移住労働者と共に生きるネットワーク・九州 第6回総会報告

417日〜

アジアに生きる会・ふくおか会員


2004417日、18日に大名町カトリック教会4階会議室(総会2日目は美野島司牧センター)にて、移住労働者と共に生きるネットワーク・九州第6回総会が開かれました。今年のメインテーマは「外国人排斥から多文化共生へ」で、1日目の午後の講演と報告の部には6070名、夜の交流会の部には3040名の参加、2日目には事務局スタッフを中心とした13名の参加となりました。第1日目のマスコミの取材は、西日本新聞と毎日新聞、共同通信社の3社でした。

17日は13時から美野島司牧センターのコース・マルセル神父の開会の挨拶で始まりました。
  その後、辛淑玉さんが「在日コリアンから見た日本」というテーマで、自らの体験を多く交えながら、日本国家の外国籍住民排斥の実態について話して下さいました。その中で、外国人登録証の常時携帯問題やタマちゃんへ住民票が付与されたニュース、外国籍住民が住民票に記載されないことから生じる問題などを話されました。
  住民票が付与されないということは、住民票をベースになされる公的な住民サービスが受けられないということです。したがって、就学案内もこなければ、成人式の案内も通知されません。もちろん、選挙権・被選挙権もありません。
  このような国の制度は簡単に変えられるものではありません。この国家を温存させてきたのは自分の責任でもあるのだ、と辛さんはおっしゃいましたが、見て見ぬふりをしてきた私たちにも当然に責任があると思います。
  住民票を元に公的なサービスをするといった時に、外されたものがどういう思いをするのかを想像することができない人間は、人の上に立ってはいけない、と辛さんは話されました。本当にそのとおりだと感じます。差別される苦しみというのは、本当のところ、本人しかわかりません。周りにいる人間が、いかにその痛みに敏感でありつづけるかが、差別をなくす唯一の方法だと強く感じました。そして、どんな思いも、声にしなければ届かない、声にすれば誰かがきっと聞いてくれるのだと思いました。

辛さんの基調講演の後は、コムスタカ−外国人と共に生きる会の中島真一郎さんが、「日本社会における外国人犯罪の実像――警察統計のからくりを暴く」というテーマで報告をされました。

外国人犯罪が「排外主義」に政治利用される理由や、「来日外国人犯罪の増加、凶悪化、組織化、地方への拡散」などの報道のウソと警察の統計のからくりについて、データや資料を使ってわかりやすく説明されました。外国人犯罪が増加の傾向にあり、それは日本国家の治安を大きく揺るがしている―そのような報道をよく耳にします。その根拠のない報道の裏に隠された国家の外国人排斥の思惑を、見逃してはいけないと思います。そして、ここでもおかしいということを声に出して言う勇気が必要なのだということを強く感じました。
  日本人という定義自体があやふやになってきているこの時代に、日本という国家は何をもって何を排斥しようというのでしょう。国家が裁くべきは「犯罪」で「国籍」「出自」は関係ないはずです。メディアが発する情報をそのまま受け入れてしまうことはとても危険なことです。マスメディアのあり方自体も問われるべきだと思います。
  しかし、氾濫し錯綜する情報の中で、真実を見極める目と耳を育てることがまず必要だと感じました。

休憩をはさんで、各団体・グループの活動報告を行ないました。今回報告した団体・グループは10団体です。ネットワーク九州の構成団体として、コムスタカ−外国人と共に生きる会、アトラス、アジア女性センター、美野島司牧センター、ゼネラルユニオンの5団体から、主に取組んでいる事例や報告がされました。2年前に発足したともいきの会からは、日本語支援ボランティアの募集の呼びかけがされました。

また、去年に引き続き、外国人無料法律相談センター、国際結婚を考える会からも報告がされました。同じく去年に引き続き、熊本県菊陽町の元中国残留孤児の家族の退去強制問題裁判報告がされ、裁判の当事者であり1年半もの間大村入国管理センターに収容されていた、馬好平さんと娘の晴子さんがアピールを行ないました。そして、「強制収容」問題を考え、子どもの学びと発達を見守る熊本の会より、裁判の報告がされました。最後に参加者と一緒に「満天星」(カスミソウ)というオリジナルの曲を日本語と中国語で歌いました。

また、移住労働者と連帯する全国フォーラム現地実行委員からは、52930日の福山での全国フォーラムへの参加呼びかけがありました。今年は、飛び入りで海の中道グローバルビレッジのイベント活動の紹介もありました。

発表・報告の中では、実際の活動の中で感じた生の声を聞くことができたという点で、非常に良かったと思います。実際の相談事例の報告や二重国籍を求める外国籍の子どもの手紙などが紹介され、今後の活動の参考になったという人も多かったのではないでしょうか。

夕方6時からは「外国籍住民と共に多文化共生を考える」交流会が行なわれました。立食形式でたくさんの手作りの料理を味わいながら、ペルー籍、中国籍、フィリピン籍、韓国籍などの外国籍住民や家族の自己紹介とアピールなどを行ないました。和やかな雰囲気の中、色々な情報収集ができたり、人の輪を広げることができたりしたのではないかと思います。
  その中で、ペルー人の方から、知り合いのペルー人でランドセルがなくて困っている子どもがいるという話がありました。後日、この子どもには美野島司牧センターを通じてランドセルの寄付があり、毎日元気に学校へ通っているということです。

私事ですが、この春に大学を卒業して社会人となりました。今は社会の厳しさを感じる日々です。今、自分に何ができるかを考え直す時だと感じています。九州ネットに関わるようになって2年以上になりますが、まだまだ勉強の毎日です。学生ではなく一社会人として、何をすべきかということを問い直す意味でも、この総会は、重要なそして有意義な1日になったと感じました。





