[Tour8/4] [Up]

日食観測
99/8/11 ムバラケ公園

日食アニメーション
皆既日食アニメーション
まだまだ暑い

ムバラケ公園へ

移動途中に同じツアー会社の別ツアーのバスに抜かされた。
到着し真面目に観測を行おうとしているメンバーは、 重たい荷物をもって走っていた。 別ツアーの先着メンバーが好きな場所を占有。 まぁ、こちらのメンバーが想定していた場所ではなかったのでいいのだけど、 別ツアーの添乗員はムバラケ公園担当なのに、 「早い者勝ち」に特に配慮はなかった。

ハッサニは7-20倍ズーム双眼鏡をえらく気に入っていて、 「遠くの物がこんなにきれいに写るのは、 軍事上の制約があるイランでは売ってない」 と言っていた。 「近くのディスカウントストアで1万円で買っただけのたいしたことない双眼鏡だと思うんだけどなぁ」とは言わずにそっとしておいた。
結局彼は皆既直前に私が取り返しに行くまで熱心に覗いていた。 注意は何度もしたのだけど、 皆既直前には普通のサングラスをかけた状態で、 双眼鏡越しに太陽を見ていたようだ。


撮影時の各種設定

カメラ本体

用意した一眼レフはEOS-10とEOS-55。 新旧の違いはありながらもCanonEOSシリーズでの位置づけはかなり近い。 でも今回のような特殊な使い方の時には、 微妙な機能の違いが撮り方を左右する。

35Tiは周りの雰囲気を撮るために使用。 多重露光もできないし、焦点距離も35mm固定だとすると、 やはり日食撮影には無理そう。

ダイヤモンドリング(第2接触)
ダイヤモンドリング(第2接触)

三脚

いつも山に持って行っているVelbonのLight-150Dを使うのはいいとして、 もう一つをどうするか迷った。 かなり大きいFieldAceにしようかとも思ったが、 あまりの重さと、 天頂に向かない雲台(なんでこんな三脚買っちゃったんだろう) を理由に断念。 スカイウォッチャーの撮影現場写真を見ると、 天頂を撮るために雲台を逆向きに使っている人はいるようだ。

ヨドバシカメラで、高くてもいいから小さくて軽いのを探してみたが、 一眼レフがちゃんとのるもの(今回の焦点距離には正直難あり) の中では結局Light-150Dが一番良かったので、 同じ三脚を買うこととなった。

風対策としてストーンバッグを2つ買っていって、 付けては見たものの、 一番つらいのはピッタリした高さに止まりにくい雲台につきる。 900mmなんかにして位置あわせをしようものなら、 何度合わせてもちょっと下にずれる。 それを見越してちょっと上にずらしたところで固定すると、 しっかりとその高さで止まってくれる。
それでも重い三脚は面倒そうなので、 次回は微動雲台を持っていく予定 (懲りないタイプかも)。
インストラクターに聞いてみると、 やはり安い三脚だとプラスチックで固定するタイプの雲台になるので、 高さが微妙な位置で止まらない物らしい。

風対策

まず、上記の三脚に付けるストーンバッグ。 ストーンバッグの存在は知っていたものの、 3段あるつなぎ目の上の方に付ける物であることさえ知らなかった
次に、普段は重宝しているレンズキャップのストラップをはずした。
さらに、カメラ本体のストラップもはずした。 周りをみるとストラップをはずしている人はいないようだった。
フードは付けていたけど、 太陽を直接撮るから無意味そう。 風対策のためにもはずした方がよいかも。

実際には風は全く吹いていなかったので、 風対策は何もなくてもよかったかも。 風以上にミラーアップの振動の方が大きそうなので、 長いレンズをカメラ本体だけの固定で支えていることが問題かも。 しかし、私のレンズには三脚台がついてないしなぁ。。。

