2001年1月に読んだ本


【ヴァスラフ】 高野 史緒 中央公論

2001.1.29読了.
ヴァスラフ・ニジンスキーのお話.ただし高野史緒だから当然ストレートではなくて,ロシア革命前にヴァーチャルリアリティがあってニジンスキーはその中のソフトウェアなのですねぇ.で,戯曲形式.
私はニジンスキーについて知ることは全然無くて,その点困ってしまうのだけど,つまらないかというとそんなことはまったく無く,大変面白く読むことができた.特にヴァスラフの描き方がクールでよろしい.ただ今回は時代と技術の乖離での味が出ていなくてそれがちょっと不満.あの時代のロシアなんだからボリシェビキとか出てきて欲しいよねぇ.ま,そういう下界のすったもんだを超越しているところでの物語を作者は狙ったのかもね.ということで,もっと知識があればもっと面白かったはず.B

【石油争覇1】 大石 英司 中央公論

2001.1.26読了.
大石英司の新シリーズ.
近未来,世界は石油不足に陥っているのだが,そこでグァム島で革命(独立運動)が起きる.その動きをあらかじめつかんでいた政府はサイレント・コアを秘密裏に送り込んでいたが….というお話.土門も司馬も出場.土門の部下の問題児とグァムの私生児が主人公的扱い.
話は始まったばかりであって,石油不足の構造(物理的に足りないと言う話にはならないだろう)もアメリカの陰謀(もあるに違いない)もまだ明らかにされていない.対韓国問題も含めて先が楽しみだよね.B

【恐竜が飛んだ日】 柴谷 篤弘 養老 孟司 ちくま文庫

2001.1.23読了.
生物学についての対談集.素人向けかと思って読み始めたのだが,そう見えても中身はなかなかでありまして,基礎知識がずいぶん必要でしょうねぇ.おかげでよくわからないところばかり.しょうがないといえばしょうがないけどさ.
そうそう,柴谷篤弘って人は結構年寄りだったのですねぇ.知らなかった.B−

【守護者】 グレッグ・ルッカ 講談社文庫

2001.1.19読了.
ボディガードのお話.主人公はプロのボディガードで,恋人の中絶に一緒に行ったことからその医者のガードを頼まれる.彼女は反中絶派から脅迫を受けていたのだ.
ボディガードを主人公にしたお話というのは珍しくて気をひく.また,途中から出てくる探偵(女)がなかなか魅力的.お話はなかなか緊迫感もあり面白いのだが,どうも主人公達の犯人追及が弱いなぁという印象が残ってしまう.ま,これは『コフィン・ダンサー』の次に読んでしまったという不運かも.なんとなくちょっと素人っぽいんだよねぇ.B

【コフィン・ダンサー】 ジェフリー・ディーヴァー 文芸春秋

2001.1.19読了.
リンカーン・ライム第二弾.
ディーヴァーの小説にだいぶ慣れてきたので,どうせまたどんでん返しがあるのだろうなぁと本文を読む前に,登場人物表と後書きをじっくり眺めてしまうというのは不幸だよねぇ.で,確実に悪い奴ではない人間を除いて後は疑いの目で読んでいくという読書態度になっちゃうのだ.ま,さんざこれまで読者をひっかけてきた著者の不徳ともいえるけれどさ.
で,今回はコフィン・ダンサーといわれる殺し屋(過去,ライムと因縁がある)をライム(並びに前作でのチーム)が追いかける.それと別視点で描かれる殺し屋の描写が交互に現れ,相変わらず読ませる.十分面白いのだけど,前述したようにひっかけられないように懐疑的な態度で読んでしまい,そうすると著者が考えた布石とかが見えてしまって,どうにもそういうところが困るよねぇ.一発今度はストレートな小説を書いてびっくりさせてくれないかなぁ.B+

【人はなぜ学歴にこだわるか】 小田嶋 隆 メディアファクトリー

2001.1.12読了.
小田嶋隆の初めての(多分)書き下ろし.表題通りの内容.
相変わらずのイヤミが芸になっていて,久しぶりに読むとうれしい(この頃彼のウェブページが更新されないのはなぜだ?).しかし世の中の大会社はそういう学閥みたいなのがあるのですねぇ.知らなかった.自らを省みてみると,部下の学歴は何となく把握しているけれど(あ,わかっていないかも),上司とか同じレベルの奴とかはよくわからない.こういうのは普通じゃないのだろうか?.
自分の学歴を考えてみると,どうもあまり意識していないしなぁ,子供達をどうするかというと,これもあまり考えていないのですねぇ.世の中のことにあまり正面から見ようとしない私がいかんのかもしれないけどね.さて,妻は果たして奴らをどうするべきだと考えているのだろう.B

【九人の失楽園】 ブラウン・メッグズ 早川書房

2001.1.11読了.
昔のポケミス(といっても20年ちょっと前だけど).100円で売ってるのを見て購入.読んでみた.
アメリカ東部の有名大学進学用の学校出身者である主人公の元クラスメイトが次々と殺される.このクラスメイトってのが9人しかいなくて,つまりこれがタイトルの由縁ですね.主人公は卒業時には総代で期待されていたのだが今は音楽評論で細々とやっていて同窓生とは音信不通だった.で,いろいろあって犯人探しを始めるのですね.
訳者後書きにもあるように,テーマの一つは中年になってしまったことの憂鬱といったことなのだが,アホみたいなもので勝手にしろといいたくなるもの.犯人探しについては,主人公の知っていることを最後まで明かさないってのはアンフェアではないのだろうか(一人称でだぞ.私は唖然とした).ということであまりお気に入りではない.ま,放り出さずに最後まで読めたというのは読むべきところがあったと思うべきなのでしょう.C+

【新・サッカーへの招待】 大住 良之 岩波新書

2001.1.6読了.
フランスW杯ちょっと前に出版された本.サッカーの歴史,ルール,戦法,日本と世界の現状について書かれている.
私はサッカーをよく見るようになったのはつい最近なので知らないことが結構あって,なるほどと思うことがたくさんある.特にルールや戦法の変遷が興味深い.薄くてすぐに読める本だけど,著者の知識と経験の蓄積が裏にあるのがよくわかり,しかもサッカーが好きであることもわかるので好感が持てる.B

【カント・アンジェリコ】 高野 史緒 講談社

2001.1.4読了.
まず去勢歌手(カストラート)について語られる.以前この本を読もうと思ったとき,この場面でちょっと遠慮してしまった.物語はあるカストラートに懸想した(と思われる)枢機卿が狂死したというところから始まる.時代はルイ14世治世末期.ところがここで電話が出てくるのですねぇ.この唐突の現れ方がとてもよろしい.そしてその電話回線でのハッキングシーン.いやーいいなぁ.
水戸黄門,007,忠臣蔵とかを連想させてにやりとさせ,最後はルーブルでの胎内めぐり.ヨーロッパの電話回線網を陰で支配する大天使とは誰か?.カストラート達はどうやってハッキングするのか?.クールでファンタスティックな物語….B+

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