12003年度の活動報  ネットワーク九州・事務局
(1)事務局会議
  毎月1回の事務局会議を美野島司牧センターで行いました。8人から10程度の参加者でした。

(2)ネットワーク九州第5回総会
  200351011日に、第5回総会が開催されました。1日目は、鈴木江理子氏(フジタ未来研究所研究員)の講演、九州各地の団体による活動報告等が、福岡市の大名町カトリック教会で行われ、約60名の参加者を集めました。2日目は、ネットワーク九州の前年度の活動・会計報告、次年度の活動計画・予算案が提案報告されました。

(3)ニューズレター発行
 6回総会が4月中旬開催となった関係で、2003年度中に4回発行することができました。15号(200345日)、16号(2003726日)、17号(20031122日)、18号(2004314日)

(4)政策提言へ向けた公開学習会
  移住労働者とその家族の権利条約の批准と具体的施策に向けた学習会を、20031213日に大名町カトリック教会で行いました。講師に岡本雅享氏(福岡県立大学)を迎え、約40名の参加がありました。

(5)自治体への政策提言

@   熊本地区(「コムスタカ―外国人と共に生きる会」などの取り組み)
  20029月、熊本地区では地域の団体と共同で、熊本県に対し8項目の外国籍住民・帰国者への施策を提言。2003年度より県は、DV被害者の自立のためのステップハウスを設置。20038月には、幸山熊本市長との「まちづくりトーク」に参加し、地域自治体に9項目の政策提言を行いました。そして、2004年度より熊本市は、DV被害者の民間シェルターへ補助金を支給することを決定。母子自立支援センターでの入寮条件のなかから市内への住所登録をなくし、広域受け入れに転換しました。

 A    福岡地区(「ネットワーク九州・福岡ブロック」の取り組み)
    福岡県の参加団体で学習会を20031月から毎月1回行うなか、200369日に「福岡市のパブリックコメント」へ意見を提出(その後、一部  修正される)。20038910日に政策提言へ向けた合宿を実施し、20031021日に福岡県、北九州市、1023日に福岡市に対して政策  提言(多文化共生条例、医療・福祉、教育)を行いました。政策提言に対して回答があったのは、福岡市(2004124日に文書で)のみでした。

(6)福岡入管との意見交換会

今回で6回目となる福岡入国管理局との意見交換会を、20031216日に実施しました。ネットワーク九州から11名が参加しました。今回から実務 担当者の出席がなくなり、総務課の渉外調整官一人だけが参加するという方式に変わりました。

(7)外国人のための無料相談会
  20024月より実施してきた、福岡市の大名町カトリック教会での外国人無料相談会を、2003年度も毎月第2日曜日に引き続き行いました。
  相談件数は2002年が5件、2003年が4件で、主な相談内容は離婚、永住ビザ、職探しなどでした。
  全体に相談件数が少なく、相談会を実施する必要性があるのか存続の是非が問われた年度となりました。

(8)全国ネットワークとの連携活動

全国運営会議に年3回参加しました。

2003524日、25日神戸市で開催された「移住労働者と連帯する全国ワークショップ」に、ネットワーク九州の関係者も参加しました。移住外国籍女性のためのDVホットラインについては、20043月にコムスタカ―外国人と共に生きる会(相談4件)と、アジア女性センター(相談2件)が開設し、全国と連携しながら取り組んできました。

(9)九州内の他団体との連携について

2004124日に開催された、NPOと自治体の協働による「多文化共生推進のための政策フォーラム」に、ネットワーク九州の関係者もパネラーとして参加しました。2004226日、全外教(全国外国人教育研究会・福岡)の福岡県多文化共生教育研究集会に参加しました。

22004年度の活動計画

(1)事務局会議
  原則として毎月1回の事務局会議を行い、活動を検討していく。

(2)総会の開催
  例年どおり年1回の総会を行います。2004年度は、200441718日に開催済み。

(3)ニューズレター発行
  年間3回の発行を目標とします。

(4)政策提言に向けた公開学習会
  200412月頃に、学習会あるいは講習会を企画する予定です。

(5)政策提言の具体化と行政への働きかけ
  昨年度は、九州内の地方自治体に対して「外国籍住民と共に生きる街づくり」を目指した政策提言をNGOとして提出してきましたが、今年度は、熊本・福岡地区の政策提言の個別具体化を実現させるとともに、行政への働きかけを各地に拡げていきます。

(6)福岡入管との意見交換会
  1998年度から続いている意見交換会を、今年度も行う予定です。昨年度から、入管の実務担当者が出席しなくなりましたが、出席する形式に戻すよう働きかけていきます。

(7)外国人のための無料相談会
  過去2年間取り組んできた外国人相談会は、ここ数ヶ月間、相談者がいない状態が続きましたので、一時休止いたします。この休止期間中における相談は、以下の団体が責任をもって受け付けます。

 アジア女性センター(TEL.092-513-7333
ゼネラルユニオン(
TEL.090-8396-7268
美野島司牧センターTEL.092-431-1419

(8)全国ネットワークとの連携活動
  運営委員の派遣、全国フォーラムへの積極的な参加などを今後も続けていきます。

(9)九州内の他団体との連携について
  移住労働者問題に取り組むNGOを強化するとともに、関係団体(労組、教育関連、行政)との協力や連携を深めていきます。また、九州内でNGOが存在しない空白地域への働きかけも行っていく予定です。