レンズの手ぶれ補正機構は三脚撮影時には働かないのでOFF。

熱対策

太陽の方向をずっと向けていると言う状態は、 カメラメーカーとして想定している状態ではないので、 熱で問題が起こることがあるらしい。

しかし、一眼レフの場合にはミラーが降りている状態が普通なので、 「ファインダーのガラスが溶ける」 といった撮影に影響しない問題しか起こらないそうだ。
それでも本体が必要以上に熱くなるとよくないだろうと思って、 手動でシャッターを切るEOS-55は撮影時以外はレンズごとタオルをかけて、 インターバルで自動でシャッターを切るEOS-10は本体だけにタオルをかけておいた。

しかし、一番タオルをかけたいのは人間本体だったでしょう。 帽子をかぶって、首のところにはタオルをかけても、 ファインダーを覗くときには帽子のつばが邪魔だったりする。 撮影の合間の数分間は、木陰に行って涼んでもいいはずなんだけど、 初めての日食撮影だということもあって、 結局トイレ以外で木陰に行くことはほとんどなかった。

その暑さも皆既が近づいてくると信じられないくらいにおさまって、 風が涼しく感じられる。 「いよいよ皆既が来るんだ」 という気分も盛り上がってくるから、 この暑さの演出もそういう意味では悪くないかも。
しかし、日食後の暑さは虚脱感もあって、 後片づけをする手も全く進まないのであった。。。

アクセサリ1(アングルファインダー)

太陽が上にあるので、 ファインダーの確認をしやすくするために直角に曲げるアクセサリー。 2つ買うのはもったいないと思って1つだけ持っていったが、 2台のカメラへの取り付け交換をするときに、 それなりに慎重にやっても、 たまにカメラが動いてしまう。 ケチらずに2つ買えばよかったかも。

部分中のEOS-10はインターバル&多重露光で比較的広角(135mm)だったので、 小さい鏡でファインダーに太陽が入っていることを確認したが、 ファインダーから目までの距離が長くなるために、 ずいぶん小さくてかなり見にくい。 アングルファインダーはちゃんと拡大しているらしく、 やはり値段だけの価値はあるようだ。

内部コロナ、プロミネンス
内部コロナ、プロミネンス

焦点距離

持ってきたレンズは18mm, 28-135mm, 75-300mm。 これにテレコンが1.5倍と2倍。 18mmはさすがに太陽が小さすぎるから除いて、 残る組み合わせは4通りになる。

部分日食中は、多重露光用は短い135mmにして写せる限界まで撮ることに。 それでも皆既をまたいでの撮影には全然足らないし、 角度もいいかげんなので、途中で横にずれてしまうけど、、、

拡大用は合焦の時間が十分あるので最長の900mm(300 x 1.5 x 2)。 かなり大きくなるので楽しいけど、 安い三脚を持っていったので、 ちょっと動かすとすぐに太陽がどこかに消えてしまう。
一度どこかに行ってしまうと探し出すのが一苦労で、 アングルファインダー を付けたままだとどっちに太陽があるか分からないので、 これをはずして左目で太陽を見ながら合わせないといけない。

とてもじゃないけど、これで皆既を撮る自信はないので、 皆既中は270mm(135 x 2)と450mm(300 x 1.5)。 抑え用のEOS-10が短い方。 勝負用のEOS-55には長い方。 部分中と違ってコロナを撮りたいので、 太陽をフレームの中心(正確に言うと皆既時に中心になるように、 移動分を見越して中心よりちょっと右上に) に配置しないといけないので、 これ以上長い焦点距離を扱うのはこの三脚では無理そう。

特に300mmのレンズは自重でズームが動いてしまって、 焦点距離が知らぬ間に変わってしまう。 これを防止するためにズームの部分にテープを貼った。 一応横方向に回すズームなので、テープだけでしっかり止まっていた。

第3接触
第3接触

フィルム

初めての日食なので、 写りがよいことよりも何か写っていることを優先したかったので、 フィルム上でのラチチュードの広さを頼りにネガを中心とした。

部分日食はNDを思いっきりかけてしまうので、 それほど色合いは関係ないと考えて、全部ネガ。 ただし、ラチチュードを優先してISO400にすると、 シャッタースピードが切れなくなるし、 皆既中に比べると露出も分かっているので、 それほどラチチュードが広くなくてもいいだろう、 ということでISOは100。

