2000年11月に読んだ本


【リヨンの料理人】 ポール・ボキューズ 晶文社

2000.11.28読了.
ポール・ボキューズの自伝.といっても通常の自伝的なところはそれほど無くて,過去を振り返りながら料理のことを語ったという感じのもの.ページの半分は近頃のダイエットブームや健康食品ブームに対する反論であって,これはあまり面白くない.自伝的なところの方が当然面白くて,特にピラミッドについてのところは興味深い.あと当然ながら料理や素材に関しては生き生きと語られ,これは写真が欲しいよねぇ.
しかし私はボキューズの店に行くようなことは多分無いだろうからなぁ,それがとても残念.C+

【海賊オッカムの至宝】 プレストン&チャイルド 講談社

2000.11.27読了.
18世紀の海賊がある島に宝物を埋め,しかも埋めたのがそのころの最高の建築家で,水地獄と呼ばれるワナを仕掛け,宝を掘り出そうとする者達を苦しめる.
これを現代の技術で掘り出そうするわけ.主人公はこの島の持ち主で,子供の頃兄と島を探検してその時目の前で兄は水地獄の犠牲者になってしまったというトラウマを持っている.で,この主人公を巻き込むのは宝物サルベージを業務とする会社であって,このメンバーが皆一癖ありげ.実際発掘が始まると,水地獄はなかなか眼鏡であり,発掘隊にも事故病気が連続する.さて宝物は出てくるでしょうか…,という展開.
確かに読みどころがたくさんあって面白いのだが,どうも仕上げがイマイチなのですねぇ.水地獄の構造とか恐ろしさとかがリアルに感じられない.石油掘削の機械を持ってくれば一発なんじゃないの,なんて思うのだがそういうわけにはいかないのだろうか?.で,ナントカの剣という宝物の正体なんだけど,これもホントならもっと早く判明するよねぇ.B

【脳ミソを哲学する】 筒井 康隆 講談社

2000.11.24読了.
最前線にいる科学者達と筒井康隆の対談集.つまらなくはないのだけど,どうもイマイチっていう印象ですねぇ.読み終わった後はっきり言ってあまり覚えてないのだよね.C+

【ムジカ・マキーナ】 高野 史緒 新潮社

2000.11.22読了.
高野史緒デビュー作.舞台は普仏戦争の頃のウィーンとロンドンでありまして,ドイツ(もうすぐ帝国ができる)の公爵が怪しげな音楽の館を探索する.
最初は普通の音楽の話だと思っていたのだが(相当にトリビアだけれども)ロンドン編になったら何と時代を乗り越えて,いってみればタイムマシン物的物語になってしまって,ちょっと唖然.相当に違和感があるけど(だってさ,そういう技術を音楽のためにしか使わないのだ)悪くは決してない.で,だんだんと陰謀が明らかになって来るのだが,これがまた嘘っぽくてよろしい.最後の対決もいいなぁ.いやー,変なことを考える人です(ってほめているのだ).B+

【天魔の羅刹兵2】 高瀬 彼方 講談社

2000.11.20読了.
ということで続編も読了.今回は松永久秀が最新型モビルスーツを着て裏切るという展開.これもまた面白い.次作が楽しみ.B

【天魔の羅刹兵】 高瀬 彼方 講談社

2000.11.17読了.
戦国もの.ただしちょっと架空がかっていて,種子島に来たのが鉄砲ではなくてガンダムやマジンガーZみたいなモビルスーツだったらどうだったのか…,というお話.
物語は長篠の戦いから始まる.ここで足軽を伝令に使って,しかもその足軽がひらりと馬に乗ったりして,私は頭をかかえてしまう.ここで読むのやめちゃおうかなぁと思ったけど続けて読んだらこれが結構面白いのですねぇ.主人公は長篠の戦いで武田側にいた足軽で,モビルスーツを操縦する能力があるのがわかって織田方で戦うハメに陥る.
歴史小説を読んだことのない読者向けの解説とかがあってちょっとめざわりだったり,登場人物の心の動きがちょっと近代的すぎるのではとか思わないでもないけど,アイディアの勝利ですねぇ.面白い.B

【魔弾】 スティーヴン・ハンター 新潮文庫

2000.11.17読了.
ハンターの処女作.第二次世界大戦末期,ドイツの最後っ屁ともいうべき作戦があり,そこに銃器がからむ.こいつが無音で赤外線スコープ付きというもの.で,連合国側も何かあることに気付き,追求する.というお話.
連合国側は3人で行動するのだが,こいつらがイマイチ.それにドイツ側のスナイパーもわけのわからん奴で,登場人物はいかんですねぇ.感情移入ができない.で,射撃の目的なんだけど,これもなんだかなぁ,というようなもの.まあ,ストーリー展開は悪くはないので面白いことは面白い.でもねぇ,最後のオチというかアレはちょっと無理なのでは….だって予行演習しているわけで,そのときこうなってしまうってのはわかっていたはずだよねぇ.B−

