務省HP)
 また、「日本側は、英国が本年中に英海軍空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃群を東アジアを含む地域に展開させる旨発表したことについて、英国のインド太平洋地域への更なるコミットメントを示すものとして歓迎しました。また、四大臣は、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けた協力の一環として、この機会に共同訓練の実施等に向け調整していくことで一致しました。」(「第4回日英外務・防衛閣僚会合(「2+2」)」外務省HP)

 再び問う。中国に対し、‹同じ穴の貉国家›を誘って、‹夜郎自大›となっていないか。戦争の見通しを安易に考えていないか。専守防衛を逸脱していないか。国民の生命・財産を危くするような火遊び事をしていないのか。戦争の偶発性に対処する外交政策は出来ているのか。岸田内閣でも、再任された茂木敏充外相と岸信夫防衛相で、対中国外交・防衛は本当に平和裏に日本国民を護れるのか。彼等‹同じ穴の貉国家›への信頼というか、日本自身が其の貉穴に入り込んでいる訳だが、本当にそれで大丈夫なのか。米英の裏切り行為に遭うことはないのか。遠謀深慮が働いているか。単なる駒となっていることに気付いているか。希望的観測に陥っていないか。どのような戦争を最悪想定しているのか。日本はガラスのような脆い国家であると認識しているか。"欧州の天地は複雑怪奇"、否、"欧米中の天地は複雑怪奇"なのではないか。
 無用無謀の遠交近攻の外交・防衛策の展開では国民を護ることなど不可能である。真に国民を政策の中心に置くならば、近隣諸国との平和外交以外あり得ない。態々近隣との角逐を生み出すなぞ言語道断である。  民主主義を提唱する国家指導者の劣等化は著しいものがある。それは偏に"国民軽視"ゆえに起きている現象である。また知性とは生命の保全に腐心することである。其の知性に欠ける。

 自民党総裁選に出馬表明した高市早苗前総務相は10日のテレビ朝日番組で高市氏「電磁波で敵基地無力化」「敵基地を一刻も早く無力化した方が勝ちだ。使えるツールは電磁波や衛星ということになる」と述べた。同時に「向こうから発射の兆候が見えた場合だ。こちらから仕掛けたら駄目だ」と強調。その上で「強い電磁波などいろいろな方法でまず相手の基地を無力化する。一歩遅れたら日本は悲惨なことになる」(YAHOO!japanニュース2021.09.10)。
 好戦的な言辞からは、専守防衛なのか、先制攻撃なのか、判別し難い。自民党総裁選、つまり、次期政権の宰相となる人物なのだ。戦術家のような話でなく、平和憲法を持つ此の国の世界に貢献する在り方や治国済民の方策を開陳して欲しいものだ。知性に欠ける"御仁"であることよ。

 地球を俯瞰可能な世紀になっても、生きるものとして、新たな世界観なり、宇宙観なりを見いだせない悲惨な状態が、現実だ。ただ地球上の争いごとの新たな持ち込み場としか観ていない。

 さて、安倍首相が2016年に提唱した「自由で開かれたインド太平洋」(:Free and Open Indo-Pacific Strategy)戦略、今や日本の外交方針となっている。
 が、元ネタはインド海軍のビンドラ大佐が書いた論文「インド人の眼からみたインド洋」(A. P. S. Bindra,"The Indian Ocean as Seen By an Indian," U.S.Naval Institute Proceedings,May 1970)にあり。
 要旨は、「米ソの両大国は、さしずめインド洋のにおける軍事活動に関して、ある程度の自制力を発揮できるだろう。が、中国の将来における野心には油断がならない。それで、これを予防するひとつの手段として、インド、豪州および日本の連携が考えられぬこともなかろう」というものだ。(『地政学入門 外交戦略の政治学』曽村保信著 中公新書 昭和59年3月25日発行 209頁)

 世界各地に飛び茂木外相は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のための日本の取組の三本柱」である、
 ①法の支配、航行の自由、自由貿易などの普及・定着
 ②国際スタンダードにのっとった「質の高いインフラ」整備等を通じた連結性の強化などによる経済的繁栄の追求
 ③海上法執行能力の向上支援、防災、不拡散などを含む平和と安定のための取組(外務省HP)を共有しようと説く。

 どうだろう、以上のことに、正面切って"NO"と云う国はないだろう、何故なら、提唱内容が当たり前だからだ。しかし、なぜ、この方針を以て世界第二の経済大国である中国に誘いが掛けられないのか。或は北朝鮮に、或は韓国にである。つまり、この三本柱の総ての論理的な帰結である"底意"は、この政策が中国包囲網形成あるは中国敵視政策であり、自由とか開かれたとかは、反語的に中国の在り方を非難する方便であるからだ。バカでない世界はその西側:‹同じ穴の貉国家›の企みは見抜いており、中々対中で一枚岩とはなれない所以なのだ。

 バイデン大統領は、G7の首脳と、中国との戦略的競争について議論し、低・中所得国における莫大なインフラ整備のニーズに応えるための具体的な行動を約束した、‹屋上屋を重ねる›中国の「一帯一路」(Belt and Road Initiative:BRI)に対抗の「よりよい世界を築く」(B3W:Build Back Better World)であるが、如何に始動しているのか。②との関連でもある。(WHITE HOUSE 2021.07.12「FACT SHEET: President Biden and G7 Leaders Launch Build Back Better World (B3W) Partnership」)

 バイデン氏の進めるインフラ整備、5年間で総額約1兆ドル(約110兆円)であるが、前任者のトランプ氏は「このような計画は米国に社会主義を招く」と。(sputnik 2021.010.04「バイデン大統領のインフラ投資計画は社会主義招く=トランプ前大統領」)
 が、バイデン大統領のBuild Back Better Actは、自国民の実態に目を向けたものである。(WHITE HOUSE AUGUST 13, 2021「FACT SHEET: President Biden’s Build Back Better Agenda Will Deliver Historic Investments in American Families and Communities」他)

 当然中国は日米印豪が中国に対抗するために構築した枠組みであること、そして日本政府の公式の立場が、"インド太平洋戦略は特定の国を念頭に置いたものではない"との枕詞と其の魂胆(海上輸送路の確保や離島の防衛など)はお見通しなのだ。

 中国は例えば「航行の自由」について言う。「南中国海地域の航行と上空飛行の自由には全く問題が存在しない。毎年、各国の各種船舶10万隻余りが南中国海を安全かつ順調に航行しているうえ、中国の南沙(英語名スプラトリー)諸島と西沙諸島は国際航路から遠く離れている。だが米側はこれを航行の自由と見ない。米側のいわゆる「航行の自由作戦」は、自らの一方的な国際法解釈に基づき、軍艦を派遣して、他国のいわゆる「行き過ぎた」海上領土主権及び海洋権益の主張と行使に挑戦するものだ。米軍艦が南中国海の広大な国際航路は通らずに、中国の駐屯する南中国海の島・礁の12カイリ内に度々進入して「航行の自由」を表明するのは、実際には魂胆があるのだ。」人民網日本語版 2018.10.18「南中国海をかき乱す米国の4つの真相を暴く」)

 この中国の主張からすれば、"自由で開かれたインド太平洋"も"航行の自由作戦"も、全く不自由していないことになる。"米国の覇権行為"こそ、批難されるべきであり、其れを触れ回る日本外交こそ、平和を乱すものと云えないか。なぜ理屈を以て、中国と相対し、理を盡し合意を得る交渉を進めないのか。それが平和外交というものだ。暗黙裡に相手の非を唱えての外交政策など‹百害あって一利なし›だ。
 本来、海洋は国際社会の共有のインフラストラクチャーであり、自由主義陣営の専用ではないはずであり、ルールというなら、国連の場で討議し決めたらよい。米国の傀儡では常に遣い走りで、使い捨てられるだけだ。
 インド洋だけでなく太平洋も大西洋も地中海なども、国連の場で、軍艦などが遊弋する場でなく、掠奪の場でなく、生活の場としての中立化を計ったらよい。生産的・建設的でもない"自由で開かれたインド太平洋"政策などは放棄したらよい。
 でないと国民はどん底で喘ぐことになる。小さな政府、小さな福祉、大きな軍事費では早晩行き詰まる。否、既に新型コロナウイルスが其れを暴いている。

 頼りとする其の米国で、深刻なホームレスの実態、「今日、およそ60万人の人々が世界で最も豊かな国・アメリカの路上で夜を明かしている」と、米上院議員のバーニー・サンダース氏。(ParsToday 2021.09.25「サンダース米上院議員が、米国内のホームレスの深刻な実態を批判」)

 バイデン氏は言う。
 長い間、アメリカは世界の先頭を走ってきました。 21世紀のほとんどの期間、私たちは文字通り、自国民への投資で世界を大きくリードしてきました。 道路や高速道路、橋だけでなく、私たちの人々や家族にも投資しました。

 インフラは世界最高レベルから転落しました。 世界経済フォーラムによると、私たちのインフラは世界第13位です。道路、橋、高速道路など、さまざまなものがあります。

 しかし、それと同じくらい重要なことに、経済協力開発機構(OECD)は、幼児教育と保育への投資に関して、アメリカを主要37カ国中35位に位置づけています。 別の言い方をすれば 世界は私たちに追いつき、追い越し始めているのです。

 多くの人々は、インフラ法案で何が問題になっているかを知っています。 それは、経済の動脈を再構築し、人々を高収入の仕事に就かせることです。 ウォール街の試算では、長期的に1600万人の新規雇用を創出するとしていますが、これは給料の良い仕事、組合員の仕事です。 時給5ドルや7.5ドルではなく、時給40ドル、50ドルです。 時給5ドルや7.5ドルではなく、時給40ドル、50ドルで家族を養い、尊厳と誇りを持って生活できるような実勢賃金です。

 道路や橋を最新の状態にする。 鉛の水道管を交換する。 アメリカには4万校以上の学校があり、水飲み場に行くと、水に鉛が含まれていないか、子供たちが毒されていないか心配になります。 蛇口をひねれば、アメリカ中のあらゆる場所で、水がきれいで飲めるようになります。

 アメリカの大企業であるフォーチュン400(500)社のうち、昨年は55社が納税額ゼロで、400億ドルの利益を上げたというのは正しくありません。 彼らが利益を上げたことは喜ばしいことです。 人々の雇用を維持する。 心からそう思っていますが、公平な負担をしてください。 この法案に書かれていることをきちんと守ってくれればいいのです。

 ところで、フォーチュン500社の多くが私のところにやってきて、「あなたの言うとおりです。 今よりも高い税金を払うことができます」と言ってきました。 なぜなら、企業は、必要な投資を行わないと、長期的な健康と福祉に影響が出ることを理解しているからです。(THE WHITE HOUSE 2021.10.15「Remarks by President Biden on the Build Back Better Agenda and the Importance of Investing in Child Care」)

 米バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員は、同国の政治システムを、ビッグマネーの支配下に置かれ腐敗していると。
 巨大製薬会社(ビッグファーマ)という医薬品マフィアは、ビッグマネーの支配下にある腐敗した政治システムの一部として、ロビー活動や宣伝合戦、テレビCMに何億ドルもの資金をつぎ込んでいる。なぜなら、医薬品に世界で最も高い価格を支払い続けることを米国民に求めているからだ。  公式統計によれば、1億4000万のアメリカ市民が低収入層に属し、9200万人が医療サービスの費用を支払う能力がない状態にある(ParsToday 2021.10.17「米サンダース上院議員、「米の政治システムは腐敗」」)。

 「米国は、わずか240年余りの歴史しかないにもかかわらず、発動・関与した戦争の数は200回以上にも上る。1945年の第二次世界大戦終結から2001年までに世界の153の地域で発生した248回の武力衝突のうち、米国が起こしたものは201回で、全体の約81%を占めている。米国が世界で最も好戦的な国であることは疑う余地がない」、「フィリピンのドゥテルテ大統領は2019年の演説で、「米国は戦争が続くことを望んでいる。なぜなら他の国々が米国の飛行機、軍艦、銃弾を購入するからだ。戦争が終わると、米国では多くの人が失業することになる」と指摘している」(CRI 2021-09-14「戦争を好む米国」は戦争の起源調査を受け入れよ」)

 「私はアメリカを隠然たる帝国と考えます。『隠然』という言葉は、単に秘密性だけでなく、もっともらしく否認することを指します。」
 「いったい国とは何だろう。自由を言い、繁栄を語り、民主主義を誇っているはずの国家が、じつは膨大な秘密を抱え、自国民をも巻き込んで、地球を破滅させかねない軍事戦略を平然と推し進めるとはどういうことなのか。これは過去ではなく、いま現在の問題である。」(『国家機密と良心 私はなぜペンタゴン情報を暴露したか』ダニエル・エルズバーグ著 岩波ブックレット 30、116頁)

 斯様な国家と本気で日米安全保障条約を結んでいるから、日本とアメリカが共同で立ち向かう?
 が、安全保障条約の第五条[共同防衛]には、「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言、とある。無条件にではない。
 それに、"世界一の軍事力を持つアメリカと戦う…"、そう戦った国がアフガニスタン、それも最貧に近い国の非正規軍が、20年も戦い続けアメリカを敗走させたのだ。この世界最大の武器輸出国家は、結果的に自国民を其の武器で殺すことになる。

 このような国に信頼を置き、国民は果たして安泰なのだろうか。平和より揉め事を望む国、その"いざこざ"の中で、利を求める国に生命・財産の安全をあずけるのか。憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」と、腹を括ったのを忘れてはならない。米国は仲間も喰らう。現実を直視し、片方に与する外交の軸足を変更するときだ。
 ‹寝首を掻›かれないうちに。

 トランプ前米大統領、「2022年、2024年に実施される選挙に我々が行こうとした時、この国はないかもしれない」(sputnik 2021.09.17)と。
 フェイク・冗談としても、そう願うのか、或は日本のように"死神"を崇めるのか、生死の問題を帯びる重大な事なのだ。

 「わが国の国際的な同盟国は、世界におけるアメリカの役割を懸念している」、「彼らは、アメリカが国際舞台を去ろうとしていると考えている」、「トランプ前政権は、1つの善良な力としてのアメリカの権力を活用することに真剣だった」、しかし、「ポンペオ氏のこうした発言の一方で、トランプ前政権は8年間の任期中に、22の機関や国際あるいは二国間協定から離脱」、「そうした国際機関や協定には、ユネスコや気候変動対策に関するパリ協定、対イラン核合意などをあげることができ」る。(ParsToday 2021.10.17「米前国務長官、「米は世界での自らの役割を失いつつある」」)

 しかし、ポンペオよ、どの口が言う、である。次期大統領選用の発言か。

 都合の悪いことは直に忘却の彼方へ、世界はそして同じことを繰り返すのか。

 「西欧、とくにアメリカに見られるように、西欧の普遍的な文化を広めようとすることによって起こる不調和と、それを広める能力の衰退である。」
 「共産主義の崩壊により、この不調和はいっそう激しくなった。民主的自由主義のイデオロギーが世界で勝利をおさめたのたから、自由主義こそが普遍的に価値かあるという考えが、西欧で強まった。西欧、とくにアメリカはつねに伝道を旨とする国であり、西欧以外の人びとは西欧の価値観を尊ぶべきだと信じている。その価位観とは民主主義、自由市場、小さい政府、人権、個人主義、法治主義であり、世界の人びとは西欧の制度をとり入れるべきだというのである。他の文明圏の一部の人びとはこの価値観を受け入れ、広めようとするが、非西欧文化圏の大多数の人びとの見方は懐疑的で、これに激しく抵抗する者も多い。西欧人には普遍的と映るものが、他の文化圏の人びとには帝国主義と思えるのだ。」(『文明の衝突 下』サミュエル・ハンチントン著集 集英社文庫2017年8月30日第1刷 11頁)

