2001年4月に読んだ本


【オペレーション/ハバナ潜入】 ダン・J・マーロウ ハヤカワミステリ

2001.4.25読了.
古本屋で安く売っていたので購入.
スパイ小説なのかなぁと思って読み始めたのだが,アクション小説的なものだった.主人公は職業犯罪者であり,昔一緒に強盗をやった奴に誘われ,彼が革命前に隠匿した金を回収するためにハバナに潜入する.他に一癖ありげな仲間が何人か参加する,とかいうと『悪党パーカー』みたいだけど,質は相当に落ちる.
主人公はイマイチ悪に徹していないし,昔なじみの女とは信頼しあっているし(いつ裏切られるか期待してたんだけど),物語は結構安易に進むし,ラストのどんでん返しは陳腐.ま,でも最後まで読むことはできるんだよね.B級アクション小説としてはそれなりなのかも.C+

【銀河帝国の弘法も筆の誤り】 田中 啓文 ハヤカワ文庫

2001.4.24読了.
SF短編集.
ダジャレとギャグの固まりなのだが,意外といっちゃなんだけど,アイディアがよろしい.特に『銀河を駆ける呪詛』が素晴らしい.『脳光速』もアイディアはいいのだけれど,イマイチ切れ味に欠けるかも.その点,『銀河…』はSF的アイディアが盛り上がったところで脱力ギャグが炸裂して,そのギャップがたまらない.また,表題作もなかなかのできなのだが,なんといってもお気に入りは『火星のナンシー・ゴードン』であり,これは一発ネタなのだけれど,私のツボを見事に突いたんだよねぇ.いやーすごい.B+(+は『火星…』があったから)

【後宮小説】 酒見 賢一 新潮文庫

2001.4.19読了.
中国の架空王朝(明から清あたり)の交代期での後宮のお話.
ストレートなお話ではなく,作者の皮肉な目(あるいは面白がっている目)を感じながら,作者のほら話を楽しむってのがよろしいのかも.帝が死に,田舎の少女が新たな後宮に送り込まれ教育されるが,反乱が起きて軍隊が都に迫ってくる.というと切迫したものを感じるけれど,反乱軍にしろ体制側にしろどこかしら間が抜けていて,しかも考えてみればこういう革命期っていうのは間抜けなエピソードがいくらでもあるわけで,なるほどこういう角度から歴史を見てみるのも一興だよね.
なかなかよろしかったのでは.B+

【虐待者】 ブライアン・フリーマントル 新潮文庫

2001.4.18読了.
何かフリーマントルの新シリーズが出ているなぁということは認識していたのだけど,特に読む気になれなかったので無視していたのだが,図書館にあったので借りて読んだ.
お話はユーロポールという,ま,ヨーロッパ版FBIですね,これが舞台で,女性捜査官が事件に臨む.今回は誘拐事件だけど,金銭的な誘拐じゃなくて児童性虐待のための誘拐であり,しかも誘拐されたのがアメリカ大使の娘であるってことで話が複雑になる.ということでアメリカ側との主導権争いとか,犯人側に情報が漏れるとか盛りだくさんな展開.しかしどうにも翻訳が悪いんだよねぇ.特に会話.読んでいて恥ずかしくなっちゃうようなもので,とにかくこれは何とかしてもらわないと….それにネタを詰め込めばいいってもんでもないよねぇ.消化不良.C+

【やぶれかぶれ青春記】 小松 左京 旺文社文庫

2001.4.17読了.
昔,蛍雪時代の付録で読んだ本.面白かったから何回か再読し,先日古本屋で見かけて購入.
小松左京の旧制中学,高校時代の自伝.太平洋戦争が負け戦になる頃から始まり,敗戦後学制改革までをカバーしている.しかし最初読んだとき,既にだいぶ昔の話だなぁと思っていたのだが,今読んでみると,遙か過去のお話という感じはするよねぇ.そうか60年以上前のことだもんなぁ,私が初めて読んだときが多分71〜72年頃だったから,つまりそのころに換算すると第一次大戦前のお話ってことだよね.う〜む,時は流れる.
でも,人間というものは大して変わらないものだから,これからもどこかでこういうことは起きていくのだろうね.B+

【クロッカスの反乱】 ギャビン・ライアル 早川書房

2001.4.12読了.
マキシム少佐三作目.
首相が変わりマキシム少佐はめでたくホワイトホールから追い出されているのだが,陸軍では受け入れに困っていて,とりあえずアメリカ大統領訪英での護衛連絡役(?)に駆り出され,暗殺事件に巻き込まれる(殺されたのは大統領ではない).で,おなじみアグネス・アルガーとジョージ・ハービンガーも絡んでくる.
そしてまたまた過去の因果が現在にたたるというお話になるのだが,それに加えて官僚の事なかれ主義とも戦わねばならない(いや,日本だけじゃ無いんだなぁ).さて,このシリーズ,もう一冊あるはずだし,買って読んでいるはずなのだけど見あたらないなぁ.どうしようか?.B

