1998年8月に読んだ本


【第二次世界大戦と米ソ対立】 油井 大三郎 古田 元夫 中央公論社

1998.08.28読了.
第二次世界大戦については余り知ることが無く,断片的な情報を得ていて分かった気になっていたけれども,知りませんでしたねぇ.考えてみれば通史のような形で読むのは初めてのこと.
ベトナム戦争や冷戦についても同様.現代に近いところでもあり,資料も随分公開されているからか,うまくまとまっている.つまりは愚行と行き違いだったのですね.ということは21世紀も戦争の世紀である可能性は大きいのか.
ベトナム戦争がカンボジアにエスカレートした時,アメリカはなんて馬鹿なことをやるんだろう,これで負けるぞ,と思ったのですが,やはりあれは間違いだったのですね.私は湾岸戦争の時,これはアメリカの没落の始まりだと思ったのだが,どうなんでしょう.A−

【孤剣】 藤沢 周平 新潮文庫

1998.08.25読了.
『用心棒日月抄』の続編であり,前作よりも登場人物の目鼻がくっきりとした感じがありなかなかよろしい.といっても,まだ私は主人公になじみをもつことができない.そこが不満なんだけれど,次の作品も読みたい.
だけど,この用心棒達の刀はなんて丈夫なんだろう.ま,そこはお約束ですね.B
【バンドーに訊け】 坂東 齢人 本の雑誌社

1998.08.21読了.
『夜光虫』を買わなかったんだけれども,なぜ買わなかったかをこの本を読みながら考えてみた.結局,坂東の嫌いな系統の本は私も嫌いなんだけれど,彼の好きな系統は私は敬遠したいということですね.例えばエルロイ,萬月.両者共,本屋で手にはとってみるけれども,どうしても買う気にならない.『「卑しき街を徘徊するしかない卑しき者ども」の姿こそが,よりリアルに読む者の心を揺さぶるのだ』ということなんですが,私にとっては『リアルがなんぼのもんじゃい』と言いたくなるのも事実.
坂東とは『深夜+1』でずいぶんバカ話をしたものだが,どんな話をしたか余り覚えていない.その頃の奴等がこの本にちらっと出てくるのが懐かしい.A−
【用心棒日月抄】 藤沢 周平 新潮文庫

1998.08.14読了.
今まで何回か途中で挫折していたが,やっと読了.悪くはない.面白いですよ確かに.人気があるのもうなずけないこともない.だけど,どうも主人公がでくの坊のように思えるのだよなぁ.B−
【惣角流浪】 今野 敏 集英社

1998.08.11読了.
著者得意の格闘技武者修業物.会津士族の息子武田惣角が合気を発見するまでの物語です.手慣れたものですね.手の内に入っているという感じがします.ただ,登場人物の会話がちょっと現代的すぎるのではないでしょうか.いや,作者が苦労しているのは分かりますし,主人公に対して嘉納治五郎を配しているのも納得なんですが,違和感がぬぐえません.使っている単語が新しすぎますね.
でも,久しぶりの小説.楽しみました.B−
【もうすぐ21世紀ジャーナリズム大合評】 丸谷 才一 他 都市出版

1998.08.06読了.
以前出た『ジャーナリズム大批判』シリーズの続編です.ジャーナリズムの批判を鼎談で行うというもの.例えば,出版社のPR誌について,あるいは大相撲のNHK放送について,あるいは新聞の見出しについて,といった具合です.固定メンバーは丸谷才一であり,後の二人はそのテーマによって選択される.語り口は上品であり,おおむね趣味がよろしい.
歴史シリーズについてのものと太平洋戦争についての鼎談が私にとって面白かった.ま,知的な暇つぶしには絶好.C+

【むくどりの巣ごもり】 池澤 夏樹 朝日新聞社

1998.08.04読了.
この頃読んでいる頑固爺系に比べると,池澤夏樹は常識人に見えるし,文章は軽く感じられる.この本は週刊朝日の連載をまとめたもので,私は全部読んでいるはずなのだが,覚えていないものがいくつかある.つまりは再読なのだけれど,再読にも耐えられますね.B−

【江分利満氏の優雅なサヨナラ】 山口 瞳 新潮社

1998.08.03読了.
やっぱり山口瞳はうまいや.最後まで腕が落ちなかった.えらいものです.しかし,うまいけれども別世界の人ですねぇ.
時折,週刊新潮に目を通すことがあり,その時は『男性自身』を必ず読んでいたのだが,『ああ山口瞳も死んじゃうんだなぁ』と思ったものです.あれは最後の一つ前の回だったのか.でも,死ぬ直前まで筆を取るというのは,私にとってちょっとつらいものがある.どうもかわいそうでいけない.A−
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