2000年12月に読んだ本


【地名の世界地図】 21世紀研究会 文春新書

2000.12.26読了.
世界の地名の由来を書いた本.興味深いエピソードのあるものをテーマ別の章にまとめ,最後に大きな索引がついている.この索引が労作であり,私はこれが目当てで購入した.
で,この索引以外はどうなのかというと,これがどうにもあまり面白くない.せっかくいい材料がそろっているのだからもっと書きようがあるのだろうに,羅列しただけという印象がぬぐえない.なんというか高校生の地理のレポートっていうような感じ.いっそ全部索引にしちゃえばよかったのに.B−

【メグレと老婦人の謎】 ジョルジュ・シムノン 河出書房

2000.12.22読了.
メグレを読むのは2冊目であり,しかもほぼ25年ぶり.
自分が外出中に部屋の中に誰かが入った形跡があるとある老婦人がメグレのもとを訪れる.気のせいかと思われたのだが,彼女は殺害された.何故だろう?.というお話.登場人物は少ないし,犯人は別に意外でもない.どうっていうことのない話なのだが,不思議に面白い.老婦人の日常とか,その姪や姪の息子の人間像とか,メグレの毎日の習慣とかが面白いのですね.こういう面白さは昔はわからなかったのかも.たまにはこういうのを読むのもいいよね.B

【稲妻よ,聖なる星をめざせ】 キャサリン・アサロ 早川書房

2000.12.21読了.
スコーリア戦史シリーズ第二弾.前回の続きというわけではなく独立した物語になっている.
並行宇宙でのロサンゼルスに住むマヤ人の少女がジャグ戦士と会い,相思相愛になり陰謀渦巻く未来へと旅立つ,というお話.基本設定をほとんど忘れていたためちょっととまどったが,読み始めたら思い出した.デルゴン貴族みたいな種族が悪役の奴ですねぇ.第一巻を読んだ時はどうもあまり気にくわなかったが,今回は結構こなれがいいかも.ただしそれは地球での場面であって,宇宙に出てからはどうもテンポがずれている感じ.悪くはないけど良くもない.B−

【提督ボライソーの最後】 アレグザンダー・ケント 早川書房

2000.12.19読了.
ボライソーが死ぬ.予告通りに.ボライソーの最初の巻が出たのはいつだっただろう.読んでいないのは1冊だけであり,それなりに愛読していたので感慨深い.ただ,この頃のボライソーシリーズは私にとってどうでもいいロンドンでのやりとりが物語の割合を結構占めていてかったるいものになってしまっていた.
で,この作品なのだけど,ロンドンでのキャサリンと反ボライソー系との摩擦も書いてあるけれど,いつもよりは比重は高くなく海のお話が大部分を占めているのは好ましい.ただ,アメリカでのアダムと地中海でのボライソーが同じような比重で書かれていて,これは主人公の交代という意味で必要なのだろうけど分裂している印象はまぬがれない.そしてアダムの行動もよくある話だし,ボライソー最後の戦いも大決戦というわけではなくて,小競り合い程度でしかないのが残念.ま,このほうがリアルっぽいけどね,確かに.
後書きによれば,今度はアダムを主人公にして先はまだまだあるようで,楽しみといえるでしょう(しかしとても楽しみとは言えないよなぁ).B

【静寂の叫び】 ジェフリー・ディーヴァー 早川書房

2000.12.15読了.
一度読みかけて挫折した本.今度は素直に全部読めた.
脱獄した凶悪犯達が聾学校の生徒と教員を人質にして立てこもる.彼らとFBIの交渉とその結末というお話.主人公は人質交渉の専門家であり,犯人もこういうことにかけては海千山千であって,丁々発止のやりとりが飽きさせない.こういうときの捜査側の内幕物としての興味もあるしね.で,ディーヴァーだからそれだけじゃなく,素直に終わらないのですねぇ.今回のどんでん返しはまあ何とか許容できる範囲かもしれないけど,やっぱり無理筋だよねぇ.
ということで,この人このどんでん返し好きを何とかしないとねぇ.あ,今回の最後のシーンはクールでお気に入り.B+

