演奏 レスリー・ハワード       
タイトル 『リスト ピアノ独奏曲全集 VOL.26 若き日のリスト』
データ 1992/93年録音 HYPERION  CDA66771/2
ジャケット ハインリヒ・ラインホールド『ソレントの近くのロッキー・ジョルジの橋』
収録曲
 ≪DISC.1≫
1.ディアベッリのワルツによる変奏曲    
2.イ長調のワルツ         
3.メユールの“エジプトのヨセフ”による変奏曲
4.8つの変奏曲 
5.ロッシーニの主題による7つの華麗な変奏曲
6.ロッシーニとスポンティーニの主題による華麗な即興曲
7.華麗なアレグロ
8.華麗なロンド

  ≪DISC.2≫
  12の練習曲 作品6
1.第1番  ハ長調 
2.第2番  イ短調 
3.第3番  へ長調 
4.第4番  ニ短調  
5.第5番  変ロ長調 
6.第6番  ト短調 
7.第7番  変ホ長調
8.第8番  ハ短調 
9.第9番  変イ長調  
10.第10番 へ短調 
11.第11番 変ニ長調 
12.第12番 変ロ短調 

13.スケルツォ ト短調

   フェイ、ビハリ〜リスト 2つのハンガリーのリクルーティング舞曲(記念のために)
14.第1番 (Kinizsi Notaja)
15.第2番 (Lassu Magyar)

16.ワルツ 変ホ長調
17.舞踏会のギャロップ
18.ハンガリー風行進曲
19.ピアノ小品(ボンのベートヴェン・カンタータによる)
20.ピアノ小品 変ニ長調
21.ピアノ小品 変イ長調 
22.私は死んだ(愛の夢 第2番 第1バージョン)
23.子守歌 第1バージョン
24.アルバムリーフ 第1番 ホ長調
25.アルバムリーフ 第2番 イ短調(ノンネンヴェルトの僧房 第3バージョン)
26.アルバムリーフ

   幻影
27.センツァ・レンテッツァ・クアジ・アレグレット
28.ヴィヴァメンテ
29.シューベルトのワルツによる幻想曲 

S147
S208 a
S147 a
S148
S149
S150
S151
S152


S136
S136/1
S136/2
S136/3
S136/4
S136/5
S136/6
S136/7
S136/8
S136/9
S136/10
S136/11
S136/12

S153

S241
S241/1
S241/2

S209 a
S220
S233 b
S507
S189 b
S189 a
S192 a
S174 i
S164
S167
S165

S155
S155/1
S155/2
S155/3
感想  ≪DISC.1≫
1.ディアベッリのワルツによる変奏曲           S147     1822年
11才の頃の処女作です。ディアベッリの50人の作曲家による変奏曲集の第24番として収録されました。始まりはスタンダードなディアベッリのワルツの演奏で、その後非常にロマンティックなヴィルトゥオーゾらしいアレンジに移ります。リストの処女作にふさわしい、記念すべき作品です。

Variation on a Waltz by Diabelli
(1:54 HYPERION CDA66771/2)
2.イ長調のワルツ                        S208 a    1823年
これは12才の頃の作品。ちょっとよくわからないのですが、1823年のGallenbergという人の“アマゾーネン”というバレエで使われた主題を用いているとのこと。高音の響きが印象的な簡単なワルツです。この曲は1832年にヴァイオリンとピアノのための室内楽版(S126b/2)も作られます。

Waltz in A major
(1:05 HYPERION CDA66771/2)
3.メユールの“エジプトのヨセフ”の主題による5つの変奏曲   S147 a ?年
この作品は、リストの作品と考えられてきたそうですが、実はモーツァルトの息子のフランツ・クサヴァー・モーツァルトの作品とのこと。F・X・モーツァルトの作品はOp.23として1820年に出版されました。辞典では“メユールのロマンスによる変奏曲”というタイトルになっています。確かに幼少のリストにしては、自然なまとまりのある洗練された作品です。

