1999年12月に読んだ本


【飛翔せよ,閃光の虚空へ!】 キャサリン・アサロ ハヤカワ文庫

1999.12.27読了.
『スコーリア戦史』の第一冊目.実は過去,何者かに連れ去られた人類がいて,しかもそのものたちは二手に分かれてしまい,現人類と三つ巴でモロモロがある,という設定.で,二手に分かれた人類ってのが,『レンズマン』のデルゴン貴族とその犠牲者というような関係で,その王子王女がロミオとジュリエット的関係に陥るわけですねぇ.
設定とか物語とか結構ハードでそれっぽくていいのだけど,どうも人間関係のところがいまいち納得できないところがあるのが欠点かなぁ.設定もねぇ,ちょっとあまりと言えばあまりっていうような感じがするよね.
悪くはないけどなぁ.B−

【パソコンは猿仕事】 小田島 隆 小学館文庫

1999.12.24読了.
この頃,小田島隆のHPの更新があまりされていない.Webで読めないならってことで,しょうがないから目についた本を買ってしまった.世の中の移り変わりを感じてしまうよねぇ.
中身はPCがらみのネタでの雑文集であって,書き下ろしなので同一ネタの繰り返しとか矛盾とかが無いのがうれしい(彼のハードコピーの本を読むのは2冊目なのでほかの本がそうなっているのか不明だけどね).しかしやはりWebの文章と違って遠慮があるのですねぇ.その辺が物足りない.サッカーネタも堂々と書いてほしいねぇ.ま,Web日記がちゃんと更新されれば問題ないのだけどね.B
【エンディミオンの覚醒】 ダン・シモンズ 早川書房

1999.12.22読了.
『エンディミオン』の解決編.パクスの支配から人類を解放し,アイネイアーを守り,地球を元の位置に戻すことが主人公のロール・エンディミオンにできるか?,というお話.糞厚い本だけど最後の方は走りすぎたと感じるほどで,中身はたっぷり詰まっている.
しかしシモンズって人は壮大な謎や魅力的な設定を書くのはうまいけど,それを解決する手際は不器用なのですねぇ.『ハイペリオン』の時もそうで,あのまま行っていたら大傑作だったのになぁ,という恨みを感じてしまうのです.前編は天才レベルなのに解決編は秀才レベルというわけで,普通だったら解決編の水準の本を読めば大満足なのに,前があまりにもいいものだから欲求不満になるという,まあ,損なお話だよねぇ.
今回も説明的なところ以外はすばらしい.例えば雲の惑星の描写とかさ.だけどロールが説明を後回しにされて五里霧中で動き回るところなんかうんざりするのですよねぇ.それにいきなり『ハイペリオン』の話なんて出てきたって私はもう忘れてるぞ.しかし続編期待.B+

【大久保町の決闘】 田中 哲弥 電撃文庫

1999.12.17読了.
『やみなべの陰謀』に触発されて読んだ.
明石市大久保町はガンマンの街だったのですねぇ.男は皆銃を持ち歩き,決闘で人を殺しても罪にならない.そういうところに勉強に専念するために主人公はやってくる(おばあさんが住んでいるのだ).で,いきなり決闘に巻き込まれたり,かわいい女の子に会ったり,腕利きと間違えられたり…,というお話.
この本のキモは当然ギャグであって,これがなかなかセンスがいい.高校生向きとか考えないで遠慮無く書いてるのがいいよね.B

【虫の目で人の世を見る】 池田 清彦 平凡社新書

1999.12.15読了.
虫の話に関連して人間のことも少し書いたエッセイ集.当然ながら作者の関心はまず昆虫,なかんずくカミキリ虫にあり,結果としてカミキリ虫に関連したところが一番力がこもっていて読んでいて楽しい.それから話が脱線するところがあって,このあたりも楽しいなぁ.蝶の分布と女子大生と女子高生の関連のお話なんていいよね.それに相変わらず虫屋のゴシップも楽しい.
ちょっと真面目になって書いてるところもあって,これもそれなり….B

【狩のとき】 スティーヴン・ハンター 扶桑文庫

1999.12.14読了.
相変わらずハンターはよろしい.
迫力.第一部の反戦運動のあたりは好みじゃなくて,こりゃ駄目かなぁと思ったけど,第二部のヴェトナムの場面が素晴らしい.そうかこれが散々過去の作品で言及されていたあれですねぇ.作者,力を入れています.
で,下巻に入って現在.二人が撃たれるシーンが無いのがクールだねぇ.このあたりが並じゃないところ.センスがよろしい.そして物語はエスピオナージュに変身する.しかし主人公はボブ・リーだもんね,普通のスパイ物ではない.謎を解く鍵はボブ・リーの足の中にあるのだこれが.ここもいいなぁ.お気に入りの場面だ.
そしてお約束の撃ち合い.ヴェトナムからの因縁の対決ですねぇ.ここはしかし少し御都合主義かも.少なくとも何発か撃ってから行けよなぁ.で,最後は種明かし.ま,これはこれでしょうがないでしょうねぇ.このあたりは並.
とにかく上巻のヴェトナムの場面.こいつだよねぇ.B+

