室内楽曲       
Chamber Music
  2つのワルツ
1,イ長調のワルツ 第4番
2.イ長調のワルツ 第5番

ヴァイオリンとピアノの二重奏曲(またはソナタ) 嬰ハ短調
ラフォンのロマンス≪船乗り≫による協奏的大二重奏曲
エデュアルド・レメーニの結婚式のための祝婚曲
エレジー第1番(チェロとピアノ)
エレジー第1番(ヴァイオリンとピアノ)
エレジー第2番(チェロとピアノ)
エレジー第2番(ヴァイオリンとピアノ)  
S126 b
S126 b/1
S126 b/2

S127
S128
S129
S130
S130 ter
S131
S131 bis
忘れられたロマンス(ヴィオラとピアノ)
忘れられたロマンス(ヴァイオリンとピアノ)
揺りかご
悲しみのゴンドラ(チェロとピアノ)
悲しみのゴンドラ(ヴァイオリンとピアノ)
リヒャルト・ワーグナーの墓に

S132 a
S132 ter
S133
S134
S134 bis
S135

S377a
アンジェルス! 守護天使への祈り
ペストの謝肉祭
ハンガリー狂詩曲 第12番
ワーグナー〜リスト オペラ”タンホイザー”より”おお汝、優しい夕星よ(夕星のアリア)”
ベネディクトゥス(ヴァイオリンとピアノ)
オッフェルトリウム(ヴァイオリンとピアノ)
S378/2
S379
S379 a
S380
S381/1
S381/2
ノンネンヴェルトの僧房(チェロとピアノ
ノンネンヴェルトの僧房(ヴァイオリンとピアノ))
3人のジプシー
ベネディクトゥス(ヴァイオリンとオルガン)
オッフェルトリウム(ヴァイオリンとオルガン)
ホザンナ
アリア”クユス・アニマム”
いま皆神に感謝せり
S382
S382 bis
S383
S678/1
S678/2

S?
S?
  コンソレーション全5曲
1.第1番、第4番
2.第2番
3.第3番
4.第5番
5.第6番
S?




四季
オーベルマンの谷
S?
S?
   2つのワルツ                                 S126b      1832年
1.イ長調のワルツ 第4番                          S126b/1 
ハワードの解説によると、この“2つのワルツ”は“7つのワルツ”というコラボレーション曲集(なぜか曲は8曲あるとのこと)に提供されたものとのこと。“7つのワルツ”の第1番、第2番、第6番をペイヤー、第4番と第5番をリスト、そして第3番、第7番、第8番をパーマーが作りました(この2人の作曲家はよくわかりません)。そのため、2曲しかなくて第4番、第5番という番号がふられています。小さなカフェ・ミュージックのような感じです。テーマが二つしかない小さな曲で、CDでは第5番と続けて演奏されているようです。

Zwei Walzer〜Waltz in A major No.4
(0:49 HUNGAROTON HCD31879/80)
2.イ長調のワルツ 第5番                          S126b/2 
1823年のGallenbergという人の“アマゾーネン”というバレエで使われた主題を用いているとのこと。12才の頃のピアノ独奏曲“イ長調のワルツ”(S208a)をヴァイオリンとピアノのために編曲したものです。

Zwei Walzer〜Waltz in A major No.5
(1:20 HUNGAROTON HCD31879/80)
ヴァイオリンとピアノの二重奏曲(またはソナタ) 嬰ハ短調        S127     1835年
この曲は1963年に発見されたとのこと。ハワードの解説によると、ティボーア・サリーという演奏家がレコーディングをしたそうなのですが、その録音は、サリーによる補筆が多くあり、また“ソナタ”という間違えた名称もその時につけられたとのこと。この曲は1832年に出版されたショパンの“4つのマズルカ”作品6の第2番と、ポーランドの旋律を使用しています。ポーランドの旋律は、後に“ヴォロニンツェの落穂拾い”の2曲目(S249/2)となります。また断片として1833年頃にS249aが残されています。