【マキシム少佐の指揮】 ギャビン・ライアル 早川書房

2001.4.10読了.
マキシム少佐二作目.
スパイと官僚の世界に入ってきたバリバリの軍人であるマキシム少佐が,軍での仲間と現在の同僚との狭間に入ってしまってドツボとなるお話.前作(『陰の護衛』)はバランスが良くなかったけど,こちらは三人称に慣れてきたのか,だいぶこなれが良くなっている.
今回も昔の因果が現在にたたるというお話であり,このシリーズはずっとこの線で行くのだろうか.読んでいるけど内容は覚えていないのだよね.ちなみにこの本で覚えていたのは最後のドンパチの後での敵の一言だけ.ついでにいえば次作の『クロッカスの反乱』については何も覚えていない.後,マキシム少佐の戦車についての見解が書かれた作品があったと思うのだけど,それはどの本だろう?.『クロッカス…』の次の本があったかなぁ….B.

【オイル・ストーム2】 大石 英司 中央公論

2001.4.6読了.
シリーズ2作目.グァムのリゾートホテルを占拠した傭兵部隊に対する反撃.今回はアクションシーンが連続する.相変わらずバックグラウンドの知識量が圧倒的だよねぇ.
さて,このグァムのクーデターはウラがあったわけで,次回に目的がわかるのだろうか?.で,韓国との漁業問題はどんな関連性を持っているのか?.ということで次を期待.B

【中学受験で子供と遊ぼう】 高橋 秀樹 日本経済新聞社

2001.4.5読了.
表題通りの中学受験についての本.
娘がこの4月に四年生になるし,なんかこの頃みんな私立中学に行くみたいなので図書館から妻が借りた本.いやまあそうだったのですかというような初めて読むお話が結構ある.例えば塾のこと.目的によって色々なタイプの塾があることは薄々知っていたがずいぶん違うのですねぇ.中学の学風とかの話も興味深い.しかしこうまでして中学受験をしなければ,ということがいまいち理解できないのだよね.さて,実際あと一年たったらどういう風になるかなぁ(他人モード)B

【陰の護衛】 ギャビン・ライアル 早川書房

2001.4.5読了.
20年ぶりの再読.ライアルの新しいスパイ小説シリーズが結構気に入っているのでマキシム少佐を読み返してみようと思っていたのだ.しかしまあ20年もたつと中身は全部忘れてるよねぇ.
前に読んだときは,どうも冴えないシリーズだなぁという印象があったのだが,今回読み直してみてちょっと違う風に感じるところが少々.つまりライアルとしてはスパイの世界にバリバリの軍人を突っ込んで敵味方との齟齬を描いてやろうと思ったのではないか,ということが前回の時理解できなかったのですね.で,そのあたりを頭に入れておくと,面白味が出てくる.そしてもしかしたらこのシリーズは相当にユーモラスに書いているのではないか?,という疑問が出てくる(翻訳からはうかがえない).
ただ,全体はどうもバランスがとれているとは感じられない(第二次大戦のアフリカのエピソードが長すぎるとか)のが残念.でもアンバランスな物語ってのは結構好きなんだよね.B

【チーズはどこに消えた?】 スペンサー・ジョンソン 扶桑社

2001.4.2読了.
会社から読まされた本.
ああそうですか,というお話.はいはいわかりました.C

【さらば,カタロニア戦線】 スティーヴン・ハンター 扶桑社

2001.4.2読了.
やっと読むことができた.
三文詩人である主人公は情報部にスカウトされ旧友をスパイするために市民戦争中のスペインに行く.GRUのスパイマスターは自分がスカウトしたスパイの危険を感じ,彼もスペインへ行く.そしてソ連派と反ソ連派が対立するバルセロナでNKVDもからんでのお話が始まる.
という物語であり,それはそれで面白いのだが,どうも未消化というか借り物をつなげただけというか,そんな印象が消えない.まず主人公がジョージ・オーウェルそっくり(身分不相応でイートンに入り植民地の官吏となりスペイン市民戦争でノドに銃弾を受ける)だし,橋をめぐる攻防は『誰がために鐘は鳴る』とか思い出すし,列車のシーンは『ロシアから愛をこめて』だよなぁ.まだまだ不器用だったのですねぇ.
そういうわけで読むのに時間がかかってしまった.C+

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