2001年9月に読んだ本


【歴史とはなにか】 岡田 英弘 文春新書

2001.9.27読了.
最初に歴史の定義が出てくる.う〜む,と思いながらもおおむね納得.そして歴史ってのは大ざっぱにいって二つの流儀があり,一つは司馬遷でもう一つはヘロドトスであり,これ以前には歴史は無かったしこれ以後もこの二つのやり方で歴史は書かれているとのこと.いや,ホントだろうか?.しかし納得できないことはない.
で,著者は日本史の始めのところを明快に解説し,時代区分について語る.なるほどねぇ….世界史はモンゴル帝国から始まったというのは読んだことがあったが,時代区分は古代史と現代史に分けるべきだというのが目ウロコ.確かにそうかも.そして最後は国民国家について.これについても基本的に同意.ま,各論においては,ちょっと違うんじゃないの,といいたいところもあるけれど(といっても私の知識では反論できそうもないのがつらいところ)なかなか刺激的で面白かった.B+

【死ぬのは奴らだ】 イアン・フレミング 早川書房

2001.9.25読了.
これも改訳番を再読.
007は愛読していたが,この作品はあまりよく覚えていなかった.舞台はニューヨークで始まり『ドクター・ノオ』と同じくジャマイカへ移る.ただ,まだフレミングが007に慣れていなかったので(という言い方は変だけれどさ),書き方が少し硬い感じがする.ジェイムズ・ボンドの人間的な側面の描写が足りないような気がするのだ.ま,そういうのは余計なことなのだけど,こういう娯楽読み物ってのは元々余計なものなのだからこそ欲しいというのが私の主張だ.例えばこの前読んだ『ドクター・ノオ』の拳銃のお話とか『サンダーボール作戦』の健康センターのこととか『ゴールド・フィンガー』のゴルフの件とか,私が007を偏愛する由縁はそこなのだ.
ま,そういうことでこの作品はさらっしとした仕上がり.悪くはないけどね.B

【ソロ対吸血鬼】 D・マクダニエル 早川書房

2001.9.21読了.
これもすごく久しぶりの再読.
ルーマニアの片田舎(当然,トランシルバニアだ)で,アンクルのエージェントが変死する.死体には一滴の血も存在しなかった.で,ソロとイリヤが現地に向かう.というお話.ドラキュラの子孫とか狼を操る怪人物とかコウモリ男とか怪しい古城とか出てきてなかなか楽しい.ま,結局はいつものとおりスラッシュの陰謀.しかし60年代のこういったお気楽スパイ小説ってのは楽しいよねぇ.B

【教養】 小松 左京 徳間書店

2001.9.19読了.
鼎談集.お相手は高千穂遙と鹿野司.
大体において理科系のお話.色々な分野をカバーしていて確かに小松左京の教養を感じさせる(鹿野司もなかなか.ただ高千穂遙はねぇ…).当然,薄い本なので各テーマは深いところまで掘り下げていないが,普通の科学解説書と違うのは『その先』についての示唆があることで,そういえば昔の小松左京の対談でもそういうところに刺激を受けたなぁと思い出す.だが,やはり人間年をとるもので,小松左京も鋭さを少し失ったような気がするし,私も頑固さを増したような気もする.ということで,目からウロコ,という感じはあまりしない.
だけどさ,小松左京はちょっと偉くなり過ぎかも….B−

【今夜はパラシュート博物館へ】 森 博嗣 講談社

2001.9.18読了.
短編集.
長編をちゃんと読んでいないと面白さがわからない(と思われる)ものがあって,私はあまり熱心な読者ではないので理解しにくいところがあった(でもそういう短編の存在を否定しようとは思わない).ま,それでもどれもなかなか面白く読むことができたのは幸い.というのも,ほとんどお遊び的な作品であり,私はそういうのが好みなのだ.B

【ドクター・ノオ】 イアン・フレミング 早川書房

2001.9.17読了.
何回目かの再読だけど,改訳番.
この作品は007の中ではそれほど好きではなかったものなのだけど,読んでみるとやはり面白い.冒頭,ボンドがMによってベレッタを取り上げられる場面がやはり面白い.こういうシーンが初期には無かったんだよね.今回はジャマイカのことが結構細かく書いてあったことに興味を持った.さすがに住んでいるだけあって観察が細かいし気持ちも入っている.あと,ライムを絞ってそこに氷とジントニックを入れて飲むところがこの作品だったのですねぇ.昔読んだときにやたらとおいしそうに感じたのだ(今もだけど).
後半の胎内めぐりも捨てがたくて,やっぱりいいなぁ.B+

【縞模様の霊柩車】 ロス・マクドナルド 早川書房

2001.9.11読了.
これも20年以上ぶりの再読.
物語は依頼人の妻が依頼人よりも早くアーチャーの事務所を訪れるところから始まる.独裁者の父親,その娘と婚約者(いかにも怪しげ),継母,というわけで,当然ながら相変わらずの家庭の悲劇.アーチャーは結構あちこちを忙しく駆け回り,物語はなかなか複雑であり,ストーリィ的には面白い.ただ,こういうお話だと,どうしても覗き見しているような気がして落ち着かないんだよなぁ.B.

【もっとも危険なゲーム】 ギャビン・ライアル 早川書房

2001.9.10読了.
これでライアル再読はお終い.
こいつも何回か読んでいる.それでも面白いってのはやはり傑作なんだろう.ただ,この頃の私の好みからは微妙にずれているのかも(『本番台本』はずれていないような気がする).霧の湖に着水するシーンが秀逸.B+

【本番台本】 ギャビン・ライアル 早川書房

2001.9.7読了.
これもライアル再読の試み.
やはりどうもライアルでは私の一番の好みであることを確認.考えてみれば無茶苦茶なお話なんだけど,リアリティがあるように感じてしまう.また,何かと皮肉な視点からものを考える主人公が好ましいのかも.A−

【深夜プラス1】 ギャビン・ライアル 早川書房

2001.9.4読了.
ライアル再読の一環.
ライアルの作品で何が好きかと問われると,一番が『本番台本』,その次が『ちがった空』でその後に『深夜プラス1』と『もっとも危険なゲーム』,後はどうでもいいと以前は考えていた.で,現在読み返している最中なのだが,この4作以外にも結構いいのがあるというのが正直な印象であり,確かにこの4作はストーリィ的に面白いので,昔の私はどうもストーリィの面白さに重点をおいていたと思われる.
というところでこの『深夜プラス1』なのだが,確かにストーリィ的には面白いし,登場人物も興味深い.だけどどうも作り過ぎって感じがするんだよねぇ.そのあたりが何か不満.後期の作品の方がどうも今の私には好ましく感じられる.ま,文句を言う筋合いはないけどさ.B+

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