演奏 レスリー・ハワード       
タイトル 『リスト ピアノ独奏曲全集 VOL.1 ワルツ集』
データ
1985年録音 HYPERION(輸) CDA66201
ジャケット ゴヤ 『The Forcibly Bewitched』
収録曲
≪DISC 1≫
1.忘れられたワルツ 第2番        S215  no.2
2.メフィストワルツ 第2番          S515  no.2
3.忘れられたワルツ 第3番        S215  no.3
4.メフィストワルツ第3番          S515  no.3
5.忘れられたワルツ 第4番        S215  no.4
6.メフィストワルツ 第4番          S696  no.4
7.
レントラー 変イ調             S211 
8.ワルツ形式の音楽帳の1ページ    S166
9.即興的ワルツ               S213
10.憂鬱なワルツ               S214 no.2
11.ワルツ・ドゥ・ブラヴーラ         S214 no.1
12.無調のバガデル             S216 a
13.忘れられたワルツ第1番        S215 no.1
14.メフィストワルツ第1番          S514
感想 1.忘れられたワルツ 第2番         S215  no.2     1883年
リストのワルツを代表するのは、“忘れられたワルツ”の4作、そして“メフィストワルツ”の4作ですが、不思議なことにこれらのワルツが作曲されたのはリスト最晩年の時期にあたります。リストは“忘れられたワルツ”について“これは私の創作力の最後の残りだ”と語ったとのこと。

リストのワルツというのは、ある意味、作曲家の性格を非常によくあらわしている作品群かもしれません。他の作曲家には見られないネガティブな側面、メフィストーフェレス的な側面が強調されます。
2.メフィストワルツ 第2番           S515  no.2     1881年
メフィスト・ワルツの4作のうち、第1番と第2番は元々はオーケストラ曲として作曲されました。ピアノ・オリジナルであるのは第3番と第4番だけです。メフィストワルツ第2番は、まるで火花がスパークするかのような作品で、部分的な華々しさは有名な第1番をも凌ぎます。この第2番はサン=サーンスに献呈されました。
3.忘れられたワルツ 第3番         S215  no.3     1883年
第3番は他に比べて“嘲笑”ぶりも少なく、静かな作品です。出だし部分では“クリスマス・ツリー”を思い出しました。晩年の作品として宗教的な性格を唯一感じたワルツです。曲が進むと徐々に華やかになっていきます。
4.メフィストワルツ第3番           S515  no.3     1883年
メフィストワルツ第3番は、“葬送曲”に似ている箇所を感じました。第3番はもっとも悪魔的な印象を受けます。イントロの旋律も頭に突き刺さるような感じがあります。
5.忘れられたワルツ 第4番         S215  no.4     1884年
リストのワルツは、“メフィスト”も“忘れられた”もそうですが、不安定な響きで始まり、華々しい中間部へと移るという構成をとっています。忘れられたワルツ第4番は、作品中もっとも奇妙な出だしではじまりますが、中間部ではアンニュイさが飛んでしまい豪快な曲となります。
6.メフィストワルツ 第4番           S696  no.4     1885年
メフィストワルツ第4番は、むしろメフィストーフェレスの印象をあまり受けない作品です。第1番と共通する旋律も登場します。
7.レントラー 変イ調            S211           1843年 
“レントラー”とは舞曲の1種で緩い回転舞曲のことです。流れるようなワルツで、非常に短い曲です。ハワードの演奏で演奏時間は57秒です。
8.ワルツ形式の音楽帳の1ページ     S166           1842年  
#7に比べると軽やかで、旋律・リズムともに明確です。この曲もとても短い曲で、ハワードの演奏で45秒です。
9.即興的ワルツ(ヴァルス・アンプロンプチュ)    S213      1842/1852年
“ヴァルス・アンプロンプチュ”は録音も多く、リストのワルツの中ではネガティヴさを持ち合わせない愛らしい曲です。書籍によると#8、#9、#10は関連がある曲なのですが、聴いた感じ僕にはちょっとわかりません。
10.憂鬱なワルツ                S214 no.2       1839/1850年 
アルペジオで流れていく曲で、“憂鬱”という印象は受けませんでした。僕には、むしろこの曲と#7が関連ある感じを受けたのですが・・・。
11.ワルツ・ド・ブラヴーラ          S214 no.1       1835/1850年 
リスト晩年のワルツには見られない、屈託のない明るいワルツで、かつ開放的なヴィルトゥオーゾピースです。
12.無調のバガデル              S216 a          1885年
リストの先進性を最も象徴する作品です。曲が進むと聴きやすさを伴ってきますが、曲の出だし部分の不安定な響きは、その後の音楽の進路を予見しています。“無調のバガデル”はもともと“メフィストワルツ第4番”として考えられて作られた曲です。
13.忘れられたワルツ第1番         S215 no.1        1881年
“忘れられたワルツ”の4作のうち最も有名な曲です。やはり最も洗練されて、リストの不可思議な和声の冒険が、作品として最もまとまった形となっています。
14.メフィストワルツ第1番           S514            1859/1860年
ワルツというカテゴリーだけでなく、リストの全作品の中でも最も有名な曲です。さすがにあらゆる表現技法が盛り込まれ充実した曲です。メフィストワルツ第1番は元々はオーケストラ曲です。オーケストラ版は、そのままピアノ2台のための作品としても編曲されています。インスピレーションはゲーテの『ファウスト』によるのではなく、詩人レーナウの24のエピソードからなる『ファウスト断章』によります。レーナウはハンガリーの詩人で、彼の詩を元に作曲されたものとして他に、リストの歌曲『3人のジプシー』、R・シュトラウスの『ドン・ファン』があります。オーケストラ曲は『レーナウのファウストによる二つのエピソード』というタイトルで、“夜の行列”“村の居酒屋の踊り”という二つの場面で構成されます。ピアノ曲の有名なメフィストワルツ第1番は、後者の“村の居酒屋の踊り”の部分です。この曲はカール・タウジヒに献呈されました。


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