【巡洋戦艦《ナイキ》出撃】 デイヴィッド・ウェーバー ハヤカワ文庫

2000.12.11読了.
オナー・ハリントン3作目.
相変わらずの海洋冒険小説風宇宙軍事SFだけど,ホーンブロワー的なところにだいぶトム・クランシー的なものが混入してきて,そこがどうにも鼻につく.ま,そうはいってもつまらないことはなくて確かに面白い.今回,傷が癒えたオナー・ハリントンはある星系に派遣されるのだが,司令官の判断ミスにより圧倒的多数の敵の襲撃を受ける,しかも因縁のある先任艦長がいる,というよくありがちなお話.目新しいところでは敵の帝国での政権交代(クーデター)が出てくるところ.で,このクーデターを起こした奴の名前がロベール・S・ピエールっていうのだから笑っちゃうよねぇ.とするともうすぐナポレオンが出てくるのだろうか?.B−

【魔剣天翔】 森 博嗣 講談社

2000.12.7読了.
阿漕荘シリーズ(っていうのだろうか?).
今回は小型飛行機の後ろ座席に座っていたパイロットが後ろから撃たれて殺された,というもの.このメインのお話については納得できないところもあってあまり評価できないのだが,他のところが面白かった.ひとつは曲芸飛行を見ながら紅子がへっ君に解説するのがマニアックでよろしいこと.もうひとつは殺されたパイロットの口からヒューズが出てきた謎でありまして,これはちょっと意表を突かれたかも.B

【もぐり酒場】 ジョン・A・ジャクスン ハヤカワポケミス

2000.12.5読了.
デトロイトが舞台の警察小説.
ある建設業者宅が不法に侵入されたり,副業の自動販売機が破壊されたりする.デトロイトの刑事ムルヒーセンはそれを調べるが,ほどなく大量の武器強奪事件が起きる…,というお話.
主人公のムルヒーセンは良い刑事だけど,格別に鋭いわけじゃないし腕力にもそれほど恵まれているわけではないらしい.捜査もどちらかというと行き当たりばったりであり,読者としては事件の筋がなかなかわからない.逆にいえば現実に即してるわけですね.メインの事件は当然武器強奪事件(相当に派手)なのだけどこれが起きるのは全体の半ば頃であり,これはどうにもバランスが悪い感じ.しかしバランスが悪いのがいけないかというとそうでもないんだよねぇ.いやどうも歯切れが悪い感想だなぁ.悪くはないけどぱっとしないんですねぇ.B

【心では重すぎる】 大沢 在昌 講談社

2000.12.1読了.
久々の佐久間公.
分厚い本だけど一気に読める(といっても私は時間的体力的に一気読みはできなくなっているので分散したけど).そして面白い.とても面白い.という前提で文句が少々….
なぜにこんなに登場人物がしゃべるのだろう?.ま,例えば佐久間公とか沢辺とかが長い会話をするのはいいけどさ,クスリでいっちゃてる奴とか渋谷でたむろしている高校生とかやくざとかがそれなりのことをしゃべるんだよねぇ.論理的に.すごい違和感.で,佐久間公がまたやたらと内省する.これが探偵である自己についてのしょうも無いことを考えているわけで(いや,しょうも無くないのだけど考えたってしょうがないことってあるよねぇ)私としては,『あ,そう』と言うしかない.
女子高校生の特異なキャラクタが出てきて,今回の敵ナンバー1なのだけど,最後の扱いもちょっと不満.もっと宇宙人的にできなかったものだろうか?.まあしかし佐久間公もおじさんになっちゃったんだよねぇ.ちょっと悲しいかも.あ,掲載紙(週間文春)的にはぴったり….B+

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