(10)その他
  ネットワーク九州のホームページを作成します。政策提言の具体化をめざして夏季合宿を企画・検討します。




日本社会における外国人犯罪の実像

―警察犯罪統計のからくりを暴く―

  コムスタカー外国人と共に生きる会


 警察の「外国人犯罪」差別広報(「外国人犯罪」差別ビラやポスターなど)や、マスコミによる「外国人犯罪」差別報道が繰り返されています。その度に、在留外国人への差別偏見が助長され、在留外国人の就職や住居探しが困難となったり、子どもが学校でいじめられたり、日本社会での生活が困難となっています。
 個々の具体的な凶悪な事件の被疑者が外国人である事件を、マスコミが大きく報道していくことによる影響もありますが、「来日外国人犯罪統計データ」による警察の広報・宣伝が大きな影響を与えています。
 そのデータとして「警察庁来日外国人犯罪対策室」による『来日外国人問題の現状と対策』や『警察白書』での「来日外国人犯罪の統計数値とその分析」が使われています。
 警察庁は、「来日外国人犯罪の増加・凶悪化・組織化・地方への拡散」の宣伝をし続けています。そして、マスコミがそのたびにその見解を無批判に、あるいはさらに誇張して報道し、外国人への差別と偏見を助長する報道を繰り返しています。
 そして、2003年の衆議院議員総選挙では、与野党の多くの政党が「治安対策の強化」を公約に掲げ、政府も「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を20031218日に決定し、「増え続ける外国人犯罪と少年犯罪を主眼に、約25万人に上る不法滞在の外国人を今後5年間で半減させる数値目標を政府として設ける」までに至っています。
 「来日外国人」犯罪データは、警察庁の「検挙件数」と「検挙人員」の増加を根拠とするものです。これらの指標は、あたかも実際の犯罪発生数の増加をあらわしているかのように信じられ、宣伝・報道されていますが、犯罪発生数の実数ではなく警察の取り締まり活動の結果を表しているに過ぎません。
 これらの指標でも、2003年日本全体に占める「来日外国人」の検挙件数の構成比(%)は、刑法犯4.2%、強盗6.6% 窃盗犯5.3%、侵入盗で7.7%、検挙人員の構成比は、刑法犯2.3%、強盗7.8% 窃盗犯2.4%、侵入盗5.0%です。

 日本で過去10年間にわたり「来日外国人」は、刑法犯検挙人員の2%程度しか占めていませんし、正規の在留資格を有さない外国人(警察用語で「不法滞在者」)は、0.4%程度しか占めていません。
 このように、日本社会におけるあらゆる罪種の犯罪(入管法違反や外国人登録法違反を除く)の圧倒的多くは、日本国籍者によるものであり、「来日外国人」や「不法滞在者」による犯罪は、その絶対数も少なく、その構成比も小さく、日本全体の増減に対応しているだけで、最近10年間ほとんど変化していません。
 最近10年間で「来日外国人犯罪」は、警察庁のデータで検証しても、「増加」も、「凶悪化」も、「組織化」も、「地方への拡散」もしておらず、また「不法滞在者」も「犯罪の温床」となっているわけではありません。
 警察庁の「外国人犯罪の増加論」や「外国人による治安悪化論」は、その実体がないにもかかわらず、スケープゴートとして政治利用され、日本の排外主義の温床として肥大化し、外国人を「犯罪者」や「犯罪予備軍」とみなす差別や偏見を助長しているだけでなく、国際化への適応を遅らせ、多文化共生社会への転換を阻む大きな壁として存在しています。

 日本社会は、少子―高齢化の進展や近い将来の人口減少社会を迎えるにあたって、移民の受け入れや外国人労働者の一般労働の原則的受け入れなど入管法の抜本改定が求められていますが、「外国人犯罪」問題が大きな壁となり規制強化の改定がなされ、にもかかわらず、これまで「来日外国人」犯罪の「増加」や、「凶悪化」、「組織化」「地方への拡散」を強調するのに都合のよい数字や罪種が強調されてきました。そして、これに対する反論や抗議がこれまでほとんどなされてきませんでした。
 その結果、「来日外国人」「不法滞在者」の犯罪が毎年増加、凶悪化、組織化され、日本の治安を深刻に脅かしているかのようなイメージが作り出され、マスコミの報道により日本社会に広く深く浸透しています。そして、石原東京都知事のような政治家の暴言や差別発言が公然となされても、それを東京都民や日本国民の多くが支持し、許容していくということが起きています。
 その理由として、第1に、犯罪を取り締まる警察、あるいは入管によってしか、「来日外国人犯罪」問題が論じられてこなかったことがあげられます。
 警察は、行政機関としての自らの権限や組織の拡大のため、ことさら「来日外国人犯罪」に関する「増加・凶悪化・組織化・地方への拡散」などを主張するのに都合のよいデータを強調する広報を続けてきました。
 そして、第2にマスコミが、「外国人」による犯罪報道は「日本人」による犯罪報道以上にニュース価値があるとして、警察の広報を自ら検証することなく繰り返し報道しつづけてきたことがあげられます。
 3に、日本国内でこれに抗議する団体や個人がほとんどなく、警察やマスコミは、「来日外国人」犯罪の広報や報道に関しては、抗議を受けることがなく安心して広報や報道ができたことがあげられます。
 そして、第4に、これらを許容し受け入れてきたのは、日本社会に根深くある移住労働者と家族への偏見と差別意識です。

 外国人による犯罪は、国籍・民族・人種・在留資格などによって行われているのではなく、具体的な個人によって行われています。日本社会でおきている外国人による犯罪を、警察庁など公的機関が、特定の国籍・民族・人種・在留資格などによって分析し、その増加や凶悪化、組織化などを公表して宣伝することは、それ自体その集団への偏見と差別を煽動する行為となります。
 特定の国籍・民族・人種・在留資格などで分類した集団に所属する者の犯罪の数が仮に増加や構成比が高くなることがあっても、それはその集団が「犯罪集団」であることや「犯罪を起こしやすい集団」であることを意味するものでなく、その集団の日本社会における経済的―社会的状況の問題として捉えられるべきです。
 被差別部落民やアイヌ民族や在日韓国・朝鮮人などの日本社会におけるマイノリテイの犯罪動向を警察庁が分析・公表することがなく、マスコミも公表し続けることがないのは、それが差別となることを自覚している、あるいは差別として抗議を受けるからだと思います。
 このことは、「来日外国人犯罪」問題についても同様であり、警察には、「来日外国人犯罪」のデータ公表や広報をやめさせ、マスコミには「来日外国人犯罪」報道を差別と自覚させ、マスコミにも自らの責任において警察の広報に加担する報道をさせないようにしていくことが必要です。