 バイデン氏の国連演説(2021.09.21)は、米国のいい加減さを露呈したもので、"同じ穴の貉国家"の糾合を呼び掛けたものに過ぎず、"新たな冷戦や、世界が硬直したブロックに分断されることを求めてはいません"と言いながら、協力でなく競争を主張し、"価値観"を同じくする国家との連携を呼びかけるも、世界の混乱の原因が米国自身にあることには言及しない。つまり、底意は新たな対立=新たな冷戦を作り出すことの宣言のように聞こえる。しかも、それはすべて米国の利益のためである。
 "強大な国の試みに反対"、"強国が弱国を支配しようとする試みに反対"、"力による領土の変更であれ、経済的強制であれ、技術的搾取であれ、情報操作であれ" というが、何処の国のことを指すのか。米国の在り方にぴたりと当て嵌まるのだが。
 そして、"同盟国や友人のために立ち上がり、強大な国の試みに反対"と。まさか目当てなしの一般論を述べているのでもあるまい。‹天に唾する›か。虚しい限りだ。
 はっきり言えば、‹砂を噛むよう›な内容である。この‹横柄を捌く›大国を‹鼻で笑う›か。 (「Remarks by President Biden Before the 76th Session of the United Nations General Assembly SEPTEMBER 21, 2021」)から抜粋。

 中国の趙立堅報道官は22日の定例記者会見で、「平和的発展と協力・ウィンウィンは今の時代の潮流であり、各国共通の願いだ。国際社会の全てのメンバーは国連憲章の趣旨と原則を厳守し、国連中心の国際システム及び国際法に基づく国際秩序を維持するべきだ。平和・発展・公平・正義・民主・自由という全人類共通の価値観を発揚し、真の多国間主義を実行し、『共に話し合い、共に建設し、共に分かち合う』原則を堅持し、小集団やゼロサムゲームを捨て去る必要がある」、「国際問題の解決にあたっては、いわゆる強者の立場から覇権・覇道を推し進めてはならず、ましてやいわゆる『ルール』を旗印に国際秩序を破壊し、対立と分断を生み出してはならない。互恵・ウィンウィンの協力観を厳守し、貿易・投資・技術分野における様々な高い障壁を取り除き、包摂的であまねく恩恵の及ぶ発展の未来を築くべきだ」、「中国は世界平和の建設者、世界の発展への貢献者、国際秩序の擁護者、公共財の提供者だ。我々は引き続き、中国の新たな発展によって、世界に新たなチャンスを提供していく。関係各国が時代の潮流についていき、中国及び中国の発展を客観的かつ理性的に受け止めることを希望する」と。(人民網日本語版」2021.9.23「バイデン米大統領『米国は新冷戦を求めず』中国外交部がコメント」)

 中国の王毅国務委員兼外交部長(外相)は、「真の多国間主義とは、世界の事に皆が協議して当たり、国際ルールを皆で共に策定することだ。『新たな冷戦を望まない』という米大統領の発言を各者は重視している。重要なのは、この発言を実行に移すことだ」と。(人民網日本語版2021.09.24「王毅部長「米大統領『新冷戦を望まぬ』発言を重視、行動に移すことが重要」)

 米中「両国が冷戦状態になったら、一世代にわたり太平洋の両側で進歩が止ってしまうであろう。そうなれば、地球規模の核拡散問題、環境問題、エネルギーの安全保障問題、気候変動問題などさまざまな問題が世界の協力を必要としている時に、米中の冷戦はあらゆる地域の内部の政治に紛争を広げることになろう。」、「双方が自己分析する際には、自分たちの予言に自分たちが縛られてしまうような状況に陥らないよう自戒すべきである。」(『キッシンジャー回顧録 中国(下)』ヘンリー・キッシンジャー著 岩波現代文庫2021年1月15日第1刷発行653頁)

 しかし、今、世界は大国が外交で戦争を制御可能な時代ではなくなった。つまり大国の思惑とは関係なく、ある意味では正規軍間の戦いというより、グローバリゼーションにより、"新しい戦争"形態が群雄割拠然として起こり始めたというべきか。(『新戦争論 グローバル時代の組織的暴力』メアリー・カルドー著 2003年1月28日発行 岩波書店)

 ― 美しさを愛でるだけなら、宇宙旅行は単なる金持ちの道楽,逃避、避暑、高見の見物のようなもので無意味。地上に起きていることには丸っきり目が向かない。哲学者や思想家を先ず宇宙へ。
 真の悲劇は、地球を俯瞰できるようになっても、何等それに相応しい世界観、地球観、宇宙観を打ち立てられないことだ。因って地上の争いが宇宙に持ち込まれる。 ―

 2021年9月、世界には、映画『渚にて』(On the Beach)の主題歌、Waltzing Matildaが流れ始めた……。

    君死にたまふことなかれ。
    すめらみことは、戦ひに
    おほみづからは出でまさね、
    互に人の血を流し、
    獣の道に死ねよとは、
    死ぬるを人の誉れとは、
    おほみこころの深ければ、
    もとより如何で思されん。

   - 君死にたまふことなかれ 與謝野晶子 -

(註:訳は私訳です。確認は原文で願います。)


 世界の食わせ者、G7 - 2021年06月22日

 「白人たちよ。いまさら白っぱくれるでねえぞ!」。
 南ベトナム、ソンミでの虐殺事件のニュースに、今更めくアメリカ人の驚き振りに対し、北米インディアンたちの反応である。
 「ソンミは一八六四年のサンド・クリーク虐殺事件、一八九〇年のウンディド・ニ―虐殺事件を結ぶ、黒々した延長線上に確実に乗っている」。(『アメリカ・インディアン悲史』藤永 茂著 朝日選書1994.2.20)

 「ロンドンの王立国際問題研究所が出版した汎米機構の研究は、米国は民主主義には口先だけの好意を示しているが、本当に肩入れしているのは『私的資本主義企業』に対してであると結論している。投資家の権利が脅かされるならば、民主主義は消え失せなくてはならない。一方、投資家の権利が保障される限り、殺人者も拷問者も歓迎なのである」。(『アメリカが本当に望んでいること』ノーム・チョムスキー著 益岡 賢訳 現代企画室 1994.6.20)

 米国(米国に付和雷同する西側諸国も含め)による執拗な批難で、隣人を敵に変える妄想(米国に阿諛迎合する西側諸国同士内も含め)を抱え込む前に、現実に目覚めるべきである。
 その現実とは、衰退するG7を骨の髄までも利用しようとする米国の奸計である。<謀は密なるを以てよしとす>るであるが、その謀を為す"米国の剥き出しの本性"を上述した二例を以て、見破ることである。

 今次のイギリス(Cornwall)でのG7サミットで、隠されていることの本質は米国の経済的衰退の自覚なのだ。そして当然、その対策事である。米国は第二次世界大戦以降75年ほど世界を君臨して来た。其の米国(覇者)が、台頭する中国の肉迫に怯え、交代を迫られているという事実を受け入れられないでいる。
 有ろう事か、中国の「軍産複合体がもたらした脅威」を解決すると、バイデン氏。
 軍産複合体は米国の御箱であり、現在もその戦禍を世界にばら撒いている張本人ではないのか。軍産複合体こそは全米包みであり、国家の総合力を掛けての有り様で、その実行組織に何一つ他に劣り欠けることがあってはならないのだ。したがって、経済に於ても、常に覇者でなければならないのである。が、その経済(GDP)でも、宇宙産業でも、軍事力でも中国の足音が背後に聞こえるという状況なのだ。
 形振りかまわず、危機を煽り結束させ自らの意図を実現するのは、権略家の常套手段である。  その為のG7糾合である。G7は本来"猛反省"をしなければならない。何れの点でか。

 首脳会合の前に開かれる外相・財相なども開かれるサミットは主要国首脳会議など呼ばれ、経済問題、環境、安全保障、政治問題など、役割を拡大しつつ網羅的に扱い差配し、世界の統治機関と化している。
 が、本来的には何等拘束力を持たないのであり、換言すれば"仲間内の会合"に過ぎないのである。"宣言"なども誰に対する表明なのか疑問符がつくのである。
 が、雁首揃えて難癖をつけ、相手国をやたらと敵視し、批難を表明する場合には、当たり前ながら当該国からも、猛烈な批判・批難を受けること、或は時に臨んで制裁(特に今次中国は反外国制裁法=Anti-Foreign Sanctions Lawが成る。)もあることは甘受しなければならない。

 「数カ国が集まる小さなグループが世界全体の運命を決めていた時代は、大分前に過ぎ去った」と、在イギリス中国大使館は警告する。そしてまた、「中国政府は常に、諸国は大小、強弱、貧富を問わず、互いに同等であるという立場を取ってきた。世界に関する事柄は、全ての諸国の共感という枠組で運営されるべきだ」とも表明。
 至極真っ当な意見ではないか。
 が、その"小さなグループ"を勘違いし、G7が開催を支持したと強調し、「国際公約になったことで中止や延期はもうない」と。まるでG7が国際社会の代表或は総てであるかの如くに偉ぶり、五輪開催を既定事実とする。<夜郎自大>の日本の振舞である。新型コロナウイルス感染症への国民の危惧など御構い無しに、裏付けのない薄っぺらな言辞を以て無視する。

 特に米国はIMF(国際通貨基金)、世界銀行、WTOなどを牛耳り極度の影響力をこれまで行使してきた。
 国際社会は"力ある者の傍若無人の姿"を、米国のトランプ前大統領の言動に見た。見ようによっては、悪足掻きようでもあるのだが。
 TPP(2017.1永久離脱)、ユネスコ(2017.10離脱)、イラン核合意(2018.5離脱)、UNHRC(2018.6) INF(中距離核戦力全廃条約)(2019.8離脱)、パリ協定(2019.11離脱)、WHO(2020.7)などである。

 さて、「米国は協議に戻ってきた」と強調する米国のバイデン現大統領、パリ協定(2021.2復帰宣言)、WHOの脱退手続きの撤回などは勝手にできる。イランの核合意問題などは、ウィーンでの協議にてイランと5カ国(英・仏・独・ロ・中)間で進めるが、米国とは隔靴掻痒の交渉となり、米国の合意復帰は見通せてない。
 国内の分離対立を国際社会にまで拡大し、特に対中国政策では人権や基本的自由を唱え西側陣営を結束させ、国際社会を二分し角逐を煽る。国際情勢の悪化は必然である。相も変わらずの米国主導の策なのだ。
 その実、米国内では人権無視の最たる人命軽視が起き、新型コロナウイルスの対策遅れが響き、60万人超える死者である。
 更に、「新型コロナウイルスによる死者の統計について、黒人やヒスパニックが大半を占める10万人以上の死亡が計上されていない可能性がある」と指摘する(米ニューズウィーク誌)。

 世界のコロナ禍の終息に必要なワクチン接種分の一割にも満たない十億回相当分を途上国などに提供するとしているが、自国優先で中国やロシアの後塵を拝するのを余儀無くされている。
 中国に着せたワクチン外交の批難が、廻って「ワクチン・ナショナリズム」と逆に非難される始末である。
 「米はワクチン武器庫になる」と、バイデン氏。<雀の涙>ほどの提供でも物は言いようである。現実は言葉の綾を無視し、遥かに重大性・緊急性を帯びる。ワクチン接種率の貧富の差(「富裕国が44%に達しているにもかかわらず、貧困国においてはわずか0.4%である」)は拡大する一方である。そして、1日の死者数世界最多を更新したインドで、最初に見つかった感染力の強い「デルタ株」が追討ちをかけてくる。

 G7で議長役のジョンソン氏、
 「世界は私たちが利己的な対応をやめ、すべての力を使ってコロナ禍を終わらせることを望んでいる」と。この"私たち"とは、つまり、先進7か国を指すのでなければ、事実を糊塗することになり、巧言となろう。
 脱退や離脱をするも、また撤回・復帰するも、米国の基本性格は変わらず、自国利益第一の<手の内に丸め込む>策なのである。
 また、"米国の人権・自由主義・民主主義"云々は、自国利益第一主義を唱える代役でもある。米国以外のグループ構成国も、隠れた米国の一人称に注意を払うべきだ。

 今や<尾羽打ち枯ら>した感のG7、<把になって掛かる>も、中国を動かせない。また中国は、今次の"声明"を幾分、非難の語気がトーン・ダウンしたと考えているようだ。そのことは、米国の口車に全面的に乗るということに、仲間内でも慎重深さや配慮が働き、各国の国内事情も反映されたことによりなった判断なのであろう。
 其処に米国の力の衰えを見る。しかし米国は執拗である。

 米国はNATOの防衛体制を強化する新軍事戦略を実行するとした。建設的パートナーとして定義されているロシアに対し、戦略的概念を書き換えると。恐らく、中国についても何らかの思惑の取り込みがある。
 「Section 3 is the first that mentions Russia and China, though hardly the last. The first is accused of “aggressive actions [which] constitute a threat to Euro-Atlantic security”; the second, however, receives a far more benign characterization. NATO pledges to “engage China with a view to defending the security interests of the Alliance.”」(「NATO 2030: United for a New Era」)参照。

 「中国は侵略してこなければ、北大西洋とほとんど関係がない」と、マクロン氏。当然であろう。また「人権問題などで価値観の一致しない大国だ」とも。一致しなくても道理であろう。
 ところが、G7各国が未遂である人権・自由などの旗印で、其の一致しない他国を如何ほど侵略し、殺戮し、荒廃させてきたことかについては、言葉を尽くす(反省する)ことはない。
 対中包囲網についても、価値観についても、逆説的に換言可能である。が、中国は中国であり、約14億人の民の住む国であることを忘れては、其の民への侮辱となろう。G7が人権・民主主義・自由主義・法治主義というのなら、なぜ中国の価値観・体制を先ずは容認できないのだろうか。独善的過ぎるのである。
 G7自身はその主義・主張の虚偽性・欺瞞性・偽善性を本当に恥じないのか。胸に手を置くべきではないか。

 「It urged NATO to maintain a rational attitude on viewing China's development, and stop the hyping of various forms of the "China threat theory" and using China's legitimate rights as excuses for manipulating group politics, creating confrontations or stimulating geo-competition.」

 米議員ら「米国民は…、彼であろうと彼女であろうと(大統領が)国の長、軍の最高司令官としての義務を遂行できるか どうかを知る必要がある」とし、バイデン氏も認知機能のテストを受けるよう呼び掛けた。
 否、米政権の来し方、今、行く末の在り方も、認知機能テストを受ける必要がある。

 対中包囲網、封じ込め政策(containment policy)と呼ぼうと、米国主導の西側諸国、歴史の中に現れる時、"富・恐れ"が其の背景にある。
 今、操る北東アジアの舞台装置に、台湾海峡、米ロの新冷戦、北朝鮮問題、自由で開かれたインド太平洋、人権問題等々据える。米国を取り巻く"恐れ・富の火種"である。それは共産主義の世界的拡張であった時代から70年も過ぎ、経済大国となった中国は、米国の上を行く相似形に成長した。この似た者は正しく米国の投影であり、米国のプロフィールが<影を落とす>恐れ・富の火種となった。
 中国にとってみれば、米国の妄想が生み出す敵にされ、迷惑千万な事に成る。

 "汚物流れる溝に首まで浸かり乍ら米国は、徒党を組んで他国に公衆衛生を強要する"という、常識を超えて、恰も狂人の如しである。自由主義、つまり、米国の許す範囲内の自由も、今はドブに沈む。
 <狂人走れば不狂人も走る>という訳で、30カ国で成るNATOも腐臭を放つドブを目掛けて一斉に何やらを喚きながら、なだれ込む。対中というより、米国という笛吹き男対守れない約束をするNATO加盟国という構図は、ハーメルンの笛吹き男が悲惨な結末を暗示する。

