2001年3月に読んだ本


【狩りのとき】 スティーヴン・ハンター 扶桑社

2001.3.31読了.
ハンター読み返しの最後.
やはりベトナムの場面が圧巻.それに比べると現代での対決はちょっと落ちるかも.また,物語もひねりすぎている気配.だけどまあハンターの作品の中では一番かなぁ.こういう本は買っておくべきだよね.B+

【夢の中の魚】 五條 瑛 集英社

2001.3.26読了.
鉱物シリーズの外伝?
韓国保安部情報部員洪と相棒(というか手下)パクが活躍する連作短編.バックグランドは日韓漁業協定をめぐる情報取得合戦だけど,日常起こりそうな事件が思わぬところで謀略のタネになっていくところがミソ.こういうお話は私の好みであるのでとても楽しめた.スパイの日常ってのはどういうわけか私の琴線に触れるのですねぇ.これをやってくれるのは私の読んでる日本作家のなかでは五條瑛だけ.
話としては怪獣ヲタが出てくる奴もよろしいけれど,チャフで一稼ぎというのがセコくて好み.でも家族がテーマになるとどうも私はその方面は苦手なんだよなぁ.『スリー・アゲーツ』はモロそっち方面だったしねぇ,それが将来的にちょっと不安.
また主人公達のキャラクタもお楽しみのひとつ.ま,あまりお近づきになりたくない方々ばっかりだけどさ.B+

【日本経済図説】 宮崎 勇 本庄 真 岩波新書

2001.3.22読了.
経済のことは良くわからないので図書館で見かけて借りた.
細かい章に分かれていて日本経済全体について書かれている.また章ごとに図がついているのもわかりやすいかも.しかし何しろ国土人口からIT産業まで全てを親書サイズに書こうとしているので,当然ながら一つ一つの項目に書かれていることは密度が下がっている.ということで日本全体を経済という切り口で概観するための本というのが本書の位置づけなのでしょう.
だから個々の問題について深く知るためには別の本ってことになるわけで,無い物ねだりだけどそれがちょっと不満.ま,手元に置いておくと便利かも.B

【騙し絵の檻】 ジル・マゴーン 創元推理文庫

2001.3.19読了.
久しぶりに読むパズラー.
主人公は無実の罪で投獄され,出獄してから真犯人を捜す.雰囲気としてはパズラーというより通常のスリラーっぽい感じであって,やっぱりこういうところは小説技術が発達してきているのでしょう.で,キモは容疑者を一人一人検討し,全員を否定してからのひっくり返しにあるわけで,確かに意表をつかれる.だけどどうも事件の説明のやり方が私に合わないせいなのか,隔靴掻痒なところがあるのですねぇ.B

【極大射程】 スティーヴン・ハンター 新潮文庫

2001.3.16読了.
これも『悪徳の都』を読んだため読み返したくなって再読.
内容は『ブラックライト』より忘れている.ボブ・リーが罠にかかって逃げ出すところなんて完全に忘れていたもんなぁ.ラストの法廷場面は良く覚えていたけど,その前の対決のところも詳細は忘れていたし….
再読でも十分面白かった.ただ,物語の進め方は『ブラックライト』よりちょっと落ちるかも.B

【ゴールキーパー論】 増島 みどり 講談社現代新書

2001.3.14読了.
サッカーから水球まで,第一線のゴールキーパーにインタビューしてまとめたもの.
私はボールを使ったゲームはあまりしたことがないし,体も大きくないのでゴールキーパーはしたことがない.そしてサッカーはよく見るけれど,キーパーのことはほとんど考えたことがない.ということで盲点を突かれたような感じで興味深かった.しかしハンドボール,フィールドホッケー,水球とか普段思い出しもしない競技のことをちょっとだけでも知ることができて収穫.いや,水球のキーパーが古式泳法で立ち泳ぎをしているなんて知らなかったよ.外国ではどうしているのだろう?
細かいところが当然ながら面白い.昔の(例えば74年W杯での)キーパーは手袋をしてなかった.じゃ手をどうやって保護していたか…とか.B

【ブラックライト】 スティーヴン・ハンター 扶桑社

2001.3.12読了.
『悪徳の都』を読んだため再読.
ボブ・リー,かっこいいなぁ.悪役もなかなか味があってよろしい.そしてごひいきのキューバ人殺し屋も結構.今度気付いたのだが,作家志望の奴(一応副主人公?)もなかなかいいではないですか.ということで他のボブ・リーシリーズも読み返したくなってしまった.B+

【悪徳の都】 スティーヴン・ハンター 扶桑社

2001.3.7読了.
ボブ・りーの父親,アール・スワガーのお話.太平洋戦争に従軍し,除隊したアールは対ギャング部隊の訓練を依頼される.場所はホットスプリングスであり,物語はアールの父親の最後とのつながりが出てくる….
といったことなのだけど,さてこの主人公がアールである必然性があるのかどうかちょっと疑問.確かに面白いのだけど,ここまで親の因果が子に報いるというのは(だって『ブラックライト』とかあるし)ちょっとあまりにもあまりではないかと….しかしこういう風にフレンチーが登場するとはねぇ.
物語のテンポはいいし,時代性も結構(30年代ギャング時代を引きずってるのですね).ただ出産騒動はちょっと余計だったかも.B.

【スクールボーイ閣下】 ジョン・ル・カレ 早川書房

2001.3.3読了.
ずっと今まで何回もトライしていたのだが,いつも途中で挫折していた本.やっと読了することができた.
ベトナム戦争の末期の東南アジアが舞台.ソ連のモグラのためズタズタになり,面目を失い,世界の各地から撤退を余儀なくされた英国情報部の復活(?)の物語.当然主人公はスマイリーであり,現場で動き,消耗するのは『高貴な(オナラブル』スクールボーイことジェリー・ウェスタビー.
何といってもゆっくりとしたあっちにいったりこっちにいったりする語り口がよろしい.スパイ小説はこうでなくちゃねぇ.私はこのゆっくりしたテンポの裏に隠れている強烈なサスペンスに負けると途中で放り出しちゃうのだ.日常に破滅の予感が漂い,陰鬱な描写の先に死とむなしさが見える.そしてクライマックス,驚きの展開と苦い結末.
私の好みとちょっとずれるがやはり傑作(好みとしては出来不出来は別としてギャビン・ライアルの新しいシリーズなんだよね).B+

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