【チェイン氏の秘密】 F・W・クロフツ 早川書房

2000.11.15読了.
ホントに久しぶりのクロフツ.クロフツっていえばアリバイ破りだと思っていたのだが,何とこいつは冒険小説.チェイン氏(恒産を持っている)はある日ホテルで詐欺師に薬を飲まされ眠らされて持ち物を探られる.そして同時に家も捜索される.果たして何故か?.ということでチェイン氏の探索が開始される.途中,誘拐されたり,好ましい女性と出会ったりするが,この女性が誘拐されとうとう当局に助けを求めるのだが,ここでフレンチ警部が登場.解決となる.
何しろ20年代の小説なのでさすがに時代遅れな感じがするけど,それもまた味でありまして,なかなかいい感じ.時代色も面白い(でも電話も車もあるんだよなぁ).B

【悪魔の涙】 ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫

2000.11.10読了.
今度は筆跡鑑定人が探偵役.サイコ的な殺人者が大量殺人をし,彼を操る脅迫者がワシントンDCを恐喝するという展開.で,その脅迫者が事故で死んでしまい,殺人役が野放しになっちゃうのですねぇ.これは新手かも.
しかし主人公の筆跡鑑定がイマイチっていう感じだし,子供のことでうだうだしすぎ.ま,子供についていえばテーマの一つなのだろうけど,このあたりのアメリカ人の感覚ってのはどうもよくわからない.まあでも物語はとても面白いし,展開が早いし,文句はなかなかつけられない.でも最後にどんでん返しがあって,ホントかよ,と言いたくなるんですねぇ.このひっくり返しが好きってのはディーヴァーの癖なのだろうか.ちょっとあまりにもという感じなんだよなぁ….B

【イマベルへの愛】 チェスター・ハイムズ 早川書房

2000.11.7読了.
『狂った殺し』の前の作品らしい.棺桶と墓堀のシリーズだけど,このシリーズ,二人はたまたま登場するだけで,主人公は毎度別の人間になるようだ.
お話としては,イマベルというヤバイ女に入れ込んでしまった男(ちょっとどこではないお人好し)が詐欺にあい,雇い主から金を盗んでしまうのだが,ここで馳的に墜ちていくかというと,さすが50年代の小説なのでそんなことはなく,海千山千の兄貴がいるのでした(この兄貴がいい味).で,詐欺師達と兄弟とイマベルと警察がからんで大騒ぎということになる.
なかなかよろしいのですが,どうもやっぱり翻訳がいかんので(多分)隔靴掻痒なところが多くて残念.ドタバタ喜劇的なところもいいんだけどなぁ.B

【地球環】 堀 晃 ハルキ文庫

2000.11.2読了.
情報サイボーグシリーズをまとめたもの.
結構以前読んだことがあるはずなのだけど,ほとんど覚えていないなぁ.しかし堀晃を読むのはホントに久しぶりだ.舞台は基本的に宇宙で,情報サイボーグが不思議な現象を調べに行くという形式を取っている.基本的に堀晃の作品は端正でさびしい感じがするのだが,本書でもそれは変わらない.
しかし私の本棚を見ると『太陽風交点』はあるけれど『梅田地下オデッセイ』も『バビロニア・ウェーブ』も無くなっている.どうしてしまったのだろう?.B

【闇の狩人】 デヴィッド・ウィルツ 扶桑社

2000.11.1読了.
凄腕のテロリストが過激派から依頼を受けてアメリカに潜入しある目標を目指す.で,FBIのこれまた凄腕の捜査官がこれを迎え撃つ.というお話.
テロリストはサイコ系であり,迎え撃つ方も対サイコ系であって,異常心理物とテロ物を結びつけたところがキモといえるでしょう.特に主人公の捜査官は自分でもあちら側に行ってしまうのではないかという不安を持っている人間で,犯人の身になって考えることができるのでした.だが,どうも犯人がマヌケでいかんのですねぇ.ちゃんとしたパスポートを持っていながら(偽造かもしれないけど十分通用するはず)ちょっと入国管理官に声をかけられただけで実力行使に出たり,耳の穴に異物を突っ込んで殺すことにこだわったりしていて,アホとしかいいようがない.
物語もあまり盛り上がりがなく終わってしまってちょっと不満.B−.

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