 そう、脱北民出身の人権運動家パク・ヨンミさん、「米国は違うと思ったが、北朝鮮と似たような点をたくさん見た」、そして「北朝鮮もここまでクレイジーではなかった」と。

 「If NATO had remained a strictly defensive alliance committed to its members’ security and nothing else, it might have been worth preserving. Since it long ago turned into a vehicle for enabling and supporting unnecessary U.S. military interventions, the US should get out.」
 EUも米国に侵蝕され翻弄され、しゃぶりつくされるか。日本は疾うに空蝉・放心の態である。
 真に米国はインベーダーであることか、それも独り善がりの根拠のない想念を持つ、その依ってきたところも、米国自身の悪事の数々の憑き物のなせることだ。

 今やG7は中国にすべての点で後れを取る。つまり其の"誇る"自由主義等でもだ。故に恥知らずにも自分の悪事の数々は忘却の彼方に追いやり、中国の粗を探しては針小棒大に騒ぎ立て、執拗に批難し続けるのだ。言わば自己の体制の欠点・不備を証明する裏返しであり、その隠蔽でもある。
 「黒い猫でも、白い猫でも、鼠を捕るのが良い猫だ」式に云えば、"民主主義であれ、専制(権威)主義であれ、民を幸福にするのが、良い主義だ"となろうか。
 いま中国は貧困削減の成果を上げている。

 「NATO北大西洋条約機構と先進7カ国・G7は、他者に説教する代わりに国際法を遵守すべきだ」と、イラン外務省のハティーブザーデ報道官。
 その通りである。ところが世間は実態(歴史)見ず、美酒に酔うように、自由・人権・民主という美辞に酔い、虜にされ、其処での血の滴りを見ようとしない。

 「The biggest irony of the time is that the US, a self-styled human rights defender, is no better than a killer nation, a mass-killing machine, and slaughter central.」

 普遍性に欠ける"米国の自由・人権・民主"の犠牲者の血肉を、G7諸国は互いに唸り声をあげながら、喰らい合う。

 「アメリカや各国の政府系機関などによる公的な資金とともに、民間の資金を集め、合わせて数千億ドル、日本円で数十兆円の規模のインフラ投資を進めていく」と。

 バイデン大統領に「米国の屋台骨再建する」、「中国との競争だ」と叫かさせる。それどころか、互恵・ウィンウィンの理念を創造する中国の一帯一路(The Belt and Road Initiative, BRI)構想を“盗み”、前もって民主主義陣営国家で対抗しようとジョンソン英首相に持ち掛けていた。
 それが今次のG7首脳会議で、インフラ投資計画、「より良い世界の再建を(Build Back Better World=B3W)」の提案となった。

 米英等は金を無償でばら撒く気なのであろうか。
 なぜなら、中国の一帯一路での「債務の罠」を西側は痛烈に批判している。他にも環境破壊など批難を浴びせている。
 米英は中国になびいてしまった国々を奪還するのに、新たに債務の上乗せを強請する訳にはいかないではないか。
 新たに何が可能なのか。中国に問題はあるにしても、西側がその課題を簡単にクリアできるとも思えない。実行可能性の研究はしたのであろうか。
 現在の中国の開発力(製造能力)、特にそのスピードには目を見張らされる。米国は国内を眺め廻してみたらいかがか。とても他国の社会設備に気を配る余裕などないはずだ。
 ポンペオ前米国務長官は、一帯一路についても「各国の主権を害している」とし、英国を唆していた。
 中国は反論する。「ここしばらく、米側の特定の人物は『一帯一路』イニシアティブに対して無責任な発言をし続けている。とりわけ第2回『一帯一路』国際協力サミットフォーラム開催前には、さらに勢いを強め、騒がしい発言をした。だがその結果はどうだったか。150カ国、92の国際組織の計6000人以上の代表が第2回『一帯一路』国際協力サミットフォーラムに参加した。米側の代表も50人以上いた。これは『一帯一路』共同建設イニシアティブに対して国際社会が行動によって信任票と支持票を投じたものであり、米側の言動に対する最良の返事でもある」と、耿報道官。

 「八年間で二兆二千五百億ドル(約二百五十兆円)のインフラ投資である。道路、鉄道、電気自動車、半導体、AI、ブロードバンド等への計画であるが、何れも中国優位かキャッチアップされているものばかりである。
 「中国のネットワークインフラはすべてIPv6をサポートしている」、「世界のIoT(モノのインターネット)接続数は2025年に309億にのぼり、非IoTの接続数を遥かに上回る見通しだ。人類は万物がスマートにつながる時代を迎えつつあるが、これはIPv6に大きな発展空間を与える」。

 民間に頼っても、政治力・実務能力・計画性・長期性・統合力・技術力・建設能力・労働力等、課題山積みではないのか。そして何よりも収益性の点で新自由主義にどっふりの民間企業が乗るのか、また肝心の"より良い世界の再建"先をどう選定するのだ。手を挙げさせるのか。

 トランプ前大統領の言い種ではないが、B3W、何が起きるか“見てみよう”である。

 新自由主義は、市場の自由化・貿易の自由化を以て世界の人々を豊かにするという考え方である。以下は新自由主義を明快に整理した著作(『G8サミット体制とはなにか』栗原康著)からの引用である。(註:G8はクリミア併合を機にロシアが2014年3月に抜けG7に。「G8にしがみついたりしない。G8は非公式なクラブだ」と、ラブロフ外相。)

 「新自由主義には、五本の柱がある。
 1 輸入農産物の自由化(関税障壁の撤廃など)
 2 公共部門の民営化(鉄道、郵便、医療、水道、教育に民間企業が参入)
 3 労働の柔軟化(労働法制の基準緩和、非正規雇用の推進)
 4 規制緩和(資本規制、安全基準、環境規制などの緩和)
 5 警察国家化(テロ対策、移民管理の強化)
 現在、世界のほとんどの国々が、この五本柱に基づいた政策をとっている。サミットに参加する国々は、IMFや世界銀行、自由貿易協定などを通じて、世界を新自由主義へと方向づけてきたのである。
 世界は多国籍企業を中心とする巨大企業の利益を優先し、大多数の人びとを貧困におとしいれる方向に突き動かされてきたといえる」。
 「一九七〇年代後半から、IMFと世界銀行は関税障壁の撤廃、民営化の名のもとに、新自由主義政策を普及させていった」、「こうしたIMFや世界銀行の経済政策は、ラテンアメリカやアジア、アフリカ諸国の伝統的な農業を崩壊させ、大量の失業者を生み出す結果となった」。

 そう、G7は本来"猛反省"をしなければならない点とはこのことである。貧富の格差拡大を世界にばら撒いた点である。当然、自国内にも貧富の格差は及んだ。そして今もなお、推し進める其の政策は、貧富の格差を更に拡大させ、富を益々偏在させる。

 米国の再建や中国との競争を云い募り、60万人以上の死者を出し、それでもバイデン氏、"より良い世界の再建を"だとは、どこの世界のことだ、白っぱくれるな、G7!

 BRI:B3Wは言わば"建設的生産的ウインウイン"に対し"荒廃的搾取的利己利己"の構図でもある。
 一帯一路は中国が一兆ドルかけて進める世紀のプロジェクトである。先行すること8年、中国の現代版シルクロード経済圏構想なのだ。米国にも日本にも打ち出せない、宇宙情報回廊構築も含む壮大な構想であり、寧ろ西側は協力すべきなのだ。奪い合いに参加するのでなく。協力し合って、それこそ「より良い世界の再建を」である。

 自由主義国家の新型コロナウイルス感染対応ぶりを見ればわかるように、日本も医療体制の不備・不足である。福祉を顧みない医療費抑制政策等の結果であろう。
 新自由主義は悲劇と貧困を世界にばら撒いたのである。
 その新自由主義の大波を利用し上手にサーフィンできたのは中国である。世界の貧困化の中、発展と貧困対策をも可能になった中国は、トリクルダウン理論を実践したともいえよう。

 B3Wの最大のボトルネックは欺瞞・偽善の腐臭漂う人権・自由の物差しである。恐らく一政権(トランプ政権時はBRIを非難し、対抗策を英に指嗾する)の投資計画を目先の利益に汲々とする企業が喜色満面で参入するだろうか。バイデン氏自身も次の選挙で勝てるという保証は何もない。むしろ<捲土重来>を期すトランプ氏が万一当選することを考慮したら、<火中の栗を拾う>ことになるやも。

 いずれにしろ安定性を欠く米国主導では<梯子を外される>ことも熟慮の中である。
 G7・NATO・プーチンと首脳会談を終えて帰国するバイデン氏を待つのは歓迎ばかりではあるまい。
 バイデン氏、「世界を指導するのはロシアではない」と。勿論、米国でもない。米国、今やその器に非ず、である。地球という乗り物に乗るすべてに必要とされるのは、協同・連帯である。指導権の争いごとではない。

  そのプーチンとの会談についても、
 「US President Joe Biden has finished his trip to Europe, which is his first major diplomatic event since he assumed the presidency. But apart from a series of vague communiqués with his allies and a meeting with Russian President Vladimir Putin, which ended with no significant breakthroughs, there is nothing Biden can show to his people regarding his diplomatic efforts」と、見る。

 愚かなハゲタカがパンダは脅威だと熊に云う。

 アメリカの陳腐なショウ・タイムは終わりにすべきだ。中国とアメリカは財政的にも経済的にも、ほとんど"Chimerica=チメリカ"の状態である。

 「新疆、香港地区、台湾地区に関する事は完全に中国の内政であり、いかなる外部勢力の干渉も許さない。国家の主権・安全・発展上の利益を守る中国の決意は確固不動たるものだ」

 「世界の多極化と国際関係の民主化は阻むことのできない時代の潮流だ。1つの国、または1つの国家集団が天下に号令する時代はすでに過ぎ去った。現在の情勢の下では、国際社会は小さな『徒党』を組んで『ブロック政治』を行うのではなく、団結と協力を強化し、真の多国間主義を実行することを以前にも増して必要としている。イデオロギーで線引きをして異なる発展モデルを叩くべきではないし、ましてや是非を混同し、責任を転嫁するべきではない」と。

 言うに事欠く批難等に云われっぱなしという訳にはいかない、戦狼外交(Wolf warrior diplomacy)も時に必要である。

中国よ、正論を吐いても、歴史の浅い愚かな米国とは絶対に戦争するな、挑発には乗らずうまく躱せ。
 中国という大河は深くゆっくりと確実に流れるべきである。
 NATO・クワッドの食えないやつ共が、米国に操られ難癖を付け、太平洋で国力の消耗訓練を為し威嚇しても、<高みの見物>と油断なく洒落込もう。

 軍産複合体と戦争屋、アイゼンハワーの予見する悲惨な結末を招来する大兇である。
 <金持喧嘩せず>である、米国の自作自演が終幕するのを待て。

 ミニミニ疑似米国の日本、自分の言葉を持たない日本、諍いを隣国と際限なく続ける。
 もはや経済面で中国に追い抜かれるという脅威は疾うの昔に失せた。変わって登場したのが、軍事的大国(「世界一流の軍隊」)を目指す中国脅威・対抗論であり、その為の安全保障であり、経済安全保障なのだ。勿論これらの意図するところは、米国の戦略方針の指し示す影響である。  例えば、中国海警局艦艇編隊の尖閣諸島(釣魚島)への巡航は日常化している。当然、中国側からすれば自国領海内となる。
 しかしである、韓国・ロシアはどうか。竹島問題(独島)は韓国の施政下にあり、実効支配されている。韓国軍は海洋警察の艦艇や空軍の戦力を投入し、日本海(韓国名:東海)で毎年領土守護訓練する。が、安全・経済安全保障面で特に問題としない。北方領土は、「わが国固有の領土である北方領土においてロシア軍の駐留を継続させ、昨今、その活動をより活発化」と、今や<犬の川端歩き>に等しい。
 日本は中国包囲網に積極的に加担するが、冷静に見ると、実は縊死の状態、<四面楚歌>に陥っているのではないか。
 文在寅大統領、三星電子、現代自動車、SK、LGの4大グループ代表を大統領府に招き、「一緒にしてもらったおかげで、韓米首脳会談の成果が本当に良かった」と。
 つまり、首脳会談に合わせ4大グループで44兆ウォンの対米投資を決定した。バイデン氏、4大グループの関係者に、サンキューの連発となった。
 その韓国、2019年7月、日本の輸出規制に国産化で対応し、「初期に懸念されたフッ化水素、EUVレジスト、フッ化ポリイミドの3大核心品目の供給安定化が目に見えて改善されて、どのような生産支障もきたさなかった」と、韓国の洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官に云わせた。
 つい最近、日本とドイツから全量輸入していた半導体のコア素材、高純度塩化水素の国産化も成功したと。日本、韓国は他国に"売り物=貢物"があることを考慮すべし。
 文在寅大統領、韓米首脳会談・G7サミット出席・欧州国家歴訪と、そつが無く熟したようだ。
 出掛ける前の中国の王毅外相の「共通の認識のもと、一方の肩を持ってはいけない」、「米国に巻き込まれるべきでない」との警告もあったが、今のところ中国から韓国への音沙汰は無いようだ。

 菅首相、むしろ"目立たない"ことで逆に目立ったか。そう、日本には"売り物=貢物"、米国の欲しがる売り物がない。
 また韓国への制裁で分かるように、制裁は自国産業を衰退させるだけと悟るべし。むしろ制裁せずに、相手国に依存させることだ。日本政府の主張する経済安全保障は、自らの頭上に刃物をぶら下げるようなものだ。
 政府は経済安全保障を強調するが、安全を脅かしているのは政府の言動・政策である。日本の企業でも新疆ウイグル自治区の人権問題に絡み、問題ないとの認識をとりながらも、いくつかの企業が取引をやめると。"人権"に政府に忖度したのであろうか。

 新型コロナウイルス感染症による在中国日系企業へ質問で、「感染症の蔓延及び貿易環境の変化のため、生産拠点を調整する計画があるか」に対し、「92.8%が『そのような計画はない』と答えた」と。
 "貿易環境の変化のため"は、新疆ウイグル自治区での人権問題の含意を読みとるべきか。
 一度でも引けば、中国での取引は難しくなるであろう。

 国家間の問題・課題は話合いが前提であるが、「カントは、理性だけで世界全体の根本的問題を解決しようとすると、二律背反に陥る」と(広辞苑第六版)。
 が、米国の在り方には理性が失われ、"利性"が勝つ故に、理性と利性間に於ても二律背反に陥る。情と理を尽くして強慾・覇慾の関係を調整しようとしても、やはり二律背反となる。
 よって一方の命題の解消策として、世界を大惨事の修羅場に陥れるか、或はその前に米国覇権に屈し米国の許容範囲の人権、自由・民主主義内に、日本の江戸時代の親藩・譜代・外様大名の関係のごとく存するか、となる。両者の中にもまた、同様の背反は勝抜き戦のように内在する。  この止む事のない"揚棄戦"、限りなく続く。

 バイデン氏、「われわれはまだ平等を実現できていない。歴史を学び祝うだけでなく、行動することが必要だ」と(6月19日を国の祝日とする法案に署名)。

 しかし、"平等を実現できていない"ということは、人権・自由・民主も実現されていないことになる。人権は実現したが、平等ではない等と云える筈がない。
 そして、"歴史を学び祝うだけでなく"とも言うが、米国に必要なのは自国の浅い歴史の中で、如何に謀略・殺戮・侵略を繰り返してきたか、そして今も続いている其の悪癖を矯正することであり、それには自国の暗黒の歴史を掘り下げ深く学ぶことから始まるべきである。
 大国とは自らを振り返り誡めることできることができる国をいう。
 米国は行動する前に深く自省すべきである。ただ前進を煽るのでは政治とは言えない。
 そして、No.1を維持するためには、敵視する国を制裁しまくり、自国(民)経済への竹箆返しを物ともせずでは、世界の舞台でリーダーシップを回復させるには程遠い。

 安定感皆無の米国政治よ、世界を草刈場としかみない米国政治よ、さらば!