【私と月につきあって】 野尻 抱介 富士見ファンタジア文庫

1999.12.11読了.
考えてみれば私も昔は月に行きたかった.う〜ん,今でもか….ではロケットマニアか?,というと全然そんなことは無い.しかし,ロケットのことをリアルに書かれると琴線にふれる.ということで実にツボな小説でありました.
『ロケットガールズ』の三人が(これについては別の本に書かれている.読まねば)フランスの月飛行を手伝うためギニアを訪れるところから物語は始まる.ここで第一のトラブル.食中毒が発生して正副パイロットがダウン.三人がエアバスを着陸させる.ギニアでのミッション訓練でもフランス側(美少女5人)とのいさかいもあり,事故(?)でフランス側の人数が減る.打ち上げた後もトラブルが相次ぎ,月飛行は風前の灯火になるけれど,意志と知識で打ち勝つのだ.SFだなぁ.
工学的なお話は多分正確なのでしょう.そのあたり,ゆるがせにしないで書いている雰囲気があって好ましい.『おそらく二十世紀最後にして最高の月探検SF』(著者の言葉より)っていうのは照れで書いているかもしれないけどホントかも.ただ,ヤングアダルトな文庫だからさらっと終ってしまうのですねぇ.もっと書込んで欲しかったなぁ.しかしちょっと感動物….B+

【幻の特装本】 ジョン・ダニング ハヤカワ文庫

1999.12.10読了.
『死の蔵書』の続編.今回も古本のお話.新手なのはシリアル・キラーと古本をつなげたことで,ちょっと面白い.ただ,登場人物の関係が少し飲み込みにくいため,最後の謎解きの場面でいまいちすっきりしない.悪くはないのだけどねぇ,散漫な印象があるのが残念.
相変わらずアメリカの古本の世界を見せてくれるのはうれしいのだが.B

【有限と微少のパン】 森 博嗣 講談社ノベルズ

1999.12.7読了.
森作品の中ではあまり良い出来ではない.何よりも冗長,長すぎる.どうも登場人物がうまくかみ合っていないような印象がするのですねぇ.事件の謎も大した事はないし.『F』の時の博士が出てくるがどうも印象が違うなぁ.
しかし,途中で放り出さなかったってことは,つまらなくはなかったということかもね.C+

【パソコンゲーマーは眠らない】 小田島 隆 朝日文庫

1999.12.4読了.
小田島隆の本を読むのは初めて.雑誌とか新聞で細かいのは結構読んでいたけどね.ま,一番読んでいるのはWeb日記か….
この本は10年ほど前にアサパソに連載されていたもので,私も多分少し読んでいる.通読してみると,まず一貫性を感じますねぇ.考え方とか趣味とかね.で,それがまたオタクとして,あるいは拗ね者として好ましい(ってのも変な言い方か).切れ味としては,書きたいことを書いている今のWeb日記の方が当然いいけど,こちらもなかなかのもの.サッカーネタがないのがちょっとさびしいけどね.B

【SINKER 沈むもの】 平山 夢明 トクマ・ノベルズ

1999.12.2読了.
いやー,エグイお話….娘のいる私にとってはちょっと怖いかも.
トマス・ハリス『レッド・ドラゴン』的な話で,超能力者と児童虐待をからませたところが新味.私はこの虐待関連がとても苦手で読み飛ばしたページがいくつかある.確かにいい作品なのでしょうねぇ.しかしあまり好みではない.B
この本は旅歌さんにお借りしたもの.どうもありがとうございました.

【ウィーン】 上田 浩二 ちくま新書

1999.12.1読了.
ローマ時代からハプスブルク家までのウィーンの通史(と文化)を簡単に書いた本.視点は『よそもの』がウィーンを作ったというもの.確かにそれはそうだろうけど,江戸だってニューヨークだって『よそもの』がやって来て作った都市だろうしねぇ.ま,ウィーンはその『よそもの』がより多かったのかもしれない.
興味深くは読んだけれど,どのくらい中身を覚えているは保証できない.どうも私はヨーロッパの歴史に弱いんだよなぁ(どこかの歴史に強いのか,といわれると絶句してしまうけれど).C+

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