しかしISO100のネガと言って、富士フィルムに限定したとしても、 RealaとSuper100がある。 値段はRealaがかなり高いが、 そのお金の大部分は「肌色がきれい」ということらしい。
Super100シリーズ(つまりReala以外の普通のネガ) はRealaよりもモデルチェンジが短く、 時々Realaよりもある特定の機能(ラチチュードとか) については逆転することがあったりする。

さらに前モデルがSuperGと廉価版のSuperVの2本立てだったのを、 Super100の1本立ての商品構成に変わったりしていて、 もはやどっちが今回の撮影に向いているのかさっぱり分からない。
富士フィルムのホームページを見ても、 リバーサルは相対評価的なことが書いてあるのに、 ネガは全商品が「今までにない高性能」みたいなことしか書いてない。
お店の人もよく分からないので、両方持っていくことにしたが、 インストラクターもネガは詳しくないので、 結局「高いからましだろう」といった程度の理由でRealaにした。

ハッサニが「皆既日食中には何枚撮るの?」 と聞いてきたので、 「当然フィルム1本全部だから36枚だよ」 と答えたら「へぇー」という驚きの表情をしていた。

なんせ始めての日食撮影で、 天体写真(赤道儀なんかは当然ないので三脚で) も数枚しか撮ったことがないので、 とりあえず枚数を稼いで成功率を挽回するしかないと思っていた。
それでも1分半でフィルムを交換したら、 きっと失敗して後悔すると予想して、 なんとか36枚×2カメラで思いとどまった、 というのが真相。
でも今から思うと第2接触と第3接触の間は、 ほとんど太陽の光量は変化しないので、 むやみに数うっても意味がなかったかも。。。

結果を見ると、 露出に関しては、 過去の分析が十分に行われた雑誌のデータを用いるので、 露出で失敗していることは全くないみたい。 それよりもネガのプリントやPhotoCD製作の時に、 露出を不必要にあげられてしまうのが面倒なので、 次回からはリバーサル(たぶんProvia100)のみにする予定。

露出(シャッタースピード、絞り、ND)

出発前にテスト撮影を2度ほど行った結果、 EOSの評価測光では太陽の面積が少なすぎるために、 5絞り以上もオーバーになってしまうので、 スカイ・ウォッチャーから送られてきた露出で撮影することが、 一番よいことが分かった。 日食時でない太陽の撮影パラメータは、 天文年鑑などにも載っているものと同じ。 「部分日食中は露出を変える」 という説もあるが、ホームページなどを見ていると 「変えない方が自然」という説もあるらしい。

NDフィルターは300mmのレンズ用は誠報社のND10000。 135mmの方はケンコーのND400+ND8。 普通の一眼レフの性能があれば、 ISO100のフィルムで十分にケンコーセットで撮影できるが、 こちらはND3200相当なので、ファインダーの確認が眩しい。 値段もND10000が倍くらいだと思うので、 その後の利用価値なども考えると迷うところかもしれない。

ND値、フィルム感度、レンズ絞り値、テレコンによる実効絞り値の変動、 シャッタースピード、オートブラケット間隔、 と露出を決めるパラメータの多さにちょっと混乱してくるけど、 落ち着いてノートに値を書いておくことが成功の条件でしょう。。。

日食本体レンズテレコン ND Filter 絞り表示実効絞りフィルム感度 コロナシャッタースピード オートブラケット インターバル
部分EOS-10 135mmなしND800+ND4F22 F22Reala 100 なし1/4000秒なし 3分
EOS-55 300mm2.0 x 1.5ND10000F5.6 F16Reala 100 なし1/2000秒 なしなし
皆既EOS-10 135mm2.0なしF5.6 F11Super 400 内部&外部1/6秒3.5絞り 13秒
EOS-55 300mm1.5なしF5.6 F8 Provia 100 内部1/30秒 1絞りなし
外部4秒 1絞りなし

多重露光

インストラクターが同じCanonEos(とは言ってもそこはプロ、 当然EOS-1なので雲泥の差)を使っているので、 「多重露光中に露光回数を変更できる」 なんていう細かいことまで(移動中などに)教えてもらえてとても助かった。
彼も言っていたが「多重露光回数の上限が9回」 というのはEOSのマイコン性能、表示桁数などを考えても不当に少ない。

