2000年2月に読んだ本


【イスラームと世界史】 山内 昌之 ちくま親書

2000.2.29読了.
色々な雑誌に掲載されたものをまとめたものなので,テーマは基本的に統一されているけれど深みが足りない.書いてあることは穏健で常識的だけれど,それだけにちゃんとしている.もっとまとまったものを読むべきだったか.C+

【王の眠る丘】 牧野 修 ハヤカワ文庫

2000.2.29読了.
ファンタジー世界でのパリ・ダカールラリーに陰謀がからむ,というお話.
導入部がなかなかよろしい.そしてレースがスタートするあたりでは『遙かなるセントラルパーク』を彷彿とさせていいテンポなのだけど,段々急ぎ足になっていくのですねぇ.もったいないなぁと思いながらも,レースが終わるところまではよろしい.しかし最後のドンパチがちょっと興ざめ.個々のアクションは見えるけど,全体としてどう動いているのかよく分からない.ちょっと何もかも突っ込みすぎのような感じですねぇ.ちょっと惜しいかも.C+

【安全太郎の夜】 小田嶋 隆 河出書房新社

2000.2.28読了.
こいつも結構昔書かれたもので懐かしい.中でもやはりオタク関連とかPC関連のものが面白い.しかしWebの日記の方が面白いのですよねぇ.早く更新しないかなぁ.B−.

【地下組織ナーダ】 J・P・マンシェット 早川書房

2000.2.24読了.
翻訳はこちらの方がマシ.
今回はテロリストのお話.いやまったく70年代初めの頃の雰囲気が横溢していますねぇ.登場人物も相変わらず正義の味方は出てこないし,暴力的であり映画的であるのは『狼…』と一緒.警察官も全然マトモじゃないしねぇ.
ただ,『狼…』よりも説明的になっているように感じられるのが少々不満かも.変なギャグが少しあるのはおもしろいけど.B

【狼が来た,城へ逃げろ】 J・P・マンシェット 早川書房

2000.2.23読了.
翻訳がちょっとあまりにも….
精神障害がある女性が子守に雇われるが,直後に子供もろとも誘拐される.彼女は子供と共になんとか逃げるが,警察への恐怖感があって行くことができない.そして…,というお話.物語も語り口もきわめて映画的で,描写を読んでいると画面が眼前に浮かんでくるような気がする.ま,当然ゴダールとかを思い出すけど,同時代の頃の『ガラスの森』(だったと思う)というフランス産のギャング映画の雰囲気が似ているような気もする.
登場人物は皆マトモではないのがお手柄.スーパーマーケットのアクションシーンがよろしい(全編アクションシーン,というより暴力場面だけどね).クールでいいなぁ.B+

【大江戸仙花暦】 石川 栄輔 講談社

2000.2.22読了.
大江戸シリーズの最新刊.このシリーズも繰り返しが多くなってきたような感じですねぇ.しかし向島とか木場とか,今じゃ殺伐とした場所が江戸時代ではいいところだったのですねぇ.このへんはとても残念.ま,都会の便利さに慣れきっている人間からの繰り言かも.B−

【科学教の迷信】 池田 清彦 洋泉社

2000.2.21読了.
『思考するクワガタ』以降の固めのエッセイを集めたもの.書き下ろしじゃないから繰り返しが多いのが少し残念.しかし第一章の反遺伝子論序説はなかなか読み応えがある.私はどうも遺伝子が全てという考え方に納得がいかないので興味深く読めた.このあたりのことは色々読んでみなきゃいけないでしょうね.最新の状況はどうなっているのだろうか.B−

【シティ・オブ・アイス】 ジョン・ファロウ 早川書房

2000.2.18読了.
マフィア無き後のモントリオールの支配を巡り二つのバイクギャングの抗争.しかしそれはうわべだけであって底は深いのだ.その深みを感じ主人公は捜査を進める.一方,謎の男が行っている陰謀は何か.警察組織は入り組んだ罠と化している.
最近,こういうたぐいの物語は苦手になっているのだけど,こいつはいいですねぇ.血はたっぷり流れるし,暴力的な雰囲気が全編漂うが,決して下品に流れないところがよろしい.主人公の妻との会話がちょっとねぇなところがあるけど,そのくらいはいいでしょ.そしてクライマックスがいいなぁ.B+(好みの種類の小説じゃないからB+で本来ならばAクラスでしょう)

【ゼウス】 大石 英司 祥伝社

2000.2.13読了.
大石英司が結構好きなバイオ物.
女性の腹を食い破ってきた生物が山に逃げた.その生物は数ヶ月後,大きくなって民家を襲う.しかしそれは単なる前触れに過ぎなかった….という,バイオパニック小説って言えばいいんでしょうねぇ.怪物はエイリアンのように出現し『宇宙船ビーグル号』の怪物のような欲求を持つ知能的な巨大なカマキリみたいなもので,人為的に作られたことは確実なのだけど,それの謎解きにページは消費されない.
テーマとしては少年の成長物語,コミュニティの変化,というところでしょうか.官僚も活躍しないし,怪物にもっとも効果的なのは猟銃(特に散弾銃)なので自衛隊も頑張るけど主人公というわけではない.大石英司の作品群の中では結構異色かも.
私としては余り好きな分野ではない(遺伝子組み替えで怪物を作るってのはどうも怪しげだと思っている)のだけど,主人公の少年少女がなかなかよろしいのでOK.特に少年の家が襲われるところがいいなぁ.あ,中学校のシーンも結構.B+

【天使は結果オーライ】 野尻 抱介 富士見ファンタジア文庫

2000.2.11読了.
ロケットガール・シリーズ第二弾.
今回は理科系女の子がロケット・ガールズに参加する.この子は頭もいいし,勉強家だし,宇宙へのあこがれも人に負けないのだが,唯一Gに弱いってのが弱点なのですね.で,その子(茜)とゆかりでスペースシャトルのミッションを助けるというお話であります.しかし私としては細部が面白い.特に頭の横浜に不時着するあたりがツボをつかれましたねぇ.B+

【我が心はICにあらず】 小田嶋 隆 光文社文庫

2000.2.9読了.
これは相当昔のものですねぇ.その分,懐かしくてかえって面白いかも.『ひでぶー』なんてあったよね確かに.B

【無資本主義商品論】 小田嶋 隆 翔泳社

2000.2.9読了.
『噂の真相』連載のもの.やはり結構立ち読みで読んだ記憶がある.
なかなか遠慮が無くてよろしい.続編はやくでないかなぁ.B

【ロケットガール】 野尻 抱介 富士見ファンタジア文庫

2000.2.3読了.
なかなか結構でした.話は強引.打ち上げ重量削減のためロケットのパイロットを女子高生にしちゃうというもので,YAという性格上か,話はトントン拍子に進む.しかし現在の技術でできていないものは,宇宙服(汗は通すが空気は通さない)と燃料だけで原理的には多分正しいのでしょう.そのへんマトモ.マトモじゃないのは登場人物で,ま,これはこれで楽しい.
しかし,ストレートなロケット物語がYAでなければ読めないってのは悲しいねぇ.B

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