エティエンヌ=ニコラス・メユールは18世紀後半から19世紀前半にかけてのフランスの作曲家です。“エジプトのヨセフ”は1807年にパリで初演されました。

Five Variations on a theme from Mehul’s Joseph
(7:20 HYPERION CDA66771/2)
4.8つの変奏曲     作品1             S148        1824年頃
1825年にパリで出版されたとき“作品1”とつけられました。この作品はピアノ制作者のエラールに献呈されています。ハワードのCDでは1トラックに8つの変奏が入っています。

第1の変奏で、モーツァルトのような主題が提示され、第2の変奏で少し流麗になります。第3変奏は皮肉を感じるようなテンポの速いもの。第4変奏は高音の流れるような旋律が美しいです。第5変奏はマイナー調となります。第6変奏は軽快で最も響きが豊かです。第7変奏はアルペジオの美しい響きで奏でます。そして最後の第8変奏はユーモラスさと力強さ、高音のトレモロなど様々な装飾が登場します。13才のリストのとても充実した作品です。

またこの曲は後に、“ピアノ協奏曲 変ホ長調(遺作)”(S125a)の中間部のメロディアスな部分で使われます。

Eight Variations on an original theme, Op.1
(14:38 HYPERION CDA66771/2)
5.ロッシーニの主題による7つの華麗な変奏曲 作品2     S149  1824年頃
ロッシーニの歌劇“エルミオーネ”の主題による変奏曲です。“エルミオーネ”は1819年にナポリで初演されたラシーヌの原作を元にしたオペラです。“8つの変奏曲”にくらべ、豪壮なアレンジとなっており、高音の装飾など様々な表現が用いられ、当時の演奏会用作品としての役割を果たせるほどの出来だと思います。

Seven Brilliant Variations on a theme by Rossini,Op.2
(9:15 HYPERION CDA66771/2)
6.ロッシーニとスポンティーニの主題による華麗な即興曲 作品3  S150 1824年頃
導入部は“超絶技巧練習曲集 第7番 英雄”の原型になります。少年時の作品で突然登場する、この“英雄”の導入部には、驚かずにはいられません。ですが、その後につづく音楽は19世紀初めのオペラのサロン風編曲のものとなります。

この曲で使われているのはロッシーニとスポンティーニの2人の作曲家のオペラからの主題で、ロッシーニの方は“湖上の美人” “アルミーダ”、スポンティーニの方は“オリュンピア” “フェルナンド・コルテス” からの主題が使われています。“アルミーダ”の原作はトルクァード・タッソーの“解放されたイェルサレム”によります。

スポンティーニは19世紀前半のイタリアの作曲家で、グランドオペラへ通じる作風で成功しました。マイアベーアやワーグナーへの流れを作った作曲家です。

Impromptu brillant on themes by Rossini and Spontini,Op.3
(12:12 HYPERION CDA66771/2)
7.華麗なアレグロ 作品4の1                    S151  1824年 
前半は迫力のある序章のようなもので、その後“華麗な”アレグロがはじまります。むしろ前半の部分の方がリストらしさを感じます。ハワードの解説によると、ピアノ協奏曲第1番のスケッチレベルの段階に関連しているそうですが、聴いた感じよくわかりませんでした。

はっきりとわかるのはこの曲は、後に“ピアノ協奏曲 変ホ長調(遺作)”(S125a)の冒頭に使われます。

Allegro di Bravura Op.4 No.1
(9:00 HYPERION CDA66771/2)
8.華麗なロンド 作品4の2                     S152  1824年
最初に提示される4つの音で出来たシンプルな主題が、全体に登場し、曲調とリズムを特徴づけています。この曲においては、組立て方が他の少年期の作品よりも優れていると思います。

この曲は、後に“ピアノ協奏曲 変ホ長調(遺作)”(S125a)に使われているとのこと、なのですが、聴いた感じよくわかりませんでした。

Rondo di Bravura Op.4 No.2
(9:00 HYPERION CDA66771/2)
  ≪DISC.2≫
  12の練習曲 作品6                       S136   1826年
“12の練習曲”は“超絶技巧練習曲集”の原型になります。リストの作品を代表する“超絶技巧練習曲集”の“萌芽”といえるものです。15才の時点で、小振りでありながらも傑作“超絶技巧練習曲”の主題や音世界の原型ができていることに驚きます。リストはこの“芽”に、技術の発展とともに、イメージを加えていき、最終版の音世界にまで達成させるのです。