インターバル機能と組み合わせて多重露光を行ってみた。 撮影結果は次のインターバルを参照。
インターバル間隔を3分にセットして、 多重露光回数を9回にセットして撮影開始。 その後は数枚とるたびに多重露光回数を9回に戻して、 太陽がファインダーの中に入っていることを確認するだけ。 こんないいかげんな連続日食撮影をしている人は少ないかも。

インターバル

数秒おきに勝手に撮影する機能のこと。 今回はメカニカル・カメラを使っている人が多いせいか、 オートブラケットを知らない人が何人かいたけど、 インターバルの機能が標準でついている一眼レフがあることを知ってる人はとても少なかった。

実際EOS-10にはこの機能がついていながら後継機種ではなくされている。 EOS-Kissにでさえオートブラケットが付いていることを考えると、 よほどニーズの少ない機能なのだろう。 自分でさえこの機能をここまで真面目に使ったのは初めて。 でも本当に役に立ったので、メンバーの一人のCanonのレンズ技術者には 「インターバルの機能のおかげで裸眼でも皆既日食を十分楽しめました」 と感謝の気持ちを伝えた。
しかしその人自身は、マニュアルで皆既中に露出を変えようとして、 ほとんど肉眼では太陽を見れなかったらしい。。。

皆既日食中は、初め第2接触から第3接触の時間を、 シャッターを切る回数で割って、11秒にするつもりだった。 しかし、いろいろ計算してみると13秒にして、 最初と最後の1回ずつを捨てるつもりで撮れば、 第2接触と第3接触のタイミングにピッタリあって、 ダイヤモンドリングが自動で撮れそうな気がした。

時計はインストラクターが国際電話を使って正確に合わせてあったので、 これでばっちりだと思った。 しかし、できあがってみるとダイヤモンドリングは、 捨てたはずの前後1回ずつが撮っていてくれた。
つまり、ダイヤモンドリングは第2、3接触の時刻の外側で起こっているらしく、 ぴったりの時刻では皆既になってしまっているようだ。
まぁ、何はともあれ自動の方にもダイヤモンドリングが写っていたのだからよしとしよう。

部分日食中の間隔時間は、普通は5分か10分おきらしい。 原理的には2分ちょっとで太陽が重ならない状態になるんだけど、 普通は人間が時計を見ながらシャッターを押すので、 5か10分おきにしているらしい。
せっかく自動で撮影できるので3分おきに撮影させてみた。 下の写真を見てみると、 ちょっと窮屈な感じがしないでもないけど、 背景がない分だけおもしろくなってる、と思う。

3分おき撮影(5枚合成)

オートブラケット

オートブラケットはEOS-10は無条件に3枚連写だが、 EOS-55は単写モードは必ず停止、 連写モードでも押しっぱなしでないと途中で止まってしまう。 どうやらEOS-10の方が珍しいらしく、 EOS-1とかも何かとブラケット中に止まってしまうらしい。

インターバルがEOS-10にしかついていないので、 こっちの方でダイヤモンドリングのタイミングに合わせるのは無理なので、 EOS-55でタイミングを狙っていく。 つまりEOS-55は連写モード&オートブラケットにして、 3枚分の時間をレリーズで押し続ける。

オートブラケットの幅も2台のカメラで違っていて、 EOS-10は5絞りまで可能なので、 3.5絞りずつずらすことによって、 内部コロナと外部コロナをノータッチで撮影することができた。

それに対してEOS-55は「液晶の露出補正範囲に合わせる」 というたぶんそれだけの理由で2絞りしか動かすことができない。 そのため、内部コロナと外部コロナは途中でシャッタースピードを変えることにより対応し、それぞれを1絞りずつのオートブラケットで撮影。 これはこれで微妙なタイミングのダイヤモンドリングを撮影できたので、 途中のシャッタースピード変更の緊張はあるものの、 捨てがたいものがある。
この2回のシャッタースピード変更でさえ、 普通の撮影を行っている人達に比べて、作業数はとても少ない。