この曲は4つのブロックに分かれ、(1)モデラート、(2)テーマ・コン・ヴァリアティオーニ、(3)アレグレット、(4)アレグロ・コン・ブリオとなります。(1)の出だしなどは、幻想的な魅力にあふれています。ショパンの原曲自体が非常に印象的なものでしたが、リストはそこに着眼し、さらにその幻想性を強めた、という感じです。また(4)の旋律が僕には“かえるのうた”の旋律に似ているように思います。ハワードは単一楽章の作品としてシューベルトの“さすらい人幻想曲”へのオマージュと考えているようです。同じ頃に作られている“深き淵より”を思い出させるような、なかなかの大作です。

Duo sur des themes polonais
(20:56 HUNGAROTON HCD31879/80)
エデュアルド・レメーニの結婚式のための祝婚曲             S129     1872年
これはピアノ独奏曲版(S526)もありますが、このヴァイオリンとピアノの二重奏曲が原曲です。タイトルどおりヴァイオリニスト、エデュアルド・レメーニの結婚式のために作曲されました。カフェ・ミュージックのような軽い感じの作品です。

Epithalam
(4:55 HUNGAROTON HCD11798)
エレジー第1番                                     S130   1874年
ピアノ独奏曲として有名な“悲歌(エレジー)”は室内楽版が原曲です。チェロ(あるいはヴァイオリン)、ピアノ、ハープ、ハーモニウムによる合奏です。リストの室内楽曲の中で、最も多く演奏される作品です。主旋律が独奏楽器に譲られることで、聴きやすい作品となっています。

この曲はマリー・ムハノフ・カレルギスの死を悼んで作曲されました。ムハノフ夫人はリストの友人であり、またショパンの弟子でもあります。ムハノフ夫人は、リストの作品に対する感想などを書簡・文書で多く残しています。プールタレスによれば、1874年5月末に彼女が死去し、その知らせを聞いたリストは即興でピアノを弾き作曲したとのことです。リストの希望で、同年6月17日にワイマールにおいて彼女の追悼式が行なわれました。式の進行はリストが行い“レクイエム”“みどり児キリストの誕生の賛歌”
※1が演奏されたとのこと。

※1
この曲はなんでしょうか?1863年作曲の作品に”テオフォル・ラントメッサーのクリスマスの歌・キリストは生まれり”という曲があり、その最終部に女声3部の曲があります。またエリック・ル・ヴァンのCD解説によると、1875年5月22日にムハノフ夫人の記念コンサートが開かれ、その場においてエレジー第1番は演奏されたとのこと。二つの式典があったのでしょうか?
 

Elegie No.1
(5:28 HUNGAROTON HCD11798)
エレジー第2番                                     S131   1877年
“エレジー第2番”は1877年エステ荘で作曲され、リナ・ラーマンに献呈されました。チェロ(あるいはヴァイオリン)とピアノによります。“エレジー第2番”も物悲しい作品ですが、第1番に比べ旋律が親しみやすいと思います。

Elegie No.2
(5:38 HUNGAROTON HCD11798)

忘れられたロマンス                                  S132 a  1880年
1880年12月6日にエステ荘で作曲され、友人のオルガ・フォン・マイエンドルフ夫人に献呈されました。ですがこの曲の主題は1848年にすでに作曲されていた歌曲“おお、いったい何ゆえ”(S301a)のものです※1。1880年12月6日付けのマイエンドルフ夫人に宛てた手紙に書かれた内容によると、どうも出版社がこの作品を見付けて出版しようとしたらしく、リストは(自分にとって古い未熟な作品を出版されるということに対する)抗議の意味も込めてヴァイオリン(あるいはチェロ、ヴィオラ)とピアノ、ピアノ独奏曲の版で書き直したとのこと。曲はもの憂げな歌曲のような作品です。

1848年作曲のものは歌曲“おお、いったい何ゆえ”(S301a)、ピアノ独奏曲“ロマンス〜おお、いったい何ゆえ”(S169)で、これは1840年代にロシアの小説家のカロライナ・パヴロブ夫人によって与えられた詩によります。パヴロブ夫人の詩は“女性の涙”というタイトルのようです。