5回移住労働者と連帯する全国フォーラム2004・福山に参加して

ネットワーク九州・事務局

「〜連れのうて〜」という言葉と共に=地方からつなごう多文化共生社会=を目指して、福山で第5回全国フォーラムが開かれました。

私の全国フォーラム参加は前年の神戸でのワークショップを含めて3回になります。参加するたびに新しい発見があり、移住労働者を取り巻く様々な環境を見知り、驚き、怒りを覚えながらも、全国の皆さんの取り組みに感動し、勇気付づけられた2日間でした。
 全体会会場となった「広島県民文化センターふくやま」では、3人の案内者達がそれぞれの母語で言葉をつなぎあって、多言語による進行がなされました。
 開催地実行委員会の村田民雄さんの開会宣言に続き、全国ネットワーク共同代表の渡辺英俊さんが「移住外国人支援運動の流れ」を解説、各地域での限定した活動だったものが、1996年の福岡での「第一回移住労働者と連帯する全国フォーラム」へと発展し、その後は【移住労働者と連帯するネットワーク】の結成に至り、移住連ができたその後からは次々にネットワークが出来上がり、その結成の大きな担い手になった事がスライドを交えて説明されました。
 次に、【基調講演】として、渡辺さんと同じく移住連ネットワーク共同代表の丹羽雅雄さんによる講演が「多民族多文化の共に生きる社会をめざして」のテーマで行われ、講演終了後は各分科会へ分散し、11の分科会で各発表、意見交換が行われました。分科会は以下の通りです。

@入門編「ロールプレイで多文化共生を考える」 A入門編「ここが問題!入国管理制度」 B労働者の権利を守るために C移住労働者とその家族の医療・福祉に関する支援 D難民鎖国日本を問う E外国人差別をウオッチしよう! F日本語支援の「いま」「これから」 G国際結婚・家族と人権 H子どもの教育 I移住女性に対する暴力パート1 J外国人研修生・技能実習生問題等のテーマ。

また、夕食をはさんでの夕方からの分散会では、(イ)難民支援の全国ネットワークのために (ロ)事例持ち込み放題!みんなで考えよう。移住労働者の医療と生活。 (ハ)中国地方のネットワークつくり (二)海外ゲストを囲んで (ホ)国際結婚・家族と人権 730通達の現状分析 (ヘ)STOP!メール通報 (ト)移住女性に対する暴力パート2 などが引き続き討議され、どの会場も熱気溢れる意見交換会となったようです。

私の参加した分科会、分散会は、共に移住女性に対する暴力の会場でしたが、なかなかの内容ある分科会だったのでここに少し報告いたします。

@DVの現状・・カパティラン(東京)の報告では、オーバーステイを含むと推定200万人を越す外国籍住民が生活し、内約99万人が女性、男性は約87万人。
 女性の場合、日本人との国際結婚へ至る理由は、渡航前からの諸経費が既に前借金として組まれており、労働状況も劣悪で、売春の強要、旅券没収、暴力、ヤクザの関与、などで、店での待遇に堪えかねて逃亡したり、ビザの期限内に送金が出来なかったために、帰国せずそのまま日本に留まり、オーバーステイになった後に日本人男性と知り合うケースが多い。
 或いはお見合いなどにより結婚のための来日などがあります。この場合、農村では嫁不足解消、都市では両親または夫自身の介護のための結婚が多く、また離婚率も著しく高く、大半の理由にあげられるのがDVです。

A移住女性のDVの主なものは、a:肉体的な暴力(殴る、蹴る、物を投げる、家に閉じ込める)、 b:精神的な暴力(〇〇人はバカ、日本語で話せ!) c:経済的な暴力(生活費を渡さない、一人で買い物に行かせない、実家への仕送りを禁止する、妻の給料を没収する) d:性的な暴力(性行為の強要ー後継ぎが必要、性行為の拒否、中絶の強要ー〇〇人の子どもはいらない) e:法的な暴力(籍を入れない、ビザの取得や更新に協力しない)など。

B移住女性のDV支援のために今後の課題として、改正DV法や法務省通達の円滑な活用の促進ー役所の窓口での対応の際に改正法の内容が現場に行き渡っていない場合は改正法の説明をする。資料には「出入国管理及び難民認定法第62条第2項に基づく通報義務の解釈について(通知)、をはじめとする多種の参考資料がレジュメとして発表されました。

さらに、この福山全国フォーラムの2日前に衆議院で可決されたDV法改正に付いても述べられ、改正された法案に移住女性のDVに対する内容も組み込まれており、関連付けて補足させることが出来ると解説されました。

C日本に於ける人身売買の実態と現状をブックレットU(※注釈)より説明があり、国際社会でこの人身売買がどう取り組まれているのか、また、日本の中で今後どうあるべきか、その流れと解説が行われました。
 日本は人身売買をしている国であるという事を認識すべきであり、被害者を救う法律が皆無である事、その実態調査をする義務があるとして、国内での問題点などが述べられ、広く日本国内の中に人身売買される移住女性へ対する偏見を指摘し是正していかなければならないと強調され、人身売買禁止法を早く作成させるために、今後良識ある議員達への超党派でのロビー活動をこれまで以上に積極的に行いましょうと全国各団体への「人身売買禁止法」へ向けた被害調査の協力が依頼され、また、既に発足している「人身売買禁止ネットワーク」への参加もあらためて呼びかけられました。