細かいことだが、2台は撮影順序も微妙に違う。 EOS-10は−補正、適正、+補正の順番に撮影する。 それに対してEOS-55は適正、−補正、+補正の順番に撮影する。 どちらにしても+補正で撮影時間が律速するので、大勢に影響はない。

シャッター

シャッターボタンを押してしまうと手ぶれが発生してしまうので、 普通はレリーズを使う。 実際EOS-55は電子レリーズを使い、 オートブラケットを働かせるために 「ぎゅーっと2秒くらい押し続ける」という行為を繰り返した。

それに対し、EOS-10にはレリーズがつかない。 その代わりに標準でリモコンがついている。 しかし、このリモコンの反応の悪さは過去に何度も体験済みだった。 一番問題なのは、リモコン受光部がレンズ面側にあることである。 自分自身を撮影することを目的にしているためだと思うのだが、 これだと自分の手が写ってしまうのを恐れて、 なかなか反応させることができないのだ。
というわけで、 EOS-10は確実なセルフタイマー&本体シャッターボタンを10秒 (セルフタイマー作動時間)前に押す、というやり方にした。

ミラーアップ

どちらのカメラにしても、 ミラーアップはオートブラケットやインターバルに対しては効かない。 セルフタイマーに対しては最初の1枚だけミラーアップ可能。 ボタンを押してから2秒後の撮影でよければ、 1枚目はミラーアップ可能だが、 これではダイヤモンドリングの撮影は不可能。

なんとか設定で「ミラーアップしっぱなし」 が選べるようにならないものでしょうか、Canon殿。

オートフォーカス

オートフォーカスはテレコンをつけてしまうと、 太陽のエッジを利用してもフォーカスが合う保証がなくなる。 そこで、テレコンをつける前の状態で、 太陽のエッジを利用してオートフォーカスでピントを合わせ、 テープでピントリングを止めて、テレコンを後からつける、 という方法を用いた。
NDを付けて、 テレコンさえ付けなければ、 オートフォーカスは簡単に合ってくれる。 当然一度ピントが合った後はスイッチをマニュアルフォーカスにする。

もちろん、テレコンをつけた後で、 フォーカスエイドを利用する、もしくは マニュアルフォーカスで合わせてみる、 という方法は試みては見たけど、 日頃すっかりオートフォーカスに慣れてしまった体ではどうしようもなかった。

時計

日食の時刻はかなり正確に見積もれるらしく、 秒単位まで撮影時刻を設定することができれば、 ダイヤモンドリングを撮ることもできるらしい。

日本で時計を合わせていかなかったので心配していたけど、 インストラクターはしっかりと日本で合わせたらしいので、 それに自分のを合わせた。
しかし、イランの国営テレビの時報を見てみると、 かなりずれているらしく、 それに合わせるべきかツアーの中でも意見が分かれた。

結局国際電話でインストラクターが時間を合わせたところ、 イランの国営テレビの時刻がずれていることが分かり一件落着。
実際、日食の開始時刻はかなり正確だったので、 イランの時刻に合わせなくて本当によかった。


皆既

皆既10分前(皆既撮影準備)

皆既が近づいてきて、皆既撮影の準備を始める。 連続撮影は合成用に撮っているだけなので、しばらくは中断。 こんなふざけた連続撮影をしている人はいないみたいだけど。。。

ファインダーで位置あわせをして、 露出を変更(EOS-55は1/30秒F5.6(実効F8)、EOS-10は1/6秒F5.6(実効F11))、 フィルムを皆既用(ネガ400とProvia100)に換えて、フィルタをはずし、 EOS-10のインターバルの間隔を13秒にセットしなおして、 焦点距離を変更(135mmx2と300mmx1.5)、 オートブラケットをセット(EOS-10は3.5絞りずつ、EOS-55は1絞りずつ)。

