演奏 レスリー・ハワード(P)        
タイトル 『リスト ピアノ独奏曲全集 VOL.52 ハンガリーのロマンツェーロー』
データ
1995,97年録音 HYPERION CDA67235
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ミクロシュ・バラバーシュ『到着と婚礼』
収録曲
ハンガリーのロマンツェーロー S241a
1. 第1番 ヘ短調 S241a/1
2. 第2番 イ短調 S241a/2
3. 第3番 イ短調 S241a/3
4. 第4番 イ短調 S241a/4
5. 第5番 ニ短調 S241a/5
6. 第6番 イ長調 S241a/6
7. 第7番 イ長調 S241a/7
8. 第8番 ニ短調 S241a/8
9. 第9番 イ長調 S241a/9
10. 第10番 ト短調 S241a/10
11. 第11番 ヘ長調 S241a/11
12. 第12番 ハ長調 S241a/12
13. 第13番 嬰へ短調 S241a/13
14. 第14番 ニ長調 S241a/14
15. 第15番 ニ長調 S241a/15
16. 第16番 ハ長調 S241a/16
17. 第17番 イ長調 S241a/17
18. 第18番 イ長調 S241a/18
ハンガリー風の二つの行進曲 S693
19. 第1番 ニ短調 S693/1
20. 第2番 変ロ短調 S693/2
 
感想 ハンガリーのロマンツェーロー  1853年 S241a
この作品は“ハンガリー狂詩曲”の第1番〜第15番までが出揃った1853年というリストの創作の頂点ともいえる時期に書かれたものです。ハンガリーの民謡を集めたものです。1853年にブラームスと共にリストを訪れたエデュアルト・レメーニとの共作のような形で作られ、リストのパートがこの18曲とのこと。もともと存在自体も知られておらず、ゲザ・パップ、イムレ・メッツォ、マリア・エックハルトといったリスト学者達によって研究され近年発表されたようです。

Ungarischer Romanzero
(HYPERION CDA67235)
1.第1番 ヘ短調            1853年 S241a/1
第1番の主題はアンタル・セルマクという人が1826年に発表した作品で知られている、とのこと。哀愁の漂う叙情的な冒頭部、一転して陽気な舞踏曲のような部分と“ハンガリー狂詩曲”と同じような構成をとっています。

No.1 F minor
(2:46 HYPERION CDA67235)
2.第2番 イ短調            1853年 S241a/2
第2番の主題もアンタル・セルマクが使用したそうですが、もともとの作曲者、原曲は分からないそうです。沈鬱な響きの曲です。

No.2 A minor
(3:36 HYPERION CDA67235)
3.第3番 イ短調            1853年 S241a/3      
この曲で使われている主題の一つはヤーノシュ・ビハリのものとのこと。中途で終わってしまう感じがあります。高音のフリスカのような箇所は、“ルーマニア狂詩曲”を思わせます。

No.3 A minor
(1:22 HYPERION CDA67235)
4.第4番 イ短調            1853年 S241a/4       
第4番の主題もアンタル・セルマクのアレンジによるものとのこと。この第4番でハワードが補筆しているようです。

No.4 Aminor
(3:18 HYPERION CDA67325)
5.第5番  ニ短調            1853年 S241a/5           
原曲はガボール・マトレイによるものとのこと。まるで日本の演歌、民謡のようなリズム感と旋律を持つ曲です。

No.5 Dminor
(1:53 HYPERION CDA67325)
6.第6番  イ長調            1853年 S241a/6          
原曲はビハリによるもので、イ長調らしい明朗な響きの音楽で、“ハンガリー狂詩曲”を思わせる主題です。この曲に対し、リストは“大司教閣下の就任のための旋律”という呼称をつけている、とのこと。

No.6 Amajor
(3:28 HYPERION CDA67325)
7.第7番  イ長調             1853年 S241a/7          
最初の主題がセルマクによる“ゆるやかなハンガリーの告別の旋律”とのこと。

Moja pieszczotka
(2:19 HYPERION CDA66346)
8.第8番  ニ短調            1853年 S241a/8        
原曲はビハリのもので、リストはこの主題を、すでに1828年に“2つのハンガリーのリクルーティング舞曲(記念のために)”(S241)の第2番 Lassu magyar で使用しています。  

Narzeczony
(1:33 HYPERION CDA66346)
9.第9番  イ長調            1853年 S241a/9
これもセルマクの主題でしょうか。ミドルテンポのラッサン部のみのような曲です。

