2000年1月に読んだ本


【チェシャムーン】 ロバート・フェリーニョ 講談社文庫

2000.1.30読了.
う〜む,悪くはないのだけどなぁ,いまいち気に入らない.
どうも主人公がいかんのですねぇ.クィン.娘コンプレックスの男なんてろくなものじゃないと思うのだが….ヒロインのジェンもいまいち.悪役の大男はなかなかよろしくて,こういうのが好きな人にはたまらないかもしれないが,私の好みではない.ま,こういう小説を読む体調じゃなかったのかも.B
【仏の顔もサンドバッグ】 小田嶋 隆 宝島社

2000.1.28読了.
やはり『罵詈罵詈』よりもよろしい.だけどやはりWeb上での日記のほうが面白いんだよなぁ.今年になってまだ更新されていないってのはいったいどうしてしまったのだろう.しょうがないから旧刊を図書館で探し出してきてそれで我慢するわけなのだけど,やっぱりこういう文章はリアルタイムに読みたいよね.
ま,しかし,『大阪という街は,万人が万人にとって大阪人であるという,考えてみれば地獄のような場所』っていうのはハハハ,だね.B
【罵詈罵詈】 小田嶋 隆 洋泉社

2000.1.27読了.
小田嶋隆が気にくわない11人について罵詈雑言を書いた本.イヤミを言わせれば当代一の小田嶋隆が書いたのだから面白いだろうと読んだのだけど,どうもこれは空振りですねぇ.彼は自分自身を含めたある集合について悪口を書くのはうまいけど具体的な人間となるとちょっとひるむのですねぇ.ということで切れ味が悪い.世の中,向き不向きってものがあるのだ.C+
【クォ・ワディス】 シェンキェーヴィチ 岩波文庫

2000.1.24読了.
高校時代に読もうかなぁとか思ったのだけど,ミステリを読むのに忙しくて読み損ねてしまいとうとう今に至ってしまっていたのです.それにあらすじを読んだら何かもう分かっちゃったような気がしていたのも事実.
しかし意外に面白かったのですねぇ.解説で辻邦生がネタばらしをしていて,つい最初にそれをよ読んじゃったのだけど,それにもかかわらず物語に魅了された.舞台(ネロ時代のローマ)と筋立て(純愛物語とキリスト教弾圧)の勝利ですねぇ.
特にペテロニウスという人物を想像できたのが作者のお手柄であって,彼抜きではどうという事のない小説だったでしょう.主人公のウィニキウスははっきり言ってアホであるし,ヒロインのリギアの印象も薄く,ネロに至っては漫画的といえるでしょう.キリスト教についても,どうにも私にとってはマユツバものでしかない.ということはやっぱり物語がいいんだよねぇ.B+

【順列都市】 グレッグ・イーガン ハヤカワ文庫

2000.1.21読了.
その名も高き『塵理論』の本.いや,こういう話だったのですか.といっても飛行機の中でうとうとしながら大部分を読んだのでいまいち理解できていないところがあるのですねぇ.もっと説明をうまくやってくれよなぁ.といっても詳しく説明したらアラが目立つかもね.
理論だけじゃなくて創造した世界も魅力的.世界が混合していくのが判明するところなんてスリリングですねぇ.だけど物語としてはもうちょっと何とかならないかなぁ.『宇宙消失』の方がよかったかも.B

【グレイソン攻防戦】 デイヴィッド・ウェーバー ハヤカワ文庫

2000.1.16読了.
前回結構面白かったオナー・ハミルトンの第二弾.だけど面白かったことは覚えているけど設定とか皆忘れちゃっているんだよねぇ.そういう読者向けに2〜3ページでアウトラインを書いておいてもらえるとありがたいのだけど無いのですねぇ.それに物語はホーンブロワーというよりトム・クランシーみたいな感じでどうも好感が持てない.う〜む,困ったものだ.C+

【山手線膝栗毛】 小田嶋 隆 ジャストシステム

2000.1.15読了.
相変わらずのイヤミがさえていますねぇ.東京人としてのイヤミなり自負なり心意気なりを一番持っているのは多分この人でしょう.
また特に題材がよろしい.山手線の各駅というのは知っているようで余り知らない.しかし知っている駅についてはそれこそ裏の裏まで知っているわけで,その辺の事情を分かっている人間にとって自らを省みて困ったなぁと思いながらもつい笑ってしまう文章の冴えを持っている.当然ながら悪口を言っている駅に関して書かれているのが一番面白いのだけど,それにもまして著者自身の過去に対する気持ちを表しているのが興味深い.私も同じ頃都立高校に通い同じような気持ちを持ったことを考えるととても他人事とは思えないんだよね.いやはや….B+

【聖十字旗のもとに】 アレグザンダー・ケント ハヤカワ文庫

2000.1.13読了.
さて,ボライソーの新刊.ま,どうということのない一冊でしたね.シリーズの中では平均点以下(うむ,相当下の方かも).惰性ですねぇ.C+
【マイルス・デイビス自叙伝】 マイルス・デイビス クインシー・トループ 宝島社文庫

2000.1.11読了.
私はマイルス・デイビスは好きだけどそんなに聞いていない.いや実は私は音楽全般に対して知識も感覚もあまり無い.例えば本に対して私が持っている善し悪しの感覚,おもしろさをとらえる能力,つまらないものをつまらないと言い切れる自信などを音楽に対しては持っていない.
ま,そのなかでマイルス・デイビスは昔結構聞いていた.で,興味を持って読んだ次第.うん,面白い.音楽家や役者の自伝って基本的に面白いんだけど例外ではない.やはり音楽に関してマイルスが語っているところが白眉ですねぇ.そしてマイルスがすばらしい耳を持っていること,音楽に対する鋭い感覚を持っていることがよく分かる(このあたり,自伝を読まないとよく分からないのが活字人間である私の限界).また当然,私生活の話も面白い.ヘロイン中毒のこととかね.やっぱり市民じゃないよね.B

【東京セブンローズ】 井上 ひさし 文芸春秋

2000.1.5読了.
いきなり出てきたのが旧字旧仮名だもんねぇ.こりゃ何だと思ったら,戦争中の日記なのですねぇ.なるほど.それに場所が根津宮永町ってことで,これは私のほとんど故郷でありまして,私が生まれたのはこの頃から約10年後なわけで何というか実に懐かしい.
話は東京大空襲の後,日本の敗色が濃くなっている頃から始まり占領時代の途中までで主人公の日記として語られる.細部に取材と神経が行き届いて興味深いし,後半の占領時代の話もおもしろい.そしてメインは国語改革に関するモロモロ.主人公の娘達とその仲間が日本語を守る.あ,主人公がやたらと逮捕されて物語が中断されるのも展開を変えるテクニックとしていいなぁ.特に8月15日を露骨に出さないのが奥ゆかしくてクール.
ま,なんといってもおもしろいのは細部であり,井上ひさしの語り口も快調ですねぇ.B+

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