セックスとバリアフリーとDVD

「廊下で赤いコートを取り、庭に出ます」
「赤いコートを着て、庭を歩くポール」
「遠くの丘を登るポール」
「ポケットからパンを取り出し、それをほお張ります」
「丘の頂に近い小屋の中」
「古びた小屋に近づきます」
「窓から中を覗きます」

これは映画「グリーンマイル」のDVDに収録されている音声ガイドの一部を抜粋したものです。言葉と言葉の間隔はもっと広く、その間はドアを開ける音、主人公が歩く足音、風の音、雷の音、鳥のさえずりなどが入るので、実際には画面の状況はもっともっと鮮明に浮かぶことと思います。音声ガイドの機能がDVDタイトルで取り入れられたのは、この「グリーンマイル」が最初のようです。

日テレの「火曜サスペンス劇場」では以前から副音声をつけた放送が行なわれていましたが、正直なところ、あまりその機能を利用したことがありません。理由としては、いちいち説明しなくてもわかるような場面についても解説が入り、結果親切な解説であっても耳障りに感じてくる、といったところでしょうか。

ところが、この「グリーンマイル」の音声ガイドにはひどく感動しました。上で抜粋したようにだらだらと文字を並べてしまうと、通常の解説と何ら変わらないと思われるかもしれませんが、違います。映画全編にわたってみると、この「グリーンマイル」の解説は決して多くありません。決定的な違いは、動きのあるシーンであっても、音で判断できるところには解説が入らない点です。つまり、音声ガイドを作成する人のセンスによるものと気付かされました。でも、もしかしたら映画のほうに入れ込んでいるせいだけかもしれません(汗)。

実は、今回書きたかった本題は、このガイドナレーションのことではありません。「火曜サスペンス劇場」にしても、「グリーンマイル」にしても、その解説が嫌なら音声を切り替えて見ればいい話です。問題は、その切り替えをどうやって行なうかです。

僕は映画が3度の飯と同じくらいに好きです。学生時代は、「ニュー・シネマ・パラダイス」の主人公のように、よく映画館へ通っていました。いまはほとんど足を運ぶことはなくなりましたが、代わりにDVDを手に入れました。僕にとってのDVDの魅力は、字幕でも見られるし、吹き替えでも見られる点です。もちろん、すべてのタイトルに吹き替えが付いているわけではありませんが、数は着実に増えています。

吹き替えのついたタイトルは概ねプレーヤーのリモコンにある「音声切り替えボタン」で行なえますが、中にはそのボタンからでは切り替えられないものも一部にあります。ではどうやって切り替えるのか。

目の見える人であれば、画面上にメニューを呼び出して、目的の項目にポインターを合わせて選択すれば済みます。では画面の見えない僕はどうするか。それは音声切り替えの項目がメニューの何番目にあるかを覚えておいて、数を数えながらボタンを押すことになります。

べつに、メニュー内の「音声切り替え」がどのタイトルでも同じ位置にあるのならば、数えながら操作するなんてことは百歩譲って我慢しますが、ゆるせないのはタイトルによって、その位置がバラバラという点です。これはぜひ統一すべきです。また統一する気があるのならば、メニューからではなく、他の多くのタイトルと同様に「音声切り替えボタン」から行えるようにしていただきたい。

とここで愚痴をこぼしていても改善はされないでしょう。そこで、この意見は直接各製作元へ、何らかの形でお伝えしたいと考えています。映画大好きな僕にとって、DVDがもたらしてくれた高いクオリティはとても大きいと感じています。だからこそ、今後も映画だけでなく、DVDにもこだわっていきたいと思います。

しかし、そうは言っても各社考えも各様でしょうから、すぐに改善されるとはとても思えません。そこで、僕がいま把握しているものだけでも、音声切り替えがどうなっているかを「映画の広場」にまとめました。興味のある方は、そちらもぜひご覧になってみてください。また、ここに上がっていないもので、他に情報をお持ちでしたら、トップページのメール送信のリンクからご連絡ください。お願いします。

さてさて、このページの表題につられて読んでしまった方へ、話は以上で終わりです。「セックスのことが全然出てこないじゃないか」と思われていたらごめんなさい。このページの表題は「セックスと嘘とビデオテープ(89年アメリカ)」という映画のタイトルをもじったものです。この映画もとてもいいですよ。ぜひ、日本語吹き替えつきのDVDで発売されることを強く望んでいます。


前へ 次へ トップページへ戻る
Last update: 2001/03/18