1826年15才のリストはすべての調性で48曲からなる練習曲集を作ろうと思い立ちます。そして12の課題による練習曲集(12の練習曲 op.6 S136)の12曲を書き上げます。結局、完成したのはこの12曲だけでした。

出版された時の作品番号が2通りあります。その辺の背景をシューマンが『音楽と音楽家』で触れています。どうも最初にパリで出版されたとき“作品6”であったのですが、楽譜がその後散逸し、それをドイツのホーフマイスター出版がかき集め、新しく出版し直したときに“作品 1”と銘打ったようです。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices)
(TOTAL 25:50 HYPERION CDA66771/2)
1.第1番 ハ長調                           S136/1
華やかなプレリュードとしての役割はこの頃から同じです。この頃はまだ小規模なプレリュードです。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.1 in C major
(1:13 HYPERION CDA66771/2)
2.第2番  イ短調                       S136/2
パガニーニの影響が加わる前の姿を知ることができます。パガニーニの影響は細部での表現、ニュアンスで現れてくるということが、分かります。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.2 in A minor
(1:14 HYPERION CDA66771/2)
3.第3番  へ長調                         S136/3
リストの中でも屈指の名旋律を持つ“風景”の原型です。この時点ではエチュードとしての目的を強く感じる作風ですが、“詩情”の萌芽を感じることが出来ます。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.3 in F major
(2:19 HYPERION CDA66771/2)
4.第4番  ニ短調                           S136/4
“マゼッパ”の原型です。まだ“マゼッパ”のイメージはありません。この後、リストはこの第4番に“マゼッパ”のイメージを加えていくわけです。幻想的な世界がすでに見え隠れしています。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.4 in D minor
(1:10 HYPERION CDA66771/2)
5.第5番  変ロ長調                        S136/5
“鬼火”の原型です。最終版の持つメフィストーフェレス的な要素は一切なく、愛らしい作品です。旋律の一部に“ラコッツィ行進曲”を思わせるような箇所を感じました。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.5 in B♭major
(2:46 HYPERION CDA66771/2)
6.第6番  ト短調                          S136/6
これは“幻影”とはまるで異なる作品です。リズムが第5番と似ており、幻想的で暗闇がかった表情に変わった感じです。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.6 in G minor
(1:23 HYPERION CDA66771/2)
7.第7番  変ホ長調                          S136/7
これは最終版では第11番の“夕べの調べ”の原型になるものです。最終版の見事な情景描写の表現はこの段階では見えてきません。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.7 in E♭ major
(2:24 HYPERION CDA66771/2)
8.第8番  ハ短調                        S136/8
“狩”の原型です。冒頭の旋律の和声と速く荒々しいパッセージが“狩”を思わせますが、ほとんど別の曲です。曲集の中での大曲としての役割は同じです。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.8 in C minor
(1:47 HYPERION CDA66771/2)
9.第9番  変イ長調                        S136/9
これは第9番“回想”の原型になります。ゆるやかで優雅な曲調は、この時点でもそうです。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.9 in A♭ major
(3:17 HYPERION CDA66771/2)
10.第10番 へ短調                          S136/10
最終版の旋律のリズムの取り方に、僕はショパンの影響を感じるのですが、この段階ではまだありません。素晴らしいイントロはこの時点である程度出来ていることに驚きます。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.10 in F minor
(1:55 HYPERION CDA66771/2)
11.第11番 変ニ長調                      S136/11 
この曲は1837年の改訂でなくなってしまいますが、もともと冒頭の旋律が第7番と似た感じなので、いっしょにされたのかもしれません。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.11 in D♭ major
(2:56 HYPERION CDA66771/2)
12.第12番 変ロ短調                            S136/12
“雪あらし”の原型になります。この時点では“雪”のイメージはありません。ですが“雪あらし”の美しい主旋律はこの時点である程度芽生えています。

