福岡県・福岡市・北九州市への政策提言2004
挽地康彦(移住労働者と共に生きるネットワーク九州・事務局)
ネットワーク九州の福岡ブロックでは、今年度も福岡県・福岡市・北九州市への政策提言を行います。昨年度に続き、2回目の試みとなります。政策提言の準備のために、福岡ブロックの各NGO は、今年の春から月1回のペースで会議を行ってきました。その会議の結果、今年は問題を絞って、なるべく現場の目線から提言することに意見がまとまりました。つまり、前回の政策提言が外国籍住民の生活全般に関わる包括的なものだったのに対して、今年の政策提言は、より具体的な問題に焦点を合わせ、しかも自治体が取り組みやすい項目を優先して提言するという方針です。
政策提言の骨子は、@多文化共生推進条例、A保健・医療・福祉、B教育、Cその他、となっています。Cには、それぞれ独立した重要なテーマを盛り込んでいます。具体的には、外国籍住民に対する差別防止、外国籍女性のDV被害への対応、運転免許試験の改善の3つです。以下に、最終案としてまとめた@からCまでの具体的な提言を列挙します(紙幅の関係で、各提言の説明は割愛させていただきます)。
2004年度政策提言項目一覧
T 多文化共生推進条例
地域における多文化共生社会の形成を目的として、「多文化共生推進条例」を制定し、「多文化共生推進審議会」を設置することを提言します。
U 保健・医療・福祉
1.多言語サービスの充実
保健・医療・福祉分野の基本的な情報メディアを多言語化し、また外国語で対応可能な窓口職員を各自治体に配置するよう提言します。
2.外国人労働者への保険運用の適正化
各自治体は、職域健康保険や労災保険など、外国籍被雇用者への保険適用の実態を調査し、そのうえで事業所に対する適用漏れの防止に向けた監督、指導と、被雇用者への保険申請手続き等の情報提供を積極的に行うよう提言します。
3.緊急医療制度の確立
医療保険から除外されている外国籍住民のための緊急医療システムとして、「外国人未払い医療費補填制度」を創設し、救済措置をとるよう提言します。
4.適用可能な福祉サービスの確認
@「入院助産」や「予防接種」は、在留資格や外国人登録の有無にかかわらず適用可能であることを周知徹底するよう提言します。
A「更正医療」については、給付対象とみなされない非正規滞在者でも、生命の危険があり他の制度適用がない場合は、自治体独自の判断で身体障害者手帳を発行し、更正医療の適用を行うよう提言します。
V 教育
1.教育現場への多言語サービスの充実
私たちNGOへの相談事例や学校現場の状況からも、外国籍児童への通訳者の配置が不足していることが明らかになっています。現状に合わせた施策を取られるよう提言します。
2.外国籍児童の学習及び進路支援
来日後の日本語の問題などから、勉強が後れている児童が増えていることが報告されています。また、日本語での高校受験は低学年から日本で教育を受けていない限り難しい面があります。これらの生徒・児童に対しての支援を要請します。
W その他
1.外国籍住民に対する差別防止
国際化が施策に取りあげられ出してからかなりの年月が過ぎました。しかし、一般社会では外国籍住民への無理解と差別が依然として存在しています。他文化を理解するための具体的な施策に取り組むよう提言します。
2.DV被害への対応
外国籍女性のDV(ドメスティック・バイオレンス)被害に対応するため、被害防止、保護、自立支援を在留資格の有無に関わらず実施するよう提言します。
3.運転免許試験の多言語化
日本で生活する上で、運転免許は必要なものです。運転免許試験を外国語でも受けられるよう提言します。
政策提言書の提出日は、11月30日と12月1日を予定しています。昨年度の政策提言の際、それぞれの自治体に回答を求めていたのですが、その後、返事があったのは福岡市のみでした。それも文面には「参考にさせていただきます」、「今後研究してまいります」という言葉が並ぶばかりで、呼びかけと応答がかみ合わないものでした。今回はその反省も踏まえて、しっかり交渉したいと考えています。政策提言の結果は、12月4日のネットワーク九州の学習会のなかで報告される予定です。