 それでも、国際社会は情理を尽くし話し合うべきだ。

 「孫子曰わく、兵とは国の大事なり」(『孫子』金谷治訳注 岩波文庫2000年4月14日)。
 韜光養晦は現在も有効か。

引用・参照

グローバル・タイムズ紙、「アメリカは世界の大量虐殺装置」
6月21日,2021 ParsToday

中国のネットワークインフラ、すべてIPv6をサポート
人民網日本語版 2021年06月21日

米議員ら バイデン大統領に認知障害テストを呼び掛け
SPUTNIK 2021年06月19日

WHO、「コロナ・デルタ株が世界的主流に」 アフリカの感染状況も懸念
6月19日,2021 ParsToday

中日新聞 2021.6.15 6.19

在中国日系企業の9割超「中国から撤退しない」
人民網日本語版 2021年06月18日

The enduring triumph of Chimerica By DAVID P. GOLDMAN JUNE 15, 2021 ASIATIMES
Data prove the US is world’s mass-killing machine By Xin Ping Jun 19, 2021

世界を指導するのはロシアではない=バイデン氏 SPUTNIK2021年06月17日

Biden’s way of slamming Beijing-Moscow relations is humiliating Russia:Global Times editorialBy Global Times Global Times Jun 18, 2021

US president ‘makes logical mistake’in splitting China-Russia ties Biden’s trip results in vague communiqués but ‘no concrete achievements’ By Yang Sheng and Zhang Han Global Times Jun 17,2021

イラン外務省報道官、「NATOとG7は説教の代わりに国際法を遵守すべき」
ParsToday 6月16,2021

Conflict of interests hard to hide in EU-US summit Values, ideology fragile in binding transatlantic alliance together: experts By GT staff reporters Global Times Jun16,2021

G7首脳宣言に外交部「強い不満と断固たる反対」人民網日本語版 2021年06月16日

Despite Pushing Them Together, the US Is Unhappy With Closer Russia-China Ties by Dave DeCamp ANTIWAR.com Posted on June16,2021

Another NATO Summit, Another Endless Subsidy for Europe Washington Should Allow Europeans To Take Over Responsibility for Their Own Defense by Doug Bandow ANTIWAR.com Posted on June 16,2021

Farewell to NATO by Daniel Larison Posted on June 16,2021 ANTIWAR.com

  China-Nato relations: Beijing vows to act after ‘systemic challenge’ claim but says it’s no threat South China Morning post 15 Jun, 2021

US naïve to peddle ‘China threat theory’to Russia By Mu Lu Global Times Jun 15,2021

NATO countries shouldn't be politically exploited by Washington: Global Times editorial By Global Times Jun 15,2021

China fires back at NATO's claims, says it won't sit back in face of systemic challenges By Global Times Jun 15,2021

Many U.S. Cities Are Already Starting To Resemble Post-Apocalyptic Cesspools As America’s Collapse Accelerates June 15, 2021 by Michael Snyder

Creating Enemies: China Reacts to NATO Targeting It by Rick Rozoff ANTIWAR.com Posted onJune 15,2021

G7サミットが、世界規模の批判の的に 6月15日,2021 ParsToday

米国の大学に対して声を上げた脱北留学生「北朝鮮もここまでクレイジーではなかった」 中央日報/中央日報日本語版2021.06.15

ANTIWAR.com NATO Summit: Confronting China, Russia, and the World by Rick Rozoff Posted onJune 14,2021

「NATO 2030: United for a New Era」
https://www.nato.int/nato_static_fl2014/assets/pdf/2020/12/pdf/201201-Reflection-Group-Final-Report-Uni.pdf

US-EU divergence lies in anti-Beijing roadshows in key summits in Europe: experts By Wang Qi Jun 14,2021

『令和2年版防衛白書』

「中国が、G7首脳陣に警告」ParsToday 2021.6.13

圧力加える中国、避ける日本…重荷を背負ってG7へ向かう文大統領 中央日報/中央日報日本語版 2021.06.12

ParsToday 2021.6.12「米のコロナ死者統計に不備」

NHK 2021.6.13 G7各国 途上国インフラ整備へ新構想 中国「一帯一路」に対抗

THE WALL STREET JOURNAL 2021年6月17日 中国「一帯一路」、外国企業は置き去りか

日本から全量輸入していた半導体素材、三星が中堅企業と連携し国産化 東亜日報 June.09,2021

インド、過去1日のコロナ死者6148人 世界最多を更新 6月10日,2021 ParsToday

コロナワクチン供給における世界規模の差別;富裕国の接種率は110倍に 6月09日,2021 ParsToday

人民網日本語版 2019年05月10日 米側の「一帯一路」非難に外交部がコメント

韓国経済副総理「日本の輸出規制措置から2年、3大核心品目の供給安定」 中央日報日本語版 2021.05.25

『G8サミット体制とはなにか』栗原康著 以文社 2008.6.16


 駄々捏ね政治の蔓延 - 2021年06月08日

 蓄音器時代の話。レコードの溝に傷が付くと、盤が同じ個所を繰り返すようになる。そこで、"壊れた蓄音器のように"との諺が生まれた。
 今、米国は中国に向い呪術をかけるが如く、批難を"壊れた蓄音器のように"繰り返す。しかし、その呪術は中国に留まらず、米国自身に降り積もる。つまり、<天に唾する>ように。

 多くの点で疑問符の付く先進国を除き、他の国々からなる国際社会は、事の真偽、多分にフェイクであろう米国主導の黒呪術には、耳に胼胝であろう。
 特に前米国大統領トランプとそのポンペオ前国務長官、そして現在のバイデン大統領とブリンケン米国務長官、何れも中国を目の敵とし狙い撃ちにする。
 ブリンケン氏も、度が過ぎ嫉妬も混じるかと思わせるほど、底意地が悪い。はっきり言って聞き苦しい。

 「米国に中断は存在しない」と、バイデン氏。では米国は世界に対し、不協和音の音源であることを、止めないということなのだろう。
 米国の独善的制裁は、世界の発展を押し止める手かせ足枷となっている。新型コロナウイルスのパンデミック下に於ては更なる人権侵害も伴う。

 さて口煩く嘴を容れる中で、噴飯ものは、「中国の軍産複合体がもたらした脅威を解決するために、バイデン大統領が行政命令に署名した」と(中央日報「バイデン氏、中国ブラックリスト企業28社追加…NYT『韓日の参加が必要』」2021.06.04)。
 そもそも"軍産複合体"の発祥地は米国であり、現在でもそれが絶えることなく続いている。
 「防衛産業の下請け企業が全米のあらゆる地域にくまなく散らばっており、アメリカの下院議員の選挙区四三五地区のうち三八三地区にそれが存在する」、「日本の予算では、公共事業として土木事業が各地域の政治家の欲しがるものであるのと似た構造をしている」と。また、「アメリカの軍事予算のルーズさは有名なものである」、「仮想敵の存在だけが、その額を決定する」とも(『科学技術の国際競争力 アメリカと日本 相剋の半世紀』中山 茂著239頁 朝日新聞社)。
 軍産複合体は、アメリカの持てるもの総てを巻き込んだ存在ではないのか。ならば、両国家の軍産複合体の角逐となるであろう。一方の"軍産複合体"だけを"脅威"と見做し強調することに整合性がない。
 「whether sought or unsought, by the military-industrial complex. The potential for the disastrous rise of misplaced power exists and will persist」(https://www.pbs.org/wgbh/americanexperience/features/eisenhower-farewell/)
 アイゼンハワーの退任演説(1961.1.17)での言葉である。早くも軍産複合体の存在を指摘し、その将来の悲劇を予見する。
 現在の米政権のようなケンカ腰では"生きるに値しない世界"を招来することになる。

 米国の呪いは、香港や新疆ウイグル自治区での人権問題、新疆ジェノサイド(集団虐殺)に加え、ブリンケン氏は32年を迎える天安門事件を取り上げ"大虐殺(massacre)"と呼ばわる。
 これらの批難は、西側諸国を掻き集め中国に対抗させる呼び水となる。その上で<漁夫の利>を占めるのは米国となる。
 同盟国も信用せず、その米国の奸策には十分の注意を!

 「自由で開かれたインド太平洋」策でも中国包囲網築くため、西側陣営を巻き込んでいる。此の策は主として日本が触れ回る。クアッド(Quad=日本・米国・オーストラリア・イン)も喧しい。

 台湾は、中国が絶対的に譲れない核心的利益である。あわや核戦争勃発かのキューバ危機(1962年)を考えれば、中国にとっての台湾の重要性は推し量れるであろうし、それ以上に割譲不可の領土なのだ。
 ケネディ大統領の「A Threat to the Americas」にもあるように、米州に対する脅威を国民に訴えたケネディが述べるように、Cubaを台湾に入れ替えるだけの同じ文句で、中国も米国に訴えかける時が来るのか。 「withdrawing these weapons from Cuba―by refraining from any action which will widen or deepen the present crisis―and then by participating in a search for peaceful and permanent solution」と。

 その口喧しく標榜する人権も自国の利益にならない場合は配慮されないという、全くの二枚舌人権外交である。否、外交というより一方的な威嚇に過ぎず、外交になっていない。
 バイデン政権も露骨にそれを引き継ぎ展開する。それは米国都合の“人権”であって普遍性は全く無いと見なすほかない。

 ケネディ大統領は1963年「The Strategy of Peace」の演説でその事実に気付き取り繕う。そして、自らに問うて云う。
 「Not a pax Americana enforced on the world by American weapons of war.Not the peace of the grave or the security of the slave. I am talking about genuine peace--」と続く。そして‘peace for all time’について語るも、自ら凶弾に倒れ、其の永遠の平和は死後にしか訪れなかった。何たる米国の事実なのか。
 「Atlantic partnership」では 「You should not say‘American liberty’,You should say‘liberty in America.’」と引用する。
 正に図星を指されている。

 米国が強制する平和ではないと同様に“アメリカの自由”を世界に押しつけるべきではない。苟も自由・民主主義を信奉するのなら、他国の自由、他国との違いを認めるべきで、その上でのことである。米国は3億3000万人の人口でも儘ならないのである。ましてや14億1000万人の人口を抱え、貧困撲滅の成果を得つつ、新コロナウイルスの拡大を抑えたその手腕は、素直に賞讃に値すべきではないか。
 国家間の揉め事の解決には何は扨措いても話し合うことではないか。その為には相手国に出向くことである。
 貶すのでなく、体制の相違を超えて見倣うべき相手国ではないのか。

 施政方針演説(4月28日)の中で、「米国は再び動きだした」と、バイデン氏。しかし、その動きは自らの利益を第一にかざした<前車の轍を踏む>だけではないのか。更に国際社会に不安定をもたらすだけではないのか。アメリカよ、いい加減にしろ!と、国際社会は結束して声を上げるべきである。そうでないなら、ケネディが云うように、アメリカに強制された自由・民主主義国家に陥る。それは"アメリカの自由"であって、決して普遍の自由の下に於ける各国の自由ではない。
 アメリカの"自由"を主張するなら、中国の自由、人権を主張しても構わない筈である。

 付和雷同するだけでは、紛れも無く世界に君臨したがる独裁主義的覇権国家、米国の発する言葉に恐れ平伏したことになる。
 バイデン大統領になって100日、自由・民主主義国家、所謂西側陣営に見られる実態である。一斉に“中国批難”である。鴨の親子に匹敵する国家追従関係の有り様である。
 むしろ自由・民主主義国家はトランプ前大統領の時の方が、ある意味では“より自由”であったはずだ。つまり、“自由主義・民主主義”という“魔術語”の金縛りが溶解しつつあったからだ。しかし、"不安感"から、魔術を続けて欲しいと願うがため、一も二も無くバイデンに"右へ倣え"となる。バイデン氏の巧みさは仮想敵を捏造することであり、そこへ誘導させることだ。
 それには一にも二にも、魔術語を唱え続けることだ。

 米国自身は同盟国とて容赦なく敵視し"諜報"の手を緩めない。世界を大混乱させた妄想的な大嘘による大量破壊兵器の一件等を思い出せば、かくも権謀術数に長ける米国に唯々諾々では、疑似餌に釣られる魚の如しで、自由・民主主義陣営も疑似の陥穽にはまる。結果、国民を危機に陥れることになる。
 最近メルケル氏ら欧州高官に関する米国家安全保障局(NSA)のスパイ活動が明らかになった。スノーデン氏によれば、バイデン氏は今次のスキャンダルに端から深く関与していると。
 「Edward Snowden@Snowden·5月31日 Biden is well-prepared to answer for this when he soon visits Europe since, of course, he was deeply involved in this scandal the first time around.」

 そして、バイデン大統領が施政方針演説で、最悪のパンデミック(世界的大流行)と話を逸らすが、米国は今でも感染者数も死者数増加の一途をたどり、約三カ月(中日新聞2021.3.1と5.30の「世界の新型コロナウイルス感染者」)比較でも、感染者数463千人以上、死者数86千人以上と増加する。実に各々世界の20%、17%を占める。現在は、累計で感染者数33,325,218人、死者数596,391人に上る(同上2021.6.5)。
 今なすべきことの最優先事項は人権侵害の窮極である死者の数を止める事であり、感染者を増やさないことではないのか。前任者と同様に、新型コロナウイルスの起源を政治問題化して言い募り、国民の目逸らし、国内を煽る糊塗策は事実が許さないのだ。
 多くの死者を横目に、バイデン氏は笑顔で好物のアイスクリームを舌嘗めずりする。

 中国を専制主義者呼ばわりし貶めるが、感染者数10万2746人、死者数4846人(中日新聞2021.5.29)に留めている状況である。米国の約4.25倍の人口を持つ国として、何れの体制に優劣があるのかではなく、いずれの国政(政権)がより国(人)民の生命を重んじ、策を凝らすかにある。そこに肝心の人権は存在する。体制を挙げ非難することでなく、違いを容れるのが自由主義社会の本来ではないのか。他者を認めないのでは、それこそ独善主義者である。
 比較的に云えば、感染による死者は米国の政治・政策的結果が招いた"大虐殺"ともいえるだろう。
 今や米国の賤しい政治的手法までも見倣う日本、感染者数は中国の約7.4倍、死者数では2.8倍で、それぞれ755,695人、13,331人に上る(中日新聞2021.6.5)。
 これは政治的災害である。特に為政者が無能故、<塗炭の苦しみ >を国民に舐めさせる。

 虐殺と云えば、バイデン大統領 100年前に300人の黒人が死亡した事件で、「これは暴動ではなく虐殺だった」(NHK6.2)と認めた。
 また、カナダでは先住民の子供の集団墓地(215人)の発見、トルドー・カナダ首相は「カナダ史上最も暗澹たる破廉恥で、悲惨な部分を思い出させるものだ」(ParsToday 5.30)と。
 ドイツのマース外相、ナミビアのドイツの行為、ヘレロ、ナマクアの両民族数万人の殺害を、正式に「ジェノサイド(集団虐殺)」と認めた(jiji.com 5.29)。
 さらに、フランスマクロン大統領、1994年に約80万人が死亡したルワンダ虐殺の責任を認める(msn 5.28)。果して次なるアフリカの属領化のためであろうか。
 G7総懺悔か。そう、日本も隠蔽しきれない過去を持つ。
 本音は対中政策にあるのか。食えない欧米なのだ。
 過去は今に続く。

 なお、「新疆ウイグル族へのジェノサイドは存在しない 東大教授・平野聡の偏見に基づくジェノサイド論を批判する」との論考(横浜国立大学名誉教授で中国問題専門家村田忠禧氏5.18)がある。
 欧米に偏向する日本のメディアは取り上げなかったようだ。

