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赤石・荒川縦走記

悪沢岳に朝が来る
悪沢岳の朝

00/7/19 秦野→畑薙第一ダム(泊)

22:00に秦野を出発。 畑薙第一ダムへの道は思ったよりも遠い。 高速は事故渋滞はあったもののそれほどつらくはなかったけど、 延々と続く山道に自分で運転しながらも気持ち悪くなってしまった。 こんなんで明日登れるのかなぁ...

畑薙第一ダムの駐車スペースは公式にはほとんどないけど、 実際はダムの上などにたくさん止めれるので心配は御無用。 最初に他の車の列と違うところに止めるのは勇気がいるけど、 その後の人たちがたっぷり来るので気にせず止めましょう。
いつも通り車中泊。


00/7/20 畑薙第一ダム→椹島→赤石小屋(泊)

畑薙第一ダム→椹島

7:00に起床。 椹島への1番バスはもっと遅い時間の予定だったので、 とりあえずトイレにでも行こうとバス停の方に向かっていると、 なんとバスが到着している。 この季節は登山者がたくさんいるので増便されて、 1番のバスもかなり早まるらしい。

トイレに行くのを中止して慌ててパッキング。 バスの列に並ぶと意外と簡単に椹島行きのバスに乗ることができた(7:30)。 バスの中でどこの小屋に泊まるのかを全員に確認。 山小屋の送迎用という位置付けなのも関係あるのだろう。

バスに乗っている人たちの90%は千枚小屋方面、 5%が聖方面、残りの5%が私たちと同じ赤石方面。
この地域では椹島を基点にして荒川、赤石を周るコースは定番だけど、どの本を見ても必ずといっていいほど千枚小屋から左回り。 自分でもつい最近まで当然のように千枚から登ろうかと思ってたけど、ふと逆回りでもいいことに気がついた。
左回りがなぜ多いのか理由は不明だけど、 私と同様になんとなく左回りにしようと思っている人は多いんじゃないか、 と思って赤石からにしたのだが、その予想は的中!
後で確認するとやはり千枚小屋はとても混んでいたらしい。 (どの日でも千枚小屋は混んでいたらしいけど)

いろいろ揃っている椹島ロッジ
椹島ロッジ

椹島→赤石小屋

8:10に赤石岳登山口でバスを降りる。 椹島よりもほんの少しだけ手前だけど、 結局トイレに行きたいので椹島まで往復した。 朝食ものんびりと畑薙第一ダムで、と思っていたので、 慌てて持ってきたおにぎりを食べる。
椹島はいろいろと施設が整っていて、 山の中としてはとても贅沢ができそうな感じ。 登山者以外も対象にしたいようにも見えるけど、 登山者以外を見つけることは難しい。 (単にまだ朝早すぎるからかもしれないけど)
犬も登山中
9:10に椹島を出発。 途中イタチなどがいて楽しませてくれるが、 基本的に展望はなく、小雨も降っていた。
13:30赤石小屋に到着。 まだまだ登れる時間なので赤石頂上避難小屋に登ろうとするが、 突然の大雨。 縦走の初日なのでこの雨に降られなかったのはかなりラッキーだったかも。 当然この後からたくさん登ってきた人たちの雨具はびしょ濡れで、小屋の中は上から雫が垂れてきて大変だった。

赤石小屋

昼寝をして17:00から夕食。 夕食の時間を指定されることは珍しくないが、 この小屋では17:00の夕食の人は5:00からの朝食になる。 「早く着いた人が早く出発できる」 という理屈も考えてみれば当たり前だけど、 普通は朝は早い者勝ちで食堂前には長蛇の列が普通。 この列は仲間の一人が並んでいて、 他の仲間が来ないでもめたりするトラブルの元凶で、 この列に並んでいる時間が小屋で一番不毛な時間ともいえる。
行列を作るスペースがないことも関係してると思うけど、 他の小屋でも是非取り入れて欲しいシステムだ。

「100人の団体がこの小屋に泊まりに来る」 というそれらしい情報(デマ?)もあったけど、 それなりにゆとりをもって就寝。 途中、小屋の別棟(昔の小屋の建物で、現在は素泊まり客用) に移った人もいて、さらに快適に寝ることができた。