翌日の全体会は再び「広島県民文化センターふくやま」で行われ、再び多言語による進行で、日系アルゼンチン男性のマリオさんの楽しい手品に続き、海外ゲスト2名によるスピーチ(韓国から、韓国移住労働者共同委員会のキム ミスンさん(男性)、香港から、アジア移住労働者フォーラムの針間礼子さん)が行われました。
 
全国各地の活動アピールでは、5人の活動アピール発言者の中に移住労働者と共に生きるネットワーク九州の共同代表でもある熊本の「コムスタカー外国人と共に生きる会」の中島眞一郎さんが登場し、1985年に「コムスタカ」が「滞日アジア女性問題を考える会」として発足して既に18年継続している事の感慨と共に、この間の外国籍住民や帰国者のための行政への施策提言活動について熊本での成果を発表、地方から中央への施策実施への軌跡が解説・アピールされました。

次に、各特別決議の提案、採択(法務省入国管理局によるメール通報制度の中止を求める特別議決)がなされ、最後の福山アピールでは、中国地方に「多文化ネット・中四国」が正式に発足した事が発表されました。この発表は、各地方で活動している人々にとっての大きな励みになりました。

2日間の行事をはさんで、私が感じたことは、当然のことながら「動けば進む」ということでした。一歩でも二歩でも、地道に積み上げたことを進ませて、「多民族・多文化の共生社会」実現へ向けて皆さんと共に頑張りましょう。

(※注釈)ブックレットU【ドメスティック・バイオレンスと人身売買】=働く女性の権利を求めて= 移住連「女性への暴力」プロジェクト編




====外国人登録証====

私が命の次に大事にしているもの、それは外国人登録証です。私は、テレビに出る時も、どこへ行く時も、必ず外国人登録証を持って出ます。いつでも身に付けています。荷物を預ける時もこれだけは身に付けています。風呂屋に行く時も持っていきます。

昔は手帳型でした。こうやって指紋を押捺していました。エアコンも何も無い汚い小屋みたいなところに行って、何時間も並ばされて、はい押してって言われるんです。13歳位の時に行ったんですけど、押し方が分かりませんとか言ったら、こうやって押すんだってぐいっとされるんです。お前も自分でやってみろよ、って思いましたね。押した後に、指を何で拭くと思いますか?藁半紙です。使い捨ての硬い藁半紙が置いてあって、それで拭くんです。それじゃあ取れないんです。あの時の扱われ方、日本語が分からないおばあちゃん達なんて、すっごく馬鹿にされていたんです。妊婦の人もいました。それでも彼らは座れとも言いませんからね。

そんな状況の中で、外国人登録証がこういうカード型に変わりました。指紋押捺反対運動がたくさんありましたからね。そしてその後、指紋押捺の代わりにここにサインをするようになりました。ちなみに、指紋押捺反対運動の時は、私はもう会社を立ち上げてただひたすら稼いでいましたので、その運動にはほとんど参加していなかったんです。ちゃんと向き合ってやっていたわけではなかったんです。

これを持っていないと、それだけで昔は刑事罰が科されていました。今は行政罰です。これがいつ機能するのかといったら簡単です。警察が捕まえたいと思った時に機能するんです。例えば横断歩道のちょっと横を歩いたとか、ちょっと自転車を置いたとか、アパートを違う階段から上っただけで、いつでもどこでも捕まえられる条件としてあるんですね。だから、私にとってとても大事なんです。先輩たちはよく風呂場で捕まったんですよ。

■帰化

集会で、「どうして、辛さんは帰化しないんですか」と聞かれたれたことがあります。私が帰化しないんじゃなくて、日本の政府が私のことが嫌いで、国籍をくれないんです、って言ったんです。でもね、それは日本の人にはよくわからないんですよ。で、帰化しないで朝鮮人のままでいるとか異端のままでいるっていうのは、この国が嫌いだからだろうっていう風に簡単に結び付けてしまうんですね。

私は、100万回くらい帰化したいと思ったことがあります。っていうのは、日本人に成りすます生活の方が楽なんですよ。朝鮮人でいて、なんかメリットがあるのかって言ったら、はっきり言って、ない。名前が違うということと国籍が違うということ、そして差別されるということだけが私のアイデンティティーですからね。だから、これで何かメリットがあるのかといったら、朝鮮人だから優遇されたとかっていうことは、この社会で一回もないんです。

ただね、人間として朝鮮人に生まれてよかったな、と思うことがたった一点だけあるとしたら、それは偽物と本物の見分けがつくことです。朝鮮人と関わるっていうことは、日本人にとっては何一つメリットのないことです。メリットのないことでも関わろうと思う人と出会えることは、人生の中でものすごく大きいんです。

つまりね、本物の人間の良心に出会えるっていうことは、戦ってないと絶対ない。だから私は、朝鮮人に生まれてすんごくよかったなと思ったのはね、こいつは本物、こいつは偽物、こいつはちょっと怪しいとかってね、全部わかるの。

そういう風に人間の良心にたくさん出会えるっていうのは、ドリームジャンボの前後賞に当たったくらい、すごいことなんです。

だけど、私はよく言われるんだけど、みんなが辛淑玉さんじゃないって言うんだね。そりゃそうだ。私はね、子どもの時からきつかったし強かった。喧嘩はガキの頃から、対等だったら絶対負けなかった。だけど喧嘩の勝率は大体19敗。なぜかというと、いつも強い奴とやるから。

そんな私でもね、100万回帰化したいと思いましたよ。生活の中の小さなことの積み重ねが、絶望しかないんだ。日本人なら簡単にできることが、外国籍住民であるがゆえに、負担が2倍も3倍もかかるのね。精神的にも肉体的にも参ってくるんです。

