演奏 レスリー・ハワード       
タイトル 『リスト ピアノ独奏曲全集 VOL.45 スペイン狂詩曲』
データ
1996年録音 HYPERION(輸) CDA67145
ジャケット ジョン・フィリップ『ラ・グロリア』
収録曲
1.スペインの歌による演奏会用大幻想曲          S253
2.ロマネスカ   第1ヴァージョン              S252 a
3.スペイン狂詩曲                        S254
4.ロマネスカ   第2ヴァージョン              S252 b
5.Feuille morte − ソリアノによるエレジー        S428
6.スペインの主題“密輸入者”による幻想的ロンド    S252
感想 1.スペインの歌による演奏会用大幻想曲          S253        1845年
リストは1844年の10月から1845年にかけて半年間、スペインとポルトガルの演奏旅行をします。リストのスペインの主題を元にした作品の中で主要なものは、この時の経験に端を発します。

1845年にリスボンで作曲されたものです。しかしリストの生前には出版されず1887年にリナ・ラーマンに献呈されました。

この曲は3つの旋律を元にしています。(1)“ファンダンゴ”(2)“ホタ・アラゴネーザ”(3)“カチューシャ”です。この曲の後半部分は“スペイン狂詩曲 S254”と同じように“ホタ・アラゴネーザ”が中心となります。“ファンダンゴ”はアンダルシア地方の歌舞曲、フラメンコの代表です。“ホタ”はスペインのアラゴン地方の民族舞踏のことです。

ハワードの解説によりますが、“ファンダンゴは似た旋律がモーツァルトのオペラ“フィガロの結婚”第3幕で使われています。第3幕の第22曲のフィナーレで結婚式の行進曲からはじまる部分で使われる舞踏曲です。Grosse Concert-Phantasie uber spanische Weisen(18分46秒)
2.ロマネスカ   第1ヴァージョン              S252 a   1840年
この曲の主題は16世紀のスペインの舞踏曲です。物憂い旋律ではじまります。途中でトリルが特徴的な力強い旋律が入ってきます。1840年の作品ですから、リストのスペイン−ポルトガル演奏旅行とは関係はありません。La Romanesca(9分7秒)。
3.スペイン狂詩曲(スペインのフォーリアとホタ・アラゴネーザ)   S254      1863年
リナ・ラーマンにリストが語ったところでは、1863年にローマにおいて、1844−45年当時のスペイン−ポルトガル演奏旅行を思い出して作られたとのこと。そのため作曲年代が、スペイン関連の他の作品とは異なります。それだけ作品としてもすぐれており、リストの曲の中でも非常に知られたものとなっています。出版は1867年になります。

スペインの旋律“フォーリア”と“ホタ・アラゴネーザ”を主題に作られています。“フォーリア”は17世紀のパッサガリア(舞踏歌の1種)で、同じ主題をコレッリ、スカルラッティ、ラフマニノフらも使っています。

ドラマティックな冒頭から、疾走感を伴う部分への移行など、とにかくカッコイイ曲です。よく曲の構成についてハンガリー狂詩曲との類似が指摘されますが、僕は全体の大きな枠組みで捉えると“ダンテソナタ”の方に近いな、と思ってます。

スペイン狂詩曲はハンガリー狂詩曲の1〜15番までといっしょにその後出版され、曲がポピュラリティを得る助けになったとのこと。確かにジョルジュ・シフラのEMIのCDでこのカップリングがあります。

また“スペイン狂詩曲”はフルッチョ・ブゾーニによって1896年ピアノと管弦楽版に編曲されています。Rapsodie Espagnole(13分25秒)。
4.ロマネスカ   第2ヴァージョン            S252 b    1852年
リストは1852年に#3を改訂します。第1ヴァージョンがゆったりとした感じであったのに対し、第2ヴァージョンではリズムが強調され舞踏曲らしくなっています。途中で入ってくるトリルの部分は音の厚みが追加され、よりゴツゴツした感じが強まっています。曲として第2ヴァージョンの方が上手く形作られており、響きも美しいと思います。La Romanesca(8分48秒)
5.Feuille morte − ソリアノによるエレジー      S428      1845年    
これはマリアノ・ソリアノ(1817−1880)という人による主題によるのでしょうか?ちょっとハワードの解説を読んでも分かりません。リストは1844年にコルドバでソリアノに会ったとのこと。曲のタイトルからは葬送曲のようですが・・・、葬送曲のような重い印象を受けますが、後半では華やかな部分もあります。Feuille morte − Elegie d’apres Soriano(9分39秒)
6.スペインの主題“密輸入者”による幻想的ロンド    S252         1836年
この曲は、ジョルジュ・サンドに献呈されました。主題はマニュエル・ガルシア(1775−1832)作曲の歌劇“密輸入者(1804年)”によります。1837年に出版されています。装飾が非常に華美な作品です。1836年の作品ですから#2と同じく、リストのスペイン−ポルトガル演奏旅行とは関係がありません。この作品は同時期に集中して作っているオペラ・ファンタジーの仲間かと思います。Rondeau fantastique sur un theme espagnol “El contrabandista”(18分36秒)


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