00/7/21 赤石小屋→赤石岳→荒川中岳→中岳避難小屋(泊)〜荒川前岳

赤石小屋からの朝焼け

赤石小屋

夜はいつも通り誰かのいびきもあったけど、 耳栓(携帯電話のバイブレーションで起床)の効果抜群で、 ほとんど気にすることなく熟睡することができた。
しかし、一番面白かったのはサイレンのように 「ウーーーーー」という寝言のような音を出す人で、 これだけはさすがに笑ってしまって少し目が覚めた。

4:00起床。 外に出て他の人たちと一緒に日の出を撮影。 赤石小屋からは赤石岳の頂上が見えるけど、 方角的には荒川岳側に朝焼けが見える。

登山者がたむろすると必ずと言っていいほど説明屋さんとか自慢屋さんが出現するけど、 この時も似たような感じになって、あるおじさんが 「悪沢岳は北岳に次いで日本で3番目に高い山だ」 などと言っている。 「3番目は奥穂でしょ? それは南アルプスで北岳、間ノ岳に次いで3番目、 っていう意味じゃないの?」 と思ったけど、いつも通り勇気と自信のない私は黙っていた。

4:50に朝食。 日の出まで待っていたかったけど、 まだまだ行程が長いので出発時間を優先した。
5:20出発。 赤石岳への登りはちょっとした急登。 小赤石岳で会った登山者(千枚岳方面かららしかった) に「ここの下りは危ないですか? よく事故があるって言われたんですけど」 と聞かれるが「慎重に下ればそれほど危険ではないと思いますよ」と答えた。

赤石岳
3120m 7位
深田百名山
'97JOY 42位
山1000
8:10に赤石岳登頂。 頂上避難小屋に立ち寄ると、 小屋のおじさんがトイレを利用して料金を箱に入れていない人を注意している。 でも話してみるとこの小屋のおじさんは結構気さくな人で、 昼間は来る人が少なくて退屈しているようだった。 ジュースを買って、赤石小屋で渡されたお弁当を小屋の中で食べさせてもらう。

おじさんの話だと「昨日は二人しか泊まらなかったよ。 楽しみにしてたのに」 「私たちは登ろうとしたんですけど、 大雨が降り始めて断念しました」 「えー?頂上付近は晴れてたよ」。 なんとそんなことがあろうとは思えなかったほどの雨だったのに...

私たちの一人2本のストックを見て 「2本は便利だけど、 ここから赤石小屋への道のような急な岩場の下りでは危険。 年に数回怪我人が出てヘリを呼ぶけど、 2本のストックでぎりぎりまでがんばって、 手をつかずに大怪我する人がいる。 ヘリを呼ぶと大変だよ。 民間のヘリをお金出して呼べばすぐに来てくれるけど、 警察のなんかは天気が悪いとか なんやかんや言ってなかなか来ない。 3日くらい待たされることもありますよ、 というとみんな民間にするけどね」。 登山者は自分の身を自分で守る最大限の努力をする義務があるのだろう。

小屋のトイレは溜め込んでヘリで下界に下ろすシステムだと貼紙がしてあるので、ヘリの頻度を尋ねると 「そんなのお金がかかってしょうがないからシーズンに1回だよ」とのこと。
いろいろ登山者が考えないといけないことがあるなぁ...

「今日はどこに泊まるの?」 「荒川小屋の予定にしてましたけど、 早すぎるので中岳頂上避難小屋にしようして、 明日予約している二軒小屋にしようと思ってます」 「オー!二軒小屋に泊まるとはリッチ!」。 この人たちから見てもリッチな客に見えるんだなぁ...

赤石岳
赤石岳

荒川小屋

小赤石岳を少し過ぎると荒川小屋が見える。 稜線散歩は何度やっても楽しい。 それが3000m峰をつなぐ稜線であればなおさらだ。

10:30荒川小屋に到着。 小屋のすぐそばにある水場で水を補給。 ポカリスウェットの粉を入れている隣のおじさんがうらやましい。 小屋で粉を売ってくれればいいのに。
カレー、ラーメン、缶詰みかん、ジュースを買う。 山小屋って便利かも。

あまりにも早く目標地点に到着してしまったので、 「赤石小屋では今日荒川小屋に泊まる、 って言ったんですけど、次の小屋まで行ってもいいですか?」 と頼んでみると 「あぁ、どんどん次の小屋に行ってよ。 今日は人があふれそうで心配なんだよ」。 何にしても人の役に立つならいいかな?