 中国の習近平国家主席に競争を歓迎すると、バイデン氏。しかし、相手国にいちゃもんをつけ、数々の制裁を発し、相手の手足を縛り、その上で競争を歓迎するとは児戯に等しいではないか。それは不利な条件の無理強いであり、競争とはとてもいえない。米国は独り相撲取れているうちは競争主導型の新自由主義を囃す。が、中国台頭で分が悪くなると、つまり、競争に負け込むと、汚い手を使い、逃げを打つ。既に負けている。それゆえ他国を嗾け徒党を組んで劣勢を挽回しようとする。
 だが、用心しないと、米国は味方討もする。

 グローバルサプライチェーン(部品の調達・供給網)構築での中国包囲網はどうか。現在は90年代以降の日中関係を表わす政冷経熱を彷彿させるが、中国包囲網、対中禁輸リストで締め付けるようになれば、政凍経凍となる。
 自由主義社会は14億の民の市場を閉鎖することになり、西側での萎縮する市場の奪い合いは自ら糊口の道を絶つことになる。国民の福祉を考えない利益追求のみでは、より一層の貧富の格差拡大で、自らをも窒息させる。
 中国を締め付けて置き、他方で物を買えでは市場原理にも悖る。

 「“制裁”は中国の内製化を鼓舞することに直結する。オバマ政権時の2015年、アメリカ商務省がCPUの中国への輸出禁止をした結果、中国製CPUの開発が急速に進み中国製CPUによる最速スーパーコンピュータの誕生となったことは記憶に新しい。例えば、ファーウェイもアメリカの制裁に対処するだろうし、その能力は十分にある(桃源閑話「ジャパン アズ ナンバーワンの来し方行く末」2019年05月24日)。

 この後段のファーウェイが、2019年の5月に米国の輸出禁止措置に遭い、アンドロイド更新版で、使用不可の恐れが生じた。
 が、結局「鴻蒙」という独自OSの開発・製品化をファーウェイが成し遂げた。英語名はHarmonyOSだが、"大鳥が世界中をおおいつつむ"ということか。
 世界は欧米主導の"市場縮小共食い型"対"中国主導の多国間ウインウインの開放型"とに分かれるのか。
 iPhoneのジョブズから「窃盗の現行犯」(『GAFAM VS 中国Big4』大西康之著 文藝春秋)と呼ばれるも、アンドロイドOSの開発者、アンディ・ルービンはグーグルをスマホの覇者に仕立てた。今や世界のスマホの80%以上でアンドロイドが動作している。
 そこにファーウェイの次世代OS、HarmonyOSの登場なのだ。HarmonyOSはモノのインターネット(IoT)デバイスにも対応可能で、応用範囲の非常に広い仕上りになっている。グローバルスタンダードOSの資格十分といったところだ。

 中国は国内市場の開拓を更に進め民を満足させることだろう。
 「科学技術による自立自強を国家発展戦略の支えとして堅持する必要がある。独創的、先導的な科学技術の難関攻略を強化し、主要技術、コア技術の難関攻略戦に断固勝利する必要がある」(習近平総書記「コア技術攻略戦に断固勝利を」人民網日本語版 2021年05月31日)と、習近平総書記。当然、AI、量子技術、バイオなど開発・内製化に拍車を掛ける。
 自給自足での中国国産技術の爆発的発展の可能性が考えられる。

 「一八世紀までは、中国が世界の国内生産(GDP)合計に占めるシェアは、どの西欧、東欧、そして米国のGDPの合計を超える水準だった」、「近代初期に中国と出会った西欧の観察者は、そのバイタリティと物質的豊かさに圧倒された」(『キッシンジャー回顧録 中国(上)』13頁)。
 その活力が今、復活したのではないか。

 競争主導型である新自由主義の太祖である米国(英国含む)、その主義、今では多国間協調主義を唱える中国に、その履行を逆に迫られている。今や新自由主義の謳歌にはダンマリなのだ。身勝手なものだ。
 新自由主義よる米国主導のG7の政策は、市場の自由化、貿易の自由化が人々の富を増大させる、つまり、多くの民は其の御零れに与かれるという事だった。が、規制緩和や労働の柔軟化、民営化、輸入農産物の自由化等々で、巨万の富を築いたのはほんの数パーセント、グローバリズムを囃しそれに乘った大企業などである。国家間の貧富の格差、先進国内での貧富の格差、は拡大するばかりだ。何よりもその結果、福祉縮小・削減の夜警国家の誕生である。自由主義を放任主義に変えたのである。
 新型コロナウイルスの犠牲者にも、貧富の格差をつけられた貧の側に多いのだ。
 新自由主義と呼ぶも、資本主義と云おうも、その欠陥は、他を顧みず飽くなき利益の拡大に走ることだ。その得た利益は更なる投資に注ぎ込む。
 そして、国家はそれらグローバル企業の用心棒と化し、国家の垣根を取り払うルールづくりをする、そのルールをグローバルスタンダードと呼ぶ。総ては利益の為である。国家は企業組織に貢献・隷属する構成員に成り果てている。
 G7は最近、グローバル企業の法人税を最低税率を15%以上との方針で一致。麻生副総理兼財務大臣は、「歴史的なことだ」と評価する。が、これまで散々と国民から絞りあげ、企業に貢いできた経過がある。ほんの一滴ほどのことで、"歴史的なこと"とは何事か。<大海の一粟>ではないか。
 そこでの国民は"厄介者"ないし"被扶養者"扱いとなる。国民主権の喪失である。

 中国も米国の濫造する"相も変わらず型ウイルス"への免疫力がかなり増してきたようだ。中国は、<浅瀬に仇浪>の米国の悪口雑言、難癖付けに逐一小まめに反論をしている。そう、言葉の遣り取りだけで済ますがよい。四千年の歴史ある中国は、歴史的に未熟な米国とは決して戦端を開かない方がよい。失う富が多すぎるからだ。
 孫子に倣えば、「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。(謀攻篇一)」(『新訂孫子金谷治訳注』)である。

 米国にとって、人権も民主主義も自由主義もすべては単なる政策のツールにしか過ぎない。その政策は米国第一であり、人権等の名分で実行しても、すべては"マッチ・ポンプ"の結果なのだ。米国第一と云っても、米国民のためとは限らない。では誰のための第一なのか。
 「私たちの時代では、多国籍企業や巨大な金融機関、超巨大小売業者などだ」と。そしてアダム・スミスのいう邪悪な処世訓、つまり、「人類の支配者たちが信奉する『すべては自分のもの、他者には何も与えない』という処世訓だ。この信条は、過酷で絶え間ない階級闘争を生む。この闘いは一方的なことが多く、自国の国民だけでなく、世界の人々に大きな害をもたらす」と。(『誰が世界を支配しているのか?』ノーム・チョムスキー著 双葉社)

 言論の自由、米国での自由は名ばかりで、其の実、あたかも自由のように泳がせ、世界盗聴網という投網を打って監視する。つまり、すべてはお見通しという訳だ。
 アメリカ同時多発テロ事件(2001.9.11)後の米国内の言論の委縮は、まだ記憶に残る。愛国者法(「The Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001 ("USA PATRIOT Act")」)が、それに影を落とす。

 もし中国が米国のような体制を敷いたら、漢民族と55の少数民族が、それこそ清朝末期以降の如くの状態となり、虎視耽々の日本を含め、欧米列強にまたもや蚕食される破目になる。世界にとって決して望ましいことではない。
 中国を束ねることは其れ自体政治的に一大事なのだ。島国で単一民族などと嘯いている国には想像もできないことだ。更に野放し状態の国では元来統治が不可能である。米国自身もそれを知りながら、掻き回し混乱に隙を狙う。
 連邦議会議事堂襲撃事件、州兵の緊急出動が要請された。この有様、香港の騒動時の米国の中国批難と比し、香港の場合を「美しい光景」と描写した二枚舌の米国を、中国は批判する。
 米国にとっては、対岸の火事であり、他人の不幸は鴨の味である。否、それどころか、その火事も不幸も火元となり抜け目なく行動するという訳だ。

 国力とは政治力や軍事力だけではない。政治に与かる者が他国・自国から信頼されることも国力のうちであろう。
 新コロナウイルスが、いみじくも欧米の薄っぺらな見掛け倒しの民主・自由主義を赤裸々に露呈させた。そこでは他国に責任を転嫁し、根強い人種差別を増長させる下地の存在を見せつけた。
 絵空事であり、博愛などは白昼夢であり、被差別者は怒りに任せる暴力・死に怯えて日々を遣り過ごす。

 G7自身、国際社会を牛耳り恣意的に事を進めるなど最早期待すべきでない。国際社会を騙し続けることができるなどと考えていれば、烏滸の沙汰である。殺伐とした世界の光景は、これまで世界に牙を剥き搾取・掠奪をほしいままにした結果なのだ。差別側もその犠牲となる。
 荒廃した世界では、弱者が更なる弱者を犠牲にし、強者は更なる強者に弱者にされるという、"怯えの構造"が如実になる。怯えは弱者も強者も選別はしない。
 G7に残るは核戦争など、生きるに値しない世界の出来である。

 自由・民主主義などの価値観を共有する陣営に入ると自認し、現実を忘却し、米国に追従し、対中国囲い込み策略をめぐらす日本。
 隣国との関係を没却し話し合おうとはせずに、G7外務・開発大臣会合(英国)に出席、それにスロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ及びポーランド訪問も(令和3年4月29日~5月8日)した。
 茂木外相の臨時会見(英国)での記者質問にもあるように、「そのほぼ全てで中国について議論をしている」のである。
 が、その政治的訴求効果は殆んど無いのではないか。G7外務・開発大臣会合などは、二番煎じどころか三番煎じ以下で何等新味がないのである。まさに糠に釘の類であろう。
 G7外務・開発大臣会合コミュニケ、必要なのはG7の反省であり、敵対国との話し合いの場を早急に設けることだ。
 コミュニケ、誰に向けての主張なのだろうか。<点を打つ>相手は協調性の欠けるG7自身か。
 会合に先立つ4月16日の日米首脳共同声明の中でも、既に「日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有」などと述べる。したがって、ただの退屈な常套句に成り下がっている。

 何故なのか。中国を非難する理由に人権を取り上げるが、真に迫るには程遠く、非難する側の後ろめたさを覆い隠す、“的逸らし”としか思えない。ボロ隠しか。
 世界は今、他国批判をしている場合ではなく、一致協力して新型コロナウイルス感染症対策に向わねばならないのだ。
 それこそ声明が云うように、「日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識」と云う。
 言挙げして自由・民主主義と他国の体制を論ずる暇があるのなら、対話を今すぐにでも始めるべく、呼びかけないか。中国を敵視、或は貶めるだけでは、もはや国際社会を動かすことは不可能である。積極的に中国と対話すべきである。中国は利に聡く理に暗いG7ほど愚かではない。

 前政権に続くアメリカ・ファーストでのワクチン接種が進む米国は今でも、週に5千人弱が命を落としている。感染者数は3285万975人、58万4464人に上る。同じく自由・民主主義を標榜する日本、週に3万~4万人が感染し、命を失う人も増加を辿る。感染者数66万7182人、死者数も1万1249人となる(中日新聞4月17日・24日、5月8日・15日から作成)。
 日本の接種率は経済大国の名に似付かわしくなく、途上国と同水準の世界110位である。なぜ隣国にコロナワクチンを求められないのか。シノバックのワクチンであれ、スプートニクVであれ、複数のコロナワクチンを求めるべきではないのか。
 が、それが出来ないところが既に、遮眼革装着された無能政治家による災害となっているのだ。ワクチンばかりでない。マスクから始まる混乱は政治の無能・無知が引き起こしたのである。コロナ封じ込めの防疫模範の優等生を誇る台湾も、K防疫の韓国も、今コロナの急拡大に怯える。なぜ遠くの権略国家に援助を求めるのか。無能政治家の思惑で苦しむのは国民である。国民を政権の思惑の犠牲にすべきではない。  <遠い一家より近い隣>ではないのか。

 台湾、そう近代日本、最初の海外派兵(1874年5月)先が台湾だった。日清戦争後、日本軍による台湾征服戦争が始まった。台湾島民の激しい抵抗にあう。
 「戦後、台湾人が親日的傾向に転じたのは、かつて自分達たちが教えを受けた国民学校をはじめとする各級学校の教師への敬愛の念がそうさせたのであり、それを、『日本の統治がよかったからだ』と曲解する日本人が多いのは、きわめて残念なことである」(『台湾総督府』黄昭堂著 191頁 ちくま学芸文庫 2019.6.10)と。

 さて、日本、台湾にアストラゼネカのワクチンおよそ120万回分を無償で提供。“友情も踏まえた提供だ”と茂木外相(NHK 2021.6.4)。中国の申出を蹴り、日本からの提供には恵みの雨などと感謝感激の体を見せつける。嫌味な事である。
 中国のワクチン外交を非難していたが、今やその言葉もフェード・アウトし、西側も積極的に始めた。日本はアストラゼネカ製のものをベトナムにも提供する。「ベトナムは南シナ海問題もあり、日本にとって重要な国だ」と、その対中国姿勢の思惑を露骨にする。
 そのアストラゼネカのワクチン、血栓が生じる危険があると早くから指摘されている上に、現実に問題も報告されている。
 厚労省では公的な接種に使う予定は現在なく、接種対象などを慎重に検討する方針のようだ。ある意味では無用のものを提供したのか。万が一接種後、健康上の被害が生じた場合は日台共々どうするのか。国民には不明である。
 まあ、本音は中国に見せ付け牽制する日台(米)間の猿芝居と云ったら、云い過ぎか。が、確実にそう見える。中国の苛立ちを煽っても何も得することはないと思うが。
 そして米国も、75万回分のワクチンを台湾へ提供する。「台湾とのパートナシップ関係を重視している」と(中日新聞2011.6.7)。
 その台湾、蔡英文総統、マトリョーシカ人形のように、今度はパラグアイ、ホンジュラスに30万回分のワクチンを提供するという。ワクチン外交花盛りという訳か。
 つまり、日本も米国も、そして台湾も本当に必要な途上国へは後回しで、結局は政治的駆け引きを優先し、人道は後回しとなる。
 それもこれも、中国悪しに走るためであるか。

 ワクチン接種を自国最優先に置いた先進国。対して早くから途上国への目配りを忘れず提供を進める中国、次いでロシア。その動きを西側は、“ワクチン外交”と呼び、中国の途上国への影響力増大を警戒し、誹謗中傷に励む。
 そのG7(先進七カ国)、11日開幕の首脳会議で、来年末までに新型コロナウイルスワクチン接種を全世界で完了させるための協力を各首脳に求める、と議長国である英国のジョンソン首相。
 何ともまあ出遅れたお恵みだこと。<貧者の一灯>に非ず、"富者の餅投げ"の体か。<富貴の家に災難多し>だ。どこかの誰かのように"干天の慈雨となった"と、途上国、この助けを心に深く刻むことができるのか。
 外交を卑しくしているのは、欧米とその追随者である。
 G7よ、横奪者であるか。

 WHOの緊急事態対応部門を総括するマイケル・ライアン氏、「状況は依然として厳しく、感染件数は減少しているものの、リスクは非常に高いままだ。現在もパンデミックの状況はとても悲惨なもので、すべての国が真剣に対策を講じる必要がある。誰も対策を緩和することはできないし、我々は今後起こりうるパンデミックにも備えなければならない。準備ができていなければ、大きな代償を払うことになるだろう」と(REUTERS2021.6.4)。

 中国は、天下一品の西側の嫌味(嫉妬深さの裏返し)を軽いジャブで受け、精々<江戸の敵を長崎で討つ>、機会を待つしかない。<短気は身を亡ぼす腹切り刀>と心得るか。
 政治上の駆け引きに一刻を争う民の生命をも道具に使用する。とても褒められたものではない。