さっきまで暑くてクラクラきてたのが嘘のように涼しくなってくる。 サングラス越しに見る太陽も本当に細くなってきた。 カメラの設定に関してはそれなりに確信が持てるけど、 ファインダーの中央に太陽があるのかが不安でたまらない。
「えーい、一瞬なら直接目で見ても大丈夫だろう」 と思って一瞬ファインダーを覗いて位置を確認したら、 中央に近い位置にあって、ホッとした。 しかし、やはりフィルタのない太陽という物は、 例え皆既の直前だとしてもすごい光量だ。 すっかりと目に痕跡を残して、暗いところを見ると、 真ん中に緑色の物体が見えてしまう。
「ヒェー、これじゃぁ皆既の太陽が見えないじゃん」 と思って一生懸命暗いところを見つめたら、 なんとか緑色の物体は消えてくれた。
こんなことのないようにくれぐれも直接太陽を見るのはやめましょう。

EOS-10インターバル開始

第2接触の24秒前(16:32:42)になって、 EOS-10のセルフタイマー&インターバルをスタートさせる。 「第2接触前に太陽を見つめると瞳孔が閉じて、 コロナが十分に見えない」 という話は知っていたが、初めての日食でそんなことができるわけもなく、 ダイヤモンドを形作っていく太陽を見つめる。

第2接触(ダイヤモンドリング撮影)

EOS-55のシャッターボタンをしっかり押して、第2接触を撮影。 となりではEOS-10が2度目(4〜6枚目)の撮影をしている音が聞こえる。

皆既(内部コロナ、外部コロナ撮影)

ついに皆既状態になった。 コロナは思ったよりも大きく広がって見えないけど、 黒くなった太陽、全周に広がる夕焼け、双眼鏡で覗く太陽の赤く延びるコロナ、 全てが美しい。。。
イラン人も興奮状態なのかさっきまで静かにしてたのにバイクで走り回っている。

予定通りEOS-55のシャッタースピードを4秒にずらして外部コロナを撮影しようとした。 しかし、第2接触時の太陽が明るすぎたのか、 皆既中の太陽が暗すぎるのか、カメラ本体の液晶が見えない。 これは誰でもそうなるようで、 慣れた人達は必ずライトを持っているものらしい。
なんとかシャッタースピードを変更して、外部コロナを撮影。 外部コロナは撮影に時間がかかるので、 今回のように皆既時間が短いと何枚も撮るわけにはいかない。 シャッタースピードを1/30秒に戻して内部コロナを撮影。 第3接触の分を残して快調に撮影していく。 EOS-10も順調に自動撮影を続けている音が聞こえる。

第3接触

ちょっとだけ隅から光が広がり始めたかと思うと、 どんどん、どんどん光が溢れ出してくる。 太陽自体が直視できない明るさなのだから、 この溢れ出し方は当然無限の明るさまで溢れ出していく。
EOS-55のシャッターをどんどん切りながら、 隣ではちょうどそのタイミングでEOS-10がシャッターを切って、 36枚撮り終わってフィルムを巻き戻していく。
「あぁ本当に終わったんだ」。

撮影結果としては、 おおむね事前にやれるだけのテストや計算をしておいただけの結果は得られて、 とても満足。

第4接触まで

まだ第4接触までの部分連続撮影が残っているけど、 それほど真剣ではないのでみんなと感動を分かち合う。
皆既用に変えた設定を全て元に戻して、 フィルムも連続撮影の途中までの物を、 続きのコマから撮影した。

外部コロナ
外部コロナ

反省

ゴースト

問題点を考えると、一つはダイヤモンドリング時のゴースト。 これはその時になってみないと分からないし、 レンズに強い光の太陽が入ればゴーストが出てしまうのは、 しょうがない気がする。

今回できた対策としては、「プロテクトフィルターをはずす」、 「テレコンを使わない」、 「ゴーストが重ならない位置に太陽をもってくる」 (この案は現実不可能だと思う)、 などが考えられる。

根本的には、無限遠以外も撮影可能で、 収差が少ない代わりにガラス面の多い普通のレンズよりも、 天体用の望遠鏡の方がゴーストの影響が少ないような気がする。 ちょっと日食のためだけだと思うと高いけど。。。