Twelve Etudes Op.6 (Etude en douze exercices) − No.12 in B♭ minor
(2:08 HYPERION CDA66771/2)
13.スケルツォ ト短調                      S153   1827年
ユーモラスな表現を試みている作品です。ハワードも指摘しているようにスケルツォというよりもバガテルと言える作品です。ハワードはさらに“ベートーヴェンへのオマージュ”とも考え、そして作曲年がベートーヴェンが死んだ年であることにも注目しています。

Scherzo in G minor
(1:06 HYPERION CDA66771/2)
  フェイ、ビハリ〜リスト 2つのハンガリーのリクルーティング舞曲(記念のために)
  S241   1828年
14.第1番 (Kinizsi notaja)                    S241/1
早くもハンガリー風の作品がうまれます。ラズロ・フェイとヤーノシュ・ビハリという作曲家の主題を用いているそうですが、詳しくは分かりません。ビハリは“ラコッツィ行進曲”の作曲家として知られている人です。“リクルーティング舞曲”というのも、よく分かりませんでした。軍隊と関係があるのでしょうか。確かに2曲とも力強い勇壮なテーマです。ところどころ“ハンガリー狂詩曲”を思わせる旋律が現れます。

Curious Georgesandさんに教わったのですが、リクルーティング舞曲というのは、どうも軍隊が兵隊募集のために街角で演奏するような曲のようです。

Two Hungarian Recruiting Dances − No.1 (Kinizsi notaja)
(2:37 HYPERION CDA66771/2)
15.第2番 (Lassu magyar)                  S241/2
2番の方が華やかです。主題がどことなくシューマンの“交響的練習曲”の主題に似ています。

Two Hungarian Recruiting Dances − No.2 (Lassu magyar)
(2:46 HYPERION CDA66771/2)
16.ワルツ 変ホ長調                    S209 a   1840年
軽快なワルツで、中間部でアンニュイな旋律に変わります。リストが1840年にイギリスツアーに行ったときに書いたものです。

Wartz in E♭
(1:30 HYPERION CDA66771/2)
17.舞踏会のギャロップ                 S220     1840年頃
この楽しげな主題は後に、“ワルツ・ドゥ・ブラヴーラ”(S214/1)に発展します。

Galop de Bal
(0:43 HYPERION CDA66771/2)
18.ハンガリー風行進曲                  S233 b    1844年
ハワードによると、この曲に関する資料は全くないそうです。憶えやすい明確な旋律で、暗くはないのですが重々しい感じのする行進曲です。とても簡単な行進曲です。

Marche hongroise
(1:01 HYPERION CDA66771/2)
19.ピアノ小品(ボンのベートヴェン・カンタータによる)       S507   1847年頃
これは世俗合唱曲“ボンのベートーヴェン記念像除幕式のための祝典カンタータ”(S67)(通称“ベートーヴェン・カンタータ”)の第1部の主題を使った編曲です。第1部の冒頭部分と中間部、エンディングの静かな合唱の部分の主題をつなぐようにまとめたものです。

Klavierstuck (aus der Bonn Beethoven-Kantate)
(2:32 HYPERION CDA66771/2)
20.ピアノ小品 変ニ長調                  S189b   1844年
これは“バラード第1番”(S170)の主題です。完成版の“バラード第1番”はこちらの調性によっています。サールの番号表ではS189の作曲年が1866年となっているのですが、ハワードのクレジットではS189bは1844年です。アラン・ウォーカーの記述を読むと、リストが1844年にスペイン旅行に行き、スペインを離れた頃に書いたスケッチとのこと。バラード第1番の作曲年が1845〜48年なので、ウォーカーの記述に従いました。

サールの作品表での“1866年”というのは、第2巻に収められている“ピアノ小品 変イ長調”(S189)で、この作品はバラード第1番とは関係がありません。S189とS189a、S189bが全く別の作品であることからくる作曲年代の矛盾です。

Klavierstuck in D♭major
(0:49 HYPERION CDA66771/2)
21.ピアノ小品 変イ長調                  S189a    1844年
同じく“バラード第1番”(S170)の主題です。調性を変えて主題はさらに発展しています。S番号にハワードがふったアルファベット順でみるとS189は、やはりこちらが最初のようなのですが、原語タイトルにNo.2とあります。