荒川中岳非難小屋
荒川中岳非難小屋
荒川岳
3083m 13位(中岳)
天気が少し悪くなってきたけど、出発。 荒川岳への登りはお花がたくさん。 天気がよければすごくきれいなところなのだろう。
12:30荒川中岳避難小屋に到着。 やっぱり早い時間なので 「千枚小屋まで行った方がいいですか?」 と尋ねると 「千枚小屋は今日予約だけで200人らしいですよ。 きっと遅い時間に着くと廊下で寝ることになるでしょうね」。 荒川小屋とはうってかわって、とっても泊まって欲しそう。

避難小屋は保健所の指導で調理が許されないので、 インスタント的なものしか出てこない。 そもそもその食事さえも出ることを知ってる人は少ない (私たちは事前に電話をかけて知っていた)からなのか、 泊まる人は他の小屋に比べるととても少ないし、 泊まっている人の中でも食事を全部頼っていたのは私たちだけ。

「明日の目的地は?」と聞かれて 「二軒小屋です」と答えると 「予約はしてあります?」。 二軒小屋からの送迎バスは宿泊者のみ (以前はそうではなかったらしい)になったので、 当然の確認だと思う。
実際次の日の千枚岳付近の二軒小屋方面への分岐点にも、 ずいぶんしっかりした注意書きの看板が立っていた。

ビールを飲んでから、 荒川前岳が3000m峰であることを思い出して往復してくる。 天気は最悪で頂上の立て札しか見えなかった。
地図を見て聖岳や光岳の計画をたてて時間を潰すが、 それも飽きてしまって、 赤石頂上小屋のおじさんから言われた忠告 「夜は混んでて、いびきで寝れないから昼寝するのが一番」 に従って昼寝。

17:00に夕食(親子丼、緑のたぬき、コーヒー)を食べる。 17:30に小屋の前で夕焼けに赤くなる悪沢岳を撮影。 自分の足元の荒川中岳と比較すると 「この山を荒川三山から分けて別の山(悪沢岳)としたい」 という深田さんの無謀とも感じられる提案も、 まんざらでもない気がしてきた。


00/7/22 中岳避難小屋→悪沢岳→二軒小屋(泊)

中岳避難小屋

3:30起床。 悪沢越しに見える日の出を撮影。 すごい強風で小屋の入り口の扉をあけて風に吹かれない玄関から撮影していたら、 登山者が中を覗きこんできた。 寒いからってこんなところで撮影しているほうが悪いんだから、 すぐに避けようとしたら、 「2:00に荒川小屋を出発したんですけど、 疲れてないからいいですよ。 今日中に椹島まで下りますから」 とのこと。 どうやらこちらとは気合が違うらしい...

気を取り直して外で撮影続行。 三脚上のカメラが揺れてるかと思えるくらい風が強い。
隣で一眼レフで撮影しているおばさんが、 コントラストのない部分でピントを合わせているからなのか、 何度もAFが合わない音(レンズのピントのサーボ音) が聞こえる。 うーむ、教えてあげた方がいいのだろうか...

悪沢岳と富士

右側に見える富士山がくやしいけど美しい。 あのスタイルのよさはやはり別物かもしれない。
4:43日の出。 悪沢の稜線越しに出現するので太陽が実際に現れたのは4:50だった。

悪沢岳から日が昇る

5:00食事。 撮影終了後すぐに朝食をとりたかったので、 おじさんに少し前から暖め始めてもらっていたけど、 日の出が遅れたのでずいぶん遅くなってしまった。 小屋のおじさん、わがまま言ってすいません。
メニューはカレー、中華丼、コーヒー。

コーヒーを飲んでるとおじさんが封筒を持ってきて、 「これを二軒小屋に運んでもらえませんか?」 と聞いてくるので、「もちろんいいですよ」 と答えると「これはお礼のコーヒー代です」。
悪い気もしたが、 超軽量のボッカに雇われていい気分がしないでもない。

5:34出発。 悪沢岳への登りが始まるととてつもない風が右から左に吹きつけてくる。 登山道は左右にジグザグに登っていて、 左に登る時にはスイスイ歩けるけど、 右に向いたとたんにびくとも動けなくなってしまう。 先に歩いてるおじさんを見て、 「なんとゆっくり登る人なんだろう」 と思ってたらこんな事情があったとは...