ある時、うちの顧問弁護士が、あなたね、そんなに民族とか血とにこだわってるのはよくないって言うんだ。

その時ちょうどこういうことがあったの。私がプレゼンテーションに出て、辛淑玉って名前を出したら、日本の名前にしてくれとかって言われたわけ。私が嫌だって言って押し通したら、プレゼンから下ろされたわけですよ。社員が何日間も徹夜して作ったプレゼンのペーパーがおじゃんになったんですね。その時うちの社員から、泣きながら抗議を受けたの。その時に、これはいかんなって思って、気持ちもちょっと弱かったんですね。

それでね、うちの弁護士と一緒に法務省に行ったんです。まず入管に行って、申請書をもらうんです。申請書をもらうだけのために、面接があるんです。信じられないでしょ。私が行ったのは1980年代後半です。

並んで面接を待つんです。名前を呼ばれて、帰化申請の書類をとりに来ましたって言ったのね。そしたら、国籍は?って聞くから韓国ですって言ったら、あのねぇ、韓国人の女の人は偽装結婚が多いからねぇ、って。しょっぱなから偽装結婚かって。私は別に結婚していませんとかって言ったら、次にはね、一家単位じゃないとだめだって言うんです。つまり、個人が何かをしたいと思っても、おじいちゃんもおばあちゃんも一緒に住んでたら、みんな含めた一家単位じゃないと帰化できないって言うんです。みんな様々な思いがあるじゃないですか。でも、所帯を別にして暮せるほど金持ちではないわけですよ。

それから、家・土地・財産があるかどうか。これはなぜかといったら、生活保護を受けるような人だと困るからなんです。日本にとってメリットのある人じゃないといけないんですね。

それから会社をやってたら、5年間経常黒字じゃないといけない。今、日本の会社で5年間経常黒字なんてのがあったら会ってみたいですね。それくらい審査が厳しいんです。

ところがね、そこでカチャカチャカチャって何か打ち込んで、紙がぺろっ出てきて、あっあなたはあと3年申請できませんって言うんだ。えっどうしてですかって聞いたら、2年前に駐車違反を1回やってますって言うの。堪忍してくれよって思いましたね。ここだけの話、その駐車違反は実は先輩がやって、もう免停になるっていうので肩代わりしたやつだったのね。だから自分でも忘れてたの。駐車違反1回やると、5年間申請ができませんでした。

それでね、その上で紙をこうやってべろっと出すわけですよ。で、ここの中にある当用漢字で日本の名前を付けてくれって言うのね。日本の名前っていうけど、実はそれ以前の段階で民族名でもいいっていう通達が出てるんです。でも現場はまったく違うわけですよ。

日本の名前を付けてくださいって言われて、辛も淑も玉もあるわけですよ。だからね、シンスゴだと呼びにくいからシンシュクギョクとか、これでどうですかって聞いたのね。そしたら、もっと日本人らしい名前でって言われたんです。

で、じゃあ私の友達の安部譲二とか竹内まりあとか、それは日本人らしい名前なのかって聞いたんですよ。そこで堪えればいいんでしょうけど、やっぱり出ちゃうんですね。そしたら横でね、うちの弁護士がぽーんって足に蹴り入れてくるんですね。で、顔中で、お上に逆らうなって言ってるんですよ。

でもやっぱり堪え切れなかったんですね。じゃあカラシヨシタマではどうですか、とか言ったその瞬間にですね、目の前の書類をぱたぱたって片付けて、すって立つんですよ。どこに行くのかなって思ったら、あなたには良き日本人になろうという意志が見られないとかって言われたんです。書類をくれないんですよ。

それでうちの弁護士が慌てて、ちょっと待ってください、ちゃんと教育しますから、とりあえず頂ける資料だけはって言ってね、それでもらって出てきたのね。出てきたときにね、思いましたよ。ふざけんなってね。そしたら出た瞬間、大手町法務省の入管を出た瞬間に、うちの弁護士に頭をバチッと叩かれて、あれほど言ったでしょう!お上に逆らっちゃいけないって!!て言われたんですね。

仮に、もらった書類に全部書き込んで、条件も満たして出したとしましょう。そうしたら今度は、公安の調査が入る訳ですよ。今まで日本名で、日本人のようにして生きてきた人たちが、ある日突然近所中で公安に聞き込みをされたら、そこで生活していけるのかってことですよ。

それから、帰化申請、この帰化っていうのは差別語です。「王化に帰する」、周辺地域の蛮族が中国の天子の権威に帰服する、っていう意味の差別語なんです。だから、日本国籍取得というのが一番正しい。

そして、旧植民地出身者で、何代にも渡ってその国で生活してきた人たちに対等な権利を与えないっていうのは、世界の中で日本だけなんです。二重国籍も認めない、帰化申請はこんなに変な状況で、しかもルールがないんですね。何年いたら、とかじゃないんです。すべて裁量権で、法務大臣の掌の上なんですね。

そんなわけで、私は日本国籍が取れませんでした。だから私は今ここにいるわけですね。でも、じゃあ私が日本国籍を取ってたら、ここで喋ってないかって、喋ってますよ。喋っているけれども、少なくとも私が日本を嫌いなのではなくて、日本の政府が私を嫌いなんです。権力に嫌われる存在っていうのは大したもんですよね。私ね、いつも思ってるの。世界中の全ての人が私を嫌いになっても、私は私が好き!どんなことがあってもね。

今は、朝鮮人の日本国籍取得は、昔に比べればいくらか楽になった部分もあります。それは新しい試みなんですね。このまま朝鮮人、旧植民地出身者を放置していたらどうなりますか。今、外国籍住民の4割が旧植民地出身者なのね。これにもし、自動的に日本国籍を与えてしまったら、外国籍住民の権利闘争なんていうのは半分力が削がれるっていうことですからね。