連続撮影

今回は日食撮影が初めてだったこともあって、 あくまでも拡大撮影をそれなりに成功させることを第一に考えて、 片手間に部分日食からの連続撮影を考えていた。 実際、後でパソコンで合成させる前提とはいえ、 皆既の手前で一度中断してしまう連続撮影計画に関しては、 インストラクターも「なんのこっちゃ」という感じだった。

しかし、写真ができあがってそれなりに満足はしたものの、 拡大撮影がお金をかけないと進歩しにくい気がしてきた。 それに比べて連続撮影であれば、 EOS-10のインターバル機能のおかげで、 投資なくしてしっかりとした時間間隔で撮影可能で、 構図を選べば自分なりの主張もしやすそうな感じ。

こう考えると今度撮るときには、 少なくともEOS-10は連続撮影を中心にするつもり。 でもさらに考えると、 今回のモスク越しに撮れる日食、 というのは確かに貴重価値だったのかもしれない。 始めての日食じゃなければそうしたんだけど、 やっぱり時間が短いんじゃなぁ。。。


インストラクター

今回のツアーには雑誌スカイウォッチャーから、 プロカメラマンのインストラクターが同行していた。 スカイウォッチャーの速報で公園の川&日食連続の写真が載っていた安藤さん、 がその人。

行く前は 「天文はほとんど素人だから、 インストラクターなんか来ても聞くことなんかなさそうだし、 その人の分もツアー代に含まれてるんだったら、なんか損した気分」 などと思っていたが、 とても気さくな人で、同じCanonEos(とは言っても向こうはEOS-1だけど) を使っていることもあって、とても助かった&楽しかった。 「こんな機能誰が使うんだろう」 と思っていたほとんどの機能は、やはりプロカメラマンには支持されていた。。。

周りに天文写真を撮る人間がいないので、 フィルムのことなどかなり悩んで 「もうどう撮っても一緒なんじゃないの」 などと自分に言い聞かせたことを聞いてみると、 ちゃんと理論立てて答えてくれる。
ゴーストとか今回は防ぎようのなかったものを除いて、 これだけ自分が満足できる写真が撮れたのは多分に安藤さんのおかげだと思う。

その安藤さんも連続撮影途中にミスがあったらしくって、 「ダメだ!」などと叫んで撮影をやめてしまった物もあったみたい。 安藤さん曰く「日食は何度撮ってみても、何か一つ失敗する」。 ちなみに安藤さんは日食で曇られたことがないらしい。
私はまず普段の撮影からカメラの評価測光に頼らない努力が必要かも。

Canonから手ぶれ補正双眼鏡が日食に有効であることの宣伝用の写真を頼まれたらしく、 皆既中には太陽の撮影をしながら、 メンバーをモデルにして「手ぶれ補正双眼鏡で日食を見る」写真を撮っていた (らしい。とてもそんな姿を見ている時間はなかった)。
日食時には三脚に載せてしまうので、カメラの手ぶれ補正は使えないけど、 Canonの手ぶれ補正技術は本当に素晴らしい物だと思う。 偶然Canonのレンズ技術者がツアーメンバーにいたので、 その感謝の意を伝えておいた。

インストラクターと撮影機材一式

他の観測地

日食は3カ所(ムバラケ公園、イマーム広場、屋上) どこも晴れていて、しっかりと見えたらしい。 「ツアーの中で日食を見れた組と見れなかった組ができたら憂鬱だろうな」 と思っていたので何より。 実際ヨーロッパの他の地域ではそういう状態になったようだから、 まんざら冗談ではないけど。。。

次の日の新聞

日食についてのペルシャ語新聞を買ったメンバーが、 みんなの分を買って来てくれていた。 前日の新聞もそうだったが、日食の次の日の新聞も 「橋の夜景写真の上に特大の日食」 といった感じの合成写真がほとんど。

日本でのテレビとかもそうだったらしいけど、 日食観測者の絵というのは、 皆既日食であっても日食グラスもどきの変な眼鏡をかけた人々の、 すごく馬鹿っぽい写真、と相場が決まっているらしい。 何度見てもとてもよいのでこの方針は変えないで欲しいものだ。


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