※1 1840年頃作曲の歌曲“彼は私を深く愛していた”にもこの主題は使われています。

Romance oubliee
(4:33 HUNGAROTON HCD11798)
悲しみのゴンドラ                               S134     1885年
“悲しみのゴンドラ”は2番のみ、チェロとピアノの二重奏版に編曲されています。ピアノ独奏曲版が名高いだけあって、この室内楽版も比較的よく演奏されます。この曲はワーグナーに関係があります。1882年12月、リストはヴィネツィアでワーグナー夫妻と過ごします。その時、たまたま出会った葬儀の模様にインスパイアされ、ピアノ独奏曲版を2曲書いたのです。その翌年、ワーグナーが死去。リストは今度はワーグナーの死を悼んで“悲しみのゴンドラ”の2番のみを室内楽版に編曲しました。

“悲しみの”という邦題から、ロマンティックな曲調を期待してしまいますが、原題の“lugubre”という言葉には、“陰鬱な”とか死に対して喪に服する意味合いがあり、より“死”のイメージに近接しています。英語では“Death gondola”とストレートに訳されているようです。

La lugubre gondola
(8:31 HUNGAROTON HCD11798)
リヒャルト・ワーグナーの墓に             S135        1883年
ピアノ独奏曲はよく演奏されますが、原曲は弦楽四重奏とハープのための室内楽曲です。1883年2月13日にワーグナーがイタリアで死去。最初リストはその訃報を信じなかったようです。コージマの娘ダニエーラ(リストの孫)から“(わざわざ)バイロイトまでは来ないで欲しい”という電報を受けて初めて理解したとのこと。

リストはワーグナーの死を悼み、この室内楽曲を作りました。その際、自身の1874年作曲の“エクセルシオール(より高く!)”の旋律と、作品の類似をリスト自身気付いていた、ワーグナー1878−82年作曲の“パルツィファル”の旋律を使いました。“エクセルシオール!”の最初の合唱の旋律を神秘的に演奏し、その後“パルツィファル”の旋律に移ります。室内楽作品として非常に珍しい神秘的な作品となりました。

1883年5月22日にワイマールにおいて、追悼の意も兼ねて、ワーグナー生誕70周年記念式が催され、その場でこの室内楽曲は初演されました。

Am Grabe Richard Wagners
(3:17 HUNGAROTON HCD11798)
夜                               S377a         1864/65年   
これは1838/39年作曲の“巡礼の年 第2年 イタリア”の2曲目“物思いに沈む人”(S161/2)がおおもとの原曲となり、そして1862年の長女ブランディーヌの死を契機に1863〜64年に作曲された管弦楽版“3つの葬送頌歌”の3曲目“夜”(S112/2)が産まれます。そのピアノ独奏版編曲が、このS699となります。そして1864〜65年にこのヴァイオリンとピアノための編曲(S377a)が作られました。1866年にはピアノ連弾曲(S602)も作られました。

おおもとのS161/2はミケランジェロが作ったメディチ家廟墓のロレンツォ・デ・メディチの像から受けたインスピレーションによる曲なのですが、こちらでは、同じメディチ家廟墓にあるジュリアーノ・デ・メディチ像の下にいる裸体像“夜”の方に焦点をあてたのでしょうか?ハワードの解説によると、ミケランジェロの詩からタイトルをとられたとのこと。他にもミケランジェロにまつわる作品として“エステ荘の糸杉に”がありますが、リストにとって、ミケランジェロは“死”をイメージさせる芸術家だったのかもしれません。

ブランディーヌの死が影響した作品に、他にバッハ〜リスト“カンタータ 涙し、嘆き、憂い、畏るることぞ の通奏低音と、ロ短調ミサの クルチ・フィクス による変奏曲”(S180)があります。僕はS180の方にブランディーヌの死の悲しみ、という感じを受けませんでしたが、こちらのS699、S377aは葬送曲ですので、感じることができます。

おおもとの“物思いに沈む人”が、独特の世界を持つ傑作であるため、この室内楽版は非常にすぐれた室内楽曲になったと思います。音世界が近似しているわけではありませんが、独特の世界を持つ室内楽曲ということで“リヒャルト・ワーグナーの墓に”(S135)にも匹敵するような傑作だと思います。

Le Notte
(9:57 HUNGAROTON HCD31879/80)
アンジェルス! 守護天使への祈り          S378/2           1880年  
これはピアノ独奏曲“アンジェルス!(巡礼の年 第3年 第1曲目)”の室内楽曲版です。イントロの不思議な響きは、室内楽版でもその魅力が十分いかされています。ピアノ独奏曲がオリジナルであるため、不思議な室内楽曲となりました。室内楽曲版が、いちばん音に厚みがあり壮大な感じになります。僕が聴いているCDは弦楽四重奏版を室内楽オーケストラで演奏したものです。