外国籍住民を取り巻く状況は変わっていません。旧植民地出身者だったとしても、新しくやってきた移住労働者であったとしても、未資格就労の人であったとしても、この社会の本質が変わっていないから、私が子どもの頃から見てきた朝鮮人と、今この社会で一緒に暮している人たちは同じ歴史をたどっています。

そしてそれは、私たちが踏ん張らなかったせいだなっていう風に思っています。私には、日本の政府がやっていることへの責任はない。でもこの政府を温存し、倒さなかった責任というのは私にもあると思っています。だから、私は加害者の一人です。加害者の一人としてこのことを語っていかなければいけないだろうと思っています。

■タマちゃんには住民票が・・

ここから真面目な話をします。ここ1年間で、外国籍住民が絡んだニュース、記事で、記憶に残っていることがあったら言ってみて下さい。

その中で、私はこの事件を上げたいと思います。タマちゃん。タマちゃんに住民票が与えられました。ニシタマオ、推定年齢2歳、オス、愛称タマちゃん。タマちゃんは不法入国です。タマちゃんは未資格就労です。タマちゃんは不法滞在です。にも関わらす、タマちゃんに対しては、住民票が渡されました。

さあここからです。その時に同じような形でニュースになったことがあります。外国籍住民の人たちが、タマちゃんのぬいぐるみを着て、タマちゃんに住民票くれるんなら僕たちにも下さいってやったんですね。ただしそれは、そのニュースでしか扱われませんでした。つまり、なぜ彼らがそう言っているのかっていうことに関しては、全く触れられていなかったんですね。

住民票がないとどういうことが不便だと思いますか?どういうことが起こると思いますか?就職できない、そうですね。他には?住民票に記載がないので母子家庭と思われる、そうですね。選挙権、住民投票の権利がない、それもありますね。

それから住民票がないと、小学校の入学の案内が来ません。行政サービスというのは住民票をベースにして行なわれます。私たちは外国人登録証で管理されていますから、住民票のサービスの中に入らないわけなんです。そうすると、小学校の入学案内がこないんです。旧植民地出身者、永住権のある者に関しては、来る地域もあります。

うちの場合は、近所の子どもたちが1年生になったとき、親が姉を連れて行きました。うちの子お願いしますって小学校に入れるの。すると学校側で、弟がいる、妹がいるっていうのを判断して入れてくれるんです。そうすると、移住労働者であったりとか、資格外だったりするとね、子どもたちが学校にいけない状態でそこに放置されるっていう状況が十分にありえるわけです。

現実にとてもたくさんあります。特に、東京では毎日生まれてきている子どもたちの14人に1人が外国籍住民です。東京の新宿区と港区では5人に1人。3割は外国籍住民だっていう街もあります。これは表に出ている数字だけですから、そうじゃない人を加えたら、かなりの確率で学ぶことさえ許されない子どもたちがそこにいるんです。その親たちが働いた金はちゃんと税金として取られています。消費税としてもちゃんと納めているんです。でもその子どもたちには案内すらこない。

この間、定住ベトナム人の人と小さなFM放送局で話をして、最近しんどかったことは何?って聞いたんですね。そしたら、商品券って言ったんです。地域振興券っていって、その商品券は永住権をもった在日の子どもまでは来ました。でも、永住権を持ってない外国籍住民のところにはこなかったのね。

どっちの生活が苦しいのかっていったら、永住権持ってない人の方が苦しいですよ。仕事もないし、言葉もわからないし、様々な形で、より過酷なわけですね。親が失業しているその子どもが行っている学校でね、2万円のゲームが買える家には2万円の地域振興券が行って、明日の飯をどうしようかって言ってる定住ベトナム人の子どもの家には2万円が落ちていかないわけですよ。

その子はね、おうちの中でいろいろもめてるの。なんでもめてるのかって、親にこう言ってるの。どうしてもっと日本人らしい名前を付けてくれなかったの?って。明らかにアジア系の名前なんですね。

そこまではまだ我慢できた。でも、自分の住んでるところに定住支援センターがあって、そこに公明党のチラシが入ってきて、みなさんのために公明党は頑張りました!って紙が入ってきたんですって。あれ見た時に、泣けて泣けてしょうがなかったって言うんですね。

それで、彼女が最後に言った言葉がね、この国には夢がない、って。私、その時ね、作ろう!!って言ったんです。夢がないんなら作らなくちゃいけないんだって。でもね、言葉もわからないんですよ。何がしんどかったかって、病院とかでトイレに行った時に、どっちが緊急の呼び出しボタンでどっちが流すボタンなのかわかんないわけですよ。そういうところで右往左往するような、言葉の壁のある人たちに戦えって言っても限界があるわけですよ。

次に何があるのかっていったら、成人式の案内がこないんだ。地域の成人式の案内が在日には来ないから、4年位前に回ったんですよ。在日コリアンの20歳になった子たちのところにですね。それで、朝鮮人と韓国人だけの成人式があるから出ておいでよって言ったら、私が行ったその家の子は、そこに出たら自分が朝鮮人だ韓国人だってばれるから、押入れの中に入ってずっと出てこないんだよね。私と会うのが怖かったんだ。

私が、住民票が残酷だなって思ったのは、私の大好きな女性で、拉致監禁強制売春を強いられた元軍用性奴隷の在日の女性がいます。彼女は傑作な女性なんですよ。強くて逞しくてね。

裁判はずっと負けてるわけですよ。これはなんとかなるだろうって思う裁判でも負けるのね。私なんかは負けた時に、どういう風にその周りの人たちを支えていったらいいかなとかって思うと、ため息が出るのね。ところが彼女は、こらみんな!こんなことで負けてどうする!って言うのね。当事者の、一番しんどい彼女がですよ。

彼女は、オレは弾くぐって生きてきたんだって言うのね。鉄砲の弾が頭の上をがんがん行く中で性奴隷にされて、それでも生き抜いてきたんですよ。それで、みんな元気出せって言うのね。元気出せって言っていつも彼女が歌う歌が軍歌なんです。そういう中で生き抜いてきた人の証なんですよ。

