2001年2月に読んだ本


【原潜海峡を封鎖せよ】 大石 英司 中央公論

2001.2.22読了.
まだソ連が存在していた頃(89年だったっけ)発表された作品.当然そのときに読んでいて,多分一回か二回は再読しているはず.今回は某掲示板で掃海艇の話が出てきたので久しぶりに読み返そうと思った次第.
対馬海峡に設置された米軍最新水中音響装置をソ連が入手しようと特殊潜行艇を出動させる.しかし装置を防御している最新式の機雷が作動してしまった.たまたま近くにいた自衛隊の掃海艇と魚雷艇が現場に出動するが,ソ連側には支援部隊の準備があり,アメリカ側には思惑がありそうな雰囲気.掃海艇の艇長は恋愛の悩みを抱え,肝心の処理士はひねくれ者….というお話.
まず感じるのは圧倒的な情報量なのですねぇ.各パラグラフごとのちょっとした描写の背後にある情報量を感じるのだ.そして地味だけどリアルっぽい戦闘及び掃海作業(海中の描写はちょっと弱いかも).大石英司の初期の傑作.B+

【灰夜】 大沢 在昌 カッパノベルズ

2001.2.21読了.
新宿鮫の新作.ただ舞台は新宿ではなくて地方都市(多分熊本)になっており,時間的にも短い間のお話でありまして,まあ外伝とでもいう位置付けと考えるべきなのでしょう.
第一作目に書かれていた公安関係の秘密を鮫島が入手したいきさつが語られ,その入手先の人間の法事に参加したことが事の始まりとなる.麻薬取締りがからみ,鮫島は拉致され,作者得意の水商売がらみのいい男といい女が出てくる展開.お話としては,これはちょっと無理だよなぁ.私にはいまだに何故鮫島が拉致されたのか理解ができない.ま,このシリーズにはあまり期待していないし,物語を読み進ませる力はあるからいいけどさ.B−

【制覇せよ,光輝の海を!】 キャサリン・アサロ 早川書房

2001.2.20読了.
スコーリア戦記の三番目.
このシリーズ,最初の奴はどうも印象が良くなかったのだが,だんだん面白くなってきた感じ.今回は1作目の続編でありまして,戦火を避けて甘い生活を送っていた二人は,やはり争いに巻き込まれていくというお話.前半は戦争と甘い生活がかわるがわる描かれ,後半は戦争一本.しかし見せ場はほとんど一つでありまして,旦那を誘拐された主人公が復習の女神と化して立ち上がるところ(前半の最後のところ).いやまあ臭い舞台に臭い芝居だけど,これほどまでに徹底してやってもらえるといいよなぁ.
後,私的にとても好きなのは,二人が生きているのがバレる手順であって,こういうところに工夫を凝らしてもらうととてもうれしい.しかしまあ下巻はおまけみたいなもんだよなぁ.それに三世のお話はまったく必要が無かったのでは?.どうもこの人,余計に書きすぎるのが欠点(シリーズ2冊目もそうだった).B(下巻がなければB+)

【フラッシュフォワード】 ロバート・J・ソウヤー 早川書房

2001.2.14読了.
全人類が21年後(だっけ?)の未来をかいま見てしまったらどうなるのか?,というお話.
当然死ぬべき人は見えないわけで主人公の一人はそれであり,しかも他人の話を聞くとどうやら誰かに殺されるらしい.また,もう一人の主人公は,自分の実験でこの現象が起きたのではないか,と調査に乗り出す.ということでまたもやミステリ仕立てっぽいソウヤーなのだが,この人のミステリ的なのは私はあまり好みではないんだよなぁ.確かに面白いのだけど,何と言いますか飛翔感が無いっていう感じ.いや,決して悪くは無いんだよね.だけどさ….B

【ミステリー中毒】 養老 孟司 双葉社

2001.2.9読了.
月刊誌に連載されていたもの.養老孟司がその月に読んだミステリを雑談混じりに紹介する.どうもこの人,私と好みの線が少し違っているのだけど(例えばスティーブン・キングが好きであるらしい),なかなか楽しめた.ところどころ慧眼というか目からウロコの指摘もあるしね.例えば,ロス・マクドナルドは親の因果が子に報いという話である,とかね.全体的に一般のミステリマニアとちょっと違った視点からの紹介でなかなか結構.B

【私のエネルギー論】 池内 了 文春新書

2001.2.9読了.
タイトル通りのエネルギー論.おおむね妥当で穏当な意見であろうと思われる.著者が実際に太陽光発電パネルを設置した家を作っていてそれの評価が目新しい.B−
【あぶく銭師たちよ!】 佐野 真一 ちくま文庫

2001.2.7読了.
リクルートの江副他,バブル紳士淑女のドキュメント.いやまあ怪しげな奴らだよねぇ.江副が一番マトモに見えてしまうもんなぁ.今,不況だ不況だといわれているけど,景気が良くなるとこういう奴らまた復活してくるんだろうね(いや,不況でもいるんだろうけどあまり目立たない).そう考えると不況ってのも悪くはない.ま,何とかやっていけてるんだからこの位がいいんじゃないかなぁ.B−

【ウェルカム人口減少社会】 藤 正巌 古川 俊之 文春文庫 

2001.2.2読了.
タイトル通りの本.日本の人口は多分2001年をピークに減り始める予定で,それを不安に思う論調が多いけれど,そんなことはないというわけですね.まず,これからは必然的に人口が減ること,先進国だけではなく第三世界でも今世紀中に減っていくことを予測する.まあ確かに本書にあるようにピラミッド型の人口構成というのは安定しているように見えるが,実はすべての年代において人が死ぬわけで,これは決して望ましい構成ではないよね.当たり前だけど,目からウロコ.
で,これから必然的に人口減社会になるわけなんだけど,これがいわれているような大変なことではないというお話になる.これも確かにいわれてみればその通り.しかし大きな変革をしなければいけないのは確実であって,そのあたり日本では不安なのですねぇ.
なかなか説得力のある本ではありました.あ,もう一つ目からウロコ.高度成長経済の元で日本の出生率が下がったのは主に中絶が原因であったらしい.いやそうだったんですか….B

【競馬どんぶり】 浅田 次郎 幻冬社アウトロー文庫

2001.2.2読了.
浅田次郎の競馬についての語りおろし.内容的には以前の競馬必勝法(だったっけ)とだぶるところが多いし,ところどころに繰り返しがある.それでも悪くはない.結局,好きな分野のことをちゃんと表現することができる人が書けば(この本の場合は話せば)それなりに面白いってことですね.ついでにいえば私は競馬に賭けることは全然しないが競馬のことを読むのは好きなので,まあ相乗効果といったところか.C+

【ギャラクティックの攻防】 デイヴィッド・ファインタック 早川書房

2001.2.1読了.
シーフォートの最新作.国連事務総長(大統領といった方がぴったりくる感じ)であるシーフォートが環境テロリストに狙われ,しかも植民地,宇宙軍,地球環境と問題が山積みされている.そこで最新宇宙艦ギャラクティックが竣工する…,というお話.
相変わらずのシーフォートであって,公私共に困難苦難の連続.今回はテロのため下肢麻痺に陥ってしまうほどで,作者のイジメはいつもの通りであり,またシーフォートがイヤな奴であることもいつもの通り.ちょっとネタ切れだし,飽きてきたよなぁ.B−

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