1999年5月に読んだ本


【新世紀の世界と日本】 下斗米 伸夫 北岡 伸一 中央公論

1999.05.31読了.
『世界の歴史』シリーズの最終巻.もうリアルタイムの時代,ゴルバチョフ以降の世界を扱っているわけで,この10年間の総括といってもいいでしょう.まだ未確定で評価のしようもない時代をうまくまとめていて,新聞を読む時の予備知識として絶好.しかしこうやって振り返ってみると世界の動きがどんどん加速しているってのが良く分かるのだけど,これから多分ますます変化が激しくなるのでしょうねぇ.どうなることやら.B+
【ボビーZの気怠く優雅な人生】 ドン・ウィンズロウ 角川文庫

1999.05.26読了.
久しぶりのウィンズロウ.ちょっと軽いけど(って言ったって軽いのが持ち味だから,軽すぎるって言うべきか)満足でした.また,ところどころ言い回しが何ともクールで,私の嗜好にぴったりでありまして,こうだからウィンズロウを読むのはやめられないよねぇ.ま,『仏陀…』はあんまり好きじゃないけど.
物語としては,ケチでドジなこそ泥(しかし海兵隊の英雄ってのが嘘っぽいよねぇ)の主人公が麻薬王の替え玉をさせられ,右往左往で大騒ぎってものでありまして,読み終えてみると筋が通っていないところが散見されるのですが,読んでる間面白ければいいだろっていう理論ですねぇ,うん,確かに面白い.B+
【満天の星】 浅田 次郎 講談社

1999.05.24読了.
これでこのシリーズもお終い.『週刊現代』を立ち読みする事も,おかげでなくなってしまった.このエッセイが始まった時は浅田次郎なんて知る人ぞ知るって感じだったのが(私だって偏見があって読んでいなかった)見る見るうちにメジャーになっちゃいましたねぇ.その辺のあたりの事を最後に書いているけど,確かに今止め時だったのかも.
しかし,文章表現のうまい人だよねぇ,達意という面から見れば清水義則と双璧なのでは.B+.
【イントルーダーズ】 スティーブン・クーンツ 講談社文庫

1999.05.20読了.
やっぱりこの人は飛行機の事だけ書いていればいいのですねぇ.前2作のようにトム・クランシーの真似をしちゃいけない.この作品でも一番良いのは空母での日常生活であって,しかもそれが全体のほとんどを占めているわけで,それが何といっても価値を高めている.恋愛とか除隊しようとかの主人公の悩みや最後の方のドンパチは,つまりはツマでありまして,別に無くてもかまわない.クーンツを見直したかも.B+

【冷戦と経済繁栄】 猪木 武徳 高橋 進 中央公論

1999.05.18読了.
もうこの辺になると私がリアルタイムで知っている新聞等で読んできたホットな世界なんだけど,考えてみれば冷静な目で見直した事はないなぁ.冒険小説とかスパイ小説ではどっちかっていうと右がかっているし,新聞もTVもリアルタイム過ぎて全体が分からない.そういうのを,こういう歴史家の目で見直したものを読むというのは面白い.特に旧ソ連関連の文書が続々と公開されているし,西側諸国に情報公開も進んでいるので,これからこういう分野はますます面白くなるんでしょうね.B+
【状況証拠】 スティーヴ・マルティニ 角川文庫

1999.05.14読了.
マルティニはやっぱり面白い.だけど,読後冷静になって振り返ってみると,何でこの人は起訴されたんだろうと不思議になってしまうよなぁ,検察側があまりにも無能ですよね.真犯人もなんだかなぁでありまして,少し不満なのですが,読ませる力があるのですねぇ.B

【退屈無想庵】 田村 隆一 新潮社

1999.05.11読了.
70歳になろうとしている頃の田村隆一の日記風エッセイ集.相当手抜きしているけれど(以前に書いたものの再録が多い)年寄りということと,再録部分を読んだことが無いから許す.しかし,この人文章がうまいよね.リズムがある.惜しい人を無くしましたねぇ.一種の文化遺産だったかも.B
【大江戸生活体験事情】 石川 英輔 田中 優子 講談社

1999.05.10読了.
大江戸シリーズの番外編って感じなのでしょうか.実際の江戸時代の生活を体験してみる(といっても身近なものだけ)というもの.例えば時計(時刻ですね),暦,火打ち石,着物での生活という具合.
思い起こしてみれば私が子供の頃,こたつは炭だったし,七輪や練炭の火鉢を使ってたよなぁ.路地の奥の方の家ではかまどで御飯を毎日炊いていた.突き当たりには井戸もあったしね.大人は結構着物を着てたのも思い出す.小学校一年生の時夏休みに行った温泉は電気が無くてランプだった.
というようなことで内心,今の生活がいびつなんだろうなぁと思っている訳で,そういう時にこういう本を読むと『このままじゃいけない』なんて思うのですねぇ.でも社会のしくみが変っちゃったもんねぇ.でも着物なんて着てみたいかも….B

【新艦長着任!】 デイヴィッド・ウェーバー ハヤカワ文庫

1999.05.07読了.
これはまた帆船冒険小説をそのまま宇宙に持ってきたようなお話でありました.艦長が主人公で(結構美人のおねーさん風,実はおばさん),着任した艦の乗務員との確執と解消,卑劣な敵と圧倒的不利な戦いと勝利.おきまりの超光速航行の理屈は何か面倒くさいことが書かれていて理解するのはやめちゃったけど,通信はどうしてるんだろう?.ちょっと疑問かも.
シーフォートほどアホらしくないのが中途半端な感じだけど,まだ一巻目であって,次に期待だね.あ,最後の決戦のところ迫力があるし長く続くのでよろしい.B

【極大射程】 スティーブン・ハンター 新潮文庫

1999.05.04読了.
いや,結構.大藪春彦以来の銃器オタクの小説でした.物語も結構面白いのだけど,何よりも銃器の描写がよろしい.ここまで書いてくれて,そして銃器に魅せられた人間を書いてくれて満足でした.物語的には特殊部隊に主人公が追いつめられた,というところからの逆襲の展開が素晴らしい.しかし,『ブラックライト』を先に読むべきではなかったなぁ.A−.

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