その彼女がね、私が付き合った中で唯一、一回だけ、泣きはしなかったけど、目が赤くなった瞬間があったんです。敬老の日に、近所中みんなに自治体から住民票をベースにして座布団が配られたんです。それが、彼女にだけいかなかった。

近所は高齢化しているからみんな高齢者です。彼女に意地悪しているおじさんたちとか、みんなに配られて、彼女だけはもらえなかった。彼女が言ったんです。オレな、座布団欲しかった、って。私ね、100枚くらい買って持っていこうと思いましたけど、違うんだよね。あれは仲間はずれの象徴なわけですよ。あんたは認めないよっていうね。

■社会的弱者への想像力と行動を

私はね、住民票っていうのが公的なサービスをするといった時に、外された者がどういう思いをするのかって想像することができない人間は、人の上に立ったらいかんと思うわけ。こういうことは付き合っていないとわからない。

そして、自分とは違う立場の人と付き合っていると、その社会がよく見えてくる。そして、その社会の中で弱者が置かれている環境を変えていくことが、実は私たちがもっと豊かに生きられることなんだと思うんです。そしてそれは、この社会を温存してしまった私の責任でもあるわけです。

私は、とても好きな話があって、ある地域の80歳くらいのおじいさんの話で、自分たちの地域に下水か何かを作るっていうので、どこからどこまでは行政がやって、ここから先は自分でやらなくちゃいけないっていう費用負担の会議があったんです。

その時に、その会議で80歳くらいのおじいさんがね、うちの家の隣に土人がいるんだよって言ったんですね。みんなびっくりしてね。土人なんて、あんな差別言葉ないですからね。役所の人間はみんな凍っちゃったんですね。その土人っていうのは、どうやらフィリピンの人らしいんです。それで、うちの家の隣に土人がいるんだけどよ、その土人はよ、一生懸命働いているんだよ、だから土人の家にもよ、下水道引いてやってくれよ!って言うのね。

私ね、そのおじいさんのその差別的な表現には問題があるけれども、このオヤジはいい奴だなと思うんですよ。きれいな言葉を使ってね、それは自分で負担しなさいって言うよりも、こいつは土人だけど一生懸命生きてるんだから、一緒にやってくれっていう、こういう関係をいかに築けるのかっていうことが、すごく大事なんだろうなって思うのね。そのときには美しいことを言うのではなく具体的に動く、具体的に動いていく中から、色んなものが見えてくるんじゃないかなって思っています。





熊本県警が、自動車免許学科試験の今年8月からの

多言語化の実施を公表

(コムスタカー外国人と共に生きる会)

0029月、コムスタカなど4団体は、熊本県に対し、外国籍住民・帰国者のための施策の提言を提出しました。
 その2項目に自動車運転免許学科試験の多言語化を提案していました。それは、20026月の道路交通法改正により、国際運転免許の更新をする場合、3ヶ月間国外に滞在しなければならないようになったためです。多くの外国籍ドライバーの重荷になることが予想されました。
 案の定、今年3月初め、フィリピン女性と結婚して農山村に暮す日本人男性から悲痛な相談が寄せられました。「妻の免許が8月に切れる。3ヶ月も家を空けるのなら、幼い子どもたちはどうなるのか、勤め先もクビになり、これからの生活をどうするか、日本の免許を取りたい。その為に、英語で試験を受けられるようにしてほしいが、免許センターに二度いったが、埒があかなかった」とのことでした。
 私は、その晩早速、熊本県知事宛に手紙を書き、翌日、「知事への宅急便」として送りました。手紙は、知事、担当部局、424日運転免許試験課の係長から詳しい事情の説明がありました。前向きの姿勢で準備を進めていることがわかりましたが、一刻も早く実施してもらいたいので、政策提言を行った4団体で、511日、免許センターに要望書を提出に行きました。
 その結果、今年8月をめどに熊本県内在住の外国人が、英語又は中国語で運転免許試験が受けられるようになることがわかりました。
 英語による学科試験は、大分県、宮崎県、沖縄県など全国16県ですでに行われています。中国語によるのは、宮城県、徳島県についで全国3番目ということです。
 国際化、ユニバーサルデザインとか、かけ声だけなく、こうやって具体化していくことこそ大切だと思います。

資料

                                              平成16年5月11日
熊本県警察本部交通部運転免許試験課長 殿
自動車運転免許学科試験の多言語化の

一日も早い実施を求める要望書

私たちは20029月、国際化時代に外国籍住民と共生する社会を目指す観点から、熊本県に対し、8項目からなる提言を行いました。その中で、自動車運転免許について日本語以外の言語でも学科試験を受けられるようお願いしました。それは20026月の道路交通法改正により、日本国外に3ヶ月以上滞在しなければ、国際免許や外国免許による運転が出来なくなり、本人・家族にとって多大なる負担になるからでした。
 予想に違わず、免許更新の時期を間近に控えた外国籍の人たちが3ヶ月もの間、家族や職場から離れ帰国しなければならない事態に困り果てています。
 このような状況を踏まえて、大分県などでは既に英語による学科試験を実施しています。熊本県の運転免許試験課によると、英語と中国語による学科試験実施に向け、8割方準備が出来ているそうですが、実施時期については、わからないということです。準備作業を急ぎ、一日も早く多言語による免許試験を実施されるよう、切望いたします。

熊本外国人妻の会、熊本フィリピン人の会 熊本・同歩会(中国帰国者と共に歩む会 代表 川口昌盛)、コムスタカ外国人と共に生きる会(代表 鈴木明郎

連絡先:コムスタカ外国人と共に生きる会(熊本市上通町3-34 手取カトリック教会内 電話番号096-352-3030