2001年8月に読んだ本


【ちがった空】 ギャビン・ライアル 早川書房

2001.8.31読了.
これもライアル再読.こいつは何回も読んでいる.
ま,パイロットが宝探しに巻き込まれるお話なのだが,何といっても飛行機の描写が素晴らしい.で,そういう描写を覚えているんだよねぇ.例えば冒頭のダコタを三点着陸させるところとか,おーそうだったよねぇ,と記憶を確認する.これが再読の醍醐味だよね.いや,いい作品は何回も読むべきかも.しかし,新たな発見もあるわけで,今回なるほどと思ったのは,昔不時着したダコタい乗り込むところ.脚が壊れているので客室が水平で違和感を感じたと書かれていて,なるほどなぁ,と思った次第.
物語は,ま,どうでも良くて,飛行機のことだけでお腹一杯といえる作品.しかしライアルの主人公ってのはどこかセコいところがあるのが魅力的.B+

【裏切りの国】 ギャビン・ライアル 早川書房

2001.8.29読了.
これもライアル再読の試み.主人公のパイロットが会社の破産にあい,東地中海でさあ困ったなぁ,というところからお話は始まる.そして武器密輸と宝探し騒動に巻き込まれる.
これもライアル再読の試みの一環.やはりライアルは飛行機及びパイロットを書くときが冴えているよねぇ.また,主人公が金銭的な危機に陥るのもなかなか結構なもので,しょうことなしにコックの仕事をやらざるを得なくなったり,手持ち現金残高をなにかと確認するところなど,昔はあまり印象に残らなかったが,今ではかなりこういうところが面白い(住宅ローンを背負った身での積極的な効用というべきか).
主人公の相棒とのエピソード(捕まるのはかわりばんこ)とか,お話的には派手じゃないのだけど,とても面白い.こういうのが面白くなるってのは年をとったということなのだろうか.で,最後はエルサレムの旧市街であって,ここの描写は懐かしい.また行きたいなぁ.B

【バッドラック・ムーン】 マイクル・コナリー 講談社文庫

2001.8.27読了.
女性泥棒のお話.仮釈放中の主人公(キャシー)は抑えきれない気持ちで(というところがちょっとムニャムニャ)再び泥棒の道へと戻っていく.で,上々の首尾で仕事を終えたはずだったのだが,盗んだ金は組織のものであり,追っ手がかかった….というお話.
上巻の半ばまではどうもかったるかったが,その後,復職(というのか?)を決意してからはテンポがよろしい.現代の泥棒の手口の紹介とか,読者サービスにも事欠かない.また追いかける側の私立探偵が無茶な奴なのだが,やたらと腕が良い.で,物語はキャシーが昔捕まったときの事件に関わってくる.これまでのコナリーはあまりにも無理なお話になってしまったのだけど,この作品では押さえ目であって,これもなかなかよろしい.私としてはコナリーの作品の中では好きな方.B+

【死者を鞭打て】 ギャビン・ライアル 早川書房

2001.8.22読了.
主人公はボディガードで,クライアントを殺されてしまう.で,その理由を探り出そうとする,というお話.
これもポケミス発売当初に読み,それ以来の再読.中身はほとんど覚えていなかった.そうか海事保険がらみだったよなぁ.主人公はライアルの常であってセコくて怪しげ.でもどうもお話の展開がイマイチな感じがして,ライアルの作品の中ではあまり好みではない.ま,それでも悪くはない.B

【二人のガスコン】 佐藤 賢一 講談社

2001.8.16読了.
ダルタニァンとシラノ・ド・ベルジュラックが主人公のお話.『三銃士』のちょっと後の頃のダルタニァン物語では空白期間をうまく使っている.
ダルタニァンとシラノはある日マザランに呼ばれ,ある女性の監視を依頼される.ちなみにダルタニァンはマザランの密使だがシラノはフリー.で,これに反マザラン派がからみ,ルイ14世出生の秘密という問題が出てくる…,というお話.チャンバラはあるし謎の探求もなかなかのもの.その頃のフランスについての知識が無い私にとっては親切な描写もあって,そのあたりも興味深い.また,『三銃士』のエピソードや『鉄仮面』方面へのほのめかしとかも楽しい.
ただ,どうも会話の続きを地の文でやる手に途中までなじめなかった.また,お話の筋が首尾一貫しているかどうかというと,ちょっと疑問なところもある.全体的にとても面白かったけれど,私としては微妙に好みの線とずれるという印象ですねぇ.B+

【弾道衝撃】 クリス・ライアン 早川書房

2001.8.10読了.
前作の最後,息子と恋人が誘拐されたところから物語が始まる.で,この前せっかく逮捕したIRA過激派幹部の解放を求められる.主人公は要求に応えるふりをして人質解放を狙う,というお話.
ところが途中からリビアかどこかに暗殺をやりに行くことになったりして,前作と同様にどうも話が落ち着かない.そしてIRAの要求はエスカレートしてきて,主人公に首相を暗殺しろ,なんて言ってくる.も,なんというか絵空事だよねぇ.いやもう最後まで読むのがちょっと苦痛.なぜ読むのを止めて放り出さなかったのかなぁ.我ながらちょっと不思議.C

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