 情報というのは可能な限り万遍無く取るのがよい。世界が見えてくる。

 「(5)日本企業の凋落 半導体世界市場の拡大にもかかわらず、過去30年間で日本の存在感は低下」(「半導体戦略」2021年6月経済産業省)。
 その低下の中には、経産省絡みのエルピーダメモリの倒産(破綻)、ジャパンディスプレイ(JDI)の外国勢への身売りも入っているのか。
 「有志国の海外ファウンドリとの合弁工場を設立するなどして、我が国産業分野(情報通信・自動車等)に不可欠な国内製造基盤を確保」というが、受託製造の相手先は嘗ての"仮想敵"台湾か。
 tsmc(台湾積体電路製造)生産技術能力を以て、手っ取り早く空洞化の懸念を埋めるつもりなのか。米中技術覇権対立の中で高まる日本の危機という割には安直すぎないか。生産技術や開発体制が整ったとして、販路(市場)はどうするのか。米国に引きずられて反中国派に与する、捌く先が縮小する。結果、赤字となるか、米国にはその時点で裏切られ、販路を締め出される破目となる。そう、既視感である。
 1980年代、生産技術競争で負けてはならぬと米国は、日本にプレッシャーかけてきた。日本との競争である。当時は運よく(?)バブル崩壊で逃れた。2030年頃の米中関係を先ず見通してから、政策を練るべきではないか。
 「日の丸自前主義の陥穽」に国際アライアンスを築けずとあるが、<引かれ者の小唄>ようだ。
 中国を無視するのでは自傷行為となる。

 大国が大国であるのは、"フリー・ハンド"だからだ。いざとなれば日本など眼中にない。米国にとって、<寝返りを打つ>のは常套、当然のことなのだ。
 絵の餅はいくらでもかける。是迄もそうしてきたように、そして<画餅に帰す>。日本は、”米国の天井”という障壁に阻まれている。同盟の深化などと現を抜かしている場合なのだろうか。日本列島は、米国という都から遠い辺土の防人と化している。防人であるからにして、食料・武器(米国に買わせられる)は自弁である。
 防人の心情など米国(欧米)は解しない。

 さて日本、米国のようにジャパン・ファーストとはいかない。米国(ファイザー)に乞うことになる。日の丸自前主義を貫かないためである。
 同盟国とて米国は容赦なくアメリカ・ファーストを貫く。
 やっと廻って来たワクチンも、接種予約の電話・ウエブ予約は塞がり続ける。殆んど拒否に近い。
 ウエブ予約などは、仕様がそもそも粗悪なのか、否、仕様そのものも丸投げなのか、行政側も理解せず、不出来のまま供する。使用する市民(国民)側は無駄な時間を多く取られ、苦労する羽目になる。
 目的と手段のバランスを欠く、ムリ・ムダの多いムラがあるシステムとなっている。
 粗悪なシステムを使用者側に投げつけるのは政府・地方自治体と一貫しているようだ。偏に“物作り”の技術知識レベルの劣化・欠如が招くことなのであろう。

 生命を与る医療の現場まで新自由主義の原理を持ち込んだ結果、いつでも何処ででも接種可能など<夢に夢見る>如しだ。
 <奇貨居くべし>とばかり、新コロナウイルス感染拡散の中、憲法に緊急事態条項をと、御為倒しを声高にし、また国民投票法の改正案・デジタル改革関連法成立等が罷り通る。そして、病床削減につながる病院再編の支援恒久化の改正案だ。
 国民の生命を護るという国民第一の優先事項に、行政・立法とも何等有効な手立てを講じ得ないのにも拘わらずにだ。
 この国に緊急事態の実効は皆無である。ただ言葉の羅列を準備して事足れりなのだ。

 「防衛省、自衛隊は、わが国の最後のとりでだ。新型コロナ感染症対策という国家の危機管理上、重大な課題に役割を果たしてもらいたい」と、菅首相、自衛隊に丸投げする。自衛隊もまた更に投げ、責任転嫁を続ける、最後は国民に投げ付ける。
 そう、此の丸投げが日本国の本質なのかも知れない。

 自衛隊の接種予約システム、朝日・毎日の両新聞社の“確認”で架空情報での予約が認められた。つまり、システムに不備が見つかったのだ。更なる欠陥も潜む筈だ。
 これは上述での“物作り”の技術知識レベルの劣化・欠如である。業者へ丸投げ、業者もまた他へ丸投げの連鎖かも知れない。完成後には未検収のまま、というよりそもそもチェックする能力が欠如している。
 とどのつまり、国民(エンド・ユーザー)に丸投げする。

 岸信夫防衛相、午前8:49 · 2021年5月18日にツイートし、「自衛隊大規模接種センター予約の報道について。今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です」と。
 これを受けて安倍晋三前首相、「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」と投稿。
 防衛相、先ずは両社にシステム不備を御指摘頂きましてありがとうございます、ではないのか。
 “両社がどう答えるか注目”するのでなく、チェックに耐えられない、脆弱なシステム作った防衛省に国会議員として糺すべきではないのか。全く、穀潰しの言い種である。否、国家を危うくするシロアリか。
 「安倍政権の七年余りとは、何であったか。それは日本史上の汚点である」と(『主権者のいない国』白井聡著 講談社)。そう確信する。
 答えるなら、両社は“今後斯様なことの無きよう、しっかりと確認してください”とか言うべきである。
 それにしても、“接種機会を奪い”とは、姑息で見苦しいまでの転嫁で、大袈裟なことを言うものだ。この程度で更なる障害が起きるようなシステムでは心許無い。セキュリティー上の“防衛心得”がなっていない。接種機会が奪われるなら、防衛相の責任である。明白なことだ。
 またフールプルーフ( foolproof )はシステム作成上、安全組み込み対策の基本中の基本である。
 世界には凄腕のハッカーがランサムウェア(身代金ウイルス)まで発生させているのだ。
 考え方が島国根性の為せる業である。またこれを“愉快犯”と云うならば、ネットで政府・地方自治体のシステム不備・不具合などの指摘が出来なくなる。
 批判を許さない在り方は行政の無謬性を国民に強制するに等しい。悪質な妨害愉快犯と両社を批難する前に、システムの“意地悪テスト”もしなかった防衛省側の怠慢を追求すべきだ。脅かしで済むことではない。
 宇宙作戦隊からサイバー防衛隊までも新編されているのにである。<コップの中の嵐>の如き視点のありようで、大局観がない。

 やるべきことを迅速にやらず、五輪も僥倖頼みと化し、<泣き面に蜂>でGDPも年5.1%(1-3月期)減という戦後最悪の下落となり、日本経済沈没の様を示す。G7を讃歌し、その結束を謳うが、日本は置いてきぼりされ、指をくわえる感がある。
 景気回復は接種率に比例しているようだ。英国54%、米国47%、日本3%とかなり見劣りがする。欧州は観光客の受け入れを再開する。日本は中国に対し、声明で言わずもがなのことを言い不興を買っている、夢よもう一度の中国人観光客の爆買い、もう期待できない。

 バイデン大統領に代わっても、アメリカ第一であることは変わりなし。仲間も蹴落とすと、理解すべきだ。そもそも欧米の指導者たちが生得に持つ無法で強欲・身勝手に、無知・柔い期待・希望的観測などで対応するなら、餌食とされ身包みはがされ、生命の危険に曝される。
 同盟・友好なども自利のための手段で、形振りかまわずに胴欲に追い求める利益の内である。
 日本は、ドイツ政府のように、天然ガスを欧州に売り込みたい米国に、「ノードストリーム2」プロジェクトに関し、米国の制裁は欧州連合の主権を侵害すると、主張できるのか。

 "ウイルス拡散"五輪を投げ付けられないよう、デモが続く。

 河野太郎規制改革相は接種で予約電話が殺到して繋がりにくいことについて、「自治体が平等性に重きを置いていると気付かなかったのは失敗だった」と述べた。
 しかし、公平性重視ということは、地方自治の本旨の実現に資することを目的とする地方公務員法によれば、服務の根本基準として、「全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」と定められ、その担保となるのが、「職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程」に従うと定める第三十二条を、体現しているからだ。国家公務員法も同様に定めを置く。
 が、愛知県西尾市のようなワクチン接種を巡る一連の騒動も起き、市民の信用を著しく損ねている。

 今次の場合、公平性重視に問題があるのではなく、その実現手段に課題があるのだ。各自治体もはっきりしない政府の方針の下、短時日のうちにワクチン接種を迫られ、周章狼狽の体である。
 “気付かなかったのは失敗”ではない、基本を忘れていることが河野規制改革相の問題であり、同時に現場に於ける実現手法(段取り)の想定力の欠如が問題なのだ。
 河野太郎規制改革相、ワクチン接種の担い手確保に薬剤師検討。さらに切迫すると"獣医師"もと、言い出すかも知れない。

 医療崩壊などは正に劣化した無能な政権による“政治災害”なのだ。政府は「新公立病院改革ガイドライン」にて公立・公的 病院の統合 再編見直しを進める。75歳以上の医療費2割負担法案も成立した。
 今起きている事実こそ、生命の軽視、無視の最悪の情況、積もり積もった不都合な政策による人権侵害の最たるものと云えよう。決して他国に責任・罪を振ることはできない。米国・日本自身が引き受けなければならない夫々の事実なのだ。

 感染者・死者数共に圧倒的に自由・民主主義という価値観の国々に顕著なため、その価値観の揺らぎを取り繕うためもあってか、逸早く新型コロナウイルスの蔓延を抑え込んだ体制への誹謗を執拗に試みる。

 もしバイデン氏やブリンケン氏が真に相手国の人権無視を責めるのであれば、それこそ"アメリカ第一"とし、反省しなければならぬはずだ。為にする行為では、自由・民主主義という価値観に激震が走る。
 自由・民主主義というのは国家政策の放任主義を意味しないし、政府の遣りたい放題を許すものでもない。自由・民主は本来国民の享有するものだ。
 そうでなければ、自由・民主主義が幾ら徒党を組んで対抗しても、待つのは衰退だ。或は自由・民主主義に名を借りた"専制主義か独裁主義"者の国家となる。

 トランプ前大統領は新型コロナウイルスの国内死者数に関し、「10万人を大幅に下回るだろう」と、当初の予測より少なくなると主張した(20年4月10日)。しかし現実はどうだ。大量死と云っても過言ではない。それも政府の"無策"の為せる結果なのだ。
 トランプ前大統領、「チャイニーズウイルス」をツイートし、煽動し、アジア人蔑視・差別を引き起こした。が、その中国、感染者数を10万1447人、死者数4846人(中日新聞5月17日)に抑える。
 そのトランプ氏、言論の自由の国であるはずの自国で、ツイッター・フェイスブックのアカウントが停止されている。

 今では日本の死者数が1万1490人、韓国の死者数が1900人(中日新聞5月17日)である。

 米国も日本も小さな政府を基調政策としている。福祉関連を漸減させて来た。
 何れの国民にとっても、安寧秩序の中で健康に過ごす生活は念願であり、その実現は国家の基本中の基本姿勢・政策とならなければならない。
 そして安穏な暮らしを根底で支えるのは言う迄も無く医療の充実である。

 他国が傍観している最中、中国は医療崩壊どころか、病院を武漢に一週間程度で建設するという離れ業を演じた。
 現在は他国(途上国)にワクチンを供給し、医療陣を派遣するのである。それをまた“ワクチン外交”などと揶揄嘲弄し、批難し、西側の無能な政治屋が足を引っ張る始末だ。
 中国に関してはWHOへの報告が遅すぎたという批判もあるが決して遅いとは思われない。それよりも、中国の対応ぶりを、各国は対岸の火事とばかりに拱手傍観していた"遅れ"を問題にすべきではないか。数値は如実に物語る。
 真に遅すぎたのは米国をはじめとした西側諸国ではないのか。WHO自身も無能さ加減を露出した。

 話を茂木外相に戻す。
 英国などの欧州訪問で“日本の存在感”示す機会にすると、茂木外相。しかし、今更日本の存在感を示すとは如何なる意気込みなのであろうか、つまり、存在感が無いという認識なのか、解せない。
 斯様なことなのか。バイデン大統領に外国首脳として最初に対面で会った。そして中国に鞏固な関係を見せつけた。また52年ぶりに台湾に言及した声明、「日米両国は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と。台湾、香港、ウイグルなどの中国の琴線(核心的利益)に触れ、苛つかせることもできた。
 ただ時節柄、公式の昼食会も晩餐会も無し。出されたハンバーガーも忘れるほど熱中したとは、見え見えである。
 5月21日には菅首相に次いで二番手となる文在寅大統領、ハンバーガーで済ますほど打ち解けるのか。最も韓国政府、米国側に「ハンバーガーの食事は困る」と伝えたと。  日本だったら、梅干し入りの"おにぎり"を二つほど竹の皮に包んでテーブルに転がして置くか。好い先例を開いてくれた、バイデン大統領よ。

 示す?つまり、日本の存在感は無かったと、覚醒したのか。否である。米国の属国で十分間満足の意を示す日本では、到底ムリだ。
 国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指すも、まさにその存在感がボトルネックとなる。
 サーチナの記事(「日本が国連安保理の常任理事国になれない理由、それは「3つもある」=中国報道」2020-10-01) から、一つだけ引用する。
 「日本には自国の軍事や政治、経済などにおいて完全なる決定権がないこと」、「手綱を他国に握られている国は常任理事国にふさわしくない」と。
 米国の傀儡を意味する。
 米国の拡声器・コピペ国では存在感もへったくれもない。世間(国際社会)はお見通しなのだ。<知らぬは亭主ばかりなり>だ。

 有事法制あれど、機能せず。その精察も加えず。
 東日本大震災時の東電福島第一原発事故が証明した。
 それでも憲法改正案の緊急事態条項の対象に新型コロナウイルス感染症を含める、という行き当たりばったり、<火事場泥棒>、<奇貨居くべし>で、無能が"文言"を欲しがる。それは偏に国民を恣にする手立てとなる。重要施設周辺の土地利用規制法案なども国民を悩ます。
 緊急事態など起きても、洞穴に向いて、"緊急事態発~生!"と叫ぶ、叫び声は穴の奥深くに吸い込まれて反響もなし。これで一件落着。

 茂木外相、それでも<虎の威を借る狐>の背景を以て外遊先では、“自由で開かれたアドリア海”のがぴんと来る(?)であろう国々に、不自由もしていないのに「自由で開かれたインド太平洋」と、針小棒大に騒ぎ立て同調を求める。その割には暗に“その自由”を侵すであろう仮想敵国のご近所中国とは、外交が出来ていず、ただやたらに予防線を張るだけの"外交不能"振りを示す。

 中国をめぐる“壊れた蓄音器”ぶりを、“日本の存在感”と勘違いしているのであろうか。
 日本の存在感はさておき、訪問した国と地域数でいうならば、123で外交史に"新たな歴史?"を開いた河野太郎前外相がいる。
 河野氏、専用機迄もオネダリした。其の河野前外相、一体全体何を国益としたのであろうか。単にこの際とばかりに、“海外旅行する”私益を計ったのであろうか。国民には実が見えない。

 さて茂木氏、<門を開いて盗に揖す>、次いで<狡兎死して走狗烹らる>の外交をせっせと果たす。“自由主義”を掲げながら、他国の制度を容認もできず責め懸き、徒党を組んでは争いの種を蒔き、無用な示威行動を繰り返す。
 寧ろ真逆さまに「自由で開かれたインド太平洋」を“不自由・争いの海”にしている。日仏米共同訓練などいくら積んでも徒労に終わり、役立たずであり、破滅のみが前途に横たわる。
 米国は相手国の文句にも拘わらず、勝手気ままに自由に航行しているではないか。
 むしろ日本が「航行の自由」作戦に支障と、米国に対馬海峡での領海設定の基準を問題視にされている。
 愚かなことだ。

 事実の片寄った見方が物議を醸す例が、中山防衛副大臣の「私達の心はイスラエルと共にあります」とのツイートである。この“私達”とは誰を指すのか不明である。「あなたならどうしますか?ある日突然24時間で300発以上のロケット弾がテロリストによって撃ち込まれ、愛する家族の命や、家を奪われたら。イスラエルにはテロリストから自国を守る権利があります。最初にロケット弾を一般市民に向け撃ったのは一体誰だったのか?私達の心はイスラエルと共にあります」と。