Angelus! Piere aux anges gardiens
(8:59 HUNGAROTON HCD11798)
ハンガリー狂詩曲 第12番                    S379 a     1850年代
これはヴァイオリンとピアノのためにアレンジされた“ハンガリー狂詩曲 第12番”(S244/12)です。ハワードの解説によると、リストはヴァイオリンパートだけを書いたとのこと。またヴァイオリンパートの完成にはヨーゼフ・ヨアヒムと共同で行ったとのこと。ピアノパートのアレンジは誰によるのかちょっとわかりません。ハンガリー狂詩曲の中でも12番は、明るく旋律も親しみやすいので、室内楽版も楽しめます。幻想的な雰囲気はなく、ライト・ミュージックのような感じです。

Rhapsodie hongroisee
(11:26 HUNGAROTON HCD31879/80)
ベネディクトゥス(ハンガリー戴冠ミサ曲より)         S381/1   S678/1    1869年
“ハンガリー戴冠ミサ曲(S11)”の7曲目です。ヴァイオリンとピアノ(S381/1)、またはヴァイオリンとオルガン(S678/2)の二重奏のアレンジです。“オッフェルトリウム”と合わせて、ヴァイオリニスト、エデュアルド・レメーニのために作曲され、レメーニはコンサートで何回か演奏したとのこと。

またこの曲は他に1867年にピアノ独奏(S501)、1869年にピアノ連弾(S581)、1875年にヴァイオリンと管弦楽(S362)が作られています。

Benedictus (aus der Ungarischen Kronungsmesse)
(8:07 HUNGAROTON HCD11798)
オッフェルトリウム(ハンガリー戴冠ミサ曲より)       S381/2  S678/2       1869年
“ハンガリー戴冠ミサ曲(S11)”の5曲目です。ヴァイオリンとピアノ(S381/1)、またはヴァイオリンとオルガン(S678/2)の二重奏のアレンジです。S11の方でも、“オッフェルトリウム”のみ器楽のみの曲でした。旋律はベネディクトゥスよりも魅力があると思います。これもヴァイオリンとオルガンのための二重奏アレンジです。基本的にオルガン伴奏にヴァイオリン独奏というシンプルな形で始まりますが、終盤にはオルガンの壮大な響きをいかした盛上がりを見せます。このオルガンが入る部分はかなりアヴァンギャルドな響きで素晴らしいものです。

またこの曲は他に1867年にピアノ独奏(S501)、オルガン独奏(S667)、1869年にピアノ連弾(S581)、
が作られています。

Offertorium (aus der Ungarischen Kronungsmesse)
(5:39 HUNGAROTON HCD11798)
ノンネンヴェルトの僧房                      S382           1883年
チェロとピアノのための“ノンネンヴェルト”です。元が歌曲であるため、主旋律を独奏楽器が担当するアレンジには向いているのかもしれません。ただピアノ独奏曲版にある不思議な響きが失われてしまっているかも。

Die Zelle in Nonnenwerth
(5:00 ARTENOVA 74321 76809 2)
3人のジプシー                          S383        1864年      
1860年に作られた、ニコラウス・レーナウの詩による歌曲(S320)を編曲したものです。CDのタイトルに“パラフレーズ”という言葉がついています。前半は歌曲の構成とほとんど同じなのですが、3人のジプシーの情景がすべて描かれた後、もう一度、曲のブロックを組み直すような感じです。

Die drei Zigeuner
(9:49 HUNGAROTON HCD31879/80)
 コンソレーション(全5曲)                                   ?年
1.第1番、第4番
チェロとピアノのための“コンソレーションズ”です。これらはチェリストで作曲家のジュール・ド・スウェルトによって編曲されたとのこと。そのためリストによる編曲ではありません。1曲目は、なぜか、原曲の第1番と第4番がつなげられる形となっています。リストは、スウェルト宛ての手紙で“ピアノ版よりも好きだ”と伝えたとのこと。

Consolation No.1 − Enchainement− No.4
(4:10 ARTENOVA 74321 76809 2)


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