1999年3月に読んだ本


【プラチナ・ビーズ】 五條 瑛 集英社

1999.03.31読了.
なんといっても,HUMINTの部分がいいなぁ.坂下のキャラクタも結構.終りにかけて伏線がつながっていくのが快感であります.ちょっと固い表現が目に付くけれど,これはこれでよろしい.ただ最後がねぇ,第四部はいらなかったかも….いや,やるならやるでガンガンやってもらった方がよかったのではないでしょうか.
しかし,とにかく前半のウダウダがよろしい.エスピオナージはこのかったるさが魅力なんだよね.B+

【新世紀日米大戦7】 大石 英司 中央公論

1999.03.28読了.
音無登場.土門は相変わらずついていないよね.そして相変わらず続く訳の分からない戦争….この訳の分からなさをもっと深く追求していくとカフカになっちゃうかも.
さて,今度は硫黄島が争点になりそうなんだけど,この調子でガ島とかアリューシャンとかやるのでしょうか.そうなったらいつまでたっても終らないぞ.B

【数奇にして模型】 森 博嗣 講談社

1999.03.26読了.
久しぶりの森博嗣.久しぶりだとやっぱり面白い.今回は趣味を生かして模型の世界が舞台だったから,余計に生き生きしてたのかも.登場人物も変な人物の目白押しでありまして,この辺も得点が高い.たしかに理系の人間って傍から見ると面白いよね.うん,オタクも見てると面白い.萌絵も今回はなかなか味があります.
ミステリ的にはここまで長くする必要はなかったと思うけど,悪くはない.B
【ヨーロッパの舌はどう変ったか】 南 直人 講談社選書

1999.03.24読了.
副題は19世紀食卓革命でありまして,つまり近代から現代にかけてのヨーロッパの食事情について書かれたものです.ま,ヨーロッパ人は何を食べてきたかってことですね.ま,庶民は20世紀初頭までろくなもの食べてなかったんですねぇ.面白かったのだけど東洋との比較が欲しかったなぁ.多分枚数的に入らなかったんだろうけど.それから都会の外食文化についての突っ込みも欲しかった.ま,これは別の本を捜さなきゃね.B

【クルドの暗殺者】 スティーヴン・ハンター 新潮文庫

1999.03.22読了.
ハンターってやっぱり面白い.上巻は『ジャッカル…』以来のパターンだなぁ,と思って読んでいたのだけど,下巻になっての展開がよろしい.中東レストランの放火をめぐる顛末は意表をつかれましたねぇ.こういう瞬間があるから読書はやめられない.メキシコでの新米局員の活躍(?)も結構.その活躍が省略されているのも(ほんとは読みたいんだけど)よろしいのでは.B+
【世界人名ものがたり】 梅田 修 講談社現代新書

1999.03.18読了.
世界といってもヨーロッパの人名について由来を書いた本.最初面白かったけど,ずっと同じペースで進んで行くので少々退屈.座右においてちょっと調べるときに読むってのがいいのではないでしょうか.余計な知識だけどそういうのが面白い.C+
【とびきり陽気なヨーロッパ史】 テランス・ディックス 筑摩書房

1999.03.17読了.
イギリス以外のEU加盟国の歴史についてかかれた本であります.なぜにイギリス以外かというとイギリス人向けに書かれたから.で,厚くは無い本に11ヶ国もの歴史を詰め込んでいるのでどうしても概略になっちゃうよね.ま,つまりはそういう本でありました.C.

【読書学】 夏目 房之介 潮出版社

1999.03.15読了.
本について書かれた本ってのは面白いよね.夏目房之介とは読書傾向が若干だけど似たところがあり,そこも興味深い.だけど,どうしても彼は漫画方面に話題が行っちゃうんだよね.ま,それは仕方が無いにしろ,あまり詳しくないからくやしいことは事実だ.
また本書はちょっと散漫な印象があるなぁ.5年に渡って連載されたものだからしょうがないかもしれないけどね.それに絵のページと文章のページの混在の具合が少し読みにくい.C+
【極微機械ボーア・メイカー】 リンダ・ナガタ ハヤカワ文庫

1999.03.14読了.
SFでメイカーっていえば砂虫のことだったんじゃなかったっけ.って四半世紀昔のおぼろげな記憶だけどさ.この作品ではナノマシンのことだ.あのクラークの『十分に発達した科学技術は魔法と…』を地で行く雰囲気で物語は始まる.主人公は疎外されたスラムの住人で科学技術とは縁が無いし,読者は説明無しで色々な用語が出てくるので(例えば幽霊とかね),主人公も読者もとまどう.しかしこのとまどいが悪い感じじゃない.
また,例えばニッコーの肢体とか夏別荘社の描写がSF的に心地良い.こういうのに私は弱いんだよね.B

【疑惑】 バリー・リード ハヤカワ文庫

1999.03.09読了.
バリー・リードはいいよね.外れが無い.
主人公を含め登場人物は前作でおなじみの人間が出てくる.シリーズとしては2作目なんだけど,もっとお付き合いしているような感じがする.この辺がまずいいところですね.今回は精神科における医療過誤問題を取り扱っており,つまりは民事事件というわけなのですが,アメリカって民事でも陪審制度なんですねぇ.そのあたりのアメリカの法制度も興味深いしわかりやすく書いてある.ただ悪役がちょっと悪役過ぎたのではないでしょうか.B

【近代ヨーロッパの情熱と苦悩】 谷川 稔 北原 敦 鈴木 健夫 村岡 健次 中央公論社

1999.03.02読了.
19世紀のヨーロッパについて,フランスの革命,ドイツの統一,イタリアの統一,革命前のロシア,イギリスの最盛期などなどが書かれている.やはり年代が近いこともあるし,何かと教科書や本で読んだことのある時代であって,親しみやすいよね.
しかし19世紀ってのはむちゃくちゃな時代だったんだねぇ,いや20世紀の方がもっとむちゃくちゃだっと言われれば確かにそうだけどね.ま,著者達が冷静に歴史を見ているのが救いだね.これからはそういう目が確かに必要かも.B
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