1998年12月に読んだ本


【死の蔵書】 ジョン・ダニング ハヤカワ文庫

1998.12.29読了.
この本の書評を巡って論争があったことを記憶しているけど,確かに『本好きにはたまらない』本だよね.古本屋をうろつきまわった頃を思い出してしまった.しかし,アメリカのエンタテインメント系古本って結構高いんだねぇ.キングの値段にびっくりしてしまったけど,キングに対する主人公の評価にやりともさせられた.
物語的には,まあ面白かったという程度のものだったので,『このミス』1位ってのはうなずけない.だからベスト10ってのは嫌いなんだ.B

【フリーダム・ランディング】 アン・マキャフリィ ハヤカワ文庫

1998.12.26読了.
悪くはないんだけど別に傑作でもない.確かに読ませる力はあるんですよね.続編も読むでしょう.
ただ,異星人があまりにも人間に似過ぎているの気に食わない.それにたとえ人間に精神構造が似ていたとしても恋愛感情を抱くのだろうか.もし恋愛感情を抱いたとして肉体的関係が築けるのだろうか.どうにもその辺にリアリティを感じることができない.C+

【新世紀日米大戦6 祖国ふたたび】 大石 英司 中央公論

1998.12.22読了.
土門は相変わらずですねぇ.先の見えない戦争の中で彼がいるとほっとします.
今回は結構艦船同士の戦いがあって面白いんだけど,こんなに日本が勝っちゃっていいのかなぁ.その分,土門がワリを食っているというか.
しかし,未来の先進国対先進国の戦争っての多分こんな感じなんでしょうねぇ.あほらしいというか無駄というか….B

【神の狩人】 グレッグ・アイルズ 講談社文庫

1998.12.19読了.
評判通り面白かった.が,確かに面白いし,サイコサスペンスとして良くできていると思うんだけど,絶賛とまではいかない.若干の不満があるのです.
まず一つは犯人像.『レクター博士のライバル』と言われているようですが,どうも私にはレクター博士の気味悪さの方が一枚上手の印象がある.ブラフマンはあくまで人間の域にあり,人間の愚かさや欲望から離れられないのに対し(たとえ死体と踊っていても私にはそう見える),レクター博士は飛び越えちゃっているのが恐ろしい.
もう一つは主人公像であり,半大人でうだうだ悩んでいるのがうっとうしい.その半大人がやたらと女の心理に通じているというのも不可解.
不可解といえばエリンの行動が私には分からない.なぜ彼女は主人公の家に行ったんだろう?.どこか読み飛ばしてしまったのだろうか.それが一番のミステリだなぁ,この本の中で.B+.

【事件記者3 不完全仏殺人事件】 大谷 昭宏 幻冬社

1998.12.17読了.
3巻目は長編でした.いや,面白かった.
事件はミステリになるような殺人事件じゃ無い.単なる殺人事件.ま,バラバラ殺人だけどね.最初から犯人は分かっているし…(もちろん警察にも分かっている).で,それをどう立件するか.新聞記者はそれをどう取材するか.特にこの事件では警察は新聞社にも隠れて捜査をしていた.これらの細部がたまらなく面白い.そしてまたそれを語る独特の文体が光る.いや,あまり趣味の良い文体じゃないのだけど,大阪のデカとブン屋の物語はこういう風に記述するしかない,と読者に思わせてしまう.そして著者の主張.現場を踏んで固められた意見が貴重です.A

【人類の起源と古代オリエント】 大貫 良夫 前川 和也 渡辺 和子 屋形 禎亮 中央公論

1998.12.13読了.
古代のオリエントってメソポタミアにしろエジプトにしろえらく長いんで混乱しちゃうんだよねぇ.しかし大ピラミッド(クフ王)からツタンカーメンまで千年以上あるとは知らなかった.今から千年前って言えば平安時代だよねぇ.C+

【麦酒主義の構造とその応用力学】 椎名 誠 集英社

1998.12.07読了.
椎名誠は傑作も書くけれど,こういうどうでもいいような本も書くんだよねぇ.ということで,C.

【今はもういない】 森 博嗣 講談社

1998.12.03読了.
珍しくメインは一人称で語られる.当然それは趣向であるわけで,それと本来のミステリとしてのトリックがある.まあ,うまくできているけれど,ちょっと冗長だったかも.番外編ですね.それならいいか.B−.
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