この“第2番”という番号は、どうも“S189”としての第2番ではなく、新リスト全集が出版された際、そのときは紛失していると思われた第2巻に収められている“ピアノ小品 変イ長調”(S189)が第1番とされているようです。


Klavierstuck in A♭major No.2
(0:59 HYPERION CDA66771/2)
22.私は死んだ(愛の夢 第2番 第1バージョン)      S192a    1850年頃
これは歌曲“私は死んだ”(S308)のピアノ編曲であり、また“愛の夢 第2番”(S541/2)の第1バージョンにもなります。またオルガ・フォン・マイエンドルフに献呈された“5つのピアノ小品”(S192)の第1番でもあります。アルペジオが四角張って奏でられている感じで、最終版の流麗さがまだありません。

Gestorben war ich (Liebestraume No.2 first version)
(1:15 HYPERION CDA66771/2)
23.子守歌 第1バージョン                   S174 i    1854年
子守歌の第1バージョンです。こちらも最終版に比べ、均一なリズムが四角張った感じがします。第2巻に収められている第2バージョンはより流麗な装飾がほどこされます。

1854年6月8日付けルイス・コーラー宛の書簡で、“子守歌”についてリストが言及しています。この曲はハスリンガー社の“結婚式のアルバム”(?)という曲集に収録された、とのこと。またこの曲の独特の眠気を誘うような瞑想的な、気だるい曲想について、リストは「伴奏にあわせて水キセルをくゆらしながらアメリカ製のロッキングチェアに揺られながら演奏するのに適している」と表現しています※1。

※1
コンスタンス・ベーチ訳 リスト書簡集 第1巻 NO113。


Berceuse (first version)
(4:50 HYPERION CDA66771/2)
24.アルバムリーフ 第1番 ホ長調          S164     1841年頃
これは“憂鬱なワルツ”(S214/2)の原型になります。最終版に比べ音世界がくっきりとしています。

Feuille d’Album No.1 in E major
(2:21 HYPERION CDA66771/2)
25.アルバムリーフ 第2番 イ短調(ノンネンヴェルトの僧房 第3バージョン)
   S167 1843年頃
美しい傑作“ノンネンヴェルトの僧房”の第3バージョンです。神秘的なイントロは同じです。第2バージョンにある、イントロの後の華やかな装飾を、さらに豪華にしています。最終版で感じられる細やかな表現が、まだありません。代わりに全体的にくっきりとした装飾が施されています。

Feuille d’Album No.2 in A minor
(5:44 HYPERION CDA66771/2)
26.アルバムリーフ 変イ長調                 S165    1841年
これはよく聴かれるような優雅なワルツです。力強いイントロを持っており、魅力的な主題です。

Feuille d’Album in A♭major
(2:40 HYPERION CDA66771/2)
   幻影                               S155    1834年
27.センツァ・レンテッツァ・クアジ・アレグレット          S155/1
“幻影”の3曲はラマルティーヌの詩にインスパイアされて書かれたものです。“幻影”というタイトルは、“超絶技巧練習曲集”の第6曲と同じですが、原語は異なります。S155は“Apparitions”、S139/6は“Vision”です。おそらく“Apparition”は英語の“Appearance”に相当し、“現れる、姿を見せる”という“幻影”であるのに対し、“Vision”は心象風景、内的イメージの要素が強いのだと思います。

ベース音の不穏な音型の上に、優美な高音の旋律がのります。豊かな詩情があり、ドラマティックな作品で、若き頃の傑作に数えられるものです。

Apparitions − Senza lentezza quasi Allegretto
(6:19 HYPERION CDA66771/2)
28.ヴィヴァメンテ                             S155/2
イントロの主題がマイナー調で、後は明るい優美なワルツとなります。この曲に“幻影”というイメージをあまり感じません。

Apparitions − Vivamente
(3:43 HYPERION CDA66771/2)
29.シューベルトのワルツによる幻想曲               S155/3 
3曲目で、力強い幻想的なワルツとなります。リストはこのシューベルトのワルツをその後“ウィーンの夜会”でも編曲します。

Apparitions − Fantaisie sur une valse de Francois Schubert
(7:46 HYPERION CDA66771/2)


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