 「仮に国務大臣の立場で明らかにその内閣の一体性を損なうような言動をとるというような場合は、いわゆる閣内不統一の問題を生ずるものと考えられます。」「どういう場合がそうかというのは、もう本当にケース・バイ・ケースとしか言いようがないわけですけれども、政府は従来から、国務大臣が一政治家あるいは政党の一員としての立場で見解を述べる場合には、国務大臣としての発言ではないかというふうに誤解されることがないよう十分に慎重に対処する必要があるということは述べてきているところであります」((参)憲法調査会平成13年6月6日 参考人:阪田雅裕君 内閣法制局第一部長)。
 憲法第六十六条③内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
 副大臣等(副大臣及び大臣政務官をいう。以下同じ。)は、その上司である国 務大臣の職務上の命令に忠実に従わなければならない(平成13年1月6日 閣議決定)

 中山防衛副大臣は、"副大臣"であるからにして、上述のことを確と弁えるべきだ。

 sputnik日本の記事で、5月12日前後を、やや時系列的に見る。

 (5月8日)
 東エルサレムで起こったパレスチナ人とイスラエル軍の衝突により、少なくとも163人が負傷した。赤十字社が伝えている。
 中東和平を担当する国連のトル・ウェネスランド特使は6日、東エルサレムの状況に懸念を表明し、イスラエルに「国際人道法上の義務に沿って、取り壊しと立ち退きをやめるように」と呼びかけた。

 “ある日突然”というわけではない。

 (5月11日)
 イスラエル国防軍のヨナタン・コンリクス報道官によると、ハマスの発表後、数十発のロケット弾がイスラエルに向けて発射された。ガザ地区から発射されたロケッド弾のほとんどは、空き地に着弾したか、ミサイル防衛システム「アイアンドーム」によって迎撃されたが、イスラエル南部スデロットでは一人が負傷。

 (5月12日)
 イスラム原理主義組織ハマス(イスラム抵抗運動)と「イスラム聖戦」はイスラエルに対する行動により、自らの命で代償を払うことになる。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が国民向けの演説で発言」。

 ベンヤミン・ネタニヤフ首相も“テロリスト”とは言及していない。

 (5月12日)
 イスラム原理主義組織ハマスのカタイブ・カッサム旅団はパレスチナのガザ地区に行われた空爆への報復として、イスラエルの首都テルアビブに対して130発以上のロケットを発射。

 (5月16日)
 交戦が始まって以来、ガザ地区からイスラエルに向けてロケット弾2900発が発射され、そのうち1150発が迎撃された。最新情報によると、イスラエルでは10人が死亡、約50人が重体。イスラエル側もガザ地区に数百発の攻撃を行っている。イスラエルが行った空爆によるパレスチナ人の死者は181人に達し、その中には子ども52人が含まれている。

 (5月28日)
 日本政府は、イスラエル軍の攻撃を受けたパレスチナ自治区ガザに1000万ドル(約11億円)の人道支援を実施する。茂木敏充外務大臣が、28日の記者会見で明らかにした。

 もし許されて、死者の数で悼むならば、寧ろパレスチナ人に向うのではないか。(「ガザ地区は子どもも含めて212人が死亡」5月19日)
 少し調べただけでも、ある日突然などではないことが判る。
 この歴史の淵源を辿れば、サイクス・ピコ協定などにも打ち当たる。

 中山防衛副大臣の「私達の心はイスラエルと共にあります」に対し、ニューヨークのブルックリンではパレスチナ支援の抗議活動が行われ、バイクの後ろに貼り付けた板紙に、「SOLIDARITY WITH PALESTINE」と掲げてある。
 そして、世界中で大規模な反イスラエルデモが繰り広げられる。まるで“反中山防衛副大臣”であるかのようだ。
 駐日パレスチナ代表部のシアム大使は14日午前、「差別的だ。日本の高官の発言だったから失望した」と非難した。(jiji.com 5月14日)
 安保理も米国の反対でまとまる見込みがない。

 すると、空爆を受けたパレスチナ自治区ガザに1千万ドル(約10億8千万円)の緊急無償資金協力を決めた日本政府、550万ドル(約6億円)拠出を表明した米政府、何れも"テロリスト"を支援していることになるのか…。中山防衛副大臣に問うてみたい。

 人権・民主主義・法治主義の価値同盟とは一体何か。
 「基本的価値を共有するG7の結束を確認」とは何を意味するのか。
 その利用価値を髄までしゃぶり尽くすということか。
 世界を分断し、貧富の差を拡大し、旗印に血糊で自由・民主主義・人権の文字を大書し、世界で殺戮・陰謀・強盗を繰り返し、胴欲に任せることなのだろうか。
 G7は浮揚するどころか、益々沈下する一方であり、嫌われ者の集まりと見做されるのが落ちである。<股を割きて腹に啖う>か。正気になれ、G7。
 国際社会を永遠に騙し続ける事などできるはずがない。
 手先となり、片棒を担ぐ国家の存在感など仲間内の外交辞令を受けるだけが精々である。

 どんなに御託を並べても、国民を蔑ろにし、福祉を第一に置かない曰く付きの“民主主義国家”では、今や国際社会の除け者国家となるであろうし、自国民が二枚舌国家であることを許さない。

 世界のあらゆる歩みは米国の“妄想”によって停滞させられるだけでなく、生命の軽視、虐待等を余儀無くされている。それは米国に対する過剰な思い込みが理由である。その最たる思い込みが、米国は"人権・平等・民主・自由"の擁護者であり救世主であるということである。
 世界は勘違いに気付くべきだ。
 もう米国に人権・平等・民主・自由という血糊のミッション旗を振らせてはならない。

 中国は米国(西側諸国)の挑発に対し、君子人然として応ぜよ。
 そして、「米国には上から目線で中国と話をする資格がない。米国側による中国内政への干渉に断固として反対する」、迄に止めよ。

 米国は病んでいる。"壊れた蓄音器のように"。
  …… ……
 それに、"何だね此の米国は、駄駄っ児ぢゃあるまいし"

引用・参照

NHK NEWSWEB 2021年5月12日 中山防衛副大臣「私達の心はイスラエルと共にあります」と投稿

GT Jun 02, 2021 Biden’s Tulsa massacre speech‘political performance’ as supremacy carved in genes of the West
GT Jun 03, 2021 HarmonyOS sets a milestone in China's high-tech self-reliance
Global Research, June 07, 2021 Wuhan Lab Upheld as Source of COVID-19: China as a Target. Corrupt Political Circus on Behalf of Super-Rich
https://www.globalresearch.ca/comments-wuhan-source-covid-19/5747144
CRIonline2021-03-25【観察眼】上から目線で中国を話すな!ネットからも多大な支持<動画>

外務省HP、朝日新聞DIGITAL、朝鮮日報、中日新聞、SPUTNIK

『ケネディ大統領演説集』ジョン・F・ケネディ著 原書房 昭和41年8月1日


 米国よ、中国と肘タッチを - 2021年04月05日

 「これまで見たことがない一世代に一度の投資になる」と、バイデン大統領。
 が、この衝動的にもみえる政策は本当に“これまで見たことがない”のであろうか。
 この投資計画が成るには、前任者であるトランプ政権で一際目立った中国との経済角逐がもたらしたともいえる。が、前任者が経済制裁一点張で、結果的には現実逃避に近い引籠り政策となった。
 米国自身が主導した経済のグローバル化は、廻って自らをも餌食とした。さびた工業地帯(ラストベルト)もその一つなのだろう。
 通奏低音部が旋律を乱し“アメリカ・ファースト”を叫んだ。その悲鳴が治まるかに見えたのも束の間、前任者を超える反中国政策を唱え、徒党を組み誹謗中傷を中国に投げつけ、喚く。
 自由・人権に背馳する政策を以て、自国を顧みず対外責任転嫁の敵視政策で中国に掣肘を加える。
 米国の新型コロナウイルスの感染者は3060万8365人、死者は55万4074人(3日15時現在 NHK)と感染者・死者数が共に世界最多数となる。
 片や「チャイナ・ウィルス」と侮蔑され、憎悪・人種差別(特にアジア人差別)を蒙る要因にさせられた中国は、10万1799人、死者は4,841人(中日新聞2021.4.4)に抑え善処している。感染者数で韓国は中国を超えた。
 自由・平等・人権を声高に訴えても、内実は国民からそのすべてを剥奪した状況が出来し、資本主義・自由主義が他との優劣比較の話題にさえなる。
 人権・自由・香港・台湾・新疆ウイグル自治区等を油とし、火に注ぐ欧米なのだ
 米政権は最早断末魔の如くで“御手上げ”状態となり、目も当てられない国内状況を、他国への憎悪で躱すよりほかに仕方がないのか。
 一方米国の相棒を自負する日本は、政権交代毎に“護符”もらわねば安堵を得られない情けない其の日暮し同然を晒す。世界で最初に米大統領と会見することを鼻高々にするなど、トランプ大統領就任前に駆け付けた前任者の轍を踏むのか。
 その日本、憲法蹂躙の安倍晋三元首相が、「自由で開かれたインド太平洋戦略」と銘を打ち、何ら航行などに不自由もしていないのに、米国・欧州・ASEAN(東南アジア諸国連合)・豪州・インド等を捲き込み、中国包囲網を捏ち上げ、インド太平洋に“伸るか反るか”の“もめごと”を懲りずまに好んで持ちこむ。
 菅義偉政権も其れを継承する。中でも日米豪印(クワッド)が核となるらしい。
 米・中の二派に分かれての非生産的・非建設的な鍔迫り合いには、食傷する。
 何れにしても仕掛けているのは落潮の米欧と、同じくバブルの栄華忘れじの手引き役日本等で、発展途上にある東アジアに草刈り場を求め又もや難癖を付ける。
 アラスカ州アンカレジで、米中外交トップ初会談(2021.3.19)が開かれた。
 日頃些細な事にも大局を睨み遠謀深慮を為し、理論(理屈)付けをしている中国に、自国利益第一を標榜し、目先の陰謀権略だけの米国では、端から勝負にならない。
 そもそも常日頃中傷・批難を受けている国はそれなりに理屈を構築しているものだ。そして今回の会談ほどに、国際社会に「ノーと言える中国」を如実に現わしたことはない。
 中国の楊潔篪共産党政治局員、「米国は上から目線で中国にものを言う資格はない」と。
 そう、その通りだが、そのように言挙げしなくてもよいように、中国は更なる経済力、軍事力を発展・強化させ、米国と対等以上のパワーをつけるべきなのだ。
 世界は米国覇権の恣に不安定化に陥るのでなく、多様性・協調性ある選択肢を求めている。
 会談の中味から云えば、“米国よ、頭の上の蠅を追え”と云われたも同然か。
 話を戻す。1957年、ソ連によるスプートニク打ち上げの快挙、ショックを受けた米国は、国威発揚に基礎・応用科学技術に遮二無二予算をばら撒くことになった。
 米国は当時、負けるはずがないと思っていたソ連に先を越されたのだ。今、似たようなことが起きているのではないのか。
 各分野で目覚しい発展を続ける中国が、バイデン大統領に「米国の屋台骨再建する」、「中国との競争だ」と叫かさせる。それどころか中国の一帯一路(The Belt and Road Initiative, BRI)構想を“盗み”、民主主義陣営国家で対抗しようとジョンソン英首相に持ち掛けている。米英等は金を無償でばら撒く気なのであろうか。なぜなら、中国の一帯一路での「債務の罠」を西側は痛烈に批判している。ならば米英は中国になびいてしまった国々を奪還するに、新たに債務の上乗せを強請する訳にはいかないではないか。
 トランプ前大統領の言い種ではないが、何が起きるか“見てみよう”。
 「八年間で二兆二千五百億ドル(約二百五十兆円)のインフラ投資である。道路、鉄道、電気自動車、半導体、AI、ブロードバンド等への計画であるが、何れも中国優位かキャッチアップされているものばかりではないのか。これでは“有人月面着陸”で相手を蹴倒すほどの効果は期待できない。
 技術というのは基礎ができれば、後はニーズに対応して爆発的に展開していく。
その技術開花を盗用との中傷で押しとどめようとすることはできない。中国の特許出願件数は米国をしのいで最多なのだ。教育機関別でも上位10校のうち米国5校、中国4校と競っている。中国通信機器大手のファーウェイは第5世代移動通信システムの特許技術使用料を徴収しようとしている。
 投資計画は米国の起死回生となるのか、はたまた雨の中の泥道を老いた痩せ馬に跨り目先に人参をぶら下げて鞭うつ様なのか、八年、二期を目指せるのか、バイデン大統領。
 米国よ、台湾で中国の反発を招くな、キューバ危機を忘れたのか。
 米国よ、中国はいつでも“肘タッチ”を求めている。

引用・参照

中日新聞 朝刊 2021.4.2
米インフラ8年250兆円 投資計画 大統領「屋台骨を再建」
「米国は上から目線」大荒れ米中会談の発言がTシャツに
2021年3月21日 20時49分 朝日新聞デジタル