悪沢岳
3141m 6位
深田百名山
山1000
6:20に悪沢岳頂上。 のんびりしてから6:55出発。

くやしいけど富士は美しい
雲上の富士

千枚岳の手前で向こう側から団体が歩いてくる。 こちらはほとんどよける幅がないくらい登山道が狭いけど、 相手方にはゆとりがあったから当然止まるかと思ったら、 どんどんこちらに向かってくる。 何とか草むらに体を倒して避けようとしていると、 相手方の先頭のサブリーダー(添乗員?) らしき人が何か大きな声で話している。
当然こちらが待っていることへのお礼かと思いきや、 自分のお客に一生懸命に咲いている花の説明をしている。
そんなことを人に教えるよりも山を歩くマナーを自分が学ぶべきじゃないの? 大人数ツアーの全てが悪いわけではないけど、 繭をしかめたくなるようなことがそういうグループに多いのも事実...

8:10千枚岳頂上。 ここからの下山道はあまり人が歩いていないからか、 あまり歩きやすい道ではない。 虫もたくさんいて、 昼食も楽しく食べれないので手短に済ませて下山。

丸山からの悪沢岳
小屋の目の前にある滝

二軒小屋

12:30二軒小屋に到着。 待望のお風呂!と思ったら、 夕方の16:00からしかお風呂に入れないとのこと。
また、昼食になるようなものは扱っていないので、 空腹しのぎにアイスクリームを食べて、 自動販売機のコーラとビールを飲んだ。
それでも空腹なので、非常食も食べた。 ある意味では稜線上の山小屋よりも不便な面がある。

ウーム、これだったら椹島に下ったほうがよかったかなぁ。 椹島ではたぶん食事もとれるし、 何よりも下山のバスに間に合えば、 今日中に家に帰ることができる。 そういえば昨日一緒に中岳避難小屋に泊まったおじさんが、 早朝に出発して椹島から帰ると言ってたっけ。

昼寝をして16:00に入浴。 みんな同じことを考えていた登山者でお風呂はギュウギュウ詰め。 ここ数日の汗が流せるだけでも満足しよう。 ちなみにお湯はかなり熱かった。 (日焼けのせいもあるだろうけど)

18:00に夕食。 塩見岳、蝙蝠岳から下山してきた夫婦 (宿の人が紹介してくれる)と席をともにする。 あの下山道は思ったよりも大変だったようだ。
写真集などの本を見て、21:00就寝。


00/7/23 二軒小屋→畑薙第一ダム

人口湖

二軒小屋

小屋の中には虫がたくさんいるのか、 翌日目覚めてみると足中を虫に食われていた。 こんなに虫に食われたのは生まれて初めてで、 跡が完全に消えるまで1ヶ月くらいかかってしまった。
山の中なので贅沢は言えないけれど、 山小屋でもこんな目にあったことはないので、 やはり山屋にとっては、 普通の山小屋よりだいぶ高い値段を出して泊まる宿ではないかもしれない。 (働いている人たちはいい人たちなんだけど...)

6:30起床。7:00朝食。 食後に昨日の郵便ボッカのお礼にコーヒーをいただく。 なんか山屋の仲間入りしたような気分! (中岳避難小屋でもコーヒーをもらったのでちょっと悪いけど)
白籏史朗さんの写真集などを見ながら時間を潰して、 8:30にチェックアウト。 バスの出発時間までは、 まだ時間があるので付近の人口湖を散歩。

10:00他の宿泊客と一緒に1BOXに乗って椹島経由し、 吊橋を見ていくという夫婦 (バスと電車で来ていて、 畑薙第一ダムからのバスへの時間潰しらしかった) を降ろして、畑薙第一ダムへ。

畑薙第一ダム

自分の車に戻ると、そばに止めていた別の車の運転手が 「牽引用のロープなんて持ってませんよねぇ」 と言ってくる。 彼らは3台で来ていて1台が溝にはまってしまったのだが、 とりあえず山に登って下山してから考えることにしたらしい。 しかし3台のうち1台も牽引ロープを持ってないなんて...

苦労しながらもなんとか彼らの車同士で引き上げることが完了すると、 一人が「はいこれ」と言って千円をくれた。 「こんなのいりませんよ」と言って返そうとすると、 関係者全員がなぜか逃げて散っていく。
まぁ、それが感謝の形なのだからありがたく頂戴した。

行きの反省を生かして、帰りはゆっくりと山道を運転。 無事に帰宅。


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