1999年7月に読んだ本


【星界の戦旗2】 森岡 浩之 ハヤカワ文庫

1999.07.26読了.
『1』では宇宙での艦隊決戦がメインだったけど,今回は地上世界でジントがドツボにはまった話であって,派手な展開が無いからその分マイナスかも.しかもどうも私にはこのシリーズの宇宙空間についての考え方がいまいち分かっていなくて(理解しようという気持ちが無いんだよなぁ.だから私が悪い),そのへんもマイナスですねぇ.しかし,まあ,面白くなくないことはない(って結局どうなんだ?).C+

【星界の戦旗1】 森岡 浩之 ハヤカワ文庫

1999.07.26読了.
いや,別に悪くはない.面白いし,ページをめくらせるし,背後の世界のことも随分考えているみたいだし,多分作者の頭の中にはこの世界の物語の断片がたくさんあるんでしょうねぇ,読んでいて安心.ま,キャラクタとストーリィを素直に楽しむということだよね.B−

【天国までの百マイル】 浅田 次郎 講談社

1999.07.23読了.
相変わらずというか,腕が上がったというか,泣かせるのがうまいよなぁ.頭の方を読むだけでストーリィは大体分かるんだけど(そしてそのとおりに基本的には物語は進んでいくのだが),それを細部で微妙に裏切るってのがうまいよね.例えば高利貸しを突然出したりとか,最後の方の電話の会話(一方的だけど)の連続とか.で,不自然なところとか,都合のよすぎるところを読者に忘れさせる.良くできていて,安心して読める.しかしそれだけっていえば確かにそれけかも.B

【リメイク】 コニー・ウィリス ハヤカワ文庫

1999.07.23読了.
映画について書かれた本は楽しい.
しかしそれにしても対象は白黒時代のフレッド・アステアだもんなぁ.多分2,3本ヴィデオを持ってるのだけど(LDではカラー時代のをやはり2,3本),現在デッキを持っていないので(ヴィデオもLDも)見ることはできない.そういえば『ザッツ エンタテインメント』でのアステアとエレノアのタップはすごかったよね.う〜む,やっぱりデッキを買うべきだろうか.
とにかく全ページ映画(アメリカ映画ね).登場人物のセリフは映画の引用だし,人の行動は映画のシークエンスになぞらえる(一人称小説なのだ).SF味はちょっとだけど(ま,舞台は未来だしね)新手のタイムトラベル物かも.ヒューゴー賞をたくさん集めてハリソン・フォードと交換したい,というウィリスらしい小説でしたねぇ(でも私としては『ドゥームズデイ・ブック』の続編を読みたい).B
【指揮のおけいこ】 岩城 宏之 文藝春秋

1999.07.21読了.
クラシックについてはほとんど縁の無い私だけど(しかしポップスよりは聞いているなぁ),岩城宏之の本は結構読んでいる.この本は結構真面目に指揮について書いていて,『そうだったのかぁ』と思うところがずいぶんとある.今度,図書館で同じ曲を違う指揮者がやってるのを借りてきて聞き比べてみよう.
たまに読み返してみるべき本かもしれない(というほど大げさじゃないけどさ)ので,図書館で借りたのは不正解だったかも.B

【流沙の塔】 船戸 与一 朝日新聞社

1999.07.19読了.
船戸与一はやっぱりいいねぇ.
物語は4つの視点から語られる.1人目は横浜の華僑を育て親に持つ揉め事解決屋.2人目は恋人を人質にとられた解放軍の戦闘英雄.3人目は東トルキスタン・イスラム党に入党したばかりのインテリ青年.4人目は中国情報機関の女性管理者.この4人が最終的にどうしようもなく運命に引きずられて出会う.
革命ってのは必然的に裏切られるというのが船戸与一のテーマの一つで,彼はそれを長年の間書いてきたと思うんだけど,今回はまた船戸作品の中でも救いの無さは一二を争う.どいつもこいつも登場するたびに『多分こいつも死んじゃうんだろうなぁ』と思いながら本を読むってのはあまり私の趣味じゃない.にもかかわらず,面白い.取材に金と汗がかかっているなぁ,と思わせる作品でしたねぇ.
脇役で戦前に大陸浪人をやっていた老人が出てきて,この人が魅力的.彼との対比で現代の日本人が批判されるんだけど,確かに批判されるのは正当だけど『流沙の塔』を築く奴等に比べればマシだよなぁ,とも思うぞ.A−

【強盗心理学】 ロス・トーマス 立風書房

1999.07.13読了.
翻訳としては『恐喝』よりマシですね.しかしやはりちょっといかんですねぇ.これも訳し直したほうがいいのでは….
登場人物はともかく魅力的であろうと思われるようには訳されている.特に泥棒一味は結構.しかしこういうふうに翻訳されるとロス・トーマスの欠点がよくわかるよね.つまり,いいかげんな設計の元に行き当たりばったりで書いているってことであって,これは裏を返せば美点なんだけど,どうしても美点に見えないんだもんなぁ.困ったことだよね.B−.