No.9 Amajor
(2:19 HYPERION CDA67325)
10.第10番  ト短調           1853年 S241a/10
最初の主題がベニ・エグレシーの“コーネリアのために”というもの、次の主題は不明とのこと。エグレシーは第27巻に収録されている“表明と国家”の“表明”の曲の作曲家です。

No.10 Gminor
(4:05 HYPERION CDA67325)
11.第11番  ヘ長調            1853年 S241a/11
“ハンガリー狂詩曲”と同じような、ラッサン、フリスカの形式を取ります。最初の主題が、ヤーノシュ・トラヴニクの編曲で出版されたマコ・チャルダッシュとのこと。後半部は、陽気な曲でまるでチコ・マルクスが演奏しているかのようです。


No.11 Fmajor
(6:33 HYPERION CDA67325)
12.第12番 ハ長調            1853年 S241a/12
第12番は急速部しかありません。ハンガリー狂詩曲らしい旋律が随所に出てきます。

No.12 Cmajor
(2:44 HYPERION CDA67325)
13.第13番 嬰へ短調            1853年 S241a/13
第13番以降はスケッチの状態でしかなく、ここからがハワードの加筆要素が強くなる曲のようです。曲としてかなりまとまって聞こえるのですが、確かに第12番までとは雰囲気が異なります。暗い感じで始まりますが、すぐに陽気な感じになります。

No.13 F♯minor
(4:07 HYPERION CDA67325)
14.第14番 ニ長調            1853年 S241a/14
ヤーノシュ・ラヴォッタの“パンノニアに焦がれて”という曲の主題を使っています。パンノニアというのはローマ帝国時代のほぼハンガリー地方の呼称のようです。この曲もサイレント映画に後付されたような軽音楽のような感じがします。

No.14 Dmajor
(3:34 HYPERION CDA67325)
15.第15番 ニ長調            1853年 S241a/15
リストはこの主題をビハリのものと考えていたようですが、ゲザ・パップがマルク・ロジャヴォルジイによるものと指摘したとのこと。ミドルテンポの少しずっしりした曲です。

No.15 Dmajor
(2:37 HYPERION CDA67325)
16.第16番 ハ長調            1853年 S241a/16
ジョゼフ・ゾブによって書かれた主題だそうですが、原曲は不明とのこと。リストはこの曲の終わりに、第4番の冒頭を書いておき、つづけて演奏できることを意図していたようです。ミドルテンポの高音の装飾がきれいな曲です。

No.17 Cmajor
(2:38 HYPERION CDA67325)
17.第17番 イ長調            1853年 S241a/17
最初の主題がビハリのもの、続いてジャンシ・ポルトゥラス・ロシの主題が使われるとのこと。ビハリの主題はミドルテンポの明るい曲で、おそらくロシの主題はハワードの演奏で2分30分あたりから始まる部分だと思います。

No.18 Amajor
(3:37 HYPERION CDA67325)
18.第18番 イ長調            1853年 S241a/18
主題は極めて不明で、ビハリのものかもしれず、イグナク・ルツィツカのものかもしれず、ハンガリーの曲ではないかもしれない、とのこと。メロディが印象的な小品です。

No.19 Amajor
(1:47 HYPERION CDA67325)
〜・〜・〜・〜
ハンガリー風の2つの行進曲    1840年頃? S693
19.第1番 ニ短調      1840年頃  S693/1
この“ハンガリー風の2つの行進曲”はワイマールに草稿として残っていたものを、1954年にリスト協会とショットによって出版したとのこと。なぜかこの出版に際して、曲の順序が入れ替えられ、ルイス・ケントナーによって華やかな演奏会用のエンディングが付けられたとのこと。ハワードは先達に敬意を表明しながらも、オリジナルに忠実に録音しているようです。

“葬送行進曲”のように独特な雰囲気を持っている曲です。同じ曲ではないのですが、ハワードは同じスタイルの曲として“ハンガリー風の英雄行進曲”(S231)との類似性を指摘しています。完成度は“ハンガリー風の英雄行進曲”の方に軍配はあがるにしても、音楽的魅力はこの“ハンガリー風の2つの行進曲 第1番”の方が勝ると思います。

Deux marches dans le genre hongrois No.1 in D minor
(5:55 HYPERION CDA67325)
20.第2番 変ロ短調     1840年頃  S693/2
ハワードも“ノーブル”という形容をしているように、第2番は明るい行進曲で、様々な技法の細やかな装飾的フレーズが美しい作品です。

Deux marches dans le genre hongrois No.2 in B flat minor
(10:52 HYPERION CDA67325)


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