JETRO 「新型コロナ禍でも2020年の世界の国際特許出願件数は過去最高」 


 “おわび”という綺語 - 2021年03月10日

 貴方任せ、そして出任せの無能・無策・無道の政権が、今も続く。
 国民にとり前進の叶わぬ足踏み期間、否、後退でしかなかった安倍長期政権を承継する菅政権。国民には臆面もなく自助を押し付け、スピーチはプロンプターまかせで、国民に向かい「心よりおわび」と云う。
 が、その前に「ひとえに皆様方の踏ん張りと、心を一つにして懸命に取り組んでいただいた結果であります。医療、介護などの関係者の皆さんの御尽力、国民の皆さんの御協力に心より感謝」と、述べる。
 しかし、菅政権は新型コロナウイルス感染対策に、如何なる具体策を講じたのか。前任者は国民にマスクの配布さえも満足に出来なかった。菅政権は例えば、計画的に医療・介護関係への増援をし、また医療物資等の供給支援をしてきたのだろうか。或は国民に説明し協力を仰ぎ、徹底的・広域的なPCR検査を実施し、感染者の早期発見に立ち向かい、感染広がりを抑止し、範囲を狭める対策などをしてきたのだろうか。
 為すことの全てが後手に回り、本質を把握し得ず、逃げ腰となっているだけではないのか。結果、“やっている振り”が、“空言”が目立ち、収束的思考に欠ける。
 Go To トラベル事業では、却って新コロナ感染を広めた。
 感染者数が少し減少すると、対策強化の機会到来とは考えず、抑え込む対策もしていないのに、宣言解除に逸る繰り返しとなる。
 ぐずぐずしている間に新たに“変異株”が国内のあちらこちらに飛び火し、広がり始め、またもや後手に回る。
 さて“心よりおわび”であるが、政権の無為無策に対してのお詫びなのであろうか。どうも違うようだ。実は“詫び=国民批難”という“屈折した感情”の発現ではなかろうか。なぜならば、「ひとえに皆様方の踏ん張りと、心を一つにして懸命に取り組んでいただいた結果」云々なのであるから、裏返せば、思うさま得られなかった其の結果への“嫌み”となるのではないか。
 踏ん張ったのは、心を一つにしたのは、云う迄もなく、飽くまで国民であって、菅首相(政権)ではない。そうすると、宣言ないし号令をしただけで、“忖度”の手腕を発揮するに吝かでない官僚が、あとは淀みなく何とかすると思い違いした自身の浅はかを省み、国民に詫びを入れているのだろうか。
 それもそうではないようだ。自分の単純な使令に対し、その結果を出せなかった菅首相以外の者に向かう“詫び=国民批難”、つまり、斯様な破目に陥いらせた当の相手(=国民)の努力不足を詰っているのではないだろうか。
 ゆえにその詫びは言外に、“達成できないのはお前らの所為だ”の意味合いを含むのではないか。
 その意味で、とりあえず感謝はするが、国民の努力が今一のため、“おわび”となるのではないのか。
 そのためか、国民にさらなる努力の処方箋を種々与える。例えば、「特にリスクの高いのはマスクを外した会話が多くなる飲食であり」と指摘し、国民の更なるフンバリを求める。
 が、この飲食に付いては、深夜まで飲食した国会議員の離党・辞職などが出る始末で、身内には甘く徹底できていない。
 そう、国民と政府はパターナリズムの関係ではない。親が子に単純なことを何度も言い聞かせるような関係ではない。ちゃんとウガイするのだよ、マスクしているか、2メートルの間隔をとりなさいとか。
 外出なども、国民はすでに生活防衛での最低ラインのこととなっている。生きるため、常日頃から判断しているので、不要なこと不急なことなど無いと思うが。
 その上で、政府の具体策は何かを問うているのだ。
 国民に対するそれこそ不要不急のプレッシャーが、“孤立化”させ“孤独感”を誘引する原因にもなる。“コロナに勝つ”あるいは“コロナに負けるな”とかの標語もその類だ。東日本大震災時の“絆”なども真相を隠す綺語でった。
 が、国民は殆んど習慣化したかに見える3密(密閉・密集・密接)を実践している。換気をし、外出を控え、マスクをし、外食(会食)を控え、ソーシャルディスタンスという不可解な用語での距離を守る。国民の出番というより、後に残るは有効な政府対策の発動ではないのか。国民の背後に隠れるでない。
 3密、云わば“三密”での身口意、身体的活動と言語活動と精神活動の三業を以て、国民は仏の働きに祈っている。計らずも、苦しい時の神頼みならぬ、新型コロナウイルス感染対策時の“仏頼み”の常況なのだ。
 駄目押しする菅首相、勿論、“自助の意を込めて”であろうが、「国民の皆様には、大変申し訳ない思いですが、皆さんの命と暮らしを守るために、そして、安心とにぎわいのある生活を取り戻すために、一層の御協力を心からお願い申し上げます」と。
 そして、「もう一段対策を徹底する決断」をしたというが、日本の伝統的手法の成行きまかせ、希望的観測優先では国民の生命や安全・安寧、そして未来を守ることは到底できない。
 此の国も、世界最多感染者・死者数の米国と似て、無為・無策と虚偽の中に置かれている。共通するのは国民の生活を保護できない、国民安全(福祉)の崩れ現象であり、空洞化だ。両国勢とも恐らく衰退に向かっているのだろう。建設的な政策は一向に採られない。何かと云えば国民に託けて企業等の懐を肥やすこに専念する。企業重視(経済)型国家に成り下がる。
 米国は、進奉したグローバリズムでの自家中毒を起こし、頭の上の蠅も追えないのに、他国に容喙し、難癖を付け、責任転嫁しようと躍起になり、惨めな斜陽大国の姿をさらけ出す。
 更に悪いことには、食い詰め者の欧米国家が糞蠅の集る“自由・人権・平等”をかざし、獲物求めてアジアに軍艦を差し向け群れ来ることだ。その御先棒をかついでいるのが、懲りない日本なのだ。硝煙のにおいがする。
 国家は新市場主義を制御できず、逆に乗っ取られ、先ずは国民より企業利益優先となる。日本は経済大国第三位といいながら、有事に際し国民の保護を他国に預け、自国ではコロナワクチンの開発・製造・供給もできない体たらくなのだ。儲かればよいの結果、頭脳も空洞化が進む。
 無策に伴う無駄口の“感染バカ発”からの脱却は、此の先何年かかるかわからない。
 国民は“自助”下に放置される。共助も公助も遠のく。
 菅総理冒頭発言の2719語、国民に届かず、小舟の跡の白波か。

引用

首相官邸 令和3年3月5日「新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見」
HP:https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0305kaiken.html 


 損な朝貢外交 - 2020年11月29日

 米政権が交替する毎に、日本の運命を定かなものにするための儀式がある。それは日米の絆(本当はそんなものがあるのかどうか不明だが)を確認することだ。
 つまり、日米同盟の深化、或は強化を言挙げしての確認だ。
 それはあたかも“朝貢外交”のようなものだ。
 では朝貢外交ならば、その見返りは何か。例えば、尖閣諸島の米国防衛義務の取り付けであり、以後四年間乃至八年間の安堵を得ることだ。それは日本政権への一時的な御墨付となり得る。
 オバマ政権当時、ブッシュ前政権の政策を変更し、「尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象と対外的には明言せず、間接的な言い回しにとどめる方針を決め、日本政府にもこれ伝えていた」のだ。米中が尖閣諸島で全面戦争をすると思うか。単に日中両国の対話を促すだけだ(クリントン国務長官)。
 が、オバマ大統領、2014年になって、尖閣諸島への日米安全保障条約第5条の適用を公言した。
 斯様に同一政権でも、状況如何によっては、日本の死活問題でも、米国にとっては揺れ動く微妙な政治駆け引きの対象に過ぎない。国益第一で、「昨日の敵は今日の友」で、ステディーな関係など望むべきもないのが米国だ。
 今次も又、米大統領選でトランプ氏から勝利を物にした民主党のバイデン前副大統領との早々の祝意の電話会談(11/12)で、菅義偉首相は日米同盟の更なる強化と尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象であることを、バイデン氏から明言を得たとする。
 だが、米政権交代毎に日本政府から確認しなければならない日米関係・同盟関係とは一体何なのだろうか。日本は希望的観測を以て現実から乖離してはならない。
 「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」には、尖閣諸島の名は出てこない。代りに第五条は「日本国の施政の下にある領域における」とし、更にその防衛は、「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処」となっている。
 施政下にない竹島(韓国・北朝鮮呼称「独島」)や北方四島などは米政権との間で“安堵の儀式”もできない。寧ろ悲願でもあるこれ等の島を犬の遠吠えのごとしでなく、日米同盟の強い絆で打ち破れないのか。勿論、破れない。米国には米国の都合が日本の事情を超えてあるからだ。
 穿つと、尖閣諸島(中国では釣魚島)は中国や台湾が領有権を主張し、領土問題が厳然として存在する。施政下にあるようでないのだ。これまでは「尖閣に領土問題は存在しない」というのが、日本政府の考えであるが、最近は聞こえて来ない。
 茂木敏充外相と王毅国務委員兼外相との会談(11/24日)でも、尖閣諸島に対し領土問題は存在しないではなく、「日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」のに対し、王氏は「中国の立場は明確だ。われわれは当然、自国の主権を守っていく」とした。
 今や中国公船が領海に入り込む。問題なしと突っぱねることも叶わない。バイデン氏が日米安全保障条約を尖閣諸島に適用すると言ったからとて、安心はできない。尖閣諸島のために更なる“世界大戦”を引き起こす破目に陥ることを他国のために米国はするのか。否、日本とて望まないはずだ。
 米国が領土問題ありとした場合、日本の施政下にはいるのだろうか。
 「(2)1971年に作成されたCIAの報告書(2007年に秘密指定解除)には,尖閣諸島は一般的に琉球諸島の一部と考えられている,との記述に加え,尖閣諸島の主権に対する日本の主張は強力であり,その所有の挙証責任は中国側にあるように思われる,と記述されている」と。
 中国は最近、「釣魚島(日本名・尖閣諸島)の主権が中国に属することの法的根拠と歴史的根拠を生き生きと伝えている」と、釣魚島デジタル博物館が開設した。
 以前(2010年)に、中国の姜瑜報道官が『「尖閣」列島-釣魚諸島の史的解明』(井上清)を読んだらと薦めていたが、日本の政治家も読んだのだろうか。
 更に問題は、日米安全保障条約の根幹にかかわる第三条、つまり、「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる」なのだ。
 この条文はバンデンバーグの決議に基づいてその精神が盛られている。バンデンバーグの決議によれば、アメリカが相互援助をするためには、その相手国に必ずアメリカと協力して戦えるだけの武力を増強させるということなのだ。これは(敵国との)イタチゴッコの論理で、武力攻撃側との際限のない軍拡競争となる。
 確かに、日本はこの“論理”貫徹に防衛費の漸増で20年度の5兆3133億円を超えて、過去最大となる次年度予算を組む。これはしかし結果的に国民への負担、つまり、“社会保障と税の一体改革”などが体よく叫ばれることになる定めだ。
 さて、トランプからバイデンへと米政権の舵取りは替わつても、多くを期待しないのがよい。詮ずる所“ならず者”の為すことは、蛸壺に入り込んで世間に悪態を吐きながら意地悪するのか、町場で徒党を組んで悪さをするかの違い位である。
 「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を叫んだトランプ大統領、その“ウソ”の多い中でも、次の言葉は真実の吐露ではなかろうか。
 「人殺しはたくさんいる。我々にも多くの人殺しがいる。我々の国がそれほど潔白だと思っているのか」と。
 そう、慥かに潔白とは口が裂けても言えないはずだ。当然、正義の騎士でも決してない。言ってみればゴロツキの類であろう。
 バイデン氏、「米国は戻ってきた。議長席に座り世界を主導する。敵国に立ち向い、同盟国を受け入れ、われわれの価値観を守る準備ができている」と宣う。
 が、随分と身勝手な言い種に聞こえる。なぜなら米政府は変わらずの継続体であり、何か革命が起きていたわけでもない。単に共和党(トランプ)から民主党(バイデン)へと政府運営者(担当権力者)が替るだけである。
 それなのに、“米国は戻ってきた”とは、トランプ大統領の遣りたい放題の米国利益を第一とする政策での不協和音を修正するつもりかもしれないが、単に米国の我田引水政策の方法論の変更に過ぎない。
 それに米国が戻って来たからと、素直に国際社会は諸手を挙げて喜ぶとでも思っているのだろうか。国際社会に向かって傲慢無礼を極める、覇権振りではないか。
 米国の先ず戻る先は“内政”ではないのか。つまり、頭の上の蠅を追うことであり、内外での二重基準の是正ではないのか。
 何も声高に“戻ってきた”と臆面もなく言えたことではない。期待されていることでもない。心配は更なる米国発の新たなトラブルが生じることである。協調と多様性とは国際社会の当然の在り方であることを学ぶべきだ。
 “米国は戻ってきた”などのフレーズは、“日本を、取り戻す”と同様に空言なのかもしれない。
 それで、戻ってきた内容は、
 ①世界を主導する
 ②敵国に立ち向かい
 ③同盟国を受け入れ
 ④われわれの価値観を守る
である。
 ①バイデン氏は居眠りをしていたわけではあるまい。経済力が米国に次ぐ第2位で、約14億の市場を持つ発展目覚ましい中国は、トランプ大統領のむやみやたらの“制裁連発”にも敢然と立ち向かい、動ぜず意見を述べる政治・経済大国なのだ。新コロナ対応でも逸早く収束させ、世界経済の牽引役を引き受けている。それに米国の軍事力を以てしても、鎧袖一触というわけにはいかないだろう。
 主導するのでなく第一には、中国と協調し、世界の安寧を乱さないことなのだ。はっきり言って、米國が主導するにしても、例えば、「一帯一路」のような建設的理念を持たないのでは、あまりにも地位の低下が著しく、相当の忍耐が、つまり、更なるわがまま(不協和)は通らないということを認識すべきだ。
 強引に事を進めれば、しっぺいがえしが自国に降りかかる。“トランプ自沈”の二の舞となる。「驕る平家は久しからず」という。
 ②敵国と云えば、世界の196国家の内、何処の国を指しているのだろうか。トランプ大統領の敵は同盟含む外国だけでは物足りず、国内までも敵味方に分けてしまつたのだ。もし中国を仮想敵国とするのなら、バイデン氏は何もトランプ氏とかわらないことになるし、何も達成し得ないかもしれない。「股を割きて腹に啖う」で、ただ衰微へと辿るだけだ。
 ③同盟国を掻き集めて何をするのか。「自由で開かれたインド太平洋戦略」等で中国包囲網を企てるなど、愚の骨頂である。今や中国が新市場主義の御株を奪い、米国の替りに格差・分断・貧困を巧みに制御し、グローバリゼーションの旗振り役をこなしているのだ。そこに同盟国などという殆んど有害無益の役立たずの政策を進めるなど時代錯誤も甚だしい。むしろ蛸壺化のが、より政策的には害が少ない。
 ④国際社会は図らずも、新コロナ(COVID-19)が踏絵となり、白日の下にさらされた露骨な現実を知った。それは、欧米が標榜する自由・平等・人権・人道・博愛のなり振りかまわず壊れた痛痛しい限りの姿だった。自由主義社会の一皮剥いた卑屈な底の浅い真実を見せつけたものでもあった。
 新コロナで政治の無為無策が招いた世界最多感染者の米国(感染者 1288万3264人、死者26万3454人:2020.11.27 NHK NEWSWEB)では、国内を二分しての争い、人種差別、貧困、暴力、暴動、破壊、発砲殺人等が顕著だった。本来自由主義を謳うならば、主義主張の受け入れ、そしてその異見の調整こそが求められるのではないのか。
 暴動はテロとばかりに鎮圧に州兵増援を要請し、不足ならトランプ大統領は政情不安を収束させるため、連邦軍を出動させると警告した。
 恐らくこの状況を見聞きし中国は、香港での中央政策遂行の懸念を払拭できたと、ニンマリしたに違いない。つまり、それは日頃人権を盾に香港デモ等に内政干渉をしていた(欧)米国が、言行不一致の“自業自得の見本”を繰り広げたからだ。
 が、それでも世間を欺くために、ファイブ・アイズ等は鉄面皮にも中国へ非難の矛先を向ける。自分たちが世界に対して、如何なる悪さをしているのか、省みることはないようだ。
 今の中国は阿片戦争当時の中国ではない。それに国際社会は、欧米の手口を百も承知していることを知るべきだ。
 新コロナの政府の対応を見る限り、何れの国が人道(主義)を全うしているのであろうか。考えさせられる。
 他国への責任転嫁を言い募っていても責任は免れない。
 日本政府とて新コロナの対応では、国民に向かい“子供への躾”程度の事を繰り返すのみで、国民に下駄を預け、何ら本質対策の具現化には及ばず、泥縄式の体たらくなのだ。
 それどころか政府の経済対策であるGoToトラベルが、“GoToトラブル”、“GoTo感染拡散”になる始末だ。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、断末魔の叫びの如く、「人々の個人の努力に頼るステージは過ぎた」と。
 新コロナは国民を軽視した結果の、脆弱化・空洞化した国家の姿をも炙り出した。
 日米関係、主は替われど“損な朝貢外交”を強いられるのは変わらない、米国の政策も変化なしだ。
 新たな“米国第一”の始まりだ。

  引用・参照

中日新聞 2020/11/28
死者31人最多並ぶ 個人努力の段階過ぎた 一般医療との両立困難

中日新聞 2020/11/25
日中往来月内再開へ ビジネス客ら 外相会談で合意

中日新聞 2020/11/26
米、国際協調復帰を明言 バイデン氏 気候変動対応へ決意

人民網日本語版 2020年10月05日14:05
争えない事実がここに!釣魚島デジタル博物館が開設

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q16
尖閣諸島に関するアメリカの立場(2)
越水桃源HP 桃源閑話Ⅰ「尖閣諸島 - 2010/11/17 18:16」等
越水桃源HP 桃源閑話Ⅱ「“感染爆発”それとも“感染バカ発”か - 2020年03月29日 13:00」

『尖閣列島-釣魚諸島の史的解明』井上清著
『新版 「尖閣」列島-釣魚諸島の史的解明』井上清著 2012年10月20日初版 第三書館

第34回国会 日米安全保障条約等特別委員会 第12・13号(昭和三十五年四月五日(火曜日)・午前十時三十四分開議・昭和三十五年四月六日(水曜日)午前十時二十一分開議)