【恐喝】 ロス・トーマス 立風書房

1999.07.12読了.
いや,どうにも訳文がいただけない.ロス・トーマスってのは物語の展開とか意外な犯人とかを期待して読むんじゃなくて,登場人物の個性や感性,細部の描写,皮肉な成り行きとそれを書いている作者の態度なんかを面白がるってのが正しい読み方だと思うんだけど,この訳文じゃ筋を追うだけで精一杯であって,やっぱりロス・トーマスだから面白いんだけど,期待する面白さとは程遠い.
1976年の出版だからこんなものなのかなぁ.でももうちょっと何とかなりそうな気もするけどねぇ.ま,76年で950円もしてこれじゃ売れないよね.しかし,シンガポールでインディアンっていったらインド人って訳すよなぁ,普通.C+

【時間的無限大】 スティーヴン・バクスター ハヤカワ文庫

1999.07.11読了.
ストレートなハードSF.ちょっとストレート過ぎて困るかも.一番気に入ったものは生きてる巨大宇宙船ですね.こいつがワームホールに入っていくところなんてSFっていう感じがしていいよなぁ.イギリスの芝生に寝転がっているんだけど,実は木星軌道ってのも心をくすぐられる.しかし,戦いの場面は相当に安易な感じがするし,大体メインの部分がよく理解できないってのが困るよねぇ.いや,わかんなくてもいいんだろうけどさ(多分)B−

【正しく生きるとはどういうことか】 池田 清彦 新潮社

1999.07.8読了.
いや,真面目に書いています.著者の意見には原則的に賛成.各論については多分色々あるでしょう.ま,理想的な状態を考えてもしょうがないよなぁ,ってのが私の立場だから,本書の後半の大部分については意見を保留ですね.それよりも,現実の諸問題についての意見を読みたかったかも.ま,それはこの本に書くべきことじゃないのだけどね.高校生が読むと良いだろうなぁ.B
【対談 中世の再発見】 網野 善彦 阿部 謹也 平凡社

1999.07.8読了.
この本って1982年の出版だから結構古いんですねぇ.だから終りの方の2章(歴史学そのものについての問題点)なんてたぶん古びているんでしょう.古びていなかったら問題だけどね.他のものについても当時としては画期的だったのだろうけど,今となっては常識的なところが多いのではないのでしょうか(私の偏見かも).しかし阿部の指摘,互酬関係にキリスト教会が介入した結果資本の蓄積がおこり,ひいては公共性観念を生み出したっていうのは魅力的な説ですねぇ.イスラムの場合はどうだったのだろう?B

【チグリスとユーフラテス】 新井 素子 集英社

1999.07.6読了.
久しぶりの新井素子.
はるか未来,ある植民惑星で不妊のため人類が絶滅寸前になり,残された最後の一人が話し相手が欲しいためにコールドスリープしている人間を次から次へとたたき起こすという,まあなんというかすごい話であります.
語り口は相変わらず新井素子であって,好きな人はいいけど,嫌いな人は多分多いんだろうなぁ.私は特に嫌いじゃあない.で,登場人物がこれまた新井素子なんだよなぁ.いや不満をいっているわけじゃなくて,20年以上よくもまあ変わらないものだよねぇ.
えーと,小説を読むと,思わぬ展開があって,というか意外なものが見えて,思わずゾクッとすることがあるのですが,そしてそういうことがあるのが私が小説を読み続ける理由の一つでありまして(しかもそれはめったに起こらない),この本では2回,それがあった.ということで全体的には高い評価はできないけど,B+.う〜む,ほめすぎか?.

【三人目の子にご用心!】 竹内 久美子 文藝春秋

1999.07.3読了.
いや毎度ながら怪しげな話であります.今回は人間と鳥の繁殖戦略とか浮気行動とかについて書いているのだけど,どうにも眉唾ですねぇ.で,この眉唾話を筋が通っているように見せかけるのが著者の腕なわけで,そのへんが面白いといえば面白い.
でもだいぶタネギレじゃないのかなぁ.C+
【冷たい密室と博士たち】 森 博嗣 講談社

1999.07.1読了.
密室のトリックは大した事はない.しかし,密室になった理由とか,行動を説明する論理とかが魅力的.やっぱりミステリは論理がメインだよねぇ.それからコンピュータが遠慮無く出てくるのも(多分,遠慮してるんだろうけど)いいなぁ.登場人物は平面的な印象が強い.この辺は後のものの方がいいね.B−
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